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第2部 第2章 第1節 2.取引及び表示の適正化並びに消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第1節 消費者被害の防止

2.取引及び表示の適正化並びに消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

(1)消費者契約法・国民生活センター法の改正、不当寄附勧誘防止法の成立及び施行

 いわゆる霊感商法への対応の強化を求める社会的な要請を受け、消費者庁にて2022年8月から行われた「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の報告書等を踏まえ、霊感商法等の悪質商法の被害の発生を予防し、救済を容易にするために必要な法整備として、2022年11月に「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」が、12月に「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」が第210回国会に提出され、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」については、衆議院での一部修正を経て、いずれも12月10日に成立し、12月16日に公布されました。

 「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」(令和4年法律第99号)は、消費者契約法における霊感等による知見を用いた告知による不当勧誘行為に対する取消権の範囲の拡大や当該取消権の行使期間の伸長等のほか、国民生活センター法における重要消費者紛争についての裁判外紛争解決手続(以下「ADR(注72)」という。)の適正かつ迅速な実施や、消費者紛争の発生防止のために収集した情報等について事業者名の公表を可能とすること等を内容とするものであり、いずれも2023年1月5日から施行されました。

 不当寄附勧誘防止法は、法人等(注73)が寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務、法人等が寄附の不当な勧誘を受ける個人を困惑させることや借入れ等による資金調達を要求することの禁止、法人等による不当な勧誘により困惑して寄附の意思表示をした場合の取消権(注74)、子や配偶者が婚姻費用・養育費等を保全するための債権者代位権の行使に関する特例、配慮義務の不遵守や禁止行為違反に関する行政措置・罰則、相談体制の整備等の関係機関による支援等を内容とするものです。また、執行のための体制整備や関係政令・内閣府令・行政措置の処分基準の整備等を行いました。同法は、一部の規定を除いて2023年1月5日に施行され、禁止行為の一部や行政措置、罰則に関する規定は同年4月1日に、禁止行為及び取消権の一部の規定も同年6月1日に施行されました。

(2)商品やサービスに関する横断的な法令の厳正な執行、見直し

ア 特定商取引法及び預託法等の執行強化等

 特定商取引法では、事業者と消費者との間でトラブルを生じやすい取引類型(①訪問販売、②通信販売、③電話勧誘販売、④連鎖販売取引、⑤特定継続的役務提供、⑥業務提供誘引販売取引、⑦訪問購入)について、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守る民事ルールを定めています。消費者庁では、特定商取引法について、権限委任を行い、かつ指揮監督下にある経済産業局と密な連携の下、執行を一元的に実施しており、2022年度は業務停止命令を12件、指示を12件、業務禁止命令を10件実施しました。

 また、第204回国会において、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」(令和3年法律第72号)が成立しました。同改正法のうち売買契約に基づかないで送付された商品を消費者が直ちに処分できることとする一方的な商品の送り付けへの対策については2021年7月6日に、通信販売の契約の申込み段階において消費者を誤認させるような表示を禁止するなどの「詐欺的な定期購入商法対策」については2022年6月1日に、それぞれ施行されました。また、契約書面等の電磁的方法による提供については、消費者からの承諾の取り方や電磁的方法による提供の在り方について、オープンな場で広く意見を聴取した上で検討を行うため、「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」を2021年7月30日から開催し、2022年10月6日に報告書を取りまとめ、報告書の内容等を踏まえた政省令等が2023年2月1日に公布、2023年6月に施行されました。

 預託法については、同改正法が施行されたことを踏まえ、2022年度において、「預託等取引に関する法律の定義規定等に係る考え方(通達)」を公表し、事業者の行う取引が販売預託に該当するかを確認するための「それって販売預託?販売預託チェックシート」や消費者及び事業者向けの注意喚起のパンフレットを作成・公表するなどして、注意喚起や周知を図っています。

イ 特定商取引法の適用除外とされている消費者保護関連法の必要な執行体制強化及び制度改正

 特定商取引法の適用除外とされている消費者保護関連法については、消費者の利益を保護することができると認められるために適用除外とされているという趣旨に鑑み、当該法律の執行状況を踏まえつつ、消費者取引の適正化を図る観点から、必要に応じて制度改正等を検討・実施することとしています。

 消費者庁では、消費者庁ウェブサイト内に、特定商取引法の適用除外法令とされている消費者保護関連法を随時更新、公表しています。

ウ 消費者の財産被害に対する消費者安全法の厳正な執行等

 消費者庁では、消費者の財産被害の発生又は拡大の防止のため、消費者安全法第12条第2項の規定に基づく通知が的確に実施されるよう「消費者事故等の通知の運用マニュアル」の周知徹底を行っており、2022年度における同通知件数は1万394件となっています。

 また、消費者安全法第38条第1項の規定に基づき、2022年度には26件の注意喚起を実施したほか、関係機関等において消費者被害の発生又は拡大の防止のための措置が適切に講じられるよう、消費者安全法第38条第2項の規定に基づき、これに資する情報を関係機関の長等に提供しています。

エ 消費者契約法の見直しに向けた対応

 消費者契約法は、あらゆる取引分野の消費者契約(消費者と事業者の間で締結される契約(労働契約を除く。))に幅広く適用され、不当な勧誘行為があればその契約を取り消すことができることとするとともに、不当な契約条項については無効とすること等を定めています。

 2022年5月に成立した「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」(令和4年法律第59号。以下「令和4年通常国会改正法」という。)では、消費者契約法について、取消権の拡充、新たな不当条項の追加、契約解除時に関する努力義務や適格消費者団体からの要請に応じる努力義務の新設等新たな規定が盛り込まれました。

 また、2022年12月に成立した「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」では、消費者契約法に、霊感等による告知を用いた勧誘に対する取消権の対象範囲の拡大や当該取消権の行使期間の伸長が盛り込まれました。

オ 消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会の開催

 消費者庁では、2022年5月に成立した令和4年通常国会改正法に対する附帯決議において、消費者契約法の消費者法制における役割等を多角的な見地から整理し、既存の枠組みにとらわれない抜本的かつ網羅的なルール設定の在り方について検討すべき旨が示されたこと等を受け、2022年8月30日から「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」を開催しています。民法・消費者法に限らない各法分野の有識者のほか、経済学、情報デザイン、データサイエンス、心理学等様々な分野の有識者のヒアリングを行い、将来の消費者法の可能性について幅広く多角的な観点から議論が重ねられています。

カ 高齢者、障害者等の権利擁護の推進

 厚生労働省では、都道府県、市町村、中核機関の権利擁護支援体制の強化を図る「成年後見制度利用促進体制整備推進事業」、成年後見制度の利用に至る前の支援からその利用に至るまでの支援を切れ目なく一体的に確保する「権利擁護人材育成事業」、成年後見制度の申立てに要する経費や後見人等に対する報酬の助成等を行う「成年後見制度利用支援事業」、各都道府県が行う介護施設・サービス事業所及び市町村への支援、並びに市町村等の高齢者虐待防止等の体制整備を進める「高齢者権利擁護等推進事業」の実施を進めています。

 また、各都道府県において、介護支援専門員については成年後見制度や高齢者の権利擁護等の内容を含む介護支援専門員専門研修等を実施するとともに、介護職員については尊厳の保持等の内容を含む介護職員初任者研修等を実施しています。

 法務省では、日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)において、高齢や障害等で認知機能が十分でないために、自己の権利の実現を妨げられているおそれがある方を対象とした、資力に関わらない「特定援助対象者法律相談援助」を実施しています。2022年度の特定援助対象者法律相談援助の実績(速報値)は、999件でした。

 消費者庁では、2022年度都道府県等消費者行政担当課長会議において、都道府県、政令指定都市等の地方公共団体に対し、成年後見制度の利用促進を図ることが、財産上の不当取引による被害の未然防止にも資するため、成年後見制度の周知・利用促進の依頼を行いました。

(3)商品やサービスに応じた取引の適正化

ア 電気通信サービスに係る消費者保護の推進

 高度情報通信社会の進展によって、インターネットを活用した取引が増加して利便性が向上する一方、それに関連する様々な消費者問題も数多く発生しています。

 こうした課題に対応するため、総務省に設置されている「電気通信消費者相談センター」や全国の消費生活センター等に寄せられた電気通信事業に関する苦情相談を踏まえ、適切な法執行を図っています。また、「電気通信消費者支援連絡会」を全国の各地域(11地域)で毎年2回開催し、各地における消費生活センター、電気通信事業者等及び総務省の間の情報共有や連携を進めています。

 さらに、制度が適切に機能しているかについては、毎年2回開催している「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」等を通じて定期的に検証しています。その検証結果は、「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」における制度見直しの検討に活用されています。

 2022年度には、2022年7月に「『消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書2021』を踏まえた取組に関する提言」を取りまとめ、同年8月に関係事業者等に対して「販売代理店の業務の適正性確保に向けた指導等の措置の実施及び苦情相談の処理における体制の強化に向けた取組に係る要請」を行うとともに、上記の提言等を踏まえ、同年9月に「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」の改正を行いました。

 また、2021年10月以降、「苦情相談処理体制の在り方に関するタスクフォース」を開催し、個別の事業者との間では円滑に解決に至らない消費者トラブルを効果的に解決し得る体制の在り方について検討を行い、2022年6月に報告書を取りまとめました。

イ 有料放送サービスに係る消費者保護制度の適切な運用

 有料放送サービスについては、関係事業者に対し、説明義務、契約関係からの離脱に関するルール、販売勧誘活動等について、「放送法」(昭和25年法律第132号)及び「有料放送分野の消費者保護ルールに関するガイドライン」を遵守徹底させるなど、消費者保護を図っています。また、有料放送サービスに関する苦情・相談処理に関する関係事業者の取組状況を継続的にモニタリングしています。

ウ 金融機関による顧客本位の業務運営の推進

 金融庁では、国民の安定的な資産形成を図るために、金融商品の販売、助言、商品開発、資産管理、運用等を行う全ての金融機関等(以下「金融事業者」という。)が、インベストメント・チェーンにおけるそれぞれの役割を認識し、顧客本位の業務運営に努めることが重要であるとの認識の下、2017年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則(2021年1月15日改訂)」を策定・公表しています。

 これを受けて、金融事業者の顧客本位の業務運営への取組を見える化し、より良い取組を行う金融事業者が顧客から選択されるメカニズムを実現するため、同原則を採択し、原則の項目ごとに自らの取組方針等の記載内容との対応関係を明示している金融事業者を「金融事業者リスト」として取りまとめ、金融庁ウェブサイトで公表しています。

 2022年度には、引き続き、当該リスト等を公表(5月、9月、1月公表)したほか、6月には、「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」として、金融事業者に対するモニタリングによって把握した顧客本位の業務運営の現状をまとめるとともに、金融事業者における課題や今後更なる取組が期待される事項等を公表しました。

エ 詐欺的な事案に対する対応

 金融庁では、無登録で金融商品取引業を行っている疑いがある者に対して、問合せ等を通じ実態把握を行い、警察当局等と情報を共有するなど連携しました。また、2022年度に、無登録で金融商品取引業を行っていた28者に対して、警告書を発出し、これらの業者等について、社名等を公表しました。

 さらに、金融庁Twitterにおいて、上記公表内容のほか詐欺的な投資勧誘等に関する情報発信を行うことによって投資者への注意喚起を実施しました。

 加えて、証券取引等監視委員会では、2022年度には、無登録業者による金融商品取引法違反行為に関する裁判所への禁止命令等の申立てを2件実施しました。

オ 投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者等についての対応

 金融庁では、投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者について、投資者保護の観点から、必要に応じ監督上の対応を行い、2022年度までに投資型クラウドファンディング事業者4社に対し行政処分を行っています。

 また、投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者における取得勧誘やファンド運営等について、リスクベースのモニタリングを行いました。なお、2023年3月31日時点で登録されている投資型クラウドファンディング事業者数は50社となっています。

カ 暗号資産交換業者等についての対応

 金融庁では、暗号資産交換業者について、利用者保護の観点から所要の制度整備・運用を行っています。

 制度の運用に当たっては、暗号資産の価格が大きく変動するとともに、関連ビジネスは目まぐるしく変化している中で、暗号資産交換業者におけるビジネスモデルを適切に把握し、利用者保護の観点から、ガバナンス・内部管理態勢等について、機動的かつ深度あるモニタリングを継続的に実施しています。

 また、暗号資産交換業者の登録に際しては、体制等形式面のみならず、システムの安全性の検証や利用者への説明体制の整備状況等、実質的な審査を実施しています(2022年度は1社を登録)。

 さらに、無登録業者に関する利用者相談が引き続き寄せられていることを踏まえ、無登録業者に対し警告を行うなど、国内外の無登録業者に対し厳正に対応するとともに、引き続き、消費者庁と警察庁とも連携していきます。

 また、国民生活センターにおいても、暗号資産に関する研修を2022年度に10回実施しました。

キ 安全・安心なクレジットカード利用環境の整備

 経済産業省では、安全・安心なクレジットカード利用環境を実現するため、割賦販売法の適切な運用を行っています。また、関係事業者に法令の遵守を徹底させ、クレジット取引等が適切に行われるよう、関係事業者への立入検査や、報告徴収等の執行等を行っています。

 同法で規定されているセキュリティ対策について、クレジット取引セキュリティ対策協議会(事務局:一般社団法人日本クレジット協会)が策定する「クレジットカード・セキュリティガイドライン」を実務上の指針として位置付け、着実に取組を進めています。

ク 商品先物取引法の迅速かつ適正な執行

 経済産業省及び農林水産省では、委託者の保護及び取引の適正化を図るため、「商品先物取引法」(昭和25年法律第239号)に基づく立入検査及び監督を実施しています。

 このほか、「商品先物取引法施行規則」(平成17年農林水産省・経済産業省令第3号)第102条の2第2号又は第3号の規定に基づく勧誘を希望する事業者について、同規則第103条第1項第28号に規定する体制が整備されているかを確認し、体制整備が確認できた事業者を公表しており、2023年3月31日時点で9社公表しました。

ケ 住宅宿泊事業法の適正な運用

 2017年6月に成立した「住宅宿泊事業法」(平成29年法律第65号)について、適切に宿泊者保護が図られるよう、政省令、ガイドライン、標準住宅宿泊仲介業約款等の周知を行い、必要に応じ指導・監督を行うなど制度の適切な運用を行っています。2022年度には、民泊制度ポータルサイトを通じた政省令、ガイドライン、標準住宅宿泊仲介業約款等の周知や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に関する住宅宿泊仲介業者団体等への周知を行うとともに、営業日数自動集計システムを運用し、自治体が適法と確認できなかった物件の掲載をしないよう要請するなどの対応をとりました。

コ 民間賃貸住宅の賃貸借における消費者保護

 国土交通省では、民間賃貸住宅をめぐるトラブルの未然防止のために「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」及び「賃貸住宅標準契約書」についてウェブサイト掲載等を行い、周知を図るとともに、民間賃貸住宅のトラブルに関する研修会について、2022年度にはウェブ講義を6回実施し、ウェブサイトでも動画を公開することによって、賃貸住宅の入退去に関する留意点について注意喚起を実施しています。さらに、「家賃債務保証業者登録規程」(平成29年国土交通省告示第898号)に基づく家賃債務保証業者登録制度において、家賃債務保証業を営む者の登録に関し必要な事項を定め、要件を満たす家賃債務保証業者を国が登録・公表することによって、消費者へ情報提供を行っています。

 また、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(令和2年法律第60号)に基づくサブリース事業者及び賃貸住宅管理業者に対する規制について、関係業界や賃貸住宅のオーナーの方々に対し、規制内容等を明示したガイドライン等による周知を徹底するとともに、サブリース事業者及び賃貸住宅管理業者に対する立入検査を行い、不適正な事業者に対して改善指導等を実施することによって、トラブルの未然防止を図っています。

サ 住宅リフォーム等における消費者保護

 国土交通省では、住宅リフォームや中古住宅の売買に関する各種瑕疵保険を利用する事業者の情報を住宅瑕疵担保責任保険協会のウェブサイトにて公開し、情報提供を行っています。また、住宅リフォーム事業者団体登録制度において、住宅リフォーム事業者団体の登録に関し必要な事項を定め、要件を満たす住宅リフォーム事業者団体を国が登録・公表することによって、団体を通じた住宅リフォーム事業者の業務の適正な運営を確保するとともに、消費者への情報提供等を行っています。

 住宅リフォーム事業の健全な発展及び消費者が安心してリフォームを行うことができる環境の整備を図るため創設した「住宅リフォーム事業者団体登録制度」について、2023年3月31日時点での登録住宅リフォーム事業者団体数は16団体となりました。消費者が基礎的な品質等を有する既存住宅を円滑に選択できるようにするため、建物状況調査等の結果、耐震性があり、構造上の不具合及び雨漏りが認められず、想定されるリフォームの内容・費用等について適切な情報提供が行われる既存住宅について、国が商標登録したロゴマークを事業者が広告時に使用することを認める「安心R住宅制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)」(国土交通省告示(平成29年11月公布、同年12月施行))を推進し、安心して購入できる既存住宅の普及を図っています。安心R住宅制度における、事業者団体登録数は12団体となりました(2023年3月31日時点)。

 2021年1月に取りまとめられた「社会資本整備審議会住宅宅地分科会・建築分科会既存住宅流通市場活性化のための優良な住宅ストックの形成及び消費者保護の充実に関する小委員会とりまとめ」を踏まえ、リフォームや既存住宅の流通に関する消費者保護の充実を図るため、リフォーム、既存住宅売買等に関する瑕疵保険に加入した住宅に関する紛争を住宅紛争処理の対象に追加すること等を内容とした「住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和3年法律第48号)が2021年5月に成立し、2022年10月1日に全面施行されました。

シ 高齢者向け住まいにおける消費者保護

 高齢者向け住まいについては、「老人福祉法」(昭和38年法律第133号)第29条第1項の規定に基づく届出を促進するための都道府県等の取組を推進し、規制を的確に運用しています。また、事業者に対し前払金の保全措置を徹底するよう指導するとともに、事業者の廃業等の実態把握と廃業時等の入居者の居住の確保を図るための運用を引き続き求めています。さらに、入居希望者が高齢者向け住まいの検討・選択をする際の参考となるよう情報提供の充実を図っています。

 このほか、「令和4年度有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査」を実施し、それを踏まえ、都道府県等に対して届出促進・指導等の徹底を要請することとしています。

ス 身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての対応

 消費者庁及び厚生労働省は、関係行政機関と連携して、消費者が安心して身元保証等高齢者サポートサービスを利用できるよう、必要に応じて対応を検討することとしています。

 消費者庁では、2022年度都道府県等消費者行政担当課長会議において、都道府県、政令指定都市等の地方公共団体に対し、身元保証等高齢者サポートサービスに関する契約時のポイントについて周知を行いました。

 また、厚生労働省では、2022年度全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議において、身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について周知を行いました。

セ 美容医療サービス等の消費者被害防止

 厚生労働省では、地方公共団体におけるインフォームド・コンセントに関する相談・苦情件数等の状況を調査し、2021年度における相談・苦情件数は6,423件、うち違反のおそれがあるものとして行政指導を要した件数は88件であることを把握しました。

 このほか、厚生労働省と消費者庁が協力・連携し、美容医療サービスを受けるに当たって注意すべき事項等について、消費者向けの注意喚起資料等を作成し、都道府県等に周知を行ってきました。さらに、厚生労働科学研究の結果等を踏まえ、2022年8月に、美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取扱い等について再周知を行いました。また、行政のTwitter等を活用し、定期的に注意喚起・普及啓発を行っています。

 消費者庁では、特定商取引法で規定している特定継続的役務提供の法解釈等を消費者庁ウェブサイトにおいて公表するなど、周知・啓発活動を行っています。

ソ 警備業務に関する消費者取引における情報提供の適正化及び苦情解決の円滑化

 警察では、「警備業法」(昭和47年法律第117号)第19条の規定に基づく契約内容の書面交付が確実に実施され、警備業務の依頼者の保護が図られるよう、各都道府県警察による警備業者に対する指導及び違反業者に対する行政処分による指導監督を実施しています。

 また、警備業務に関する苦情の解決義務が円滑に行われるよう、都道府県公安委員会による報告徴収・立入検査の監督権限によって、苦情の適切な解決が行われているかを確認するとともに、関連団体との連携を推進しています。

 2022年度においても、各都道府県警察において、各種講習会や立入検査等、様々な機会を捉えて警備業者に対する指導を実施しました。

タ 探偵業の業務の適正化

 探偵業は、個人情報に密接に関わる業務でありながら、何ら法的規制もなされず、調査の対象者の秘密を利用した恐喝事件、違法な手段による調査、料金トラブル等の問題が指摘されていました。

 このような状況に鑑み、探偵業を営もうとする者の都道府県公安委員会への届出制、探偵業者の遵守事項、探偵業者に対する監督等について定めることを内容とする「探偵業の業務の適正化に関する法律」(平成18年法律第60号。以下「探偵業法」という。)が公布され、2007年6月に施行されました。これによって、探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、依頼者に対し、重要事項について書面を交付して説明しなければならず、また、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、重要事項について契約の内容を明らかにする書面を依頼者に交付しなければならないこととされ、探偵業務の依頼者の保護が図られました。

 2022年度においても、各都道府県警察は、探偵業法第8条の規定に基づく契約内容の書面交付が確実に実施され、探偵業務の依頼者の保護が図られるよう、各種講習会や立入検査等、様々な機会を捉えて探偵業者に対する指導を行い、さらには違反業者に対して検挙・行政処分を実施するなど、探偵業者に対する指導監督を継続的に実施しています。

チ 電気・ガスの小売供給に係る取引の適正化

 経済産業省では、電気及びガス小売全面自由化を受け、需要家への情報提供や契約の形態・内容等について、電気事業法及びガス事業法上問題となる行為を行っている事業者に対して指導等を行いました。

 さらに、電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口等に寄せられた不適切な営業活動等について、事実関係の確認や指導を行っています。

 また、ガスの経過措置料金が課されていない事業者に対する監視を行い、合理的でない値上げが認められた場合には、料金を是正するよう指導を行いました。電力・ガス取引監視等委員会、国民生活センター及び消費者庁が共同で、消費者から寄せられた小売全面自由化に関するトラブル事例やそれに対するアドバイスを公表するなどの取組を実施しています。加えて、電力・ガス取引監視等委員会は、電力契約を切り替えるための手続方法等の周知を行いました。

ツ チケット不正転売禁止法の適切な運用

 文化庁、消費者庁及びその他関係省庁では、興行入場券の適正な流通を確保するため、2019年6月に施行されたチケット不正転売禁止法の普及啓発を図っています。消費者保護のための対応として、ウェブサイト等による消費者等への情報提供や注意喚起を行うほか、関連する消費者からの相談に適切に対応できるようにするため、消費生活相談員向けの情報提供等を実施しています。

テ 賃貸集合住宅における入居前のLPガス料金情報の提示

 LPガス業界は、2017年に経済産業省が制定した「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」等に基づいて、標準料金の公表等によって、料金の透明化による取引の適正化に取り組んでいます。一方で、賃貸集合住宅においては、入居希望者が事前にLPガス料金を知る機会がなく、入居後に想定よりも高額なLPガス料金が請求される事例も発生しています。

 こうした問題の是正のため、国では、引き続き、LPガス事業者に対し、LPガス料金に設備費用等が含まれる場合はその旨を契約締結時に説明・契約書面へ明記すること及び入居希望者からの料金照会に対応することの必要性を周知するとともに、2021年6月には経済産業省、国土交通省からそれぞれの関係業界団体にLPガス料金の情報提供への協力依頼の通知を発出し、LPガス事業者から提供されたLPガス料金を賃貸集合住宅の家主や管理会社を経由して不動産仲介業者に提供し、不動産仲介業者が賃貸物件を入居希望者に紹介する際、その物件の情報とともにLPガス料金も提示するようにし、消費者に選択する機会を提供することで、消費者の保護を図っています。

 2022年度においても更なる取組の実施を進めるため、各地方でのLPガス事業者団体と消費者団体との懇談会(9回開催)でこれらの取組を紹介しました。そのほか、消費者団体や各地域のLPガス団体が主催した講演会等(10回開催)においても同様に取組を紹介し、周知を図りました。

(4)不当な表示を一般的に制限・禁止する景品表示法の厳正な運用及び執行体制の拡充

 景品表示法は、消費者にその商品・サービスについて実際のもの又は競争事業者のものより著しく優良又は有利であると誤認される表示を禁止しています。景品表示法に違反する行為があれば、事業者に対して、その行為の取りやめ、再発防止策の実施等を命令する行政処分(措置命令)等を行っており、消費者庁では、景品表示法の規定に基づく措置命令を2022年度に41件行いました。

 また、景品表示法に課徴金制度を導入することを内容とする「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律」(平成26年法律第118号)が、2016年4月に施行され、消費者庁では、景品表示法の規定に基づく課徴金納付命令を2022年度に17件行いました。

 なお、景品表示法については改正法の施行から一定の期間が経過したこと及びデジタル化の進展等の景品表示法を取り巻く社会環境の変化等を踏まえ、消費者利益の確保を図る観点から必要な措置について検討するため、2022年3月から景品表示法検討会を開催し、2023年1月に報告書が公表されました。

 消費者庁は、当該報告書等を踏まえて法案の検討を行い、2023年2月に事業者の自主的な取組を促進するための確約手続、繰り返し違反行為を行う事業者に対する課徴金の割増規定、悪質な事業者へ対応するための直罰規定、適格消費者団体が事業者に対し表示の合理的根拠の開示要請ができるとする規定を導入することを内容とする「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、第211回国会に提出されました。同法律案は5月10日に可決・成立し、5月17日に公布されました。

(5)商品やサービスに応じた表示の普及・改善

ア 家庭用品の品質表示の普及啓発、適正な運用及び見直し

 消費者庁では、家庭用品品質表示法の普及啓発のため、広報資料を地方公共団体等に対し配布するとともに、2022年度には、2件の講師派遣を行いました。

イ 住宅性能表示制度の普及促進及び評価方法の充実

 2000年4月に施行された住宅品確法の規定に基づき、住宅の性能を客観的に評価し表示する住宅性能表示制度が同年10月から開始されました。

 具体的には、耐震性、劣化対策、省エネルギー対策等、外見や簡単な間取り図からでは分かりにくい住宅の基本的な性能について共通ルールを定め、住宅の性能を等級や数値等で表示し、比較しやすくするものです。

 消費者庁及び国土交通省では、住宅品確法の規定に基づき定められている住宅性能表示制度の告示について、省エネルギー対策等に関して評価基準の充実等を目的とした改正を行い、2022年4月及び10月に施行されました。

ウ 省エネ性能表示の普及促進

 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(平成27年法律第53号)が2015年7月に公布され、表示制度が位置付けられました。同法第41条の規定に基づく省エネ基準適合認定マークや、同法第7条の規定に基づく省エネ性能表示のガイドラインに従った「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)」等の普及促進を図っています。2022年6月には、「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第69号)が成立し、表示制度が強化されることとなりました。

エ 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律に基づく指定建物錠の性能表示の適正な運用

 「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」(平成15年法律第65号)第7条の規定に基づく国家公安委員会告示では、建物錠のうち、防犯性能の向上を図ることが特に必要な指定建物錠について、その防犯性能等を表示すべき事項として定めており、警察庁では、随時、指定建物錠の性能表示について、検証を実施しています。

 また、警察庁、国土交通省、経済産業省及び建物部品関連の民間団体から構成される「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」では、防犯性能の高い建物部品(錠、ドア、ガラス、サッシ等)の開発を促進すると同時に、同部品の目録を作成の上、公表しており、消費者が防犯性能によって建物部品を選択できるようになっています(目録掲載数:17種類3,461品目(2023年3月29日時点))。

 なお、指定建物錠や防犯性能の高い建物部品に関する情報は、警察庁の侵入犯罪防止対策ウェブサイト「住まいる防犯110番」や関係団体のウェブサイトに掲載するなどして消費者に提供しています。

オ 医療機関のウェブサイトによる情報提供

 医療機関に関する広告規制等の在り方について、2016年に取りまとめ、第193回国会で「医療法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第57号)が成立しました。同法の成立後、施行に向け、「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」等における議論を踏まえ、省令等を改正(平成30年5月8日公布、同年6月1日施行)し、併せて「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」を策定しました。

 2022年度には、医療機関等のウェブサイトの適正化を推進するためのネットパトロール事業を行ったほか、関係者へ配布可能な医療広告規制における事例解説書の作成を進めました。

 このほか、美容医療サービスを受けるに当たって注意すべき事項等について周知するため、行政のTwitter等を活用し、注意喚起や普及啓発を行っています。

(6)食品表示による適正な情報提供及び関係法令の厳正な運用

ア 食品表示制度の適切な運用等

 2022年度は、原料原産地表示制度、遺伝子組換え表示制度及び食物アレルギー表示制度を含む食品表示制度全般について、講習会等を通じて事業者に周知を図るとともに、消費者団体と連携した消費者向けセミナーを全国8か所で実施しました。また、2023年度に施行を迎えた遺伝子組換え表示制度については、地方公共団体や消費者・事業者団体等と連携して、消費者・事業者を対象とした説明会を7回実施しました。

 食品添加物の表示については、2020年3月に取りまとめた「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」を踏まえ、いわゆる無添加表示における、「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示に関する「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を作成・公表しており、併せて消費者向けの啓発チラシ・ポスターも公表しました。

 栄養成分表示の活用を通じた健康づくりの普及啓発動画をウェブサイトで公開するとともに、新たに保健機能食品の理解促進を図る動画を作成しました。

 外食・中食における食物アレルギーに関する取組について、「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」の2021年度改正において、国は事業者等が行う情報提供等に関する取組等を積極的に推進する旨が追加されたことを踏まえ、2022年度に消費者及び事業者向けのパンフレットを作成しました。

 食物アレルギー表示については、2022年12月に消費者委員会からの答申を得て、「くるみ」を食品表示基準において義務表示の対象とされる「特定原材料」に移行させるため、2023年3月に食品表示基準の改正を行いました。なお、当該改正については、2025年3月31日までの約2年間の経過措置が設けられています。

 機能性表示食品及び特別用途食品(特定保健用食品を含む。)については、買上調査を実施し、関与成分等が表示量どおり含有されているかの確認及び検証を行い、各表示の信頼性確保に努めました。機能性表示食品については5,995件の届出を公表し、特別用途食品(特定保健用食品を除く。)については97件、特定保健用食品については1,064件の表示許可を行っています(2023年3月31日時点)。特定保健用食品制度の疾病リスク低減表示については、前年度の調査事業の結果を基に基準の見直し等に関する通知改正を行うとともに、個別申請を支援し、消費者委員会に安全性及び効果について諮問しました。栄養機能食品については、栄養成分の機能表示等に関する調査・検討事業報告書を公表し、20種の栄養成分の機能に関する文言を、最新の科学的根拠を確認した上で、見直しを整理する方針を示しました。

 また、ウェブを用いた食品表示情報の提供の現状把握を行うために、「食品表示の全体像に関する報告書」で求められているウェブでの補助的情報提供の優良事例に関する調査を実施しました。さらに、分かりやすく活用される食品表示の検討を行うため、デジタルツールを活用した食品表示の可能性を検討するための調査を実施しました。

 インターネット販売における食品に関する情報提供については、2022年6月に「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック」を公表しました。

 農林水産省では、加工食品の原料原産地表示制度が確実に定着するよう、引き続き、同制度を分かりやすく解説したマニュアル(2017年度作成)や同マニュアルを活用した動画(2020年度作成)による情報提供を行いました。

イ 健康食品も含めた食品の表示・広告の適正化

 消費者庁では、食品の機能性等を表示する制度に関し、健康食品も含めた食品の表示・広告について、執行体制の整備も含め、関係機関と連携して監視を強化し、法令違反に関しては厳正に対処するとともに、健康食品に関する留意事項の周知徹底を行うことにより、表示・広告の適正化を図っています。

 インターネット等における健康食品等の虚偽・誇大表示に対する監視を通じて、健康増進法に違反するおそれのある表示に対し、2022年度には804事業者の810商品について改善指導を行いました。なお、改善指導を行った表示については、全ての表示が改善されていることを確認しています。

 また、事業者等に対しては、講習会等の機会を通して、健康食品の広告その他の表示の適正化を推進するとともに、留意すべき事項を示すリーフレットを配布するなど周知・啓発活動を行いました。

ウ 関係機関の連携による食品表示の監視・取締り

 食品表示に関する取締りに関しては、不適切な食品表示に関する監視を強化するため、関係省庁の間で「食品表示連絡会議」が設置されました。同会議は、不適正な食品表示に関する情報が寄せられた場合に、必要に応じて関係機関で情報共有、意見交換を行い、事業者への処分等の必要な対応を迅速に講ずるとともに、関連情報の共有を進めることを目的とし、2008年2月から、2023年3月までに15回開催されました。

 また、食品表示法違反に対し、国及び都道府県等が指示又は命令を行った場合は公表しており、2022年度には指示34件を行いました。

 これを受け、農産物、畜産物及び水産物の生産、流通及び販売に携わる多岐にわたる業界団体並びに都道府県の農産物、畜産物、特用林産物及び水産物の担当課長に対して、今一度、取り扱う生鮮食品の原産地表示の確認を徹底するとともに、食品表示法を始めとする表示関係法令の遵守の意識の浸透の徹底を促す通知を、2023年1月に発出しました。

 農林水産省では、食品表示110番等を通じた情報収集を行うとともに、食品事業者に対する巡回調査を実施しました。

 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)及び民間分析機関では、品種判別や産地判別等に関する科学的分析を実施し、その結果を食品表示の監視・取締りに活用しています。

 警察庁では、都道府県警察に対して、関係機関と連携した情報収集及び食品表示に対する国民の信頼を揺るがす事犯について、地方の出先機関と連携した取締りの推進について指示し、2022年中は、食品の産地等偽装表示事犯を4事件14人検挙しています。

エ 米穀等の産地情報の伝達の適正化

 米穀等については、米トレーサビリティ法の規定に基づき、それらを一般消費者や取引先に販売する米穀事業者に対して、米穀及び原材料米穀の産地情報を伝達することが義務付けられています。

 こうした中、農林水産省や国税庁及び都道府県等の関係行政機関が連携して、米穀事業者に対する立入検査等を実施し、その結果に基づいて厳正に措置を行っています。

 また、農林水産省では、米トレーサビリティ法違反に関する指導件数等を取りまとめ、公表しています。産地情報伝達に関する指導件数は、2022年度上半期においては8件となっています。

 消費者庁も、農林水産省、地方公共団体と連携した調査が実施できる体制を整え、米トレーサビリティ法違反に対しては厳正に対処することとしています。

(7)詐欺等の犯罪の未然防止、取締り

ア 「オレオレ詐欺等対策プラン」の推進による特殊詐欺の取締り、被害防止の推進

 2019年6月に開催された犯罪対策閣僚会議において、架空料金請求や金融商品を含む特殊詐欺等から高齢者を守るための総合対策として「オレオレ詐欺等対策プラン」が決定され、警察庁を始めとする各省庁は以下の取組を推進しています。

(ア)被害防止対策の推進

 幅広い世代に対し高い発信力を有する著名な方々によって結成された「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(略称:SOS47)と連携し、各地方公共団体、経済団体等各種団体、民間事業者等の幅広い協力も得ながら、多様な媒体を活用して、特殊詐欺の被害防止に取り組むよう広報啓発活動を展開しています。また、留守番電話機能の活用等の促進、金融機関・コンビニエンスストア・宅配事業者等と連携した被害の未然防止等の取組を推進しています。

(イ)犯行ツール対策の推進

 携帯電話や預貯金口座を売買するなどの特殊詐欺を助長する行為について取締りに当たるとともに、携帯音声通信事業者に対する犯行に利用された携帯電話の契約者確認の求め、金融機関に対する振込先指定口座の凍結依頼等のほか、特殊詐欺の犯行に利用された電話番号を警察の要請に基づき、主要な電気通信事業者が利用停止するなどの犯行ツール対策を推進しています。

(ウ)効果的な取締り等の推進

 だまされた振り作戦、架け場等の摘発、上位者への突き上げ捜査といったこれまでの取組に加えて、特殊詐欺事件の背後にいるとみられる暴力団、準暴力団等に対する多角的な取締りを推進しています。

 なお、2022年の特殊詐欺の取締り状況は、特殊詐欺全体の検挙件数が6,629件(前年比29件増)であり、このうち架空料金請求詐欺の検挙件数が179件(前年比72件減)、金融商品詐欺の検挙件数が6件(前年比4件減)となっています(暫定値)。

 金融庁では、預金口座の不正利用に関する情報について、情報入手先から同意を得ている場合には、明らかに信憑性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている金融機関及び警察当局への情報提供を速やかに実施することとしており、情報提供件数等を金融庁ウェブサイトにおいて公表しています。

イ 「架空請求対策パッケージ」の推進等による被害防止

 全国の消費生活センター等に寄せられた架空料金請求に関する消費生活相談の件数が増加したことを踏まえ策定された「架空請求対策パッケージ」(2018年7月消費者政策会議決定)に基づき、以下の取組を推進しています。

 ・悪質事業者から消費者への接触防止のための取組

 ・消費者から悪質事業者への連絡防止のための取組

 ・消費者による悪質事業者への支払の防止のための取組

 消費者庁では、2022年度、消費者庁LINE公式アカウント「消費者庁 若者ナビ!」において、架空請求に関する注意喚起を実施しました。

ウ 被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の取締りの推進

 警察庁では、悪質商法事犯(利殖勧誘事犯及び特定商取引等事犯)については、多大な被害をもたらすものであることから、いわゆる販売預託商法や若年層を対象とした事犯を含め、悪質商法事犯の早期把握に努めるとともに、悪質商法に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供や広域事犯に対応するための合同・共同捜査の推進等による早期事件化によって、被害の拡大防止を図ることとしています。

 なお、2022年中は、利殖勧誘事犯を37事件106人、特定商取引等事犯を111事件251人検挙しています。

エ 生活経済事犯に係る被害拡大防止に向けた犯行ツール対策の推進

 警察庁では、犯罪の予防及び被害拡大防止を図るため、生活経済事犯に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯電話契約者確認の求め及び役務提供拒否に関する情報提供、契約条項に基づくレンタル携帯電話契約の解約要請等の犯行ツール対策を推進しています。

 なお、2022年中は、生活経済事犯に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供を9,665件、携帯電話契約者確認の求めを1,145件行いました。

オ 偽造キャッシュカード等による被害の拡大防止等への対策の推進

 金融庁では、偽造キャッシュカード等による被害発生状況や金融機関による補償状況を、金融庁ウェブサイトにおいて公表しています。また、預金取扱金融機関を対象として、「偽造キャッシュカード問題等に対する対応状況」に関するアンケート調査を実施し、金融庁ウェブサイトにおいて2022年11月に公表しました。

 また、金融庁、警察庁では、インターネットバンキングを悪用した被害の防止等に向けた金融機関への注意喚起を実施しています。

カ ヤミ金融事犯の取締りの推進

 ヤミ金融事犯(注75)について、警察庁では、都道府県に対して、当該事犯の徹底した取締りのほか、ヤミ金融に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め及び役務提供拒否に関する情報提供、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等による、被害予防の推進を指示しています。

 なお、2022年中は、ヤミ金融事犯を627事件708人検挙しています。

キ フィッシング対策の推進

 警察庁では、フィッシングに関し、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(平成11年法律第128号。以下「不正アクセス禁止法」という。)違反等の取締りを推進しています。また、広報啓発活動や関係事業者等への情報提供等を通じ、フィッシング被害防止対策を推進しています。2022年度は8月下旬から9月にかけて急増したフィッシングによるものとみられるインターネットバンキングに関する不正送金被害について、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)と連携して国民に対する注意喚起を実施しました。また、フィッシングサイトへ誘導するSMSを遮断するため、JC3で観測したフィッシングサイトの情報を通信事業者へ提供する取組を推進しました。

 なお、2022年中の不正アクセス禁止法を適用したフィッシング行為の検挙件数は2件でした。

 経済産業省では、一般社団法人JPCERTコーディネーションセンターやフィッシング対策協議会を通じて、フィッシングの疑いのある電子メール及びウェブサイト等に関する情報収集・分析を行い、同法人及び同協議会のウェブサイト等で、フィッシングに関する情報発信や注意喚起等の情報提供を実施しています。

 総務省では、フィッシング対策にも有効な技術的対策の一つとして、受信者が受け取った電子メールについて、関係省庁とともに当該電子メールが送信者になりすましているか否かを確認可能とする「送信ドメイン認証技術」の普及促進に取り組んでおり、迷惑メール対策の推進に資することを目的として設立された迷惑メール対策推進協議会と連携し、「送信ドメイン認証技術導入マニュアル」を策定し、公表(2021年9月に第3版を公表、2023年2月に更新版の第3.1版を公表)しています。

ク ウイルス対策ソフト等を活用した被害拡大防止対策

 警察庁では、各都道府県警察等から集約した、海外のサーバに設置されたフィッシングサイト、偽サイト等(以下「海外偽サイト等」という。)に関するURL情報等を、ウイルス対策ソフト事業者等に提供し、当該サイトを閲覧しようとする利用者のコンピュータ画面に警告表示を行うなどの対策を推進しています。

 また、海外偽サイト等に関するURL情報等を、フィッシング対策等を推進する国際的な団体であるフィッシング対策ワーキンググループ(APWG)に対して提供しています。

ケ インターネットオークションに係る犯罪の取締り

 警察庁では、インターネットオークションに関する犯罪の取締りを推進しており、2022年中のインターネットオークション詐欺に関する検挙件数は67件となっています。

コ 模倣品被害の防止

 特許庁では、「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」に寄せられる消費者等からの情報について、関係省庁及び主要なインターネット通販サイト運営者等に定期的に共有しています。

 警察庁では、都道府県警察に対して、インターネット利用の偽ブランド事犯等の取締りの推進を指示しています。また、関係する機関・団体が構成する不正商品対策協議会が開催する「ほんと?ホント!フェア」を支援するなど、関係者と連携した広報啓発活動を行いました。

 なお、2022年中は、商標権侵害事犯を264事件289人、著作権侵害事犯を130事件141人検挙しています。

 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権、育成者権を侵害する物品及び「不正競争防止法」(平成5年法律第47号)の規定に違反する物品(知的財産侵害物品)は、「関税法」(昭和29年法律第61号)の規定において輸出又は輸入してはならない貨物と定められており、税関で取締りを行っています。2022年の全国の税関における知的財産侵害物品の差止状況は、輸入差止件数が2万6942件、輸入差止点数が88万2647点となっています。

 農林水産省では、アジア、ヨーロッパの主要国における日本の農林水産物・食品の産地偽装・模倣品に関する現地調査等を実施しているほか、広告等における地理的表示(GI)の使用やGI産品と誤認させるおそれのある表示等を規制対象とするとともに、日EU・EPA及び日英EPAに基づき、日本とEU及び英国との間でのGI産品の相互保護を行っています。

 消費者庁では、模倣品被害についての対策を行っています。2022年度は、模倣品を扱っている可能性のあるインターネット通販サイト2件について、特定商取引法の遵守状況を調査し、うち2件に改善指導を実施しました。

 また、海外著名ファッションブランドの権利者等からの情報提供を受け、模倣品販売が確認されたサイト等に関する情報について、消費者庁ウェブサイトにおいて公表し、消費者に対する注意喚起を実施しています。

サ 振り込め詐欺救済法に基づく被害者の救済支援等

 振り込め詐欺等の被害者に対する救済支援等については、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(平成19年法律第133号)の規定に基づき、被害者への返金制度等の周知徹底を図るとともに、「被害が疑われる者」に対する金融機関による積極的な連絡等の取組を促すこととされています。

 2022年度は、被害者への返金制度について、インターネット等による広報活動を通じて国民に周知を行うとともに、金融庁のウェブサイトに制度の概要等を引き続き掲載しました。また、「被害が疑われる者」に対する金融機関による積極的な連絡等の取組を促しました。

 これらの取組によって、制度開始(2008年6月)以降の被害者への返金額の累計額は、約205億円(2023年3月28日時点)となっています。

(8)計量・規格の適正化

ア JIS等の国内・国際標準化施策の実施

 経済産業省では、2022年度も消費者への標準化(注76)知識の普及啓発及び消費者の日本産業規格(JIS)開発審議への効率的な参加の促進のために、同省委託事業として、「消費者のための標準化セミナー」を全国で計21回開催しました。

 また、消費生活技術専門委員会等、21種類の委員会を計61回開催しました。

イ 新たなJASの検討及び国際標準化施策の推進

 農林水産省では、農林水産物・食品の品質だけでなく、事業者による農林物資の取扱方法、生産方法、試験方法等についても認証する新たな日本農林規格(JAS)を推進しており、2022年度には、ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の日本農林規格等の5規格が新たに制定されています。

 また、災害食の品質、安全性、保存性、喫食者の分類等の条件を国際標準化機構(ISO)に提案する取組を支援するとともに、2021年に発足した産学官連携による災害食ISO委員会に積極的に参画しました。さらに、ベトナム等との二国間連携による有機JAS認証の体制整備の支援、ASEAN諸国の大学での寄附講座によって、JASの海外への浸透・定着を図りました。

(9)公正自由な競争の促進と公共料金の適正性の確保

ア 競争政策の強力な実施のための各種対応

 公正取引委員会では、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)の違反行為について、2022年度に延べ29事業者に対して8件の排除措置命令を行うとともに、延べ21事業者に課徴金納付命令を行いました。また、独占禁止法の違反被疑行為について、4事業者に対して確約計画の認定を行いました。

 加えて、306件の届出のあった企業結合計画について、迅速かつ的確に審査を行いました。

イ 公共料金等の決定過程の透明性及び料金の適正性の確保

 消費者庁では、公共料金の新規設定や変更に関する認可等について、事前に所管省庁と協議を行うとともに、重要なものについては、消費者委員会で審議した上で、「物価問題に関する関係閣僚会議」へ付議しています。

 消費者庁は、一般乗用旅客自動車運送事業(東京特別区・武三(武蔵野市・三鷹市)地区)の運賃改定案について、2022年8月に消費者委員会へ付議を行いました。

 消費者委員会では、消費者庁からの付議を受けて、「公共料金等専門調査会」を開催し検討を行い、同年9月に意見表明を行いました。

 この意見を踏まえ、消費者庁及び国土交通省は、同年10月に「物価問題に関する関係閣僚会議」に付議し、同閣僚会議において当該運賃改定が決定されました。

 2022年11月及び2023年1月には、電力会社7社が電気の規制料金の改定申請を行い、経済産業省において審査された上で、同年4月、消費者庁に協議が行われました。消費者庁から消費者委員会に付議し、意見を得た後、5月に消費者庁及び経済産業省は、「物価問題に関する関係閣僚会議」に付議し、同閣僚会議において査定方針が決定されました。

 このほか、公共交通15件等、計24件の公共料金等の改定等について、所管省庁において審査された上で、消費者庁で協議を受け、回答しました。電気料金のうち託送料金については、2023年度からレベニューキャップ制度が導入される予定であることから、2022年7月以降、経済産業省において一般送配電事業者が提出した事業計画の検証が行われてきました。消費者庁は、これらが消費者の視点から見て妥当なものになっているか、同年10月に消費者委員会へ諮問を行いました。消費者委員会では、公共料金等専門調査会を計3回開催した上で、同年11月に答申を行い、消費者庁は、本答申を踏まえ、同月に経済産業省へ電力託送料金の妥当性に関する意見を提出しました。その後、経済産業省において当該意見に対する検討・検証作業がされましたが、疑問点の全てが解消されたわけではなかったことから、2023年1月に、経済産業省へ託送料金の妥当性に関する疑問点の解消に向けて引き続き検討を求めました。

 経済産業省では、電力及び都市ガスの小売全面自由化の進展を踏まえ、電気・ガス契約に関する消費者向けのQ&A集の作成等周知・広報に取り組みました。

 経済産業省では、経過措置が講じられている電気の小売規制料金については、原価算定期間終了後に毎年度事後評価を行い、その結果を公表することとしています。

 また、電力・ガス取引監視等委員会において、電力託送料金に関して、一般送配電事業者の収支状況(託送収支)について、定期的に事後評価をしています。2021年度実績分については、2023年2月に一般送配電事業者の収支状況(託送収支)の事後評価を行い、超過利潤累積額や実績単価の想定単価からの乖離率等について確認・評価しました。

(10)情報通信技術の活用拡大と消費者被害の防止の両立

ア 特定商取引法の通信販売での不法行為への対応

 特定商取引法の通信販売については、不適切な広告等を行っている通信販売業者に対し、2022年度は668件の改善指導を実施したほか、違法行為が認められた通信販売業者に対しては、特定商取引法の規定に基づき、厳正かつ適切に行政処分等を行いました。

 また、執行を補完する取組として、ISP(注77)等に対し、ウェブサイトの削除等を促しています。

イ 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律に基づく行政処分等の実施

 総務省及び消費者庁では、行政処分や行政指導の実施によって、特定電子メール法に違反する特定電子メールに起因した消費者被害を削減することとしています。

 2022年度は、同法に違反したことが疑われる送信者に対する警告メール(行政指導)を約7,200件送信しました。

ウ 迷惑メール追放支援プロジェクトの実施

 総務省では、民間事業者等と連携し、調査端末で受信した迷惑メールの違法性を確認し、当該メールに関する情報を送信元プロバイダに通知することによって、迷惑メール送信回線の利用停止措置等の円滑な実施を促しています。

 2022年度は、違法性が確認されたメール約6,000件に関する情報を送信元プロバイダに通知しました。

エ インターネット上の消費者トラブルの動向等の把握

 消費者庁では、インターネット消費者トラブル等の動向を把握するため、「インターネット消費者取引連絡会」を開催しています。2022年度は、同連絡会を通じて、「NFT」、「キャッシュレス決済」、「クリエイターエコノミー関連サービス」をテーマとした調査研究を実施しました。

オ 電気通信サービス・移動通信サービス(携帯電話)における広告表示等の適正化

 総務省では、「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準・ガイドライン」を踏まえ、適切な広告表示がなされるよう関係事業者における取組を注視するとともに、行政として必要に応じた対応を行うこととしています。「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」を開催し、引き続きフォローアップを行っています。

 また、消費者が自身に合った料金プランを選ぶ際の参考となるよう、総務省では、2022年4月に「携帯電話ポータルサイト」の大幅拡充を行いました。

カ 電子商取引環境整備に資するルール整備

 経済産業省の「電子商取引に関する市場調査(注78)」によれば、2021年の日本国内のBtoC電子商取引の市場規模は、20.7兆円(前年19.3兆円、前年比7.35%増)に増加しました。

 経済産業省では、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」について、今後も産業界や消費者等のニーズ等を考慮し、必要に応じて改訂を行います。なお、直近では2022年4月に改訂を行いました。

キ 個人情報保護法の適切な運用

 2015年9月に「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律」(平成27年法律第65号)が公布され、これを受けて、2016年1月に個人情報保護委員会が設置、2017年5月に同改正法が全面施行されました。

 これに伴い、各主務大臣が行使していた監督権限を個人情報保護委員会が一元的に所掌することとなりました。

 また、2020年6月に「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」(令和2年法律第44号。以下「令和2年改正法」という。)が公布され、2022年4月に施行されたことを受け、個人情報保護委員会では、令和2年改正法の円滑かつ適切な施行及び運用のため、事業者等に対して随時説明会等を実施したほか、各種広報資料の作成・公表等、幅広く周知広報を行いました。

 2022年4月に「個人情報の保護に関する基本方針」(平成16年4月閣議決定。以後随時改訂)の一部変更案が閣議決定されたほか、同年5月に「個人情報等の適正な取扱いに関係する政策の基本原則」を策定したことに伴い、各省庁への周知を行いました。

 事業者団体主催の説明会への講師派遣等(2023年3月31日時点で計141回)、小学生を対象としたSNSやオンラインゲーム等を利用する際の個人情報の適正な取扱い方を伝える出前授業(2023年3月31日時点で計4回)、国民向けに令和2年改正法を周知するパンフレット及びリテラシー向上を目的とした動画等の作成・公表、個人情報保護の重要性について広く国民に周知する「個人情報を考える週間」の設定(2022年5月30日から6月5日まで)等の広報・啓発を実施しました。また、個人情報保護委員会ウェブサイトに掲載された新着情報及び活動情報等については個人情報保護委員会Twitterを用いて、積極的に情報発信しました。

 個人情報保護委員会及び各認定個人情報保護団体(以下「認定団体」という。)間の情報共有等の場である認定団体連絡会(2023年3月31日時点で計1回)及び認定団体の対象事業者向け実務研修会(2023年3月31日時点で計10回)を開催しました。また、セミナーを開催し、認定団体制度を通じた民間の自主的取組の推進の重要性について対外発信しました。そのほか、各認定団体が主催する令和2年改正法等に関する説明会へ講師派遣(2023年3月31日時点で計5回)を行いました。

 個人情報保護法相談ダイヤルに加え、PPCビジネスサポートデスク(注79)等を通じ、個人情報等の適正かつ効果的な活用に関する相談に対応しました。

 加えて、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第58号)、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第59号)を個人情報保護法に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度についても統合後の同法において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化すること等を内容とする改正を含む「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第37号)が2021年5月に公布され、一部が2022年4月に施行されました。また、2023年4月の全面施行に向けては、2022年4月に「個人情報の保護に関する法律施行令等の一部を改正する政令」(令和4年政令第177号)及び「個人情報の保護に関する法律施行規則の一部を改正する規則」(令和4年個人情報保護委員会規則第4号)が公布されました。さらに、具体的な指針としてのガイドライン等についても、同月に「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)」、「個人情報の保護に関する法律についての事務対応ガイド(行政機関等向け)」及び「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)」の改正を行いました。また、改正後の個人情報保護法についての解釈や、同法の規定に基づき定める条例案の内容等に関する各地方公共団体からの照会への対応を行ったほか、各種通知等の発出や全都道府県、全市区町村、全一部事務組合・広域連合及び全地方独立行政法人を対象とした説明会(2023年3月31日時点で計8回)の開催、都道府県等が主催する説明会等への講師派遣(2023年3月31日時点で計16回)を通じ、改正後の個人情報保護法に関する情報提供を幅広く行いました。

ク マイナンバー制度の周知と適正な運用等

 マイナンバー制度に便乗した不正な勧誘や個人情報の取得への注意喚起のため、関係省庁等が共同で作成・公表した資料の更新・周知を引き続き進めるとともに、当該制度に関する周知・広報を実施しています。マイナンバーカードの利便性や安全性等について、YouTubeやデジタルサイネージ、SNS及びリーフレット配布によって、周知・広報を実施しています。


  • (注72)Alternative Dispute Resolutionの略。消費者トラブルが生じた場合、紛争解決の方法として裁判があるが、一般的には時間と費用が掛かる。このため、厳格な裁判によらずに当事者の合意に基づいて迅速かつ簡便に紛争解決する方法としてADRがある。
  • (注73)法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるもの。
  • (注74)寄附が「消費者契約(消費者と事業者との間で締結される契約)」に該当する場合は除く(消費者契約法に規定する不当な勧誘があった場合には、消費者契約法の規定に基づく取消しが可能である。)。
  • (注75)貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利等)に関する事犯及び貸金業に関連した「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年法律第22号)違反、詐欺、「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」(平成17年法律第31号)違反等に関する事犯。
  • (注76)標準化とは、様々な事象を統一化すること。例えば、乾電池や紙のサイズの標準化のように、標準化は日常生活の利便性向上に寄与しているが、日頃から標準化を気にすることはないことから、日常生活と標準化との関わりについて経済産業省は普及啓発を行っている。
  • (注77)ISPとは、インターネットサービスプロバイダ(Internet Service Provider)の略。
  • (注78)経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
  • (注79)事業者が行う新技術を用いた新たなビジネスモデル等における個人情報保護法上の留意事項について、相談を受け付けている。

担当:参事官(調査研究・国際担当)