第2部 第1章 第6節 (1)地方における体制整備
第2部 消費者政策の実施の状況
第1章 消費者庁の主な消費者政策
第6節 消費者行政を推進するための体制整備
(1)地方における体制整備
地方消費者行政の充実・強化に向けた取組
消費者行政の現場は「地域」にあり、地方消費者行政の充実・強化は消費者政策の推進における最重要課題の一つです。
2020年4月には第4期消費者基本計画の閣議決定を受け、「地方消費者行政強化作戦2020」を策定しました。同強化作戦では消費生活相談体制の強化や質の向上、高齢者等の消費者被害防止のための見守り活動の充実についての目標のほか、持続可能な社会の実現に向け、「消費者志向経営の普及・推進」や「エシカル消費の推進」、「食品ロス削減の取組の推進」等の目標も掲げています。同強化作戦の対象期間は2020年度から2024年度までの5年間です。その推進のため、地方公共団体の自主財源に裏付けられた計画的かつ安定的な取組を促すとともに、地方消費者行政強化交付金を通じた財政面での支援に取り組んでいます。
地方消費者行政強化作戦2020
URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/#strengthening_strategy
支援を進めるに当たって、消費者庁は消費者行政ブロック会議における地方公共団体等との意見交換に加え、首長等へ直接的に働き掛ける「地方消費者行政強化キャラバン」を実施しており、地方消費者行政の重要性及び課題等について認識の共有を図っています。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や社会のデジタル化に対応し、消費者が相談しやすい環境の整備や、相談現場における負担軽減等の課題を克服するため、消費生活相談のデジタル化に向けた取組を実施しています。具体的には、地方公共団体におけるオンライン相談等の取組を支援するほか、消費者庁及び国民生活センターにおいて、2022年6月に「消費生活相談デジタル・トランスフォーメーションアクションプラン2022」を公表し、消費生活相談のデジタル化やこれによる業務体制の整備について、目指す将来像とそれに向けた作業の進め方の計画を示しました。また、地方公共団体との意見交換を実施するとともに、2021年度に引き続き「消費生活相談デジタル化アドバイザリーボード」を開催して、消費生活相談の現場や有識者からの意見・知見を聴取し、消費生活相談のデジタル化の具体化に向けた検討を進めました。
消費生活相談デジタル・トランスフォーメーションアクションプラン2022(2022年6月)
URL:https://www.kokusen.go.jp/hello/pdf/dx_actionplan2022.pdf
このほか、民間事業者等をプラットフォームとして、新たな行政手法を構築し、地方のモデルとなる事業を創出することを目的とした「地方消費者行政に関する先進的モデル事業」も2020年度から実施しており、本事業では、大規模イベント会場における食品ロス削減等が行われており、優良事例の全国的な横展開を図ることとしています。
消費生活相談員の業務環境の改善
消費生活相談員は、地方の消費生活センター等の現場において消費者からの相談等に直接対応するなど、地方消費者行政の最前線で重要な役割を担っています。こうした消費生活相談員の能力や経験に見合うような処遇となることが必要であるところ、消費者庁は、地方消費者行政推進交付金を通じた消費生活相談員の配置・増員、質の向上、キャリアアップ等の取組の支援や、「雇止め」の防止の取組等、消費生活相談員の処遇改善に取り組んできました。これに加え、2020年度からは、消費生活相談員を育成するための担い手確保事業を実施しているほか、キャリアアップやメンタルケア支援等、消費生活相談員がその力を発揮できる環境の整備に取り組んでいます。
「地方消費者行政の現況調査」(調査時点2022年4月1日)によると、全国の消費生活センターの設置自治体数は増加した一方、消費生活センター等に配置されている消費生活相談員数は小幅に減少しました。消費者庁では、相談員の担い手の確保も含め、地域における相談体制の充実・強化に取り組みます。
令和4年度地方消費者行政の現況調査(2022年10月27日)
URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/status_investigation/2022/
消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)の設置等の促進
高齢者等の消費者被害の更なる増加や深刻化が懸念される中で、高齢者等を見守る地域の様々な主体が消費生活上の安全に気を配り、何かあったときに消費生活センター等につなぐ体制の構築が消費者被害の防止に有効です。
消費者安全法により、地方公共団体は地域で活動する多様な主体を構成員とした消費者安全確保地域協議会を設置し、消費生活上、特に配慮を要する消費者の見守り等の取組を行うことができることとされており、全国で消費者安全確保地域協議会を設置している地方公共団体の数は、2023年3月31日時点で446となっています(第1部第2章第2節参照。)。
消費者庁は、地方消費者行政強化交付金による支援等に加え、地方の現場に対する直接の働き掛けを行うことにより、地域における消費者安全確保地域協議会の設置を促進しています。また、より効果的な見守り活動を実現するため、2022年度には、地方消費者行政に関する先進的モデル事業として「高齢者、障害者等を見守るネットワークの構築及び地域活性化の実証」を実施し、消費者被害の未然防止や被害救済に資する見守りネットワークの構築・活性化を図るとともに、関係団体間の連携や必要な資材の開発等を行い、取組の検証を行いました(第1部第2章第2節参照(注52)。)。
2020年度からは、地域における見守り活動の担い手となる消費生活協力員等を養成する事業にも取り組んでおり、2022年度には群馬県伊勢崎市等において対面講座を実施したほか、オンラインでの講座を複数回実施しました。
また、新未来創造戦略本部のモデルプロジェクトとして、2022年度も2021年度に引き続き、徳島県及び県下市町村の消費者安全確保地域協議会における情報共有の在り方を検証する取組等を実施しました(第1部第2章第2節参照(注53)。)。
【KPI】
消費者安全確保地域協議会設置市区町村の都道府県内人口カバー率
(目標)
消費者安全確保地域協議会設置市区町村の都道府県内人口カバー率50%以上
【進捗】
2022年度:16都道府県で達成
消費者ホットラインの運用・周知
消費生活センター等の連絡先を知らない消費者に近くの消費生活センターを案内することにより、消費生活相談の最初の一歩をお手伝いするため、消費者庁では、誰もがアクセスしやすい一元的な相談ダイヤルとして「消費者ホットライン(188)」を整備しています。「消費者ホットライン(188)」の認知度向上のため、イメージキャラクター「イヤヤン」を活用し、PR動画の作成や、広告配信、啓発チラシ・ポスターの作成・配布を実施するなど、積極的に周知活動に取り組んでいます。2022年度は、「消費者ホットライン(188)」の認知度が比較的低い北陸・東海エリアにおいて、テレビ広告を配信したほか、地域の消費生活センター等と連携してPR動画を作成し、SNS等で発信するなど、様々なメディアを用いた広報活動を展開しました(図表Ⅱ-1-6-1)。
霊感商法等の悪質商法対策に向けた消費生活相談の対応強化等
2022年度は、いわゆる霊感商法等の悪質商法への対策の強化が求められる中、地方消費者行政における消費生活相談の重要性が改めて認識されることとなりました。こうした点も踏まえ、令和4年度補正予算(第2号)では30億円を確保し、霊感商法を含めた悪質商法への対策の充実や被害者救済の観点から、地方公共団体の取組強化に向けた支援や国民生活センターの機能強化等を進めてきました。
具体的には、地方消費者行政強化交付金において、いわゆる霊感商法等の悪質商法に対する地方の取組を重点的に支援するための事業メニュー(5億円、補助率10/10)を創設するなど、事業メニューを拡充しました。また、国民生活センターにおいて、裁判外紛争解決手続(ADR)や消費生活相談のデジタル化を通じた対応能力の強化、地方の相談員に向けたオンライン研修、国民生活センターの相談員の体制強化も進めています。
担当:参事官(調査研究・国際担当)