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第1部 第2章 第3節 (4)第3節のまとめ

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組

第3節 高齢者の社会貢献活動への参画の促進

(4)第3節のまとめ

 「令和4年度消費生活意識調査」の結果からは、食品ロス削減や、サステナブルファッション等のエシカル消費につながる取組は、高齢者の方が活発に取り組んでいる様子がうかがえました。一方で、エシカル消費という言葉は知らない人の割合が高いことも分かりました。消費者教育の推進により、こうした言葉や考え方を浸透させていくことで、自身の行動が環境問題や社会課題の解決につながることを認識できれば、身近な取組が更に活発化することが期待できます。また、サステナブルファッションや食品ロス削減等について、取組状況を見たところ、年齢層により取組状況に違いがあることが分かりました。このことから、エシカル消費を推進していく上では、このような世代による違いを踏まえて行っていくことも重要であると考えられます。

 「消費者意識基本調査」(2022年度)の結果から、ボランティア活動や社会貢献活動にも、高齢者の方が参加していることや、参加状況は75歳以上でも大きく低下しないことが分かりました。また、周囲や社会に対する貢献意識を持つ高齢者も多くいます。こうした結果は、ボランティア活動や社会貢献活動において高齢者が重要な担い手となっていることを示唆しています。そして、その重要性は、高齢化が進展する中で一段と増していくと考えられます。また、内閣府の調査結果からは、このような社会貢献活動を含めた社会活動に参加していることが、高齢者の生きがい等につながっていることも分かりました。そのため、高齢者の社会貢献活動への参画を促進していくことは、消費者市民社会の実現だけでなく、高齢者自身にとっても重要であると考えられます。

 実際に社会貢献活動に取り組んでいる高齢者への取材からは、「地域に貢献したい」という意欲が活動の理由であるという話を聞くことができました。そして、直接感謝の言葉を掛けてもらえること等、身近な人との結び付きが活動のやりがいや、生きがいにもなっているようです。そのため、活動を大きく広げずに、地域に密着した活動を目指しているという話もありました。また、地域の中で活動を始めるきっかけをくれたり、活動のサポートをしてくれたりする人も、高齢者が社会貢献活動に参画していくためには重要な存在となっていました。

 このように、高齢者の社会貢献活動を考えていくには「地域」という視点が重要であり、行政も地域での活躍をどう支えられるか考えていく必要があると考えられます。

 一方で、世帯構成の変化やデジタルデバイドの状況、健康状態への不安や心配等、高齢者の置かれている状況は多様であることがうかがえます。そのため、高齢者の社会貢献活動への参画を促進するには、高齢者の多様性を考えていく必要があります。実際に社会貢献活動をしている高齢者や、活動を支援する取組を行っている方々への取材では、自分の生活に合った時間や場所で活動できることや、自分の技能をいかせること等も、高齢者が社会貢献活動に取り組むためには重要な要素であるという意見もありました。また、高齢者が高齢者を支える取組も行われており、高齢人口が増加する中では、そうした同じ目線でみることができる点をいかした効果的な支え合いも、重要性を増すと考えられます。

 さらに、「消費者意識基本調査」(2022年度)の結果から、健康や体力に対する不安が、高齢者にとってボランティア活動や社会貢献活動への参画の障害の一つであることが分かりました。しかしながら、直接体を動かして行う活動だけではなく、高齢者に意見を言ってもらうことで商品・サービスを改善することや、都市計画等に高齢者の視点や知見を還元することも、社会貢献活動の一つの在り方と考えられます。高齢者の社会貢献活動への参加を促進するためには、健康や体力面に不安がある高齢者にも参加できる多様な活動の提示が有効と考えられます。そのため、高齢者が自分の健康状態や体力に合わせて社会貢献できる環境の整備とともに、そうした様々な活動があることを情報発信していくことが必要です。

 消費者市民社会の実現に向けて、高齢者の社会貢献活動への参画は不可欠です。消費者教育により高齢者のエシカル消費等の身近な社会貢献活動を更に活発化するとともに、「地域」という視点を重視しながら、高齢者の多様性に合わせた様々な社会貢献活動への参画の在り方について検討していくことで、高齢者の社会貢献活動への参画が促進されることが期待できます。

担当:参事官(調査研究・国際担当)