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第1部 第2章 第2節 (1)高齢者の消費行動

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組

第2節 高齢者の消費行動と消費者トラブル

(1)高齢者の消費行動

■高齢者の消費行動の特徴

 ここでは、「消費者意識基本調査」の結果を基に、高齢者の消費行動の特徴について分析します。

高齢者は「食べること」等にお金をかけつつ、特に「医療」にお金をかけている

 「消費者意識基本調査」(2022年度)で、「現在意識的にお金をかけているもの」を聞いたところ、「食べること」と回答した人の割合は、65歳から74歳までが31.2%、75歳以上が35.4%であり、全体の32.8%と同様に、高齢者が最もお金をかけている項目でした。

 高齢者は、「医療」にお金をかけている人の割合が全体よりも高く、全体の18.4%に対して、65歳から74歳までが23.3%、75歳以上が29.2%であり、年齢層の高い方が「医療」にお金をかけています。また、「介護・家事代行」にお金をかけている人の割合は、全体が2.9%、65歳から74歳までが2.8%に対して、75歳以上が6.2%であり、75歳以上で高くなっています。

 一方で、高齢者は、多くの項目でお金をかけている人の割合が全体よりも低くなっています。特に、「貯金」にお金をかけている人の割合は、全体が20.5%、65歳から74歳までが12.4%、75歳以上が6.6%であり、お金をかけている人の割合の差が最も大きくなっていました(図表Ⅰ-2-2-5)。

一人暮らしの者の方が人との交流や外出に関連する項目にお金をかけている

 第1部第2章第1節でみてきたように、一人暮らしの高齢者の割合は年々増加しています。「消費者意識基本調査」(2022年度)で、「現在意識的にお金をかけているもの」のうち、人との交流や外出に関連する項目について、一人暮らしの者と同居人がいる者について分析しました。

 人との交流や外出に関連する多くの項目について、全体と高齢者の両方で一人暮らしの者は同居人がいる者よりお金をかけている人の割合が高くなっています。また、高齢者の特徴として、「理美容・身だしなみ」を回答した人の割合は、同居人がいる高齢者の11.3%に対して、一人暮らしの高齢者が14.8%と高くなっており、その差は全体の差よりも大きくなっています(図表Ⅰ-2-2-6)。

高齢者は商品やサービスを購入する際に「品質・性能の良さ」、「価格の安さ」のほかに、「アフターサービスや保証の充実」を重視している

 「消費者意識基本調査」(2021年度)で、「商品やサービスを購入する際、何をどの程度重視しているか」を聞いたところ、「品質・性能の良さ」について「重視している」(「とても重視している」又は「ある程度重視している」の計)と回答した人の割合は、全体が95.3%、65歳から74歳までが94.7%、75歳以上が89.5%であり、高齢者と全体の両方で重視する人の割合が最も高くなっています。また、「価格の安さ」についても高齢者と全体の両方で重視されています。

 高齢者は、「アフターサービスや保証の充実」を全体よりも重視しており、「アフターサービスや保証の充実」を「重視している」と回答した人の割合は、全体が62.4%、65歳から74歳までが74.6%、75歳以上が71.2%でした。

 また、「流行や話題性」や「周りの人と違う/個性的であること」については、全体と高齢者のいずれでも重視されていないことが分かりました(図表Ⅰ-2-2-7)。

商品やサービスを購入する際に、高齢者は65歳未満よりも「環境問題・社会課題の解決への貢献」を重視している

 さらに、各項目で重視していると回答した人の割合について、65歳以上の高齢者と65歳未満の間の差を分析しました。高齢者の方がより重視している項目として、「環境問題・社会課題の解決への貢献」の差が最も大きく、高齢者の方が21.8%ポイント高いことが分かりました(図表Ⅰ-2-2-8)。

高齢者は「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」意識が全体よりも低い

 「消費者意識基本調査」(2022年度)で、消費者の行動について聞いたところ、「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」について「当てはまる」(「とても当てはまる」又は「ある程度当てはまる」の計)と回答した人の割合は、65歳から74歳までが55.4%、75歳以上が48.6%で、年齢層が高くなるほど購入前の調査を十分に行わない傾向が示唆されました。特に「とても当てはまる」と回答した人の割合は年齢層によって差が大きく、最も高い20歳代では34.5%であるのに対して、65歳から74歳まででは13.7%、75歳以上では10.0%にとどまっています(図表Ⅰ-2-2-9)。

「コストパフォーマンスを重視する」高齢者は3割未満

 次に、消費者の価値観について聞いたところ、「費用対効果(コストパフォーマンス)を重視する」に「当てはまる」(「とても当てはまる」又は「ある程度当てはまる」の計)と回答した人の割合は、65歳から74歳までが28.9%、75歳以上が25.0%で、コストパフォーマンスを重視している高齢者は3割未満でした。「当てはまる」と回答した人の割合は、20歳代及び30歳代で最も高く、その後、年齢層が高くなるほどコストパフォーマンスを重視しない傾向が示唆されました(図表Ⅰ-2-2-10)。

事例
パルシステム

担当:参事官(調査研究・国際担当)