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第1部 第2章 第1節 (4)第1節のまとめ

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組

第1節 高齢者を取り巻く環境と意識

(4)第1節のまとめ

 本節では、超高齢社会の現状を踏まえつつ、デジタル化の進展や周囲とのつながりの状況、消費者市民社会とSDGsの設定といった高齢者を取り巻く社会環境の変化と、高齢者の意識についてみてきました。

 日本の高齢化は進展している一方で、高齢者自身の健康寿命は延びており、平均寿命と比較してもその延びは大きくなっています。

 社会のデジタル化の進展もあり、世帯主が高齢者の世帯の大多数が情報通信機器を保有していました。一方、65歳から74歳までと、75歳以上の人とではその利用状況に大きな差があり、高齢者のデジタル社会への向き合い方は多様であることが示唆されました。他方で、インターネットを利用している高齢者は、全体に比べて利用用途が限定的であることも分かりました。また、保有する情報通信機器の違いによるインターネットへのアクセス手段の違いや、情報通信技術の恩恵を受けたいと考える動機の不足等は、デジタルデバイドの要因となっている可能性があります。一方で、インターネットを利用して消費支出をしている高齢者世帯が増加しており、今後も高齢者のインターネットを活用した消費行動は増加すると考えられます。高齢者がインターネットの利用に不慣れな場合、インターネットに関連した消費者トラブルに巻き込まれる可能性が高まることが懸念されます。

 周囲とのつながりの状況をみると、孤独のきっかけになり得る一人暮らしの高齢者は増えています。また、高齢者は他世代よりも地域との付き合いがある傾向がみられる一方、近所との付き合い方には年齢により違いがありました。高齢者の一人暮らしの者の割合が増加していく社会では、地域との付き合いがより重要となることも示唆されます。

 世界では、SDGsが共通の目標として定められ、消費者政策においては、消費者が公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する消費者市民社会の実現が目指されています。そうした中では、高齢者は社会の重要な主体として、消費者市民社会の実現やSDGsの達成に向けた取組に積極的に参画していくことが期待されています。

 高齢者の意識をみると、半数以上が「家族や友人・知人の役に立ちたい」意識や「困っている人・助けが必要な人の役に立ちたい」意識を持ち、また、半数近くが「環境問題・社会問題の解決に役立ちたい」意識を持つことが分かりました。これらの意識の高さは、全体と比較しても低くなく、周囲や社会に対する貢献意識を持つ高齢者が多いことを示しています。そうした意識は、消費者市民社会の実現やSDGsの達成も含め、より良い社会に向けて高齢者が貢献していくための基盤になると期待されます。また、「健康を優先した生活をしたい」意識があることや、健康に関連する項目で不安を感じていることも確認されました。「孤独感や孤立感」に不安を感じる人も、他の年齢層と大きな差があるわけではないものの、一定割合いることも分かりました。

 次節では、高齢者を取り巻く社会環境や意識の実態を踏まえた消費行動と消費者トラブルの特徴について分析するとともに、行政の取組等について紹介し、「消費者被害の防止」に向けた方策を提案します。

担当:参事官(調査研究・国際担当)