事例 フランスのファッション業界の取組
ファッション業界では、最新の流行を取り入れた商品を低価格で販売するファストファッションが注目されるようになり、大量生産・大量消費による環境への負荷が問題になっています。一人当たりの衣料品の平均購入量が2000年から2014年までに60%増加した一方で、購入後の所有期間は半減しており、衣料品の85%がごみとして廃棄されています(注2)。これに対し、フランスは、2020年2月に世界で初めて、「資源の循環と廃棄物の削減を目指した循環経済に関する法律(注3)」(以下「循環経済法」という。)を公布し、アパレルの売れ残り商品の廃棄を禁止しました。フランスでは、ファッション業界における大量消費や大量廃棄の問題が、消費者個人とアパレルを提供する事業者だけの問題ではなく、社会全体の問題と位置付けられ、国を挙げた取組が行われています。
不用品リサイクルの促進
フランスでは、循環経済法が施行される10年以上前から、生産者に対してアパレル製品のリサイクルや処分費用の負担が義務付けられていました。また、不要になった衣類や靴の回収を行うため、全国に4万6000件以上の回収所が設けられており、うち8割は、歩道等に設置された専用回収ボックスが占めています。フランスでは、2019年に64.8万トン(人口一人当たり9.7㎏)もの繊維製品と靴が市場に出回りましたが、こうした取組を通じて、合計24.9万トン(人口一人当たり3.7㎏)が回収され、再販やリサイクル等に活用されています(注4)。
消費者へのサステナビリティに関する商品特性の情報提供により、サステナブルな消費を促進
循環経済法は、生産者に対し、リサイクル素材や再生可能資源の使用の有無、有害物質の含有といった、商品の品質や環境特性に関する情報を提供することも義務付けています。これにより、消費者のサステナブルな消費行動を促進しています。
また、消費者がより簡単に判断できるよう、商品のサステナビリティの度合いを格付けし、AからEまでのアルファベットで表示するシステム(注5)の導入も進められています。事業者も、自主的な取組として、「クリアファッション」(アパレル商品のバーコードを読み取るだけで環境・人間・健康・動物の4項目のスコアが表示される無料アプリ)を提供しており、ダウンロード数が10万件を突破しました。
このように、商品特性の情報提供により、商品の環境等に与える負荷が見えるようになることで、消費者の商品選択における「成果の見える化」が進み、消費者がサステナブルな商品を積極的に選択する意識が醸成されつつあります。
- 注1:日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト・調査レポート「フランスを中心とする欧州アパレルブランドのサステナビリティ動向調査(2021年3月)」を基に作成。
- 注2:World Economic Forum:These facts show how unsustainable the fashion industry is
- 注3:Loi relative à la lutte contre le gaspillage et à l’économie circulaire
- 注4:Rapport d’activité #2019, Eco TLC
- 注5:Focus Textile Avril 2020:quels changements suite à l’adoption de la loi anti-gaspillage pour une économie circulaire, Institut National de l’Economie Circulaire
担当:参事官(調査研究・国際担当)