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第2部 第2章 第1節 2.取引及び表示の適正化並びに消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第1節 消費者被害の防止

2.取引及び表示の適正化並びに消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

(1)商品やサービスに関する横断的な法令の厳正な執行、見直し

ア 特定商取引法等の執行強化等

 特定商取引法では、事業者と消費者との間でトラブルを生じやすい取引類型(①訪問販売、②通信販売、③電話勧誘販売、④連鎖販売取引、⑤特定継続的役務提供、⑥業務提供誘引販売取引、⑦訪問購入)について、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守る民事ルールを定めています。消費者庁では、特定商取引法について、権限委任を行い、かつ指揮監督下にある経済産業局と密な連携の下、執行を一元的に実施しており、2021年度は業務停止命令を13件、指示を13件、業務禁止命令を15件実施しました。

 また、第204回国会(常会)において、通信販売における契約の申込段階での不実の表示を禁止するなどの「詐欺的な定期購入商法対策」、売買契約に基づかないで送付された商品を消費者が直ちに処分できることとするための「送り付け対策」、大規模な消費者被害が発生してきた販売を伴う預託等取引を原則として禁止し、確認を受けないで行った勧誘等を厳格な罰則の対象とするなどの「販売預託の原則禁止」等を内容とする消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律が成立しました。同改正法の施行に向けて、政府令等の整備を行うとともに、契約書面等の電磁的方法による交付については、消費者からの承諾の取り方、電磁的方法による提供の在り方について、オープンな場で広く意見を聴取した上で検討を行うため、「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」を2021年7月から開催しており、2022年春以降を目途に取りまとめを予定しています。

イ 特定商取引法の適用除外とされている消費者保護関連法の必要な執行体制強化及び制度改正

 特定商取引法の適用除外とされている分野は、それぞれの分野に関する法律によって消費者の利益を保護することができると認められるために適用除外とされているという趣旨に鑑み、当該法律の執行状況を踏まえ、それぞれの分野における消費者取引の適正化を図る観点から、必要に応じて制度改正等を検討・実施することとしています。

 消費者庁では、消費者庁ウェブサイト内に、特定商取引法適用除外法令の運用状況が公表されているウェブサイトへのアクセス先を網羅的にまとめています。また、関係府省の協力を得て特定商取引法の適用除外とされている法律等の消費者保護関連法の執行状況を取りまとめ、消費者基本計画工程表の別表として2021年6月に公表しました。

ウ 消費者契約法の見直しに向けた対応

 消費者契約法は、あらゆる取引分野の消費者契約(消費者と事業者の間で締結される契約(労働契約を除く。))に幅広く適用され、不当な勧誘行為があればその契約を取り消すことができるとするとともに、不当な契約条項については無効とすること等を定めています。

 2019年9月に取りまとめられた「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」報告書を踏まえつつ、2019年12月から「消費者契約に関する検討会」において、実効性の確保や実務への影響の観点から、消費者・事業者の関係者を含めて検討を行い、2021年9月に報告書が取りまとめられました。

 消費者庁では、同報告書や、意見募集・意見交換等を踏まえて法案の検討を行い、2022年3月に、「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定され、第208回国会に提出しました。

 また、消費者委員会からの指摘等を踏まえ、新型コロナウイルスのほか台風・地震等の自然災害等の不測の事態が生じた場合における消費者契約のキャンセルについて、事業者及び消費者に対する実態調査並びに専門家のヒアリングを行い、上記検討会において意見交換を行いました。

エ 消費者の財産被害に対する消費者安全法の厳正な執行等

 消費者庁では、消費者の財産被害の発生又は拡大の防止のため、消費者安全法第12条第2項の規定に基づく通知が的確に実施されるよう「消費者事故等の通知の運用マニュアル」の周知徹底を行っており、2021年度における同通知件数は10,949件となっています。

 また、消費者安全法第38条第1項の規定に基づき、2021年度には22件の注意喚起を実施したほか、関係機関等において消費者被害の発生又は拡大の防止のための措置が適切に講じられるよう、消費者安全法第38条第2項の規定に基づき、これに資する情報を関係機関の長等に提供しています。

オ 高齢者、障害者等の権利擁護の推進

 厚生労働省では、都道府県、市町村、中核機関の権利擁護支援体制の強化を図る「成年後見制度利用促進体制整備推進事業」、成年後見制度の利用に至る前の支援からその利用に至るまでの支援を切れ目なく一体的に確保する「権利擁護人材育成事業」、成年後見制度の申立てに要する経費や後見人等に対する報酬の助成等を行う「成年後見制度利用支援事業」、各都道府県が行う介護施設・サービス事業所及び市町村への支援、並びに市町村等の高齢者虐待防止等の体制整備を進める「高齢者権利擁護等推進事業」の実施を進めています。

 また、各都道府県において、介護支援専門員については成年後見制度や高齢者の権利擁護等の内容を含む介護支援専門員専門研修等を実施するとともに、介護職員については尊厳の保持等の内容を含む介護職員初任者研修等を実施しています。

 法務省では、日本司法支援センターにおいて、高齢や障害等で認知機能が十分でないために、自己の権利の実現を妨げられているおそれがある方を対象とした、資力にかかわらない「特定援助対象者法律相談援助」を実施しています。2021年度の特定援助対象者法律相談援助の実績(速報値)は、787件でした。

 消費者庁では、消費生活センター等において、認知症、障害等の理由で判断能力が不十分な方々に関する消費生活相談があった場合、状況に応じて福祉担当部局等と連携しつつ、成年後見制度の活用を図るよう、消費者行政ブロック会議において、都道府県等に要請しました。

(2)商品やサービスに応じた取引の適正化

ア 電気通信サービスに係る消費者保護の推進

 高度情報通信社会の進展により、インターネットを活用した取引が増加して利便性が向上する一方、それに関連する様々な消費者問題も数多く発生しています。

 こうした課題に対応するため、総務省に設置されている「電気通信消費者相談センター」や全国の消費生活センターに寄せられた電気通信事業に係る苦情相談を踏まえ、適切な法執行を図っています。また、「電気通信消費者支援連絡会」を全国の各地域(11地域)において毎年2回開催し、各地における消費生活センター、電気通信事業者等及び総務省の間の情報共有や連携を進めています。

 さらに、制度が適切に機能しているかについては、毎年2回開催している「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」等を通じて定期的に検証しています。その検証結果は、「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」における制度見直しの検討に活用されています。

 2021年度においては、同年9月に取りまとめられた「消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書2021」を踏まえ、①電話勧誘における説明書面を用いた提供条件説明の義務化、②利用者が遅滞なく解約できるようにするための措置を講じることの義務化、③解約に伴い請求できる金額の制限について制度化するため、2022年2月、電気通信事業法施行規則(昭和60年郵政省令第25号)を改正(同年7月1日施行予定)するとともに、携帯電話事業者とその販売代理店との間の委託契約に係る課題等についても「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」に盛り込む改正を行いました。

 また、2021年10月以降、「苦情相談処理体制の在り方に関するタスクフォース」を開催し、個別の事業者との間では円滑に解決に至らない消費者トラブルを効果的に解決し得る体制の在り方について検討を行っています。

イ 有料放送サービスに係る消費者保護制度の適切な運用

 有料放送サービスについては、関係事業者に対し、説明義務、契約関係からの離脱に関するルール、販売勧誘活動等について、放送法(昭和25年法律第132号)及び「有料放送分野の消費者保護ルールに関するガイドライン」を遵守徹底させるなど、消費者保護を図っています。また、有料放送サービスに関する苦情・相談処理に関する関係事業者の取組状況を継続的にモニタリングしています。

ウ 金融機関による顧客本位の業務運営の推進

 金融庁は、金融事業者(金融機関等)に顧客本位の業務運営を浸透・定着させることで、家計の安定的な資産形成を図り、より豊かな国民生活の実現を目指しています。具体的には、①金融事業者に対して、顧客本位の業務運営を実現するための取組方針の策定や、その定着度合いを客観的に評価する成果指標(自主的なKPI・共通KPI)の公表を促す、②金融事業者や顧客の参考となるよう、金融事業者に対するモニタリングで把握した優良事例等を公表する、といった施策を実施します。

 顧客本位の業務運営に関する原則(以下「原則」という。)を採択した金融事業者をリストに掲載・公表してきたところですが、当該リストについて、2020年8月公表の「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」において、各金融事業者の取組方針等を原則の項目ごとに比較できるようにすることが適当であるとの提言がありました。

 そこで、2021年度には、当該提言を踏まえて、2021年4月に、原則を採択し、金融庁が公表する当該リストへの掲載を希望する金融事業者に対して、取組方針等の公表状況に加えて、取組方針等の記載内容等と原則の項目ごととの対応関係について、改めて報告を求めることにしました。

 そして、2021年9月、同年6月末までに新たに報告があった金融事業者のうち、対応関係が明確に示されていることが確認できた金融事業者のみを当該リストに掲載しました。さらに、2021年11月及び2022年2月、当該リストを更新するとともに、新たに報告があった金融事業者のうち、投資信託の共通KPIに関する報告があった金融事業者について取りまとめ及び分析の上、公表しました。また、2021年6月には、「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」において、金融事業者に対するモニタリングにより把握した顧客本位の業務運営の現状をまとめるとともに、金融事業者における課題や今後更なる取組が期待される事項等を示しました。

エ 詐欺的な事案に対する対応

 金融庁では、無登録で金融商品取引業を行っている疑いがある者に対して、問合せ等を通じ実態把握を行い、警察当局等と情報を共有するなど連携しました。また、2021年度に、無登録で金融商品取引業を行っていた者17者に対して、警告書を発出し、これらの業者等について、社名等を公表しました。

 さらに、金融庁Twitterにおいて、上記公表内容のほか詐欺的な投資勧誘等に関する情報発信を行うことにより投資者への注意喚起を行いました。

 加えて、証券取引等監視委員会では、2021年度には、無登録業者による金融商品取引法違反行為に関する裁判所への禁止命令等の申立てを1件実施しました。

オ 投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者等についての対応

 金融庁では、投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者について、投資者保護の観点から、必要に応じ監督上の対応を行い、2021年度までに投資型クラウドファンディング事業者4社に対し行政処分を行っています。

 また、投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者における取得勧誘やファンド運営等について、リスクベースのモニタリングを行いました。なお、2021年度末時点で登録されている投資型クラウドファンディング事業者数は46社となっています。

カ 暗号資産交換業者等についての対応

 金融庁では、暗号資産交換業者について、利用者保護の観点から所要の制度整備・運用を行っています。

 制度の運用に当たっては、暗号資産の価格が大きく変動するとともに、関連ビジネスは目まぐるしく変化している中で、暗号資産交換業者におけるビジネスモデルを適切に把握し、利用者保護の観点から、ガバナンス・内部管理態勢等について、機動的かつ深度あるモニタリングを継続的に実施しています。

 制度の運用に当たっては、登録業者ではない事業者による詐欺的行為等の消費者被害が発生していることを踏まえ、利用者保護の観点から、引き続き、消費者庁及び警察庁とも連携していきます。また、暗号資産交換業者の登録に際しては、体制等形式面のみならず、システムの安全性の検証や利用者への説明体制の整備状況等、実質的な審査を実施しています(2021年度は5社を登録)。

 さらに、無登録業者に関する利用者相談が引き続き寄せられていることを踏まえ、無登録業者に対し警告を行うなど、国内外の無登録業者に対し厳正に対応しています。

 また、国民生活センターにおいても、暗号資産に関する研修を2021年度に7回実施しました。

キ 安全・安心なクレジットカード利用環境の整備

 経済産業省では、安全・安心なクレジットカード利用環境を実現するため、割賦販売法の適切な運用を行っています。また、関係事業者に法令の遵守を徹底させ、クレジット取引等が適切に行われるよう、関係事業者への立入検査や、報告徴収等の執行等を行っています。

 同法で規定されているセキュリティ対策について、「クレジット取引セキュリティ対策協議会」(事務局:一般社団法人日本クレジット協会)が策定する「クレジットカード・セキュリティガイドライン」を実務上の指針として位置付け、着実に取組を進めています。

 2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会(注38)の開催に当たっては、業界団体と連携し、セキュリティ対策を推進するとともに、開催期間中におけるインシデント発生時の的確な連絡体制の構築を行い、開催期間中、安定的なクレジットカード決済環境を維持することができました。

ク 商品先物取引法の迅速かつ適正な執行

 経済産業省及び農林水産省では、委託者の保護及び取引の適正化を図るため、商品先物取引法(昭和25年法律第239号)に基づく立入検査及び監督を実施しています。

 このほか、商品先物取引法施行規則(平成17年農林水産省・経済産業省令第3号)第102条の2第2号又は第3号の規定に基づく勧誘を希望する事業者について、同規則第103条第1項第28号に規定する体制が整備されているかを確認し、体制整備が確認できた事業者を公表しており、2021年度末時点で9社公表しました。

ケ 住宅宿泊事業法の適正な運用

 2017年6月に成立した住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)について、適切に宿泊者保護が図られるよう、政省令、ガイドライン、標準住宅宿泊仲介業約款等の周知を行い、必要に応じ指導・監督を行うなど制度の適切な運用を行っています。2021年度には、民泊制度ポータルサイトを通じて省令やガイドラインの改正内容を周知するとともに、地方公共団体の条例制定状況を調査、公表し条例の制定趣旨を明確化しました。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に関する関係自治体及び住宅宿泊仲介業者団体等への周知を行うとともに、営業日数自動集計システムの運用を開始し、自治体が適法と確認できなかった物件の掲載をしないよう要請するなどの対応を取りました。

コ 民間賃貸住宅の賃貸借における消費者保護

 国土交通省では、民間賃貸住宅をめぐるトラブルの未然防止のために「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」及び「賃貸住宅標準契約書」についてウェブサイト掲載等を行い、周知を図るとともに、賃貸住宅の入退去に係る留意点についてインターネットテレビにより注意喚起を行っています。また、民間賃貸住宅のトラブルに関する研修会について、2021年度にはWEB講義を7回実施しました。さらに、家賃債務保証業者登録規程(平成29年国土交通省告示第898号)に基づく家賃債務保証業者登録制度において、家賃債務保証業を営む者の登録に関し必要な事項を定め、要件を満たす家賃債務保証業者を国が登録・公表することにより、消費者へ情報提供を行っています。

 また、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)に基づくサブリース事業者及び賃貸住宅管理業者に対する規制について、建設・不動産等の関係業界や賃貸住宅のオーナーの方々に対し、規制内容等を具体的に明示したガイドライン等による周知を徹底し、トラブルの未然防止を図っています。

サ 住宅リフォーム等における消費者保護

 国土交通省では、住宅リフォームや中古住宅の売買に係る各種瑕疵保険を利用する事業者の情報を住宅瑕疵担保責任保険協会のウェブサイトにて公開し、情報提供を行っています。また、住宅リフォーム事業者団体登録制度において、住宅リフォーム事業者団体の登録に関し必要な事項を定め、要件を満たす住宅リフォーム事業者団体を国が登録・公表することにより、団体を通じた住宅リフォーム事業者の業務の適正な運営を確保するとともに、消費者への情報提供等を行っています。

 住宅リフォーム事業の健全な発展及び消費者が安心してリフォームを行うことができる環境の整備を図るため創設した「住宅リフォーム事業者団体登録制度」について、2021年度末時点での登録住宅リフォーム事業者団体数は16団体となりました。消費者が基礎的な品質等を有する既存住宅を円滑に選択できるようにするため、建物状況調査等の結果、耐震性があり、構造上の不具合及び雨漏りが認められず、想定されるリフォームの内容・費用等について適切な情報提供が行われる既存住宅について、国が商標登録したロゴマークを事業者が広告時に使用することを認める「安心R住宅制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)」(国土交通省告示(2017年11月公布、同年12月施行))を推進し、安心して購入できる既存住宅の普及を図っています。安心R住宅制度における、事業者団体登録数は13団体となりました(2022年3月末時点)。

 2021年1月に取りまとめられた「社会資本整備審議会住宅宅地分科会・建築分科会既存住宅流通市場活性化のための優良な住宅ストックの形成及び消費者保護の充実に関する小委員会とりまとめ」を踏まえ、リフォームや既存住宅の流通に係る消費者保護の充実を図るため、リフォーム、既存住宅売買等に関する瑕疵保険に加入した住宅に係る紛争を住宅紛争処理の対象に追加すること等を内容とした「住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律等の一部を改正する法律(令和3年法律第48号)」が2021年5月に成立したことを受け、同改正法の施行に向けた準備を進めています。

シ 高齢者向け住まいにおける消費者保護

 高齢者向け住まいについては、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第1項の規定に基づく「届出」を促進するための都道府県等の取組を推進し、規制を的確に運用しています。また、事業者に対し前払金の保全措置を徹底するよう指導するとともに、事業者の廃業等の実態把握と廃業時等の入居者の居住の確保を図るための運用を引き続き求めています。さらに、入居希望者が高齢者向け住まいの検討・選択をする際の参考となるよう情報提供の充実を図っています。

 このほか、「令和3年度有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査」を実施し、2022年3月に調査結果を公表するとともに、都道府県等に対して届出促進・指導等の徹底を要請しました。

ス 身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての対応

 「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」(2017年1月消費者委員会)を受け、身元保証等高齢者サポート事業について実態把握を行い、消費生活相談情報を地方公共団体の高齢者福祉部局へ提供し、必要な措置を検討・実施しています。さらに、消費者が安心して身元保証等高齢者サポートサービスを利用できるための情報提供を行うこととしています。

 2021年度においては、身元保証等高齢者サポートサービス等の資産管理に関する契約について、慎重に対応する必要があることを改めて注意喚起しました。

セ 美容医療サービス等の消費者被害防止

 厚生労働省では、地方公共団体におけるインフォームド・コンセントに関する相談・苦情件数等の状況を調査し、2020年度における相談・苦情件数は6,367件、うち違反のおそれがあるものとして行政指導を要した件数は33件であることを把握しました。

 このほか、厚生労働省と消費者庁が協力・連携し、美容医療サービスを受けるに当たって注意すべき事項等について、消費者向けの注意喚起資料を作成し、2016年9月、2019年4月、2020年11月に都道府県等に周知しました。さらに、2020年11月に美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントに関する説明用資材の改定を行い、消費者トラブルの未然防止のための周知を実施しました。また、行政のTwitter等を活用し、定期的に注意喚起・普及啓発を行っています。

 消費者庁では、特定商取引法で規定している特定継続的役務提供の法解釈等を消費者庁ウェブサイトにおいて公表するなど、周知・啓発活動を行っています。

ソ 警備業務に関する消費者取引における情報提供の適正化及び苦情解決の円滑化

 警察では、警備業法(昭和47年法律第117号)第19条の規定に基づく契約内容の書面交付が確実に実施され、警備業務の依頼者の保護が図られるよう、各都道府県警察による警備業者に対する指導及び違反業者に対する行政処分による指導監督を実施しています。

 また、警備業務に関する苦情の解決義務が円滑に行われるよう、都道府県公安委員会による報告徴収・立入検査の監督権限によって、苦情の適切な解決が行われているかを確認するとともに、関連団体との連携を推進しています。

 2021年度においても、各都道府県警察において、各種講習会や立入検査等、様々な機会を捉えて警備業者に対する指導を実施しました。

タ 探偵業法の運用の適正化

 探偵業は、個人情報に密接に関わる業務でありながら、何ら法的規制もなされず、調査の対象者の秘密を利用した恐喝事件、違法な手段による調査、料金トラブル等の問題が指摘されていました。

 このような状況に鑑み、探偵業を営もうとする者の都道府県公安委員会への届出制、探偵業者の遵守事項、探偵業者に対する監督等について定めることを内容とする探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号。以下「探偵業法」という。)が公布され、2007年6月に施行されました。これにより、探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、依頼者に対し、重要事項について書面を交付して説明しなければならず、また、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、重要事項について契約の内容を明らかにする書面を依頼者に交付しなければならないこととされ、探偵業務の依頼者の保護が図られました。

 2021年度には、各都道府県警察は、探偵業法第8条の規定に基づく契約内容の書面交付が確実に実施され、探偵業務の依頼者の保護が図られるよう、各種講習会や立入検査等、様々な機会を捉えて探偵業者に対する指導を行い、さらには違反業者に対して検挙・行政処分を実施するなど、探偵業者に対する指導監督を継続的に実施しています。

チ 電気・ガスの小売供給に係る取引の適正化

 経済産業省では、電気及びガス小売全面自由化を受け、需要家への情報提供や契約の形態・内容等について、電気事業法及びガス事業法上問題となる行為を行っている事業者に対して指導等を行いました。

 さらに、電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口等に寄せられた不適切な営業活動等について、事実関係の確認や指導を行っています。

 また、ガスの経過措置料金が課されていない事業者に対する監視を行い、合理的でない値上げが認められた場合には、料金を是正するよう指導を行いました。電力・ガス取引監視等委員会、国民生活センター及び消費者庁が共同で、消費者から寄せられた小売全面自由化に関するトラブル事例やそれに対するアドバイスを公表するなどの取組を実施しています。加えて、電力・ガス取引監視等委員会は、電力契約を切り替えるための手続方法等の周知を行いました。

ツ チケット不正転売禁止法の適切な運用

 文化庁、消費者庁及びその他関係府省庁では、興行入場券の適正な流通を確保するため、2019年6月に施行されたチケット不正転売禁止法の普及啓発を図っています。消費者保護のための対応として、ウェブサイト等による消費者等への情報提供や注意喚起を行うほか、関連する消費者からの相談に適切に対応できるようにするため、消費生活相談員向けの情報提供等を実施しています。

テ 賃貸集合住宅における入居前のLPガス料金情報の提示

 LPガス業界は、2017年の「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」等に基づいて標準料金の公表等に取り組んでいますが、特に、賃貸集合住宅に入居する方が事前にLPガス料金を知る機会がなく、入居後に高額なLPガス料金を負担することとなる事案も発生しています。

 こうした問題の是正のため、引き続き、LPガス事業者に対し、LPガス料金に設備費用等が含まれる場合はその旨を契約締結時書面へ明記すること及び入居予定者からの料金照会に対応することの必要性を周知するとともに、LPガス事業者から提供されたLPガス料金を、賃貸集合住宅を管理する家主や管理会社を経由して仲介業者に提供し、仲介業者において、賃貸物件を入居希望者に紹介する際、その物件のLPガス料金も提示し、消費者に選択する機会を提供する取組を進めることで、消費者の保護を図っています。

 2021年6月に経済産業省、国土交通省からそれぞれの関係業界団体に協力依頼の通知を発出しました。また、各地方でのLPガス事業者団体と消費者団体との懇談会(9回開催)で、取組を紹介し、周知を図りました。

 消費者庁では、賃貸集合住宅のLPガス料金の入居希望者への提示の取組について、消費生活相談に対応するため、全国の消費生活センター等に周知を図りました。

(3)不当な表示を一般的に制限・禁止する景品表示法の厳正な運用

ア 景品表示法の厳正な運用及び執行体制の拡充

 景品表示法は、消費者にその商品・サービスについて実際のもの又は競争事業者のものより著しく優良又は有利であると誤認される表示を禁止しています。景品表示法に違反する行為があれば、事業者に対して、その行為の取りやめ、再発防止策の実施等を命令する行政処分(措置命令)等を行っており、消費者庁では、景品表示法の規定に基づく措置命令を2021年度に41件行いました。

 また、景品表示法に課徴金制度を導入することを内容とする不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)が、2016年4月に施行され、消費者庁では、景品表示法の規定に基づく課徴金納付命令を2021年度に15件行いました。

 なお、景品表示法については、デジタル化の進展等の景品表示法を取り巻く社会環境の変化等を踏まえ、2022年3月から「景品表示法検討会」を開催しており、消費者利益の確保を図る観点から必要な措置について検討することとしています。

(4)商品やサービスに応じた表示の普及・改善

ア 家庭用品の品質表示の普及啓発、適正な運用及び見直し

 消費者庁では、家庭用品品質表示法の普及啓発のため、ポスター等の広報資料を地方公共団体等に対し配布するとともに、2021年度には、3件の講師派遣を行いました。

イ 住宅性能表示制度の普及促進及び評価方法の充実

 2000年4月に施行された住宅品確法の規定に基づき、住宅の性能を客観的に評価し表示する住宅性能表示制度が同年10月から開始されました。

 具体的には、耐震性、劣化対策、省エネルギー対策等、外見や簡単な間取り図からでは分かりにくい住宅の基本的な性能について共通ルールを定め、住宅の性能を等級や数値等で表示し、比較しやすくするものです。

 消費者庁及び国土交通省では、住宅品確法に基づき定められている住宅性能表示制度の告示について、2016年1月に既存住宅に関して、2021年12月及び2022年3月に省エネルギー対策等に関して評価基準の充実等を目的とした改正を行いました。

 また、2015年8月から2022年3月までに、登録講習機関による評価員講習会を計64回実施しました。

ウ 省エネ性能表示の普及促進

 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」という。)が2015年7月に公布され、新たに表示制度が位置付けられました。同法第41条の規定に基づく省エネ基準適合認定マークや、同法第7条の規定に基づく省エネ性能表示のガイドラインに従った「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)」等の普及促進を図るため、建築物省エネ法に係るオンライン動画にて制度を周知し、公開開始から約32万人に視聴されています。また、2021年度には実開催による相談会を108回実施しました。

エ 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律に基づく指定建物錠の性能表示の適正な運用

 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(平成15年法律第65号)第7条に基づく国家公安委員会告示では、建物錠のうち、防犯性能の向上を図ることが特に必要な指定建物錠について、その防犯性能等を表示すべき事項として定めており、警察庁では、随時、指定建物錠の性能表示について、検証を実施しています。

 また、警察庁、国土交通省、経済産業省及び建物部品関連の民間団体から構成される「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」では、防犯性能の高い建物部品(錠、ドア、ガラス、サッシ等)の開発を促進すると同時に、同部品の目録を作成の上、公表しており、消費者が防犯性能により建物部品を選択できるようになっています(目録掲載数:17種類3,446品目(2022年3月末時点))。

 なお、指定建物錠や防犯性能の高い建物部品に関する情報は、警察庁の侵入犯罪防止対策ウェブサイト「住まいる防犯110番」や関係団体のウェブサイトに掲載するなどして消費者に提供しています。

オ 医療機関のウェブサイトによる情報提供

 医療機関に関する広告規制等の在り方について、2016年に取りまとめ、第193回国会で医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)が成立しました。同法の成立後、施行に向け、「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」等における議論を踏まえ、省令等を改正(2018年5月8日公布、同年6月1日施行)し、併せて「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」を策定しました。

 2020年度には、医療機関等のウェブサイトの適正化を推進するためのネットパトロール事業を行ったほか、関係者へ配布可能な医療広告規制における事例解説書の作成を進めました。

 このほか、美容医療サービスを受けるに当たって注意すべき事項等について周知するため、行政のTwitter等を活用し、注意喚起や普及啓発を行っています。

(5)食品表示による適正な情報提供及び関係法令の厳正な運用

ア 食品表示制度の適切な運用等

 2021年度は、原料原産地表示制度、遺伝子組換え食品表示制度及び食物アレルギー表示制度を含む食品表示制度全般について、講習会等を通じて事業者に周知を図るとともに、消費者向けセミナーを全国16箇所で実施しました。また、玄米及び精米の表示の見直し及び原料原産地表示制度については、事業者を対象とした説明会をオンラインで実施しました。

 食品添加物の表示については、2020年3月に取りまとめた「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」を踏まえ、「いわゆる無添加表示」について、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示についてのガイドラインを作成・公表しました。

 食物アレルギー表示については、くるみの義務表示化に向け公定検査法の開発を引き続き行っています。

 遺伝子組換え食品については、2023年度に施行を迎える遺伝子組換え食品表示制度に対応した新たな公定検査法を確立し、2021年9月に公表しました。

 ゲノム編集技術応用食品については、厚生労働省に届出されたゲノム編集技術応用食品であることが明らかな場合には、積極的に表示等の情報提供を行うよう事業者に対し働き掛けを行いました。また、関係行政機関と連携して、セミナーを通じて消費者及び事業者に普及啓発を行いました。

 機能性表示食品及び特別用途食品(特定保健用食品を含む。)については、買上調査を実施し、関与成分等が表示量どおりの含有を確認するなど、制度を適切に運用しました。機能性表示食品については4,702件公表し、特別用途食品(特定保健用食品を除く。)については88件、特定保健用食品については1,069件の表示許可を行っています(2022年3月時点)。特定保健用食品制度の疾病リスク低減表示については、基準の見直しに向けて基準案作成に関する調査事業を実施するとともに、表示の拡充に向けて、個別申請を支援しました。

 また、機能性表示食品の届出情報検索データベースについてのリーフレットの消費者庁ウェブサイトへの公表や、政府広報を活用した保健機能食品の普及啓発を行いました。

 また、消費者の表示の利活用の実態等の現状把握を行うために、食品表示の全体像に関する報告書で求められている現行商品の「いわゆる一括表示」部分に関する調査を実施しました。さらに、分かりやすく活用される食品表示の検討を行うために、デジタルツールを活用した食品表示の可能性を検討するための調査を実施しました。

 インターネット販売における食品に関する情報提供については、ガイドブックを策定するため、インターネット販売における食品の情報提供に係る実態調査及び検討事業を実施しました。

 農林水産省では、食品製造業者等が新たな加工食品の原料原産地表示制度に速やかに対応できるよう、引き続き、同制度を分かりやすく解説したマニュアル(2017年度作成)や同マニュアルを活用した動画(2020年度作成)による情報提供を行いました。

 また、2021年9月及び12月に、食品事業者団体等に対し、食品事業者への同制度の周知依頼を行いました。

イ 健康食品も含めた食品の表示・広告の適正化

 消費者庁では、食品の機能性等を表示する制度に関し、健康食品も含めた食品の表示・広告について、執行体制の整備も含め、関係機関と連携して監視を強化し、法令違反に関しては厳正に対処するとともに、健康食品に関する留意事項の周知徹底を行うことにより、表示・広告の適正化を図っています。

 インターネット等における健康食品等の虚偽・誇大表示に対する監視を通じて、健康増進法に違反するおそれのある表示に対し、2021年度には735事業者の760商品について改善要請を行いました。また、インターネット広告において、新型コロナウイルス感染症に対する予防効果等を標ぼうする健康食品の表示について、景品表示法及び健康増進法の観点から緊急監視を実施し、71事業者による77商品の表示について、改善要請を行いました。なお、改善要請を行った表示については、全ての表示が改善されていることを確認しています。

 また、事業者等に対しては、講習会等の機会を通して、健康食品の広告その他の表示の適正化を推進するとともに、消費者等に対しては、保健機能食品を正しく利用するための表示の利用方法等に関する周知・啓発活動を行いました。

 そのほか、事業者等に対しては、健康食品の広告その他の表示において留意すべき事項を示すリーフレットを配布し広告等の適正化を推進するとともに、消費者等に対しては、保健機能食品を正しく利用するための表示の利用方法等に関する周知・啓発活動を行いました。

ウ 関係機関の連携による食品表示の監視・取締り

 食品表示に関する取締りに関しては、不適切な食品表示に関する監視を強化するため、関係府省の間で「食品表示連絡会議」が設置されました。同会議は、不適正な食品表示に関する情報が寄せられた場合に、必要に応じて関係機関で情報共有、意見交換を行い、事業者への処分等の必要な対応を迅速に講ずるとともに、関連情報の共有を進めることを目的とし、2008年2月から、2022年3月までに14回開催されました。

 また、食品表示法違反に対し、国及び都道府県等が指示又は命令を行った場合は公表しており、2021年度には指示21件を行いました。

 農林水産省では、食品表示110番等を通じた情報収集を行うとともに、食品事業者に対する巡回調査を実施しました。

 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)及び民間分析機関において、品種判別や産地判別等に関する科学的分析を実施し、その結果を食品表示の監視・取締りに活用しています。

 警察庁では、都道府県警察に対して、関係機関と連携した情報収集及び食品表示に対する国民の信頼を揺るがす事犯について、地方の出先機関と連携した取締りの推進について指示し、2021年中は、食品の産地等偽装表示事犯を6事件7人検挙しています。

エ 米穀等の産地情報の伝達の適正化

 米穀等については、米トレーサビリティ法の規定に基づき、それらを一般消費者や取引先に販売する米穀事業者に対して、米穀及び原材料米穀の産地情報を伝達することが義務付けられています。

 こうした中、農林水産省や国税庁及び都道府県等の関係行政機関が連携して、米穀事業者に対する立入検査等を実施し、その結果に基づいて厳正に措置を行っています。

 また、農林水産省では、米トレーサビリティ法違反に関する指導件数等を取りまとめ、公表しています(産地情報伝達に関する指導件数は、2021年度上半期において2件。)。

 消費者庁も、農林水産省、地方公共団体と連携した調査が実施できる体制を整え、米トレーサビリティ法違反に対しては厳正に対処しています。

(6)詐欺等の犯罪の未然防止、取締り

ア 「オレオレ詐欺等対策プラン」の推進による特殊詐欺の取締り、被害防止の推進

 2019年6月に開催された犯罪対策閣僚会議において、架空料金請求や金融商品を含む特殊詐欺等から高齢者を守るための総合対策として「オレオレ詐欺等対策プラン」が決定され、警察庁を始めとする各府省は以下の取組を推進しています。

(ア)被害防止対策の推進

 幅広い世代に対し高い発信力を有する著名な方々により結成された「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(略称:SOS47)と連携し、各地方公共団体、経済団体等各種団体、民間事業者等の幅広い協力も得ながら、多様な媒体を活用して、特殊詐欺の被害防止に取り組むよう広報啓発活動を展開しています。また、留守番電話機能の活用等の促進、金融機関・コンビニエンスストア・宅配事業者等と連携した被害の未然防止等の取組を推進しています。

(イ)犯行ツール対策の推進

 携帯電話や預貯金口座を売買するなどの特殊詐欺を助長する行為について取締りに当たるとともに、携帯音声通信事業者に対する、犯行に利用された携帯電話の契約者確認の求め、金融機関に対する振込先指定口座の凍結依頼等のほか、特殊詐欺の犯行に利用された電話番号を、警察の要請に基づき、主要な電気通信事業者が利用停止するなどの犯行ツール対策を推進しています。

(ウ)効果的な取締り等の推進

 だまされた振り作戦、犯行拠点の摘発、上位者への突き上げ捜査といったこれまでの取組に加えて、特殊詐欺事件の背後にいるとみられる暴力団、準暴力団等に対する多角的な取締りを推進しています。なお、2021年の特殊詐欺の取締り状況は、特殊詐欺全体の検挙件数が6,552件(前年比872件減)であり、このうち架空料金請求詐欺の検挙件数が251件(前年比239件減)、金融商品詐欺の検挙件数が11件(前年比26件減)となっています(暫定値)。

 金融庁では、預金口座の不正利用に関する情報について、情報入手先から同意を得ている場合には、明らかに信憑(ぴょう)性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている金融機関及び警察当局への情報提供を速やかに実施することとしており、情報提供件数等を金融庁ウェブサイトにおいて公表しています。

イ 「架空請求対策パッケージ」の推進等による被害防止

 全国の消費生活センター等に寄せられた架空料金請求に関する消費生活相談の件数が増加したことを踏まえ策定された「架空請求対策パッケージ」(2018年7月消費者政策会議決定)に基づき、以下の取組を推進しています。

 ・悪質事業者から消費者への接触防止のための取組

 ・消費者から悪質事業者への連絡防止のための取組

 ・消費者による悪質事業者への支払の防止のための取組

 消費者庁では、2021年度、年末年始に向けて、架空請求を含む高齢者に多い消費者トラブルについて、注意喚起を行いました。

ウ 被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の取締りの推進

 警察庁では、悪質商法事犯(利殖勧誘事犯及び特定商取引等事犯)については、多大な被害をもたらすものであることから、「販売預託商法」を含む悪質商法事犯の早期把握に努めるとともに、悪質商法に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供や広域事犯に対応するための合同・共同捜査の推進等による早期事件化により、被害の拡大防止を図ることとしています。2021年度は、関係行政機関との連携強化等により、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に便乗した悪質商法を含め、悪質商法事犯の早期把握に努めました。

 なお、2021年中は、利殖勧誘事犯を46事件144人、特定商取引等事犯を106事件179人検挙しています。

エ 生活経済事犯に係る被害拡大防止に向けた犯行ツール対策の推進

 警察庁では、犯罪の予防及び被害拡大防止を図るため、生活経済事犯に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯電話契約者確認の求め及び役務提供拒否に関する情報提供、契約条項に基づくレンタル携帯電話契約の解約要請等の犯行ツール対策を推進しています。

 なお、2021年中は、生活経済事犯に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供を9,581件、携帯電話契約者確認の求めを1,616件行いました。

オ 偽造キャッシュカード等による被害の拡大防止等への対策の推進

 金融庁では、偽造キャッシュカード等による被害発生状況や金融機関による補償状況を、金融庁ウェブサイトにおいて公表しています。また、預金取扱金融機関を対象として、「偽造キャッシュカード問題等に対する対応状況」に関するアンケート調査を実施し、金融庁ウェブサイトにおいて2021年11月に公表しました。

 また、金融庁、警察庁では、偽造キャッシュカード等(偽造・盗難キャッシュカード、盗難通帳、インターネットバンキング)による被害の防止等に向けた金融機関への注意喚起を実施しています。警察庁では、2020年5月に、インターネットバンキングに係る不正送金事犯関連部分を見直した新たな金融機関の防犯基準を策定し、都道府県警察に対して防犯対策を推進するよう指示しました。

カ ヤミ金融事犯の取締りの推進

 ヤミ金融事犯(注39)について、警察庁では、都道府県に対して、当該事犯の徹底した取締りのほか、ヤミ金融に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め及び役務提供拒否に関する情報提供、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等による、被害予防の推進を指示しています。

 なお、2021年中は、ヤミ金融事犯を502事件598人検挙しています。

キ フィッシング対策の推進

 警察庁では、フィッシングに関し、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号。以下「不正アクセス禁止法」という。)違反等の取締りを推進しています。また、広報啓発活動や関係事業者等への情報提供等を通じ、フィッシング被害防止対策を推進しています。2021年度は新型コロナウイルスのワクチン予約に乗じたフィッシング等の犯罪の手口等について、警察や日本サイバー犯罪対策センター(JC3)のウェブサイト等で注意喚起を、荷物の配送連絡を装ったSMSによるフィッシングの手口とその対策等について、警察庁のウェブサイトで注意喚起を行いました。

 また、2021年中の不正アクセス禁止法を適用したフィッシング行為の検挙件数は1件でした。

 経済産業省では、一般社団法人JPCERTコーディネーションセンターやフィッシング対策協議会を通じて、フィッシングの疑いのある電子メール及びウェブサイト等に関する情報収集・分析を行い、同法人及び同協議会のウェブサイト等で、フィッシングに関する情報発信や注意喚起等の情報提供を実施しています。

 総務省では、フィッシング対策にも有効な技術的対策の一つとして、受信者が受け取った電子メールについて、当該電子メールが送信者になりすましているか否かを確認可能とする「送信ドメイン認証技術」の普及促進に取り組んでおり、迷惑メール対策の推進に資することを目的として設立された「迷惑メール対策推進協議会」と連携し、「送信ドメイン認証技術導入マニュアル」を策定し、公表(2021年9月に第3版を公表)しています。

ク ウイルス対策ソフト等を活用した被害拡大防止対策

 警察庁では、各都道府県警察等から集約した、海外の偽サイト等に関するURL情報等を、ウイルス対策ソフト事業者等に提供し、当該サイトを閲覧しようとする利用者のコンピュータ画面に警告表示を行うなどの対策を推進しています。

 また、海外の偽サイト等に関するURL情報等を、フィッシング対策等を推進する国際的な団体であるAPWG(フィッシング対策ワーキンググループ)に対して提供しています。

ケ インターネットオークションに係る犯罪の取締り等

 警察庁及び都道府県警察のウェブサイト等においては、インターネットオークションに係る注意喚起を推進しています。

 また、インターネットオークションに関する犯罪の取締りを推進しており、2021年中のインターネットオークション詐欺に関する検挙件数は62件となっています。

コ 模倣品被害の防止

 経済産業省では、「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」に寄せられる消費者等からの情報について、関係府省及び主要なインターネット通販サイト運営者等に定期的に共有しています。

 警察庁では、都道府県警察に対して、インターネット利用の偽ブランド事犯等の取締りの推進を指示しています。また、関係する機関・団体が構成する不正商品対策協議会が開催する「アジア知的財産権シンポジウム2021」を支援するなど、関係者と連携した広報啓発活動を行いました。

 なお、2021年中は、商標権侵害事犯を280事件304人、著作権侵害事犯を148事件149人検挙しています。

 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権、育成者権を侵害する物品及び不正競争防止法(平成5年法律第47号)の規定に違反する物品(知的財産侵害物品)は、関税法(昭和29年法律第61号)の規定において輸出又は輸入してはならない貨物と定められており、税関で取締りを行っています。

 2021年の全国の税関における知的財産侵害物品の差止状況は、輸入差止件数が28,270件、輸入差止点数が819,411点となっています。

 農林水産省では、アジアの主要国における日本の農林水産物・食品の産地偽装・模倣品に関する現地調査等を実施しているほか、広告等における地理的表示(GI)の使用やGI産品と誤認させるおそれのある表示等を規制対象とするとともに、日EU・EPA及び日英EPAに基づき、日本とEU及び英国との間でのGI産品の相互保護を行っています。

 消費者庁では、模倣品被害についての対策を行っています。2021年度は、模倣品を扱っている可能性のあるインターネット通販サイト191件について、特定商取引法の遵守状況を調査し、うち150件に改善指導を実施しました。

 また、海外著名ファッションブランドの権利者等からの情報提供を受け、模倣品販売が確認されたサイト等に関する情報について、消費者庁ウェブサイトにおいて公表し、消費者に対する注意喚起を行っています。

サ 振り込め詐欺救済法に基づく被害者の救済支援等

 振り込め詐欺等の被害者に対する救済支援等については、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成19年法律第133号)に基づき、被害者への返金制度等の周知徹底を図るとともに、「被害が疑われる者」に対する積極的な金融機関による連絡等の取組を促すこととされています。

 2021年度は、被害者への返金制度について、インターネットによる広報活動を通じて国民に周知を行うとともに、金融庁のウェブサイトに制度の概要等を引き続き掲載しました。また、「被害が疑われる者」に対する積極的な金融機関による連絡等の取組を促しました。

 これらの取組により、制度開始(2008年6月)以降の被害者への返金額の累計額は、約188億円(2021年度末)となっています。

(7)計量・規格の適正化

ア JIS等の国内・国際標準化施策の実施

 経済産業省では、2021年度も消費者への標準化(注40)知識の普及啓発及び消費者の日本産業規格(JIS)開発審議への効率的な参加の促進のために、同省委託事業として、「消費者のための標準化セミナー」を全国で計17回開催しました(565名参加)。

 また、消費生活技術専門委員会等、19種類の委員会を計48回開催しました。

イ 新たなJASの検討及び国際標準化施策の推進

 農林水産省は、農林水産物・食品の品質だけでなく、事業者による農林物資の取扱方法、生産方法、試験方法等についても認証する新たなJASを推進しており、2021年度末時点では、有機藻類の日本農林規格等の24規格が新たに制定されています。

 また、災害食の品質、安全性、保存性、喫食者の分類等の条件をISO(国際標準化機構)に提案する取組を支援するとともに、2021年に発足した産学官連携による災害食ISO委員会に積極的に参画しました。さらに、ベトナム等との二国間連携による有機JAS認証の体制整備の支援、ASEAN諸国の大学での寄附講座により、JASの海外への浸透・定着を図りました。

(8)公正自由な競争の促進と公共料金の適正性の確保

ア 競争政策の強力な実施のための各種対応

 公正取引委員会では、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)の違反行為について、2021年度に延べ34事業者に対して3件の排除措置命令を行うとともに、延べ31事業者に課徴金納付命令を行いました。また、独占禁止法の違反被疑行為について、3事業者に対して確約計画の認定を行いました。

 加えて、337件の届出のあった企業結合計画について、迅速かつ的確に審査を行いました。

イ 公共料金等の決定過程の透明性及び料金の適正性の確保

 消費者庁では、公共料金の新規設定や変更に関する認可等について、事前に所管省庁と協議を行うとともに、重要なものについては、消費者委員会で審議した上で、「物価問題に関する関係閣僚会議」へ付議しています。

 消費者庁は、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の提供する特定電気通信役務の基準料金指数の設定について、2021年6月に消費者委員会へ付議を行いました。

 消費者委員会では、消費者庁からの付議を受けて、同月に「公共料金等専門調査会」を開催し検討を行い、意見表明を行いました。

 この意見を踏まえ、消費者庁及び総務省は、同月に「物価問題に関する関係閣僚会議」に付議し、同閣僚会議において当該基準料金指数の設定について決定しました。

 電気事業法改正後の電力託送料金制度改革、及び配電事業に関するもののうち電気料金に関するものの検討については、消費者庁は、2020年7月以降に開催されている資源エネルギー庁「持続可能な電力システム構築小委員会」及び「電力・ガス取引監視等委員会料金制度専門会合」にオブザーバーとして出席し、「消費者委員会公共料金等専門調査会電力託送料金に関する調査会」での意見等を随時報告しました。これに関し、電力託送料金制度改革(小売規制料金関係を含む。)及び配電事業に関するもののうち電気料金に係るものの検討について、2021年6月に消費者庁から消費者委員会へ付議を行いました。消費者委員会では、資源エネルギー庁及び電力・ガス取引監視等委員会事務局へのヒアリングを計6回開催した上で、消費者庁から付議を受けて、同年7月、意見表明しました。消費者委員会意見を踏まえ、消費者庁は、同年8月に意見を表明するとともに、経済産業省へ同意見を送付しました。

 経済産業省では、電力及び都市ガスの小売全面自由化に当たり、都市ガスの経過措置料金に関して指定旧供給区域等の指定を行うとともに、小売全面自由化に関する消費者向けのQ&A集の作成や、全国各地域における消費者向けの説明会の実施等、小売全面自由化についての周知・広報に取り組みました。

 経済産業省では、経過措置が講じられている電気の小売規制料金については、原価算定期間終了後に毎年度事後評価を行い、その結果を公表することとしています。

 電力・ガス取引監視等委員会は、2021年2月、経済産業大臣に対し、経過措置が講じられている電気の小売規制料金の値下げ認可申請の必要があると認められる事業者はいなかった旨回答しました。

 また、電力・ガス取引監視等委員会において、電力託送料金に関して、一般送配電事業者の収支状況(託送収支)、効率化の取組状況について、定期的に事後評価をしています。2020年度実績分については、2022年2月に一般送配電事業者の収支状況(託送収支)の事後評価を行い、一般送配電事業者の収支状況の確認及び経営効率化に向けた取組について評価しました。

(9)情報通信技術の活用拡大と消費者被害の防止の両立

ア 特定商取引法の通信販売での不法行為への対応

 特定商取引法の通信販売については、不適切な広告等を行っている通信販売業者に対し、2021年度は1,340件の改善指導を実施したほか、違法行為が認められた通信販売業者に対しては、特定商取引法に基づき、厳正かつ適切に行政処分等を行いました。

 また、執行を補完する取組として、ISP(注41)等に対し、ウェブサイトの削除等を促しています。

イ 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律に基づく行政処分等の実施

 総務省及び消費者庁では、行政処分や行政指導の実施により、特定電子メール法に違反する特定電子メールに起因した消費者被害を削減することとしています。

 2021年度は、同法に違反したことが疑われる送信者に対する警告メール(行政指導)を約6,400件送信しました。

ウ 迷惑メール追放支援プロジェクトの実施

 総務省では、民間事業者等と連携し、調査端末で受信した迷惑メールの違法性を確認し、当該メールに関する情報を送信元プロバイダに通知することにより、迷惑メール送信回線の利用停止措置等の円滑な実施を促しています。

 2021年度は、違法性が確認されたメール約6,000件に関する情報を送信元プロバイダに通知しました。

エ インターネット上の消費者トラブルの動向等の把握

 消費者庁では、インターネット消費者トラブル等の動向を把握するため、「インターネット消費者取引連絡会」を開催しています。2021年度は、同会議を通じて、「オンラインサロン」、「キャッシュレス決済」、「マッチングアプリ」、「オンラインゲーム」をテーマとした調査研究を実施しました。

オ 電気通信サービス・移動通信サービス(携帯電話)における広告表示等の適正化

 総務省では、「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準・ガイドライン」を踏まえ、適切な広告表示がなされるよう関係事業者における取組を注視するとともに、行政として必要に応じた対応を行うこととしています。「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」を開催し、引き続きフォローアップを行っています。

 また、携帯電話料金の低廉化に向けた環境整備を図るため、2020年12月及び2021年6月に、総務省、公正取引委員会及び消費者庁で「携帯電話料金の低廉化に向けた二大臣会合」を開催しました。この取組の一環として、総務省では、2020年12月に「携帯電話ポータルサイト」を開設し、2022年4月に大幅拡充を行いました。さらに、消費者庁では、2020年12月に「自分に合った携帯料金プランになっていますか?」を公表し、その後も、携帯電話事業者が新しい料金プランを公表したタイミングでその内容を更新し、消費者庁ウェブサイトに掲載しました。2021年6月には、消費者が自ら適切な料金プランを選べるよう、新たに「ご存じですか?携帯のこと」を公表しました。また、消費者が自分のニーズに合ったプランを選ぶことができる分かりやすい表示になっているかという観点から、広告表示の総点検を行い、大手携帯電話事業者に対して対応を要請したほか、2021年5月に、端末購入サポートプログラムに関する表示に関して改善を指導しました。

カ 電子商取引環境整備に資するルール整備

 経済産業省の「電子商取引に関する市場調査(注42)」によれば、2020年の日本国内のBtoC電子商取引の市場規模は、19.3兆円(前年19.4兆円、前年比0.43%減)とほぼ横ばいになりました。

 経済産業省では、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」について、今後も産業界や消費者等のニーズ等を考慮し、必要に応じて改訂を行います。なお、直近では2022年4月に改訂を行いました。

キ 個人情報保護法の適切な運用

 2015年9月に個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第65号)が公布され、これを受けて、2016年1月に個人情報保護委員会が設置、2017年5月に改正法が全面施行されました。

 これに伴い、各主務大臣が行使していた監督権限を個人情報保護委員会が一元的に所掌することとなりました。

 また、2020年6月に個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和2年法律第44号)が公布されたことを受け、個人情報保護委員会では、当該改正法の円滑な施行に向けて説明会等を実施し、改正法の内容について情報提供を行いつつ、関係者からの意見聴取を行いました。こうした機会での意見等を基に、政令・規則等の整備を進め、2021年3月に個人情報の保護に関する法律施行令及び個人情報保護委員会事務局組織令の一部を改正する政令(令和3年政令第56号)及び個人情報の保護に関する法律施行規則の一部を改正する規則(令和3年個人情報保護委員会規則第1号)が公布されました。さらに、具体的な指針としてのガイドライン等の整備も進め、同年8月に各種ガイドライン、同年9月にQ&Aの更新等を行いました。

 事業者団体主催の説明会等への講師派遣(2022年3月末時点で計131回)、小学生を対象とした出前授業(2022年3月末時点で計7回)、個人情報保護法の基本的なルールや改正法の内容を解説したパンフレット及び動画等の作成・公表、個人情報保護の重要性について広く国民に周知する「個人情報を考える週間」の設定(2021年10月18日から10月24日まで)等の広報・啓発を実施しました。また、2021年6月より運用を開始した委員会公式SNS(Twitter)を用いて、積極的に情報発信しました。

 個人情報保護委員会及び各認定個人情報保護団体(以下「認定団体」という。)間の情報共有等の場である認定団体連絡会(2022年3月末時点で計2回)及び認定団体の対象事業者向け実務研修会(2022年3月末時点で計8回)を開催しました。また、セミナーを開催し、認定団体制度を通じた民間の自主的取組の推進の重要性について対外発信しました。そのほか、各認定団体が主催する改正法説明会へ講師派遣(2022年3月末時点で計9回)を行いました。

 個人情報保護法相談ダイヤルに加え、PPCビジネスサポートデスク(注43)等を通じ、個人情報の保護及び適正かつ効果的な活用に関する相談に対応しました。

 加えて、個人情報保護委員会を含め関係省庁が連携して、民間部門、行政機関、独立行政法人等に係る個人情報の保護に関する規定を集約し、一体的に規定すること及び事務処理体制の在り方について検討を行いました。地方公共団体の個人情報保護制度の在り方についても検討を行い、個人情報保護3法を1本の法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度についても統合後の法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化すること等を内容とする個人情報の保護に関する法律の改正を含むデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)が公布されました。これを受けて、個人情報保護委員会は、全ての都道府県及び市区町村を対象とする説明会(計9日間)を開催するとともに、行政機関や独立行政法人等に向けた説明会を開催し、改正後の個人情報保護法が適用される各主体への周知を行いました。また、関係者からの意見も踏まえつつ、政令及び規則の改正について検討を進め、2021年10月に個人情報の保護に関する法律施行令等の一部を改正する等の政令(令和3年政令第292号)及び個人情報の保護に関する法律施行規則の一部を改正する規則(令和3年個人情報保護委員会規則第4号)が公布されました。

ク マイナンバー制度の周知と適正な運用等

 マイナンバー制度に便乗した不正な勧誘や個人情報の取得への注意喚起のため、関係府省庁等が共同で作成・公表した資料の更新・周知を引き続き進めるとともに、当該制度に関する周知・広報を引き続き実施します。マイナンバーカードが安全であることや健康保険証として利用できること等について、デジタルサイネージやYouTube等のSNS及びリーフレット配布により、周知・広報を実施しています。


  • (注38)東京オリンピック競技大会は2021年7月23日~8月8日に、東京パラリンピック競技大会は同年8月24日~9月5日に開催された。
  • (注39)貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利等)に係る事犯及び貸金業に関連した犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)違反、詐欺、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号)違反等に係る事犯。
  • (注40)標準化とは、様々な事象を統一化すること。例えば、乾電池や紙のサイズの標準化のように、標準化は日常生活の利便性向上に寄与しているが、日頃から標準化を気にすることはないことから、日常生活と標準化との関わりについて経済産業省は普及啓発を行っている。
  • (注41)ISPとは、インターネットサービスプロバイダ(Internet Service Provider)の略。
  • (注42)経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
  • (注43)事業者が行う新技術を用いた新たなビジネスモデル等における個人情報保護法上の留意事項について、相談を行っている。

担当:参事官(調査研究・国際担当)