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第2部 第2章 第1節 3.ぜい弱性等を抱える消費者を支援する関係府省庁等の連携施策の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第1節 消費者被害の防止

3.ぜい弱性等を抱える消費者を支援する関係府省庁等の連携施策の推進

(1)成年年齢引下げに伴う総合的な対応の推進

 成年年齢引下げの環境整備に関し、関係行政機関相互の密接な連携・協力を確保し、総合的かつ効果的な取組を推進するため、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議を、継続的に開催しており、2021年7月には、第5回会議を開催しました。

 また、2021年6月には、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議の下に設置された幹事会を開催して、2020年度の施策の進捗等を関係府省庁間で共有したほか、2021年度の施策の工程表を改訂するなどして、環境整備の施策の推進に関する進捗管理を実施しています。

 消費者庁では、「若年者への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議」を設置・開催し、2018年度から2020年度までの3年間を集中強化期間とする「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」を実施するとともに、2021年度は「成年年齢引下げに伴う消費者教育」全力キャンペーンに基づき、関係4省庁が更に連携し、若年者への消費者教育を推進しました。

 2022年4月の成年年齢引下げ後については、「成年年齢引下げ後の若年者への消費者教育推進方針―消費者教育の実践・定着プラン―」に基づき、引き続き関係省庁と連携して必要な施策を実施することとしています。

 貸金業については、日本貸金業協会の自主ガイドラインに、「若年者へ貸付けを行う場合には、貸付額が50万円以下であっても、収入の状況を示す書類の提出を受け、これを確認すること」が追加されました。これを踏まえ、金融庁から貸金業者に対し、自主ガイドラインを遵守するよう、要請文書を発出しました。また、金融庁ウェブサイトに、若年者向けの特設ページを開設し、成年年齢引下げに向けた金融庁の取組や、「過剰借入・ヤミ金融」に関する注意喚起、金融リテラシーの向上に役立つ情報を掲載し、SNSを活用した積極的な広報・啓発活動も実施しています。

 経済産業省は、日本クレジット協会と連携して、クレジットカード業者の若年者に対する与信の実態や自主的な取組状況等を把握するための調査を実施し、事業者による効果的な取組を推進する観点から、同協会に対して当該調査の結果を事業者にフィードバックするよう要請を行いました。また、2022年度以降、割賦販売法に基づく監督・検査を強化することとし、クレジットカード業者による若年者に対する適切な与信審査・管理、苦情対応、加盟店調査や指導等の措置の実施状況等を重点的に検証することを「令和4年度信用購入あっせん業者等に対する検査基本方針及び検査基本計画」に反映することとしています。さらに、クレジットカード業者によるこれらの取組への対応や若年者とクレジットカード発行契約を締結する際の適切な情報提供や注意喚起等の徹底について、日本クレジット協会を通じて要請を実施しました。

 加えて、日本クレジット協会や経済産業省のウェブサイトに、成年年齢引下げやクレジットの基礎知識等を解説するウェブコンテンツや相談窓口の情報を掲載したほか、全国の高校等への教材の配布や講師派遣等を通じた広報・啓発活動を行いました。また、関係省庁で実施する消費者相談ダイヤルの取組に参加し、消費者庁「18歳から大人」特設ページに相談窓口の情報を掲載しました。

 さらに、成年年齢引下げによって懸念される消費者被害の防止に向けて、若年者が学ぶ機会を増やすべく、関係府省庁等が作成したクレジット分野に限られない様々な分野の教材等を全国の学習塾等に展開する取組を実施しました。

(2)認知症施策の推進

 認知症施策推進大綱(2019年6月認知症施策推進関係閣僚会議取りまとめ)に基づき、認知症サポーターの養成促進を始めとする認知症に関する理解促進、高齢者や認知症等により判断力の低下した消費者を地域で見守る体制の構築推進、地域支援体制の強化等を通じ、認知症の人やその家族が地域の中の良い環境で自分らしく暮らし続けることの実現を図っています。

(3)障害者の消費者被害の防止策の強化

 消費者庁では、高齢者及び障害者の消費者トラブルの防止等を目的とし、障害者団体のほか高齢者団体・福祉関係者団体・消費者団体、行政機関等を構成員とする「第17回高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」では、「高齢者、障がい者の消費者トラブル防止のため積極的な情報発信を行う」、「多様な主体と緊密に連携して、高齢消費者・障がい消費者を見守り消費者トラブルの被害の回復と未然防止に取り組む」等の申合せをしました。「高齢者・障がい者の消費者トラブル 見守りガイドブック」(2020年2月作成)を活用した効果的な見守り活動を推進しました。また、地方消費者行政強化キャラバン等による地方公共団体の長等への呼び掛けや、地方消費者行政のための交付金等を通じ、消費者安全確保地域協議会の設置を促進しています。

 2021年10月1日、厚生労働省と消費者庁の連名で、地方自治体への通知「重層的支援体制整備事業と消費者安全確保地域協議会制度との連携について」を発出し、障害者を含めた地域住民の消費者被害防止のため、重層的支援体制整備事業と消費者安全確保地域協議会との連携の推進を図りました。

 国民生活センターでは、引き続き障害者からの消費生活相談を受け付けるとともに、相談体制の更なる整備を行っています。

 また、障害のある人やその周りの人々に悪質商法の手口やワンポイントアドバイス等をメールマガジンやウェブサイトで伝える「見守り新鮮情報」を発行するとともに、ウェブサイトではウェブアクセシビリティ対応等を実施しました。

 さらに、「くらしの豆知識(注44)」の作成に当たっては、カラーユニバーサルデザイン認証を取得しています。また、デイジー図書(国際標準規格の視覚障害者向けデジタル録音図書)を作成し、消費生活センターや点字図書館等に配布したほか、国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」に登録しました。

(4)アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル等依存症及びゲーム依存症についての対策の推進

 ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するために、ギャンブル等依存症対策基本法(平成30年法律第74号)及び同法に基づく「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」(平成31年4月閣議決定)等を踏まえ、消費者庁では、関係府省等との連携の下、消費生活相談への的確な対応の確保や地域における普及啓発のための地方公共団体向けの支援や、消費者向けの情報提供等に取り組んでいます。2021年度は、国民生活センターにおいて消費生活相談員向けにギャンブル依存症対策に関する研修を実施したほか、これまでに作成した注意喚起・普及啓発資料を活用した情報発信等に取り組みました。

 内閣官房では、関係省庁と連携し、ギャンブル等依存症対策基本法の規定に基づき、2019年4月に策定されたギャンブル等依存症対策推進基本計画に検討を加え、所要の変更を行った、新たなギャンブル等依存症対策推進基本計画が閣議決定されました(令和4年3月閣議決定)。

 厚生労働省は、都道府県等において、ギャンブル等依存症である者や家族等を早期に発見し、相談・医療機関等につなぐため、精神保健福祉センターや消費生活センターを始めとする関係機関における連携協力体制の構築等を図るための支援を行っています。また、依存症対策全国センターのポータルサイト等において、各依存症に関する情報や相談拠点機関・専門医療機関等の情報提供を行いました。

(5)青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備

 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)及び基本計画に基づき、関係府省庁が協力して、青少年のインターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動、青少年有害情報フィルタリングの性能の向上及び利用の普及等、青少年のインターネットの適切な利用に関する活動を行う民間団体等の支援等の関連施策を推進しています。

 2021年6月7日に決定された第5次基本計画(子ども・若者育成支援推進本部決定)を踏まえ、2017年の法改正を踏まえたフィルタリング利用率向上のための取組の更なる推進、青少年のインターネットを適切に活用する能力の向上促進、ペアレンタルコントロールによる対応の推進等、青少年のインターネット利用環境の整備に関する施策を総合的に推進しています。

(6)「多重債務問題改善プログラム」の実施

 消費者金融市場が拡大する中で、社会問題としての多重債務問題が深刻化したことを背景に、「貸し手」に対する所要の規制強化を図るため、いわゆる総量規制と上限金利引下げをポイントとする貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成18年法律第115号)が2010年6月に完全施行されました。同改正法の成立を機に、「借り手」に対する総合的な対策を講ずるため、政府は、関係大臣からなる「多重債務者対策本部」を設置しました。同本部の下で、「多重債務問題改善プログラム(注45)」を取りまとめ、多重債務者向け相談体制の整備・強化を始めとする関連施策に取り組んでいます。

 2021年には、新たな課題等への対応を含めた今後取り組むべき施策等について検討するため、有識者と関係省庁(注46)から構成される「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」を2回開催(6月、12月)しました。また、「多重債務者相談強化キャンペーン2021」(9月1日から12月31日まで)において、各都道府県における消費者及び事業者向けの無料相談会等の開催、ヤミ金融の利用防止等に関する周知・広報を実施するとともに、潜在的な多重債務者の掘り起こし等を図るため、相談窓口周知のためのポスター及びリーフレットを作成し、関係先に配布しました。また、ギャンブル等依存症対策の観点から、多重債務相談窓口と精神保健福祉センター等の専門機関との連携強化に向けた取組を進めています。

 警察庁では、都道府県警察に対して、ヤミ金融事犯の徹底した取締りのほか、ヤミ金融に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等の推進を指示しています。

【上記取組の実績】
・2021年12月末時点の貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある人数:9.5万人(2020年12月末:8.8万人)
・2021年度末時点の多重債務に関する消費生活相談の件数1万8631件(前年同期件数:1万8989件)
・2021年中の多重債務を理由とする自殺者数:645人(全自殺者数2万1007人)
・2021年(4月から12月まで)の金融庁・財務局等・日本貸金業協会における貸金に関する相談・苦情件数:約1.6万件(2020年4月から12月までの件数:約1.4万件)
・2021年中におけるヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員:502事件、598人(前年比90事件減、103人減)
・2021年中におけるヤミ金融に利用された口座の金融機関への情報提供件数:9,066件(前年比1,137件減)
・2021年中における携帯音声通信事業者への契約者確認の求めを行う旨の報告を受けた件数:1,598件(前年比172件減)(出資法又は貸金業法の規定に基づくもので、警察庁が都道府県警察(生活経済担当課)から報告を受けた件数)
・2021年中のインターネット上のヤミ金融事犯広告の削除要請件数:7万29件(前年比3万7401件増)

(7)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進

 厚生労働省では、生活困窮者自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図っています。

 2021年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少する方に緊急小口資金等の特例貸付を実施するとともに、住まいの確保を支援するため、住居確保給付金の支給対象の拡大等を行いました。

(8)孤独・孤立に起因する消費者被害の防止等のための啓発及び相談・見守り活動等の推進

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の影響により孤独・孤立が社会問題化しており、孤独・孤立した消費者は悪質な事業者のターゲットになりやすい状況にあります。

 消費者庁では、孤独・孤立に起因する消費者被害を防止するため、NPO等の支援団体と連携してオンライン相談会を実施し、孤独・孤立に起因した消費者被害の把握に努め、被害の防止・回復に向けた啓発の促進を図っています。また、孤独・孤立に起因した消費者被害に関するシンポジウムを開催し、被害事例や支援策の周知を行い、NPO等の支援団体に対しても被害防止・回復のための啓発を行います。

 また、周りに相談ができず、被害の拡大に結び付きやすい傾向もみられる孤独・孤立した消費者に対する地域の見守りを一層強化するため、地方公共団体における孤独・孤立した消費者の消費者トラブルを防止するための取組を重点的に支援するほか、地方におけるモデル事業の実施により、見守り活動の先進事例等を創出し、地方公共団体における消費者の見守り事業の企画、取組を支援します。さらに、消費生活に関して関心を持つ住民又はヘルパー・民生委員等消費者被害を発見しやすい立場にある者や、地域の金融機関、コンビニエンスストア、宅配事業者等の事業者を対象とし、消費生活協力員・協力団体の養成に向けた取組を行います。


  • (注44)消費者トラブル対策に役立つ情報をコンパクトにまとめた年1回発行の冊子。
  • (注45)同プログラムでは、「相談窓口の整備・強化」、「セーフティネット貸付の提供」、「金融経済教育の強化」、「ヤミ金の取締り強化」の四つの柱に沿って、取り組むべき施策等がまとめられている。
  • (注46)警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省。

担当:参事官(調査研究・国際担当)