第1部 第2章 第2節 (4)第2節のまとめ
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第2章 【特集】変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組~18歳から大人の新しい時代へ~
第2節 若者の消費行動と消費者トラブル
(4)第2節のまとめ
本節では、近年の若者の消費支出や消費行動、消費者トラブルの状況を分析しました。
若者の消費支出と貯蓄の傾向をみると、平均消費性向の低下、平均貯蓄率の増加等、堅実な傾向がみられました。
また、「消費者意識基本調査」の結果から、若者は、商品やサービスに関する情報収集の際は「SNSでの口コミ・評価」を最も重視し、購入の際は「価格の安さ」と「見た目・デザイン」を重視していることが分かりました。消費の特徴として、「理美容・身だしなみ」、「ファッション」や「交際(他人との飲食を含む。)」に加え、「今しかできない参加型の体験やコンテンツ(トキ消費)」や、「有名人やキャラクター等を応援する活動(推し活)」にお金をかけていることが明らかになりました。
さらに、消費生活相談情報の分析から、15歳から19歳までは美容に関する相談、20歳から29歳までは一人暮らしやもうけ話に関する相談件数が多いことや、SNSが消費者トラブルのきっかけになっていることが分かりました。
若者の中には、知識や経験の不足、経済的な余裕のなさ、コミュニケーションに対する苦手意識、様々な悩みや不安を抱えている人がいます。こうしたぜい弱性につけ込まれ、若者が消費者トラブルに巻き込まれるケースは少なくありません。2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられており、18歳から19歳までの若者における消費者トラブルの防止に向けて、更なる注意と取組が必要です。
若者の消費者トラブルの防止に向けては、若者の意識や消費行動、及び若者のぜい弱性も踏まえ、若者向けの消費者教育の充実、相談体制や情報提供の強化、情報収集の支援といった取組が重要と考えられます。その際には、若者の意識や行動には個人差があり、消費者トラブルへの遭いやすさも千差万別であることから、若者一人一人のぜい弱性に対応した取組が求められます。そのための手段として、若者が、自身の行動特性や悪質商法へのだまされやすさ等の心理的傾向を分析・把握できるツールを提供して、それに応じて消費者教育や情報提供を受けることができるようにすること、情報収集の支援を得ることができるようにすることが重要であると考えられます。
また、若者は、子供の頃からSNS等のソーシャルメディアを使いこなすソーシャルネイティブとして、デジタルリテラシーの高い世代であり、インターネットやSNSを情報収集ツールとして積極的に活用しています。こうした特徴を持つ若者が求めているものは、インターネットやSNS上で消費者トラブルへの対処方法に関する正確な情報に素早くアクセスできることであると考えられます。しかし、消費者トラブルの種類は非常に多岐にわたっており、同じようなトラブルでもケースバイケースで対処方法は異なるため、全ての消費者トラブルへの対処方法をあらかじめ網羅することは現実的ではありません。また、消費者が大量の情報の中から必要な情報を選び出してアクセスすることができる仕組みも必要になってきます。
こうした状況に鑑み、主要な消費者トラブルに関するFAQ等の充実を図るとともに、AIチャットボット等による支援ツールを導入していくなど、消費者の適切な情報収集をバックアップしていくことが、若者を含む消費者のニーズに応えていく、次世代の情報提供の在り方であると考えられます。そして、情報提供だけではトラブルを解決できない場合等、消費生活相談が必要な若者を相談窓口等へとつなげていくことが重要です。
他方で、若者は日常のコミュニケーションにおいてSNSを積極的に活用しており、電話や対面でのやり取りを主要な相談ツールとしている消費生活センターとの間で、コミュニケーションツールのミスマッチが生じているとの指摘もあります(注43)。こうしたミスマッチを解消し、若者が相談しやすい体制を整備するために、メールやSNS等による相談システムを構築するなど、相談手段の多様化に取り組むことが必要です。
- (注43)消費者委員会「成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止に向けた対応策に関する意見」
担当:参事官(調査研究・国際担当)