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第1部 第2章 第2節 (1)若者の消費行動

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組~18歳から大人の新しい時代へ~

第2節 若者の消費行動と消費者トラブル

(1)若者の消費行動

■若者に特徴的な新たな消費形態

 ここでは、「消費者意識基本調査」の結果を基に、若者に特徴的な消費形態とされている「トキ消費」や「推し活」に関する若者の意識をみていきます。

若者に特徴的な消費形態「トキ消費」、「推し活」

 従来からの消費行動である、モノ(商品)を購入し所有する消費形態は「モノ消費」、旅行、習い事、芸術鑑賞等の機会やサービスを消費する形態は、「コト消費」といわれています。一方、その時、その場所でしか体験できないスポーツイベントやフェス等で、感動を他の参加者と共有するとともに、自らも参加者として盛り上がりに寄与し一体感を得る消費形態は「トキ消費」といわれています。近年、若者の消費形態は、「コト消費」から「トキ消費」に移行しているといわれており、若者の「トキ消費」への注目が高まっています。

 「消費者意識基本調査」では、「参加型のイベント(音楽/グルメフェス、コンサート、ファンイベント等)」にお金をかけている人の割合は、若者が全体よりも高くなっていることが分かりました(図表Ⅰ-2-2-5参照。)。

 このほか、有名人やアニメ、ゲーム等のキャラクターや鉄道等、応援する対象にお金を使う消費形態は、「推し活(おしかつ)」といわれています。2021年の流行語にもなった「推し活」は、近年、若者が長時間利用しているSNSによって、応援する人同士のみならず、応援する人と応援される人のつながりも強くなっています。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時において、コンサートやイベント、映画の上映中止等があったものの、それ以前の2019年度のアニメの市場規模は3,000億円、アイドルは2,610億円と推定(注32)され、「推し活」に着目してグッズやイベントの機会を提供する企業や団体も増えています。

 「消費者意識基本調査」では、「有名人やキャラクター等を応援する活動(グッズ購入等)」にお金をかけている人の割合は、若者が全体よりも高くなっていることが分かりました(図表Ⅰ-2-2-5参照。)。

若者は他の年齢層と比較して、「今しかできない参加型の体験やコンテンツ」、「有名人やキャラクター等の応援」への消費意欲が高い

 「消費者意識基本調査」で、「トキ消費」への意欲を聞いたところ、「今しかできない参加型の体験やコンテンツにお金を使う」に「当てはまる」(「とても当てはまる」又は「ある程度当てはまる」の計)と回答した人の割合は、10歳代後半で28.8%、20歳代で35.1%であり、他の年齢層と比較して高くなっています(図表Ⅰ-2-2-11)。

 また、消費者に「推し活」への意欲を聞いたところ、「有名人やキャラクター等を応援する活動にお金を使う」に「当てはまる」(「とても当てはまる」又は「ある程度当てはまる」の計)と回答した人の割合は、10歳代後半で42.1%、20歳代で31.8%であり、他の年齢層に比べ高くなっています(図表Ⅰ-2-2-12)。

 若者は他の年齢層と比較して、「トキ消費」や「推し活」への意欲が高くなっており、これらの意欲は「集まりやイベントの参加者同士の一体感が大事だ」、「その場・その時しか得られない体験をしたい」といった傾向(第1部第2章第1節(2)参照。)によるものと考えられます。

 以上の結果から、若者は商品・サービスの購入を検討する際の情報を主に「SNSでの口コミ・評価」から収集し、購入の際には他の年齢層と比較して「価格の安さ」、「見た目・デザイン」等を重視する一方、「環境問題・社会課題への解決への貢献」の重視度は一部を除くと高くないことが分かりました。また、若者に特徴的な消費として、「トキ消費」に関連付けられる「今しかできない参加型の体験やコンテンツ」や「推し活」に関連付けられる「有名人やキャラクター等を応援する活動」にお金をかけていることが分かりました。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大時において、オンラインでのライブ配信や仮想空間でのフェス等、新しい生活様式にも対応する新たな「トキ消費」や「推し活」の機会が数多く試みられており、若者の新たな消費行動への参加機会は、今後も多様化していくものと考えられます。

COLUMN3
ライブ配信サービス(投げ銭等)に関する消費の動向


  • (注32)出典:株式会社矢野経済研究所「『オタク』市場に関する調査(2021年)」(2021年10月25日発表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)