第1部 第2章 第1節 (1)若者を取り巻く社会環境の変化
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第2章 【特集】変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組~18歳から大人の新しい時代へ~
第1節 若者を取り巻く環境と意識の変化
(1)若者を取り巻く社会環境の変化
■成年年齢引下げ
日本における民法(明治29年法律第89号)上の成年年齢は、1876年以来、20歳とされていましたが、近年、公職選挙法の選挙権年齢等が18歳と定められ、18歳、19歳の若者にも国政上の重要な判断に参加してもらうための政策が進められています。また、世界的にも成年年齢を18歳とするのが主流となっています。これらを踏まえ、市民生活に関する基本法である民法においても、18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論が行われ、2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられました。今般の成年年齢の引下げは、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重し、消費生活の変化や積極的な社会参加を促すものと考えられます。
成年年齢の引下げによって、18歳、19歳の若者は成人として親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになります。例えば、携帯電話を契約する、クレジットカードを作る、高額な商品を購入しローンを組むといった場面で、未成年の場合は親の同意が必要ですが、成年の場合は、親の同意がなくても、一人で契約ができるようになります。また、親権に服さなくなるため、自分の住む場所、進学や就職の進路等も自分の意思で決定できるようになります。
未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で定められた「未成年者取消権」によって、その契約を取り消すことができます。この未成年者取消権は、未成年者を保護するためのものであり、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしています。成年に達すると、親の同意がなくても一人で契約ができるようになるとともに、未成年者取消権も行使できなくなります。つまり、契約を結ぶかどうかを決めるのも、その契約に対して責任を負うのも自分自身になります。契約には様々なルールがあり、知識や経験に乏しい成年者は、安易に契約を交わすとトラブルに巻き込まれる可能性があります。また、そのような成年者を狙う悪質な業者もいるため、注意が必要です。
成年者になった若者が消費者トラブルに遭わないようにするためには、早い段階から、契約に関する知識を学び、様々なルールを知るとともに、その契約が必要かよく検討する力を身に付けておくことが重要です。
担当:参事官(調査研究・国際担当)