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COLUMN6 国際消費者政策研究センターでの研究プロジェクト

 消費者庁では、消費者政策の研究拠点として、2020年7月に開設した新未来創造戦略本部に国際消費者政策研究センターを設置しました。同センターでは、デジタル化等の消費者を取り巻く環境の変化や高齢化の進展等によるぜい弱な消費者の増加といった新たな政策課題等へ対応するため、行動経済学、消費者法、老年精神医学、社会心理学、データサイエンス等の専門家(客員の研究員)が参画して理論的・実証的な消費者政策研究プロジェクトを推進しています(図表1)。本コラムにおいては、主な研究プロジェクトを紹介します。

●新型コロナウイルス感染拡大による消費者の消費行動の変化等に関する研究

 新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、マスクやアルコール消毒製品など衛生用品の品不足や高額転売、デマ情報の拡散等によるトイレットペーパーなどの生活必需品の買占めといった問題が起こりました。また、宅配・テイクアウト・中食の利用や通信販売、インターネット取引の増加など生活スタイルの変化により人々の消費行動の大きな変化も起きています。

 このような状況を踏まえ、非常時の消費行動の変化を分析するとともに、効果的な情報提供方法を検証することで、消費者教育・啓発活動において役立てることを目的としたプロジェクトを実施しています。具体的には、生活協同組合とくしま生協の協力の下で組合員から消費者モニターを募り、新型コロナウイルス感染症の消費生活への影響に関するアンケート調査、情報チラシを用いた介入実験及び購買情報の分析を2021年1月から実施しています。

●デジタル社会における消費者法制の比較法研究

 社会のデジタル化が急速に進んでいる中で、デジタル分野における消費者問題は、世界的な関心事項となっており、取引のデジタル化に伴い、国境を越えた消費者被害も増加しています。このため、広く諸外国のデジタル社会での消費者法制や政策を調査・分析し、日本における消費者問題の解決の一助とするための国際的な研究を進めています。

 具体的には、デジタル分野における新たな消費者法制の整備が進められているドイツ、フランス等の欧州連合(EU)諸国にアメリカ、イギリスを加えた欧米諸国を中心に、デジタルコンテンツ・サービス等に関するEU指令の加盟国における国内法化の状況や英米における法整備の検討の状況等について文献調査等を進めています。新型コロナウイルス感染症の感染状況も踏まえつつ、将来的には海外の研究者等と直接それぞれの研究を基に意見交換等を行う国際セミナーの開催等を実施していきたいと考えています。

●高齢者の認知機能障害に応じた消費者トラブルと対応策の検討に関する研究

 日本では、高齢化の進展により、2018年には認知症の人の数は500万人を超え、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と見込まれています。他方で、軽度認知障害等の消費者は、認知機能の低下に気付かないまま消費行動を行い、消費者被害や消費者トラブルに遭っている可能性があります。また、認知症には、アルツハイマー型やレビー小体型、前頭側頭型等のタイプがあり、それぞれ異なる行動特性を持っていることから、その傾向を踏まえた対応が求められます。

 同センターでは、このような認知症や認知機能障害のある消費者の消費行動特性や消費者被害・トラブル等の実態を明らかにして、消費生活センター等での相談対応や高齢者等の見守りネットワークでの対応力向上にいかすことを目指した研究を進めています。具体的には、認知症や認知機能障害に関連する消費生活相談情報を抽出し、その傾向を分析する試みを行っているほか、企業における高齢の顧客への対応や課題等に関するヒアリング調査の実施などを進めています。

国際消費者政策研究センターの概要

担当:参事官(調査研究・国際担当)