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COLUMN1 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う消費者トラブル:海外事情

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、日本国内のみならず、海外の消費者の消費生活にも大きな影響を及ぼしました。2020年3月頃には多くの国で食料や日用品等の価格の高騰や品薄、間違った情報や誤解を招く情報等が問題となったことがわかりました(注1)(図表1)。

 また、英国のCMA(競争・市場庁)の調査によると、パスタ、マスク、手指消毒液、トイレットペーパー等の価格が高騰し、例えば手指消毒液は平均367%、最も値上げ率が少なかった米でも平均50%もの価格上昇(いずれも2020年4月から受け付けた相談のうち、従前の価格と高騰後の価格が把握できたものから算出した値)がみられました(注2)。こうした状況は、欧米やアジア太平洋等、地域に関係なく広く確認されています。

 感染拡大防止策に伴う行動制限や生活様式の変化に伴うトラブルも増加しました。オンライン上で購入した商品が届かない等のトラブルや、航空券、イベント等のキャンセル料・返金トラブル、またフィットネスジム等の閉鎖中の月謝・解約料等のトラブルも増加しました。FTC(連邦取引委員会)が受けた、オンラインで購入した商品が届かないなどのトラブルに関する相談件数の推移(週ごと)では、米国において、オンラインで購入した商品が届かない等のトラブルに関する相談が急激に増加したことを示しています(注3)(図表2)。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により経済的に困難な状況にある消費者を狙った怪しいもうけ話や税金の払い戻しを受けられる等の勧誘に関する相談もみられており、中には個人情報や金銭等を騙し取られるケースも報告されています(注4)

 また、ワクチンや治療薬をめぐる社会的な動きや消費者の関心の高まりに伴い、関連する消費者トラブルも発生しました。英国では、NHS(国民保健サービス)を騙った「ワクチンを優先的に受ける権利がある」とするSMSが届き、個人情報等の入力を求められる事例が起きた(注5)ほか、米国でも同種の事例に加え、ワクチンや治療薬の治験を騙り、個人情報や金銭等を詐取する事例が報告されています(注6)

間違った情報や誤解を招く情報

 日本でも、間違った情報や誤解を招く情報によるトイレットペーパー等の買いだめ・買い占め等が発生したほか、インターネット広告において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする健康食品等がみられましたが(注7)、海外でも新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している国を中心に、同様の事例がみられました。EUでは、健康食品等において病気の予防や症状の緩和等をうたうことが禁じられていますが、2020年4月から11月までで、592件の違法な健康食品の売込広告がみられました。ドイツでは60件の問題のあるサイトが見つかりました(注8)。スウェーデンでも「魚の油が新型コロナウイルス感染症の感染対策に有効」とした広告が拡散されました(注9)

粗悪な商品の流通

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、消毒液等衛生用品の需要が高まりましたが、広告や表示と内容が異なる粗悪な商品の流通がみられました。例えば韓国では人体に使用してはならない成分が含まれた商品が手指消毒液としてインターネット上で販売されるという事例がみられました(注10)。オーストラリアでは、アルコール75%含有をうたっていたにも関わらず実際には23%程度しか含まれていない商品がみられました(注11)

 こうした粗悪な商品への対応として、例えば、中国では、行政機関が商品のラベル等に表示された効果があるか検証し公表するなど(注12)、多くの国で行政機関や消費者団体が消費者への情報提供を行いました。

共同宣言の様子

購入した商品が届かない等のトラブルに関する相談件数の推移(週ごと)


  • 注1:国際消費者機構 (Consumers International) 「COVID-19 Member Survey Briefing」
     https://www.consumersinternational.org/media/343285/covid-19-member-survey-march2020.pdf?utm_source=Consumers+International+-+Members+%26+Subscribers&utm_campaign=02cc0bc063-COVID19SurveyBriefingENG&utm_medium=email&utm_term=0_eab7ec67e5-02cc0bc063-44635643
  • 注2:競争・市場庁 (CMA) 「Research and analysis Protecting consumers during the coronavirus (COVID-19) pandemic: update on the work of the CMA’s Taskforce」(2020年4月24日公表)
  • 注3:連邦取引委員会 (Federal Trade Commission) 「Pandemic purchases lead to record reports of unreceived goods」(2020年7月1日公表)
  • 注4:連邦取引委員会 (Federal Trade Commission) 「Income scams: big promises, big losses」(2020年12月10日公表)
  • 注5:英国CTSI (Chartered Trading Standards Institute) 「Fake NHS COVID-19 vaccination messages target vulnerable public」(2021年1月6日公表)
  • 注6:連邦取引委員会 (Federal Trade Commission) 「COVID-19 clinical trial: real or fake? Learn how to tell the difference.」(2020年10月23日公表)
  • 注7:消費者庁「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品等の表示に関する改善要請及び一般消費者等への注意喚起について」(2021年2月19日公表)
  • 注8:ヘッセン消費者センター(Verbraucherzentrale) 「Corona-Nahrungserganzungsmittel- Das tun die Behorden」(2020年11月24日公表)
  • 注9:スウェーデン消費者庁 (Konsumentverket) 「Domstolen: Forbjudet gora corona-kopplad reklam」(2020年12月10日公表)
  • 注10:韓国消費者院 (Korea Consumer Agency) 「Not-for-human-use sterilizers and sanitizers sold as hand sanitizers」(2020年6月18日公表)
  • 注11:CHOICE「People power brings a big win on hand sanitiser labelling」(2020年11月25日公表)
  • 注12:HKCC (香港消費者委員会) 「Alcohol Test - Is Sterilized Disinfection Alcohol Toxic?」(2020年4月14日公表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)