結び
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第2章 【特集】「新しい生活様式」における消費行動〜「消費判断のよりどころ」の変化〜
結び
「新しい生活様式」において人との接触回避が求められる中、対面を前提とした消費が減少し、オンラインを介した消費が増加しています。特に旅行や外食などリアルでの体験(コト)を求める「コト消費」を減らし、オンラインでの食料品や家電等の購入といった「モノ消費」、インターネット配信による娯楽やオンラインを通じたコミュニケーション等といった「コト消費」を増加させる動きがみられています。
新型コロナウイルス感染症に対する不安感が存在し、見えない相手方とのインターネット上の取引が増大する状況において、多くの消費者は、商品・サービスの購入に当たり、商品の現物確認や価格などを従来から変わらず重視している一方、レビューなどインターネット上の情報を従来より重視するようになった消費者もみられました。飲食店選びにおいても、消費者が重視する項目として、感染防止対策といった新たな視点が加わっています。消費者は自らが適切な判断を行えるよう、商品やサービスの購入に当たり重視する項目を拡げつつあり、「消費判断のよりどころ」は変化の兆しがあることがうかがえます。
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、マスク等の物資の品薄や高額転売、不確かな情報の投稿を契機としたトイレットペーパーの買占め、新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法が発生するなど、消費者の暮らしに影響を及ぼす様々な問題が起こりました。こうした中、特に感染が拡大していた2020年3月から5月頃の緊急時においては、生活必需品について、「普段より多く買う」、「数店舗店を探し回る」又は「高額でも購入する」など普段とは異なる行動をとった消費者が一定程度存在しました。また、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中で消費者がインターネット通販を利用しようとしてトラブルに遭う等、新型コロナウイルス感染症に関する消費生活相談が多く寄せられました。具体的な相談内容をみると、マスク等に関する相談のほか、旅行等のキャンセルに関する相談、新型コロナウイルス感染症に便乗する悪質商法や詐欺が疑われる相談等が見受けられました。このような状況を踏まえ、消費者庁では、マスク等の物質の需要増への対応、不当表示等への対応や悪質商法等の注意喚起等、様々な取組を行いました。
今般の経験や本章における分析を踏まえ、「消費の場」がオンライン上にシフトする中で、消費者はより様々な情報に直面しており、消費者には、正しい情報を見極め、自ら適切に判断し冷静に行動することが求められます。事業者は、消費者の適切な判断等に資するよう、正しく分かりやすい情報を迅速に発信すること等が必要です。消費者庁としても、引き続き関係府省と連携し、消費者への情報発信・啓発や注意喚起、不当表示等への厳正な対応を行うとともに、デジタル化に対応した消費者教育や消費者が安心してオンライン上での消費を行えるような環境整備等に積極的に取り組んでいきます。
担当:参事官(調査研究・国際担当)