第2部 第2章 第2節 3.その他の持続可能な消費社会の形成に資する消費者と事業者との連携・協働
第2部 消費者政策の実施の状況
第1章 消費者庁における主な消費者政策
第2節 消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進
3.その他の持続可能な消費社会の形成に資する消費者と事業者との連携・協働
(1)エシカル消費の普及啓発
より良い社会に向けて、地域の活性化や雇用等を含む人や社会・環境に配慮した消費行動である「エシカル消費」への関心が高まっています。
こうした消費行動の変化は、消費者市民社会の形成に向けたものとして位置付けられるものであり、日本の経済社会の高品質化をもたらす大きな可能性を秘めています。そして、その実現のためには、消費行動の進化と事業者サイドの取組が相乗的に加速していくことが重要です。
以上を踏まえ、消費者庁ではエシカル消費の内容やその必要性等について検討し、国民の理解を広め、日常生活での浸透を深めるためにどのような取組が必要なのかについて調査研究を行う、「倫理的消費」調査研究会を実施し、2017年4月に取りまとめを公表しました。
2020年度は、エシカル消費の特設サイトを開設し、各主体における取組や実践事例を発信しました。また、政府広報室との共催で、エシカル消費及び食品ロス削減をテーマとしたオンラインシンポジウムを愛知県及び大阪府で開催しました。さらに、パンフレット及びポスターの作成、学校で活用できる教材(指導用解説書、認証ラベルの付された商品の解説資料)の作成、ワークショップの開催等、様々な取組により、更なる普及啓発に取り組んでいます。
また、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(平成28年法律第48号。以下「クリーンウッド法」という。)は、地域及び地球環境の保全に資することを目的として、木材関連事業者には、取り扱う木材等の合法性の確認等を求めるとともに、木材を取り扱う事業者には、合法伐採木材等の利用に努めることを求めています。このため、農林水産省、経済産業省、国土交通省では、合法伐採木材の流通及び利用を促進する意義について消費者や事業者に理解を深めてもらうために、合法伐採木材の利用促進に向けた普及啓発等に取り組んでいます。
特に、農林水産省では、合法伐採木材等の利用促進のため、木材関連事業者が行う木材等の合法性の確認に必要な各国の法令等の情報を収集し、ウェブサイト「クリーンウッド・ナビ」において情報提供を行っています。また、合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に講ずる木材関連事業者の登録促進のため、セミナーや個別相談会を開催しています。さらに、消費者や事業者に対するクリーンウッド法や合法伐採木材等の普及啓発のため、森林・林業・木材産業関係団体で構成される協議会活動において、全国規模の展示会への出展などによる普及啓発活動に取り組んでいます。
(2)消費者志向経営の推進
消費者庁は、事業者団体や消費者団体と連携して、事業者の消費者志向経営(愛称:サステナブル経営)を推進しています。
2016年10月に開催した「消費者志向経営推進キックオフシンポジウム」において、事業者団体、消費者団体、消費者庁で構成される消費者志向経営推進組織(プラットフォーム)を設けました。その後、同推進組織では、「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動(注73)」等の推進活動を進めています。2021年3月末時点で、191事業者が自主宣言を公表しており、宣言内容に基づいた取組のフォローアップ結果も113事業者が公表しています。
2017年10月には、新未来創造オフィスにおける取組として、徳島県との共催により、「とくしま消費者志向経営推進キックオフシンポジウム」を開催し、徳島県、事業者団体、消費者団体等で構成される「とくしま消費者志向経営推進組織」が発足しました。新未来創造オフィスが同推進組織や四国の地方公共団体と連携した取組の結果として、2021年3月末時点で、四国内の78事業者が自主宣言を公表しています。
2020年度には、「消費者志向経営の推進に関する有識者検討会」を開催しました。同有識者検討会では、消費者志向経営について、持続可能な社会への貢献を目標に位置付け、「消費者」と「共創・協働」して「社会価値」を向上させる経営であるとの概念整理を行うとともに、具体的な活動内容に基づく客観的な評価軸を策定しました。
また、消費者志向経営のより一層の推進に向けて、優良事例を発信していくため、2018年度から「消費者志向経営優良事例表彰」を行っています。2020年度には、有識者検討会において再定義された消費者志向経営の概念や客観的な評価軸に基づき、当該表彰を実施しました。内閣府特命担当大臣表彰として1社、消費者庁長官表彰として6社を表彰し、2021年3月15日に開催した日経SDGsフォーラムにおいて表彰式を行いました。
(3)「ホワイト物流」推進運動の展開
トラック運転者不足に対応し、国民生活や産業活動に必要な物流機能を安定的に確保するとともに、経済の更なる成長に寄与するため、トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化や、女性や高年齢層を含む多様な人材が活躍できる働きやすい労働環境の実現に取り組む、「ホワイト物流」推進運動を、関係省庁等と連携して推進しています。その一環として、消費者に対し、再配達の削減や引越時期の分散化を呼び掛けています。2020年度には、引き続きポータルサイト等を通じて消費者に対する呼び掛けを行うとともに、荷主事業者等を対象としたオンラインセミナーを開催し、トラック運送業の取引環境適正化に向けた取組の紹介や本運動賛同企業における具体的な取組内容の紹介等を行いました。
- 注73:事業者が自主的に消費者志向経営を行うことを自主宣言・公表し、宣言内容に基づいて取組を実施し、その結果をフォローアップして、公表する活動。推進組織では、各企業の自主宣言や取組を推進組織のウェブページ(消費者庁ウェブサイト内)へ掲載し、消費者・社会へ広く発信している。
担当:参事官(調査研究・国際担当)