文字サイズ
標準
メニュー

第2部 第2章 第2節 2.環境の保全に資する消費者と事業者との連携・協働

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第2節 消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進

2.環境の保全に資する消費者と事業者との連携・協働

(1)脱炭素社会づくりに向けたライフスタイルの変革

 家庭・業務部門における地球温暖化対策を推進するため、2015年7月に“COOL CHOICE”が開始されました。COOL CHOICE (賢い選択)は、日本の温室効果ガスを2030年度に2013年度比で26%削減することに向け、脱炭素社会づくりに貢献する製品への買換え、サービスの利用、ライフスタイルの選択等の賢い選択を促す取組です。脱炭素社会の実現に向けて、国民一人一人の積極的かつ自主的な行動喚起を促すことで、更なるCO2の削減や環境負荷の低減が期待できます。

 さらに、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロとする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて、産学官民と連携した取組をより一層推進していきます。

 2020年度には、在宅時間の増加を踏まえ、家庭の省エネ対策として、インパクトの大きいエコ住宅・断熱リフォームと省エネ家電への買換えを促進する「みんなでおうち快適化チャレンジ」キャンペーンを関係省庁や関係業界等と連携して実施しました。

(2)海洋プラスチックごみ削減に向けた国民運動(「プラスチック・スマート」キャンペーン)の推進

 環境省では、世界的な海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、あらゆる普及啓発・広報を通じて海洋プラスチックごみ汚染の実態の正しい理解を促しつつ、国民的気運を醸成し、個人・地方公共団体・NGO・企業・研究機関等幅広い主体が連携協働して“プラスチックとの賢い付き合い方”を進めることを後押しするため、2018年10月に「プラスチック・スマート」を立ち上げました。そうした幅広い主体から、海洋プラスチックごみ問題の解決に貢献する約2,000件の取組が登録されています(2021年3月時点)。

(3)循環型社会形成に向けた情報提供事業・普及啓発事業の実施等

 環境省では、インターネットをよく利用する若い世代を中心に、ごみの減量・資源の有効活用について恒常的に周知徹底を図るため、ウェブサイト「Re-Style(注67)」を運営し、循環型社会の形成に関する最新データやレポート等の掲載、循環型社会形成推進基本計画の周知及び循環型社会に向けた多様な活動等の情報を定期的に更新し、適時に改善を行っています。ごみを減らし、資源をできるだけ有効に活用するために日常生活においてできること等について分かりやすく情報提供することにより、3Rの取組を促進しています。

 また、2015年12月に「家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」を、2016年9月に「水銀使用製品の適正分別・排出の確保のための表示等情報提供に関するガイドライン」を経済産業省と共に策定し、廃棄された水銀使用製品の適正処理や、水銀使用製品に関する消費者への情報提供を推進しています。

 このほか、経済産業省及び関連6省(注68)では3Rに貢献している個人、グループ、学校及び特に貢献の認められる事業所等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」(主催:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会)を後援し、優れた3Rの取組の普及を支援しています。

 経済産業省では、2020年10月の3R推進月間において、ポスター展示、リサイクルプラント見学会や関係機関の実施するイベント等のPRを行うとともに、「資源循環技術・システム表彰」(主催:一般社団法人産業環境管理協会)に対する後援を通じ、新たな資源循環ビジネスの創出を支援しました。

(4)生物多様性(注69)の保全と持続可能な利用の促進

 環境省では、経済社会における生物多様性の保全と持続可能な利用の主流化を図るため、持続可能な開発目標(SDGs)の普及、ポスト2020生物多様性枠組み等の国際社会の動向を踏まえ、国内外の先進的な取組事例を収集・発信し、事業者や消費者に必要とされる具体的な取組を促すとともに、行動を促進するために必要な措置を引き続き検討しています。「生物多様性民間参画ガイドライン(第2版)」を事業者に向けて継続的に普及させるとともに、SDGsの普及やESG金融の拡大、ポスト2020生物多様性枠組の採択等、生物多様性に関する最新の動向を踏まえ、「生物多様性民間参画ガイドライン(第2版)」の改定版(第3版)の検討を進め、個々の事業者によるサプライチェーン等も考慮した自主的な取組の促進を図るとともに、事業者間及び市民を含む多様な主体間の連携・協働を促進しています。

 2020年度には、民間事業者による優れた取組を「民間参画事例集」及び「情報開示グッドプラクティス集」として作成し、環境省ウェブサイトにおいて公表しました。民間参画ガイドライン(第2版)については、各種の企業向け講演・セミナーで紹介・解説を行いました。また、改訂版(第3版)について、有識者を交えた検討会を実施し、素案作成を開始しました。

 また、消費者に向けて、「MY行動宣言(注70)」の普及を通じて、生物多様性に配慮した商品の選択の促進を図っています。

(5)有機農産物を始めとする環境に配慮した食品への理解と関心の増進

 有機農業は、農業の自然循環機能を増進し、農業生産活動に由来する環境への負荷を大幅に低減するものであり、生物多様性の保全等に資するだけでなく、消費者の食料に対する需要が高度化し、かつ、多様化する中で、安全かつ良質な農産物に対する消費者の需要に対応した農産物の供給に資するものです。

 農林水産省では、国産の有機食品に対する消費者の需要を喚起するため、2020年9月に小売及び飲食事業者と連携する「国産有機サポーターズ」を立ち上げ、取組事例集の作成やワークショップの開催などの取組を支援するとともに、2021年1月に参加事業者の意見を発信するセミナーを開催するなど、有機農業関係者及び消費者に対して国産有機サポーターズの取組に関する情報発信を行いました。

 また、有機農業をいかして地域振興につなげている地方公共団体の相互の交流や連携を促すためのネットワーク構築を推進し、2021年2月には有機農産物の学校給食での利用など、有機農業を地域で支える取組事例の共有するオンラインセミナーを開催しました。

 このほか、未来につながる持続可能な農業推進コンクールを実施し、引き続き有機農業を始めとする環境保全型農業に対する国民の理解を深める取組を行いました。

 また、JAS法では、有機農産物及びその加工品について、JAS認証を受けていない製品が「有機○○」と表示することを規制している一方、有機畜産物及びその加工品については、日本での流通量が少なかったため、「有機○○」に関する表示規制はしていませんでした。しかしながら、近年、有機畜産物及びその加工品の国内流通の増大に伴って「有機○○」等の表示が増加し、消費者の適正な商品選択に支障が生じてきていることから、有機畜産物及びその加工品についても、JAS認証を受けたもののみを「有機○○」と表示する対象となるよう日本農林規格等に関する法律施行令(昭和26年政令第291号)の一部を改正し、改正政令が2020年1月に公布され、同年7月に施行されました。

 また、有機JAS制度に関して、農林水産省ウェブサイト(注71)等により、消費者等への普及・啓発を実施しています。

(6)各種リサイクル法等の普及啓発

 環境省では、「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」の機運を活用した「アフターメダルプロジェクト」による小型家電リサイクル制度の啓発や、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)に基づく違法な不用品回収業者対策としてポスター、パンフレット等の作成を実施しました。今後とも各種リサイクル法や3R(注72)全般にわたる活動について、各メディアを通じた広報を実施し、国民・関係機関に普及啓発を行うこととしています。また、2016年度以降で実施した小学校でのモデル授業の課題や改善点を整理し、メダルプロジェクトその他の国民参画型プロジェクトの内容を盛り込むなど、より効果的な学習指導案を作成した上で、モデル授業の実施を多くの小学校に働き掛けています。2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、対面を極力避け、普及啓発のための動画制作、教育機関へのリーフレットの配布、メールを活用した消費者向けの情報も含めリサイクルに関する情報を地方公共団体に発信しました。

 経済産業省では、「資源循環ハンドブック2020」を4,000部作成し、関係機関に配布したほか、3Rに関する環境教育に活用するなどの一般の求めに応じて配布を行っています。


  • 注67:https://www.re-style.env.go.jp/
  • 注68:関連6省とは、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省及び環境省のこと。
  • 注69:生物多様性基本法(平成20年法律第58号)において「生物の多様性」とは、様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在することとされている。
  • 注70:「MY行動宣言」とは、国民一人一人が生物多様性との関わりを自分の生活の中で捉えることができるよう、五つのアクション(たべよう、ふれよう、つたえよう、まもろう、えらぼう)の中から自らの行動を選択して宣言する、生物多様性の普及・啓発に関する取組のこと。
  • 注71:https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
  • 注72:環境問題への対応としては、廃棄物等の発生抑制、再利用、再生使用が重要となるが、これらの英語の頭文字を採って、3R(Reduce、Re-use、Recycle)と呼んでいる。

担当:参事官(調査研究・国際担当)