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第2部 第2章 第2節 4.事業活動におけるコンプライアンス向上に向けての自主的な取組の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第2節 消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進

4.事業活動におけるコンプライアンス向上に向けての自主的な取組の推進

(1)公益通報者保護制度を活用したコンプライアンス確保の推進

 消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会を実現していく上で、これを損なうような企業の不祥事を防止するという観点は重要です。企業の不祥事は、企業内部の労働者からの通報をきっかけに明らかになることが少なくないことからも、労働者のこうした通報を正当な行為として解雇等の不利益な取扱いから保護する必要があります。

 こうしたことから、公益通報者保護法が2004年に成立し、2006年から施行されています。同法では、労働者がどこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかという保護の要件や、公益通報に関して事業者・行政機関が講ずるべき措置等が定められています。

 なお、公益通報の対象は、国民生活の安心や安全を脅かす法令違反の発生と被害の防止を図る観点から、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」に違反する一定の行為となっており、2020年度末時点で、474本の法律が対象法律として定められています。

 消費者庁では、事業者のコンプライアンス経営を促進するため、例年、民間事業者向け説明会の開催等を通じて、公益通報者保護制度の意義・重要性について周知を行っているほか、行政機関職員向けの公益通報者保護制度に関する研修会を全国各地で開催しています。2020年度は、公益通報者保護制度について分かりやすく解説したハンドブックを、民間事業者や行政機関等に広く配布する等、引き続き周知啓発に取り組みました。

 また、公益通報者保護法について、規律の在り方や行政の果たすべき役割等に関する方策を検討するため、2018年1月に、内閣総理大臣から消費者委員会に対し諮問が行われました。同年12月に、同諮問に対し消費者委員会から答申が出されたところ、消費者庁では、同答申の内容や意見募集の結果等を踏まえ、所要の改正を行う法案の検討を行いました。このような検討を経て、事業者に対する内部通報対応体制整備の義務付け、公益通報対応業務従事者等に対する守秘義務及び同義務違反に対する罰則の新設、行政機関への通報に関する保護要件の緩和、保護対象となる通報者や通報対象事実の範囲の拡大等を内容とする改正公益通報者保護法が第201回通常国会において成立しました。

 改正公益通報者保護法の施行に向けた準備として、改正法の周知広報のほか、2020年10月から「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会」を開催し、内部通報対応体制整備に関する指針の内容の検討を行いました。引き続き、改正公益通報者保護法の円滑な施行に向けて指針の策定等に取り組んでいます。

 公益通報者保護制度の実効性向上に向けた取組として、2019年2月から、内部通報制度を適切に整備・運用している事業者に対する認証制度(自己適合宣言登録制度)の運用を消費者庁が指定した指定登録機関において開始し、2020年度末時点で、約100事業者が同制度に登録されています。

 このほか、消費者委員会から出された答申等を踏まえ、2021年3月に、消費者庁において従来の公益通報者保護制度相談ダイヤルを拡充し、公益通報に関する通報先(権限を有する行政機関の特定が難しい通報事案)に関する相談対応等も行う「公益通報者保護制度相談ダイヤル(一元的相談窓口)」の運用を開始しました。

 加えて、新未来創造戦略本部では、市区町村や中小企業の通報窓口の整備率が十分ではない状況を踏まえ、四国4県等と連携して公益通報者保護制度の整備を促進するための先進的な取組を行ってきました。その結果、徳島県内市町村、愛媛県及び香川県内市町における内部職員等からの通報窓口及び外部の労働者等からの通報窓口の整備率100%となったほか、高知県内市町村における通報窓口の整備率も大幅に向上しました。今後は、これらの取組の効果についての検証結果等を踏まえ、積極的に周知広報を行い、全国の地方公共団体、事業者の通報窓口の整備等を促進し、制度の一層の実効性の向上に取り組んでいきます。

(2)景品表示法の普及啓発

 消費者庁では、景品表示法の普及・啓発及び同法違反行為の未然防止等のために消費者団体、地方公共団体、事業者団体や広告関係の団体が主催する景品表示法に関する講習会、研修会等に講師を派遣しています。2020年度は景品表示法に関する説明会等に74回講師派遣を行い、受講者は計約5,500人集まりました。

 また、消費者庁は、2020年12月に、どのような価格表示が景品表示法に違反するおそれがあるかを示す「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」を補完する新たな執行方針として、「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」を策定・公表しました。この執行方針についても、上記の説明会等を通じて普及啓発を行っているところです。

 さらに、今までもアフィリエイト広告に関して法適用の基本的考え方を明らかにしているものの、虚偽・誇大な内容が少なくないと指摘されていることから、2020年度にはアフィリエイト広告に関する実態調査を開始し、より詳細な実態を把握することとしています。

 加えて、消費者トラブルの実情等を踏まえ、「時間貸し駐車場の料金表示」(2017年度)や「百貨店等提携クレジットカードに係る役務のポイント還元率の広告表示に係る留意点」(2019年度)のほか、「携帯電話等の移動系通信の端末の販売に関する店頭広告表示」(2018年度)、「携帯電話端末の店頭広告表示等の適正化」(2019年度)及び「携帯電話端末の広告表示に関する注意喚起等」(2019年度)、「携帯電話業界における『頭金』の表示や端末販売価格に関する注意喚起」(2020年度)において景品表示法上の考え方を公表しました。

 そのほか、景品表示法の概要等を取りまとめたパンフレット「事例でわかる 景品表示法」を2020年度に、消費者団体、地方公共団体、事業者団体等に約2,800部配布しました。

(3)公正競争規約の積極的な活用、円滑な運用のための支援

 不当な表示や過大な景品類は、短期間のうちに、その内容がエスカレートし、際限なく広がっていくおそれがあります。このような不当な表示等を効果的に規制するためには、規制当局の限られたリソースだけでは困難です。

 そのため、業界自らが自主的かつ積極的に守るべきルールとして定めた「公正競争規約」が積極的に活用され、適切な運用が行われるように公正取引協議会等を支援することは、景品表示法違反行為の未然防止等の観点からも必要不可欠です。

 公正取引委員会及び消費者庁では、公正競争規約の新設及び所要の変更について公正取引協議会等から相談を受け認定を行うとともに、各公正取引協議会等と緊密に連絡を取り合い、規約の適正な運用等について必要な助言等を行うこと等により、公正競争規約の積極的な活用や適切な運用を促進しています。

 2020年度は、公正競争規約の1件の新設及び3件の変更について認定を行いました。また、公正取引協議会等関連団体が主催する研修会等へ14回講師を派遣し、公正取引協議会の会員等が約1,250名参加しています。

担当:参事官(調査研究・国際担当)