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第2部 第2章 第2節 1.食品ロスの削減等に資する消費者と事業者との連携・協働

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第2節 消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進

1.食品ロスの削減等に資する消費者と事業者との連携・協働

(1)食品ロスの削減の推進に関する法律に基づく施策の推進

 「食品ロス」とは、本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品のことを指します。

 日本における2018年度の食品ロスの発生量は、年間600万トンと試算され、年間1人当たりの食品ロス量は47kgと、年間1人当たりのコメの消費量(約54kg)に近い量です。また、食品ロスの半分は家庭から発生します。

 国民運動として食品ロスの削減を推進するため、2019年5月に、食品ロス削減推進法が、衆議院、参議院共に全会一致で成立しました(同年10月に施行)。これを受けて、同年6月及び8月に、関係行政機関相互の緊密な連携・協力を確保し、総合的かつ実効的推進を図るため、「食品ロス削減の推進に関する関係省庁会議」(消費者庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)を開催しました。また、同法の規定に基づき「食品ロス削減推進会議」が設置されるとともに、国民に広く食品ロスの削減に関する理解と関心を深めてもらうため、10月が「食品ロス削減月間」、10月30日が「食品ロス削減の日」とされています。

 「食品ロス削減推進会議」(第1回を2019年11月、第2回を同年12月、第3回を2020年2月に開催)において、同法の規定に基づく「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」案を作成し、同基本方針は2020年3月に閣議決定されました。

 関係各省庁等において、国民各層が、食品ロス削減の問題を「他人事」ではなく「我が事」としてとらえ、「理解」するだけにとどまらず「行動」に移すための様々な取組を行っています。

 消費者庁、農林水産省、環境省では、全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会と共同で、「『おいしい食べきり』全国共同キャンペーン」を2020年12月から2021年1月にかけて実施しました。外食時の食べきり(「30(さんまる)・10(いちまる)運動(注66)」等)のほか、新型コロナウイルス感染症対策として、テイクアウト等による家庭での食事の機会が増加することも考慮し、家庭での食べきりについても啓発を行いました。さらに、消費者・事業者・地方公共団体等の食品ロス削減に関わる様々な関係者が一堂に会し、関係者の連携強化や食品ロス削減に対する意識向上を図ることを目的として、2020年12月に富山県において、第4回食品ロス削減全国大会(富山県 ・全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会主催、消費者庁・農林水産省・環境省共催)が開催され、関係各省庁もブース出展等を行いました。

 消費者庁では、食品ロスの削減に向け、「『賞味期限』の愛称・通称コンテスト」及び「私の食品ロス削減スローガン&フォトコンテスト」を実施し、両コンテストの表彰式を、「食品ロス削減の日」である2020年10月30日に行いました。大臣賞を受賞した愛称「おいしいめやす」を用い、2021年2月から全国のスーパー等でポスター等を用いた普及啓発を行っています。また、「食品ロス削減推進法」及び同基本方針に基づき、食品ロス削減の取組を広く国民運動として展開していくことを目的として、消費者等に対し広く普及し、波及効果が期待できる優れた取組を実施した者を表彰する「食品ロス削減推進大賞」を創設し、第1回の受賞者を決定しました。

 さらに、政府広報室との共催で、食品ロス削減に関するオンラインシンポジウムを9道府県で開催しました。また、地方公共団体において「食品ロス削減推進計画」の策定が進むよう、2021年2月に、地方公共団体向けオンライン説明会を開催しました。

 農林水産省では、関係省庁と連携して、食品ロスの一つの要因となっている製・配・販にまたがる商慣習の見直しについて、納品期限の緩和や賞味期限表示の大括り化に取り組む事業者の実態調査を行い、10月30日を「全国一斉商慣習見直しの日」として、事業者名等の公表を行いました。また、食品ロス削減のための消費者理解を促進するため、全国の小売事業者や外食事業者等が利用可能な啓発資材を作成し、10月の食品ロス削減月間において、消費者啓発活動を推進しました。2021年2月の恵方巻きシーズンには、予約販売等の需要に見合った販売に取り組む小売業者を公表するとともに、恵方巻きのロス削減に取り組む小売店である旨を消費者にPRするための資材を提供し、消費者に対しても小売業者の取組への理解を促しました。さらに、食品関連事業者を始めとする関係者に食品ロス削減国民運動ロゴマーク「ろすのん」の普及を実施しています(2021年3月末時点の利用件数は804件)。

 環境省では、消費者庁、農林水産省、ドギーバッグ普及委員会と共催して、飲食店等における食べ残し持ち帰り行為の名称等を公募する「Newドギーバッグアイデアコンテスト(以下「コンテスト」という。)」を実施しました。コンテストは、食べきれなかった料理について自己責任で持ち帰ることを身近な習慣として広め、利用者とお店の相互理解の下で持ち帰りの実践を促す社会的な機運醸成を図ることを目的として開催しました。全部門で2,723点の応募があり、ドギーバッグによる持ち帰りに代わる新たなネーミングとして「mottECO(もってこ)」を大賞として選定し、ロゴも作成しました。この「mottECO(もってこ)」には「持って帰ろう」「もっとエコ」という意味が込められており、「mottECO(もってこ)」を行う事が当たり前になるように、普及に取り組んでいきます。また、食品ロス削減及び食品リサイクルのモデルとなる取組を行う市町村を支援するため、「地方公共団体による食品ロス削減・食品リサイクル推進モデル事業」を実施しました。

(2)食育の推進

 食育基本法(平成17年法律第63号)及び「第3次食育推進基本計画」(2016年3月食育推進会議決定)に基づき、関係府省等が連携しつつ、家庭、学校、地域等において国民運動として食育を推進してきました。同計画では、国民が健全な食生活を実践するために必要な食品の安全性や栄養等に関する様々な情報について、国民が十分に理解し活用できるよう考慮しつつ、国民にとって分かりやすく入手しやすい形で情報提供することとしています。

 「第3次食育推進基本計画」では、毎年6月を「食育月間」と定め、関係府省庁、地方公共団体等様々な主体において全国的に各種広報媒体や行事等を通じた広報啓発活動を重点的に実施し、食育推進運動の一層の充実と定着を図ってきました。また、全国規模の中核的な行事として、食育推進全国大会を実施していますが、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により中止となったことから、「食育月間」に合わせ、農林水産省のウェブサイトで「6月はWISE な食育月間 〜みんなの提案で賢く楽しく食育を実践〜」等の情報発信を行いました。さらに、2021年2月には、食育シンポジウム「新しい時代の食育を考える 食育推進フォーラム2021」を開催しオンラインでの配信を行いました。

 2021年3月には、「第4次食育推進基本計画」(2021年食育推進会議決定)において、2021年度からおおむね5年間を計画期間として食育推進に係る新たな重点事項等が定められました。本計画においては、国民の健康や食を取り巻く環境の変化、社会のデジタル化など、食育をめぐる状況を踏まえ、(1)生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進、(2)持続可能な食を支える食育の推進、(3)「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進の3つに重点をおいた取組を行うことが定められており、持続可能な世界の実現を目指すため、経済、社会、環境の諸課題に統合的に取り組むSDGsへの関心が世界的に高まる中、食育の取組においても、SDGsの考え方を踏まえて推進する必要があるとされています。

 農林水産省では、地域の実情に応じた食育活動や消費者のニーズに対応したモデル的な食育活動に対する支援を通じて、「日本型食生活」の実践を促す取組のほか、農林漁業体験を通じて食や農林水産業への理解を深める教育ファームの活動についての情報提供等を行っています。

 文部科学省では、2017年3月に小学校、中学校の学習指導要領を、同年4月には特別支援学校幼稚部教育要領及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を、2018年3月には高等学校学習指導要領を、2019年2月には特別支援学校高等部学習指導要領を改訂しました。各学習指導要領においては、引き続き総則において「学校における食育の推進」を明確に位置付けました。

 また、2019年3月には、学習指導要領の改訂や社会の大きな変化に伴う子供の食を取り巻く状況の変化等を踏まえ、食に関する指導を行う教職員向けの指導書である「食に関する指導の手引」を改訂し、各種会議や研修会で広く周知を図るなど、食育の推進に取り組んでいます。


  • 注66:宴会時の食べ残しを減らすため乾杯後の30分間とお開き前の10 分間は席について料理を楽しもうという運動。長野県で始まり、各自治体で工夫し展開されている。

担当:参事官(調査研究・国際担当)