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第2部 第2章 第1節 3.ぜい弱性等を抱える消費者を支援する関係府省庁等の連携施策の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第1節 消費者被害の防止

3.ぜい弱性等を抱える消費者を支援する関係府省庁等の連携施策の推進

(1)成年年齢引下げを見据えた総合的な対応の推進

 成年年齢引下げの環境整備に関し、関係行政機関相互の密接な連携・協力を確保し、総合的かつ効果的な取組を推進するため、2018年4月から、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議を、継続的に開催しており、2020年7月には、第4回会議を開催しました。

 また、2020年5月には、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議の下に設置された幹事会を開催して、2019年度の施策の進捗等を関係府省庁間で共有したほか、2020年度の施策の工程表を改訂するなどして、環境整備の施策の推進に関する進捗管理を実施しています。

 消費者庁では、「若年者への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議」を設置・開催し、2018年度から2020年度までの3年間を集中強化期間とする「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」(以下「アクションプログラム」という。)に基づき、関係省庁が緊密に連携して、若年者への消費者教育を推進してきました。2021年度は、成年年齢引下げ前の最後の1年となることから、アクションプログラムに掲げられた取組に加え、関係省庁が更に連携して地方公共団体・大学等、関係団体、メディア等も巻き込んだ重層的な取組を行う「成年年齢引下げに伴う消費者教育全力」キャンペーン(2021年3月22日若年者への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議決定)を実施し、取組を強化することとしています。

 貸金業については、日本貸金業協会が、金融庁とも連携して、貸金業者の若年者に対する貸付けの実態や多重債務防止に向けた自主的な取組状況、今後の方針等を把握するための調査を実施し、その結果を2020年10月に同協会のウェブサイトにおいて公表しました。また、金融庁から同協会に対し、当該調査で得られた効果的な取組の横展開を要請しました。

 経済産業省では、日本クレジット協会と連携して、クレジットカード業者の若年者に対する与信の実態や自主的な取組状況等を把握するための調査を実施しています。また、事業者による効果的な取組を推進する観点から、同協会に対して当該調査の結果を事業者にフィードバックするよう要請しています。

(2)認知症施策の推進

 認知症施策推進大綱(2019年6月認知症施策推進関係閣僚会議取りまとめ)に基づき、消費生活相談員等、認知症の人と地域で関わることが多いことが想定される者に対する認知症サポーターの養成促進を始めとする認知症に関する理解促進、高齢者や認知症等の判断力の低下した消費者を地域で見守る体制の構築推進、地域支援体制の強化、事業者による認知症等に関する取組が消費者志向経営の観点から意欲的・先導的と認められた場合に表彰する優良事例表彰の実施等を通じ、認知症の人やその家族が地域の中の良い環境で自分らしく暮らし続けることの実現を図っています。

(3)障害者の消費者被害の防止策の強化

 消費生活センター等へ寄せられる障害者の消費者被害に関する相談件数は、依然として多くなっています。

 また、2016年4月に、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)が施行され、各行政機関には、障害者に対する不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供が義務付けられました。同法に基づき、各行政機関において、職員が適切に対応するための「対応要領」を策定するとともに、事業を所管する各主務大臣において、事業者が適切に対応するための「対応指針」を策定し、相談体制の整備等を図っています。

 消費者庁では、高齢者及び障害者の消費者トラブルの防止等を目的とし、障害者団体のほか高齢者団体・福祉関係者団体・消費者団体、行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」を2007年から開催し、消費者トラブルに関して情報を共有するとともに、悪質商法の新たな手口や対処の方法等の情報提供等を行う仕組みの構築を図ってきました。2020年10月に開催した「第16回高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」では、「高齢者、障がい者の消費者トラブル防止のため積極的な情報発信を行う」、「多様な主体と緊密に連携して、高齢消費者・障がい消費者を見守り消費者トラブルの被害の回復と未然防止に取り組む」等の申合せをしました。同年2月に効果的な見守り活動の実施のため「高齢者・障がい者の消費者トラブル 見守りガイドブック」を作成しました。また、地方消費者行政強化キャラバン等による地方自治体の長等への呼び掛けや、地方消費者行政のための交付金等を通じ、消費者安全確保地域協議会の設置を促進しています。

 国民生活センターでは、引き続き障害者からの消費生活相談を受け付けるとともに、相談体制の更なる整備を行っています。

 また、障害のある人やその周りの人々に悪質商法の手口やワンポイントアドバイス等をメールマガジンや国民生活センターのウェブサイトで伝える「見守り新鮮情報」を発行するとともに、障害者等に配慮する観点から、同センターのウェブサイトではウェブアクセシビリティ対応等を実施しました。

 さらに、「くらしの豆知識(注60)」については2017年版をカラーユニバーサルデザインに配慮して作成し、2018年版以降は、カラーユニバーサルデザイン認証を取得しています。また、毎年度、デイジー図書(国際標準規格の視覚障害者向けデジタル録音図書)を作成・配布しています。

(4)アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル等依存症及びゲーム依存症についての対策の推進

 ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するために、2018年10月に施行されたギャンブル等依存症対策基本法(平成30年法律第74号)及び同法に基づくギャンブル等依存症対策推進基本計画(平成31年4月閣議決定)等を踏まえ、消費者庁では、関係府省等との連携の下、消費生活相談への的確な対応の確保や地域における普及啓発のための地方公共団体向けの支援や、消費者向けの情報提供などに取り組んでいます。2020年度は、国民生活センターにおいて消費生活相談員向けにギャンブル依存症対策に関する研修を5回実施したほか、これまでに作成した注意喚起・普及啓発資料を活用した情報発信等に取り組みました。また、国民のギャンブル等の消費行動やギャンブル等依存症対策に関する普及啓発施策の認知度等を把握するためのインターネット調査を実施しました。

 内閣官房では、全都道府県が速やかにギャンブル等依存症対策推進計画を策定するよう、内閣官房職員の講師派遣や先進的取組の事例集等の各種参考資料の作成及び配布を行うことにより、都道府県計画の策定を支援しました。また、2020年6月には、ギャンブル等依存症対策推進基本計画(平成31年4月閣議決定)に掲げられた施策の2019年度の進捗状況について、内閣官房で取りまとめの上、公表を行いました。

 厚生労働省は、都道府県等において、ギャンブル等依存症である者や家族等を早期に発見し、相談・医療機関等につなぐため、精神保健福祉センターや消費生活センターを始めとする関係機関における連携協力体制の構築等を図るための支援を行っています。また、依存症対策全国センターのポータルサイト等において、各依存症に関する情報や相談拠点機関・専門医療機関等の情報提供を行いました。

(5)青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備

 内閣府では、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)及び第4次基本計画(2018年7月27日子ども・若者育成支援推進本部決定)に基づき、関係府省庁が協力して、青少年のインターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動、青少年有害情報フィルタリングの性能の向上及び利用の普及等、青少年のインターネットの適切な利用に関する活動を行う民間団体等の支援等の関連施策を着実に推進してきました。

 今後は、SNSに起因する子供・若者の被害事犯の増加等を踏まえ、フィルタリング利用率の更なる向上に向けた取組や、フィルタリングの促進だけでは防ぎきれない被害の存在、インターネット利用者の低年齢化、利用時間の長時間化の進展等を踏まえたペアレンタルコントロールによる対応を推進するため、2021年夏を目途として第5次基本計画を新たに策定する予定です。

(6)「多重債務問題改善プログラム」の実施

 消費者金融市場が拡大する中で、社会問題としての多重債務問題が深刻化したことを背景に、「貸し手」に対する所要の規制強化を図るため、いわゆる総量規制と上限金利引下げをポイントとする貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成18年法律第115号)が2006年12月に可決・成立し、公布され、2010年6月に完全施行されました。同改正法の成立を機に、「借り手」に対する総合的な対策を講ずるため、政府は、関係大臣からなる「多重債務者対策本部」を設置しました。同本部の下で、2007年に「多重債務問題改善プログラム(注61)」を取りまとめ、関係府省が一体となって、多重債務者向け相談体制の整備・強化を始めとする関連施策に取り組んでいます。

 2020年には、新たな課題等への対応を含めた今後取り組むべき施策等について検討するため、有識者と関係府省(注62)から構成される「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」を2回開催(6月、12月)しました。また、「多重債務者相談強化キャンペーン2020」(9月1日から12月31日まで)において、各都道府県における消費者及び事業者向けの無料相談会等の開催、ヤミ金融の利用防止等に関する周知・広報を実施するとともに、潜在的な多重債務者の掘り起こし等を図るため、相談窓口周知のためのポスター及びリーフレットを作成し、関係先に配布しました。また、ギャンブル等依存症対策の観点から、多重債務相談窓口と精神保健福祉センター等の専門機関との連携強化に向けた取組を進めています。

 警察庁では、都道府県警察に対して、ヤミ金融事犯(注63)の徹底した取締りのほか、ヤミ金融に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等の推進を指示しています。

【上記取組の実績】

・2020年12月末時点の貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある人数:8.8万人(2019年12月末:9.3万人)

・2020年度末時点の多重債務に関する消費生活相談の件数1万8966件(2019年度末:2万3642件)

・2020年中の多重債務を理由とする自殺者数:603人(全自殺者数2万1081人)

・2020年(4月〜12月)の金融庁・財務局等・日本貸金業協会における貸金に関する相談・苦情件数:約1.4万件(2019年4月〜12月の件数:約1.7万件)

・2020年中におけるヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員:592事件、701人(前年比47事件減、23人減)

・2020年中におけるヤミ金融に利用された口座の金融機関への情報提供件数:1万203件(前年比1,187件減)

・2020年中における携帯音声通信事業者への契約者確認の求めを行う旨の報告を受けた件数:1,770件(前年比150件減)(出資法又は貸金業法の規定に基づくもので、警察庁が都道府県警察(生活経済担当課)から報告を受けた件数)

・2020年中のインターネット上のヤミ金融事犯広告の削除要請件数:3万2628件(前年比1万8833件増)

(7)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進

 厚生労働省では、生活困窮者自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図っています。

 2020年度においては、生活困窮者自立相談支援事業等を実施しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少する方に緊急小口資金等の特例貸付を実施するとともに、住まいの確保を支援するため、住居確保給付金の支給対象の拡大等を行いました。


  • 注60:消費者トラブル対策に役立つ情報をコンパクトにまとめた年1回発行の冊子で、2021年版は「トラブル回避!お金の知恵袋」「18歳からの消費生活」を特集。
  • 注61:同プログラムでは、「相談窓口の整備・強化」、「セーフティネット貸付の提供」、「金融経済教育の強化」、「ヤミ金の取締り強化」の四つの柱に沿って、取り組むべき施策等がまとめられている。
  • 注62:警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省。
  • 注63:貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利等)に関する事犯及び貸金業に関連した犯罪収益移転防止法違反、詐欺、携帯電話不正利用防止法違反等に関する事犯。

担当:参事官(調査研究・国際担当)