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第2部 第1章 第4節 (2)消費生活のグローバル化への進展への対応

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第4節 「新しい生活様式」の実践その他多様な課題への機動的・集中的な対応

(2)消費生活のグローバル化への進展への対応

経済協力開発機構(OECD)消費者政策委員会への参画

 消費者庁及び外務省は、2020年4月にOECD消費者政策委員会(CCP)第99回PartⅠ本会合、同年10月に第99回PartⅡ本会合に参加しました。また、同年3月にOECD製品安全作業部会第20回PartⅠ本会合、同年10月に第20回PartⅡ本会合に参加しました。

 これらの会合では、越境執行協力に関する法的措置の執行ツールキットの作成、消費者政策の企画立案に資する消費者被害の計測対象や計測方法、オンライン上の情報開示の有効性等のテーマについて議論が行われました。

 日本は、CCP及び製品安全作業部会のビューロー(幹事役)を長年担っています。CCPでは副議長を務め、製品安全作業部会では、2016年1月から2018年12月まで議長を、2019年1月からは副議長を務めており、勧告の見直しやガイドラインの作成等に当たって議論を主導し、その方向性の決定に関与するなど、重要な役割を果たしています。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によるデジタル化の更なる進展を踏まえ、OECDでは、日本の拠出金を財源として、「デジタル時代の消費者のぜい弱性」及び「オンライン上の悪質商法」について、国際研究プロジェクトを開始しました。諸外国においても、オンライン取引における新しい消費者被害や、消費者の個人情報を蓄積したオンライン事業者と消費者との情報格差等の問題が顕在化しつつありますが、本プロジェクトの実施に当たって日本も積極的に議論に関与し、主導的な役割を果たしています。

国際的な要請の高まりに対応した取組の推進

 経済発展における国際的な企業の役割の重要性が認識される中で、企業活動が社会にもたらす影響についても国際的な関心が高まっており、企業には、企業活動における人権尊重が求められています。このような社会的要請を踏まえ、日本政府は、2020年10月に、「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定しました。本行動計画の実施を通じて責任ある企業活動の促進を図ることにより、国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献し、日本企業の信頼・評価を高め、国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上に寄与することを目的としています。本行動計画に基づき、消費者庁では、以下のとおり積極的な貢献に取り組んでいます。

 まず、持続可能な経済社会の形成には、企業や行政だけではなく、消費者の行動も欠かせないことから、地域の活性化や雇用等も含む、人や社会・環境に配慮して消費者が自ら考える賢い消費行動、いわゆるエシカル消費の普及・啓発や、事業者が「みんなの声を聴き、かついかすこと」、「未来・次世代のために取り組むこと」等により消費者の行動変容を促すような社会的責任を自覚した事業活動を行う「消費者志向経営」の推進を行っています。また、消費者市民社会の形成に向けて、学校教育及び社会教育を通じて消費者教育を推進しています。

 さらに、共生社会実現に向けた外国人材の受入れ環境整備の充実・推進に貢献するため、訪日・在日外国人に対応した消費生活相談窓口を整備する地方自治体の取組を支援しているほか、国民生活センターにおいて、訪日観光客消費者ホットラインを運営し(注22)、訪日外国人の相談対応を実施しています。

 加えて、公益通報者保護法の実効性確保のため、事業者及び行政機関(地方公共団体を含む。)における通報・相談窓口設置の促進を図っています。また、2020年6月には、同法の実効性強化のため、事業者に体制整備義務を課し、当該義務違反に対する行政措置を導入すること等を内容とする法改正を行うなど、より一層の取組強化を図っているところです。

経済連携協定に対応した取組の推進

 日本政府は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)等の経済連携協定の効果を最大限にいかすため、TPP等総合対策本部にて「総合的なTPP等関連政策大綱」を決定し、各関連施策に取り組んでいます。2020年12月には、今後発効が見込まれる地域的な包括的経済連携(RCEP)協定及び新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応の視点を加え、関連政策を改めて整理し、本大綱を改訂しました。本大綱に基づき、消費者庁では、以下のとおり積極的な貢献に取り組んでいます。

 まず、食の安全・安心を確保するため、関係省庁と連携し、食品の安全に関する意見交換会を開催する等、リスクコミュニケーションを推進しているほか、新たな加工食品の原料原産地表示制度の経過措置期間が2022年3月末までであることを踏まえ、事業者が速やかに従前の制度から新しい制度に移行できるよう普及啓発を行うとともに、消費者についても表示を正しく理解できるよう積極的な普及・啓発を図っています。

 さらに、越境取引による消費者トラブルへの対応を強化するため、CCJ(注23)において、トラブル解決のために必要な支援を行っているほか、特定商取引法等に基づく厳正な法執行を適時適切に実施しているところです。2021年3月、同法を改正する「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための指定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案」が第204回通常国会に提出され、海外当局への情報提供を行うための根拠規定が盛り込まれています。今後は本規定も活用して、他国との連携・協力体制をより一層強化していきます。


担当:参事官(調査研究・国際担当)