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第1部 第2章 第6節 (2)新型コロナウイルス感染症の感染拡大への消費者庁の対応

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】「新しい生活様式」における消費行動〜「消費判断のよりどころ」の変化〜

第6節 新型コロナウイルス感染症に関する消費者庁の対応

(2)新型コロナウイルス感染症の感染拡大への消費者庁の対応

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、インターネット上でのマスク等の高額転売や食料品等の買占め、消費者の不安に付け込む悪質商法等の様々な問題が発生しました。こうした中で、全国の消費生活センター等には、新型コロナウイルス感染症に関連した消費生活相談も多く寄せられました(第1部第2章第5節参照。)。このような状況を踏まえ、消費者庁では、マスク等の生活関連物資の需要増への対応、不当表示等への対応、悪質商法等の注意喚起等の取組を行っています。また、各業界団体の感染拡大予防ガイドライン策定を踏まえ、「新しい生活様式」の実践に当たり消費者に知っておいていただきたい事項をまとめた特設サイト(注70)の公表、買物等における消費者向け留意事項等の周知等にも取り組んでいます(図表Ⅰ-2-6-2)。

マスク等の生活関連物資の需要増への対応

 2020年初頭、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、マスクやアルコール消毒製品等が品薄となる中で、これらの物資を小売店舗等で大量に購入し、インターネット上で高額転売する行為がみられました。消費者庁では、転売目的の購入は望ましくない旨の呼び掛けやデジタル・プラットフォーム事業者各社への働き掛けを行いました。しかし、依然としてマスク等の高額転売が続いたことから、関係省庁と共に、国民生活安定緊急措置法に基づき、同年3月にマスク、同年5月にアルコール消毒製品の転売を禁止しました(注71)。その後、需給のひっ迫が改善されたため、同年8月にマスク及びアルコール消毒製品の転売規制を解除しました。

 消費者庁では、引き続き生活関連物資等の需給の状況を注視し、必要に応じて関係府省庁や関係機関と連携して対応することとしています。

不当表示等への対応

 2020年以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、同ウイルスへの効果を標ぼうする表示がまん延したことを踏まえ、それらの表示の適正化にも積極的に取り組んできました。

 まず、景品表示法及び健康増進法に基づき、インターネット上の広告等の緊急監視を行いました。この結果、新型コロナウイルスに対する効果を標ぼうする健康食品、空間除菌商品、マイナスイオン発生器、アロマオイル、光触媒スプレー等、合計144事業者の167商品に対して、4回にわたって改善要請を実施(注72)するとともに、消費者に対する注意喚起を行いました。

 景品表示法の観点から、行政指導も積極的に行いました。このうち、2020年3月にマスクのおとり広告を行っていた2事業者、同年5月に携帯型空間除菌用品の販売を行っていた5事業者、同年12月及び2021年3月に抗体検査キット又は研究用抗原検査キットの販売を行っていた11事業者に対して再発防止等の行政指導を行い、その旨を公表するとともに、消費者に対する注意喚起を実施しました。

 加えて、表示していたアルコール濃度よりも濃度が大幅に下回っていたアルコール商品を販売していた2事業者(2020年5月及び同年12月)、表示していた有効塩素濃度よりも濃度が大幅に下回っていた又は除菌効果を標ぼうする次亜塩素酸水を販売していた9事業者(2020年12月及び2021年3月)、携帯型の空間除菌用品・空気清浄用品、マイナスイオン発生器を販売していた6事業者(2020年8月、同年12月、2021年1月及び同年3月)、亜塩素酸による除菌効果等を標ぼうするスプレーを販売していた5事業者(2021年3月及び同年4月)、新型コロナウイルス等への効果を標ぼうする健康食品を販売していた事業者(2021年3月)に対し、景品表示法違反として措置命令を行いました。

 そのほか、2020年6月に、厚生労働省及び経済産業省と合同で、新型コロナウイルスの消毒・除菌方法や消毒剤等の選び方等を取りまとめ、消費者へ注意喚起を行いました。

 消費者庁では、引き続き、表示について継続的な監視を実施し、景品表示法等に基づく適切な措置を実施することとしています。

悪質商法等の注意喚起等による消費者被害の防止

 新型コロナウイルス感染症に関連した悪質商法等が発生する中、消費者被害の防止に向け、正確な情報を迅速かつ多くの消費者に届けることが重要であることから、様々なツールを用いた機動的な情報発信にも取り組んでいます(図表Ⅰ-2-6-3)。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に便乗したフィッシング(注73)、マスクや消毒液等、身に覚えのない商品の送り付け(ネガティブ・オプション)等の悪質商法等に関する消費生活相談が寄せられたことを受け、消費者庁では、2020年3月及び4月に、これらに関する注意喚起資料を作成し、地方公共団体、消費者団体、事業者団体等に提供しました。また、同年4月に開設したLINE公式アカウント「消費者庁 新型コロナ関連消費者向け情報」において、このような悪質商法等の手口とその対処法についてプッシュ型の情報発信を行っています。このほか、政府広報の枠組みを活用した注意喚起を随時実施しつつ、2021年2月には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に乗じた消費者被害防止キャンペーンを開始するなど、機動的な情報発信に努めています。このキャンペーンでは、テレビCMやウェブ動画、新聞広告等の様々なメディアの活用や、消費者団体等と連携した啓発イベントの開催等を通じ、悪質商法等への注意喚起及び消費者ホットライン188の活用を幅広く呼び掛けています(図表Ⅰ-2-6-4)。

 国民生活センターでも、新型コロナウイルス感染症に関連した悪質商法等の相談事例、国民生活センターが実施した注意喚起等をまとめた特設ページを設け、情報発信を行いました(注74)

 また、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」に一人当たり10万円の給付を行う「特別定額給付金」が盛り込まれたことを受け、2020年5月に、消費者庁、総務省及び警察庁の連名で、この給付金を装った詐欺についての消費者への注意喚起も行いました(図表Ⅰ-2-6-5)。また、同月には、国民生活センターに「新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン(注75)」を開設し、相談体制の強化を図りました。同ホットラインには、「見知らぬ女性が自宅を訪問し、給付金の申請に必要と言われ、銀行の通帳等を渡した」、「特別定額給付金の振込完了のハガキが届いてすぐに不審な電話で個人情報を聞かれた」等の相談が寄せられました。

 2021年以降、新型コロナウイルスワクチンの接種に便乗して、行政機関等になりすまし、電話やメールで金銭や個人情報を求める相談事例が寄せられたことを受け、消費者庁では、厚生労働省、警察庁及び国民生活センターとの連名で、注意喚起を行いました(図表Ⅰ-2-6-6)。また、同年2月から、国民生活センターにおいて、「新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン」を開設しました。同ホットラインには、「ワクチン接種の優先順位を上げるので、10万円を振り込むようにとのSMSが届いた」、「新型コロナウイルスのワクチン接種にお金がかかると言われた」等の相談が寄せられました。

買物等における消費者向け留意事項等の周知

 2020年4月に特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出されたことを受け、一部店舗で食料品等の買いだめ・買占めが発生しました。消費者庁では、関係府省と連携し、消費者に対して冷静な購買活動の呼び掛けや、購買活動を行う際や外食をする際には感染の危険性が高い混雑を避けつつ、他者の感染防止への配慮や従業員への理解及び協力が重要である旨の呼び掛けを行いました(図表Ⅰ-2-6-7)。

 また、2021年1月に再び緊急事態宣言が発出されたことを受け、消費者に対し引き続き冷静な購買活動を行うよう呼び掛けを行いました。さらに、2020年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大時に消費者の行き過ぎた言動がみられたこと等を踏まえ、消費者が従業員へ意見を伝える際のポイント等を整理し、消費者庁ウェブサイト等で周知しました(図表Ⅰ-2-6-8)。

緊急時における消費者行動についての検討及び取りまとめ

 2020年以降、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、緊急事態宣言も発出されました。このような中、新型コロナウイルス感染症や日用品等に関する不確かな情報の拡散や、不確かな情報に影響を受けた物資の買いだめを行うといった消費者行動がみられるなど消費生活において様々な問題が生じました。

 消費者教育推進法第3条においても、非常時に消費者が合理的に行動できるよう、知識と理解を深めることが重要とされているところ、2020年10月の第28回消費者教育推進会議において議論を行い、2021年1月に取りまとめを公表しました(図表Ⅰ-2-6-9)。その中で、消費者教育を中心に必要と考えられる対応として、(1)正確で分かりやすい情報発信、(2)消費者教育による平時からの備え、(3)消費者と事業者の信頼関係が失われないための取組を挙げました。

 本取りまとめも踏まえ、消費者庁では、引き続き多様なツールを用いた消費者への機動的な情報発信や、消費者が従業員へ意見を伝える際のポイント等の周知等に取り組んでいます。また、消費者教育推進会議の下に設置した「社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会」において、デジタル化の進展やデジタル技術等を踏まえた消費者教育の在り方について議論を行いました(第2部第1章第4節参照。)。

地方消費者行政の機能の維持・強化

 一部の地方公共団体では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を踏まえ、消費生活センターにおける来所相談の縮小や消費生活相談員を含む職員の勤務体制の変更もみられました。

 消費者庁では、地方消費者行政の機能を維持するため、2020年度の3次にわたる補正予算において、オンラインで相談を受け付けるための体制整備や地域の見守り活動の強化等に向けた地方公共団体による取組を支援する「地方消費者行政強化交付金」を追加的に措置しました。

図表1-2-6-2新型コロナウイルス感染症への消費者庁の主な対応

図表1-2-6-3新型コロナウイルスに便乗した悪質商法等に関する注意喚起

図表1-2-6-4消費者被害防止キャンペーン ウェブ広告バナー

図表1-2-6-5特定定額給付金を装った詐欺に関する注意喚起(2020年5月)

図表1-2-6-6新型コロナワクチン接種に関する注意喚起(2021年2月)

図表1-2-6-7買物時の留意事項等に関する消費者向け啓発資料(2020年5月)

図表1-2-6-8従業員等への意見の伝え方に関する消費者向け啓発資料(2021年1月)

図表1-2-6-9緊急時における消費者行動について


  • 注70:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/notice/efforts_007.html
  • 注71:①小売店舗やECサイトなど不特定の相手に販売する者から購入したマスク又はアルコール消毒製品を、②購入した金額よりも高い価格で、③インターネットや店舗などを通じ不特定又は多数の者へ転売することが禁止された。(違反した場合、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はその双方が科されることとなった。)
  • 注72:2020年3月〜同年6月、2021年2月
  • 注73:実在する組織をかたって、ユーザーネーム、パスワード、アカウントID、ATMの暗証番号、クレジットカード番号といった個人情報を詐取すること。電子メールのリンクから偽サイト(フィッシングサイト)に誘導し、そこで個人情報を入力させる手口が一般的に使われる。
  • 注74:国民生活センター「新型コロナウイルス感染症関連」 http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coronavirus.html
  • 注75:2020年7月から、「新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン」を令和2年7月豪雨に関する相談も受け付ける「給付金・豪雨関連消費者ホットライン」に変更。

担当:参事官(調査研究・国際担当)