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第1部 第1章 第4節 (2)インターネット通販に関する相談

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第4節 最近注目される消費者問題

(2)インターネット通販に関する相談

インターネット通販で商品未着・連絡不能等のトラブルが増加

 インターネット通販に関する消費生活相談は、ショッピングサイト等で商品を購入する「商品」に関する相談と、コンテンツ配信等のサービスを契約する「サービス」に関する相談に分けられますが、中でも「商品」に関する相談は件数・割合共に増加しており、2020年は「商品」の割合が67.8%と3分の2以上を占めています(図表Ⅰ-1-4-2)。「商品」のインターネット通販の相談内容をみると、注文した商品が届かない「商品未着」、注文した商品とは異なる商品を業者が送付する「注文品違い」、業者と連絡が取れなくなる「連絡不能」のトラブル(以下「商品未着・連絡不能等のトラブル」という。)が、2020年は急増しています(図表Ⅰ-1-4-3)。

 商品未着・連絡不能等のトラブルの増加の背景には、電子商取引市場の拡大(第1部第1章第6節参照。)に加え、2020年は「新しい生活様式」の実践が求められる中で、「商品」をインターネット通販で購入する機会が増加したことや、後述の実在の通販サイトをかたる偽サイトによる被害が出たこと等が原因として考えられます。

 具体的な事例をみると、「インターネット通販でブランドの服を購入したが、商品が届かず連絡も取れない」、「人気のゲーム機をインターネット通販で購入したが、商品が届かず詐欺サイトだった」などの相談がみられました。また、新型コロナウイルス感染症が感染拡大する中、マスクや消毒液等をインターネット通販で買い求めたものの、「注文したが届かない」、「注文と違う商品が届いた」などのトラブルが多発しました(新型コロナウイルス関連の相談状況については、第1部第2章第5節も参照。)。

 商品別にみると、「食料品」と「保健衛生品」には、健康食品や化粧品の定期購入で連絡不能のトラブルがみられるほか、2020年は「保健衛生品」でマスクや消毒液の相談が多くみられました。また、財布や靴、洋服、かばん等が含まれる「被服品」や、電子ゲームや腕時計、スマートフォンやDVD等が含まれる「教養娯楽品」、掃除機等の家電製品やソファー等の家具が含まれる「住居品」でも、商品未着・連絡不能等のトラブルが増加しています。

 年齢層別にみると、20歳代と30歳代では「被服品」の割合が高い一方で、50歳以上では「保健衛生品」の割合が高くなっており、中高年がインターネット通販でマスクや消毒液を買い求め、トラブルに遭うケースがみられました(図表Ⅰ-1-4-4)。

 こうしたトラブルの原因となっているECサイトの中には、大手ショッピングモールサイトの信用力を利用して、偽ブランド品を販売していたケースもあり、消費者庁は、消費者安全法の規定に基づく注意喚起を実施しているほか(注32)、悪質業者に対する行政処分を実施しています(第2部第1章第2節参照。)。

 また、実在の通信販売サイトをかたった偽サイトの中には、一見すると正規のサイトと見分けが付かないほどよく似せて作ってあるケースもあり、消費者庁は、家電製品、家具、生活雑貨等の偽サイトや、人気の家庭用テレビゲーム機の偽サイトに関して、消費者安全法の規定に基づく注意喚起を実施しています(注33) (注34)。さらに、国民生活センター越境消費者センター(CCJ)でも、同様の注意喚起を実施しています(注35)

増加が続く定期購入に関する相談

 通信販売における「定期購入」に関する消費生活相談は、増加傾向が続いており、2020年は59,172件と、過去最多となりました。商品別にみると、定期購入に関する相談のほとんどは、「健康食品」と「化粧品」で占められています(図表Ⅰ-1-4-5)。

 2020年の定期購入に関する相談を性別・年齢層別にみると、全年齢層で女性からの相談が多く、特に40歳代から60歳代の女性からの相談が多くなっています(図表Ⅰ-1-4-6)。

 具体的な相談内容は、「インターネット広告からダイエットサプリの初回お試し品を申し込んだが、2回目に4か月分が届く高額な定期購入だった」など、消費者が定期購入であることを認識しないまま商品を注文しているケースがみられます。

 また、「定期購入の歯みがき粉が、未開封商品の返品可能と記載されていたのに、返品を断られた」、「10日間返金保証付きのサプリメントを解約したいが、事業者の電話がつながらず、メールも返信がない」、「『初回500円、1回のみの購入OK』という広告を見て契約したサプリメントの定期購入を解約したいが、事業者に電話がつながらない」など、解約条件をめぐるトラブルや、解約したくても事業者と連絡が取れず、解約の申請期間が過ぎてしまい請求を受けるトラブルが発生しています。

 消費者庁では、詐欺的な定期購入商法を行う事業者に対する行政処分を実施しています(行政処分やその他の政策対応については、第2部第1章第2節参照。)。

宅配便業者の不在通知を装う偽SMSに関する相談が急増

 「新しい生活様式」の中で、インターネット通販を利用する機会も増えていますが、宅配便業者を装った「不在通知」の偽SMS(ショートメッセージサービス)に関する消費生活相談が増加しています(図表Ⅰ-1-4-7)。偽SMSには、偽サイトに誘導するためのURLが記載されており、「表示されたURLからログインしたら、クレジットカードとキャリア決済を不正利用された」、「URLをクリックしたら、自分のスマートフォンから同様のSMSを不特定多数に発信していた」といった被害に遭う場合があります。

 年齢層別にみると、2020年は60歳代や70歳以上で相談が多くなっており、高齢者を中心にトラブルが発生しています。

 国民生活センターでは、宅配便業者を装った「不在通知」の偽SMSの被害に遭わないよう、消費者に注意喚起を実施しています(注36)

20歳未満の相談が増加しているオンラインゲーム

 「オンラインゲーム」に関する消費生活相談の増加傾向が続いています。特に20歳未満の相談増加が顕著で、2020年は3,746件と契約当事者全体(6,352件)の過半数を占めています(図表Ⅰ-1-4-8)。

 2020年の相談を月別にみると、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校における一斉臨時休校が開始された3月以降、通常の教育活動が再開される6月頃まで相談が増加しています。特に20歳未満では、2月(206件)に比べて6月(399件)の相談件数が約2倍となっています(図表Ⅰ-1-4-9)。

 相談内容をみると、「小学生の息子がコロナ禍で外出できず、自宅でタブレット端末のオンラインゲームを利用し高額課金してしまった」など、新型コロナウイルス感染症の影響で休校や自宅待機をしていた青少年が、オンラインゲームで高額課金をしてしまうケース等がみられました。

 2020年の20歳未満の契約購入金額は、10万円以上50万円未満の割合が最も高くなっています(図表Ⅰ-1-4-10)。また、各年齢層の平均契約購入金額は、「10歳未満」で約16.9万円、「10歳から17歳」で約33.9万円、「18歳から20歳未満」で39.0万円と、年齢層が上がるほど高額になっています。

 高額契約の原因としては、保護者のクレジットカード情報や、携帯電話のキャリア決済を無断で利用してしまうケースがあるほか、保護者のクレジットカード情報が端末やアカウント等にひも付けられている状態で、子どもがゲームをするうちにアイテム購入などの課金を繰り返してしまい、意図せずに金額が膨れ上がるケース等があることが影響していると考えられます。


  • 注32:消費者庁「デジタルプラットフォーム事業者が提供するショッピングモールサイトにおける偽ブランド品の販売に関する注意喚起」(2020年4月7日公表)
  • 注33:消費者庁「実在の通信販売サイトをかたった偽サイトなどに関する注意喚起」(2020年10月21日公表)
  • 注34:消費者庁「人気の家庭用テレビゲーム機などを販売しているかのように装う偽の通信販売サイトに関する注意喚起」(2020年12月10日公表)
  • 注35:国民生活センター「格安をうたう家具や家電品等の模倣サイトにご注意!—注文した商品が届かない!いったいどこと契約したの!?—」(2020年10月1日公表)
  • 注36:国民生活センター「宅配便業者を装った「不在通知」の偽SMSに注意しましょう—URLにはアクセスしない、ID・パスワードを入力しない!—」(2020年11月26日)

担当:参事官(調査研究・国際担当)