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第2部 第1章 第2節 (2)消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第2節 消費者被害の防止

(2)消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

特定商取引法について

特定商取引法は、消費者トラブルが生じやすい取引類型(訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引及び訪問購入)を対象に、消費者トラブル防止のためのルールを定め、事業者による不当な勧誘行為等を規制することにより、消費者の利益を保護し、商品の流通や役務の提供を適正で円滑なものとすることを目的としている法律です。

事業者への行為規制としては、消費者への適正な情報提供等の観点から、勧誘に先立つ氏名や勧誘目的等の明示義務、不当な勧誘行為の禁止、契約に関する取引条件等を記載した書面の交付義務、広告表示規制等が定められています。こうした行為規制に違反した場合には、業務停止命令や指示、法人役員等に対する業務禁止命令といった行政処分や罰則の対象となります。また、民事ルールとしては、書面による契約の申込みの撤回又は契約の解除に係る特例(いわゆるクーリング・オフ制度)、契約の解除時の損害賠償額の制限、不当な勧誘によって誤認した場合の意思表示の取消し等が定められています。

また、成年年齢引下げに伴い、特定商取引法施行規則の改正(注4)を行い、若年成人の判断力の不足に乗じて契約を締結させる行為が行政処分の対象となることを条文上明確化しました。

特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会

特定商取引法は、上述の目的を達成するために、累次の改正を行ってきました。しかしながら、日本社会の高齢化やデジタル化の進展によって、消費者のぜい弱性につけ込む悪質商法による被害が発生しています。さらに、経済のデジタル化・国際化が進む中、デジタル・プラットフォームの成長に併せて電子商取引が拡大し、越境取引も増加しています。そのため、特定商取引法及び預託法について、時代に即応した実効的な制度の在り方を検討するため、有識者による「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」を開催し、現在議論を行っています。検討委員会では、有識者からのヒアリングや議論の内容を踏まえ、2020年夏までを目途に一定の結論を得る予定です(図表II-1-2-6)。

特定商取引法及び預託法の厳正かつ適切な執行

消費者庁は、取引の公正及び消費者の利益の保護を図るため、特定商取引法及び預託法を迅速かつ厳正に執行しています。特に全国的な広がりがあり、甚大な消費者被害のおそれのある重大事案に対する行政処分等に重点的に取り組んでいます。

2019年度の特定商取引法に基づく国の行政処分件数は89件となり、引き続き高水準でした。

2019年度における国による主な処分は以下のとおりです。

1WILL株式会社及びWILL株式会社の関連法人7社に対する行政処分(2019年7月)

「PRPシステム」と称して、複数種類のアプリケーションが読み込まれた「willfonライセンスパック」と称するカード型USBメモリ(以下「本件商品」という。)を、これを購入した相手方から賃借した上で、これに読み込まれたアプリケーションを第三者の利用に供する事業に供し、かかる事業により得られた収益から本件商品の購入代金相当額を上回る本件商品の賃借料を当該相手方に支払うとされる役務を提供しているWILL株式会社及びWILL株式会社の関連法人7社に対し、特定商取引法に基づき、訪問販売に関する業務の一部を24か月間又は18か月間停止するよう命じるなどの行政処分(以下「本件行政処分」という。)を行いました。また、当該業者等の代表取締役等7名に対し、各法人に対して訪問販売に関する業務の一部を停止するよう命じた範囲の業務を新たに開始することの禁止を命じました(2019年7月及び8月)。なお、WILL株式会社に対しては2018年12月にも行政処分を行いました。

加えて、本件行政処分を行うに当たって消費者庁が認定したWILL株式会社の特定商取引法に違反する行為は、消費者安全法に規定する消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(不実告知)に該当するところ、調査の結果、消費者庁が本件行政処分を行った後、この行為が、株式会社ワールドイノベーションラブオールやVISION株式会社の名義で行われる可能性が高いことが確認されました。

このため、2019年7月及び11月に、消費者安全法第38条第1項の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者に注意を呼び掛けました。

2株式会社さくらメンテナンス工房及び株式会社メノガイアに対する行政処分(2019年12月及び2020年3月)

消費者宅の点検及びメンテナンス契約を締結した上で、かかる契約に基づく点検等により指摘した消費者宅の不具合箇所に関する住宅リフォーム工事を訪問販売により提供していた株式会社さくらメンテナンス工房に対し、特定商取引法に基づき、訪問販売に関する業務の一部を12か月間停止するよう命じるなどの行政処分を行いました。また、同じく住宅リフォーム工事を訪問販売により提供していた株式会社メノガイアに対し、特定商取引法に基づき、訪問販売に関する業務の一部を15か月間停止するよう命じるなどの行政処分を行いました。加えて、これらの業者の役員等に対して業務禁止命令を行いました。これらは、住宅リフォーム工事に関して過量販売を認定した初めての事案です。

3通信販売業者3社に対する行政処分(2019年12月及び2020年1月)

通信販売で化粧品や健康食品等を販売する株式会社TOLUTOに対し、特定商取引法に基づき、通信販売に関する業務の一部を3か月間停止するよう命じるなどの行政処分を行いました。加えて、当該業者の前役員に対して業務禁止命令を行いました。また、通信販売で健康食品等を販売する株式会社アクア及び株式会社GRACEに対し、特定商取引法に基づき、指示を行いました。これらは、最近消費者トラブルが多く発生している定期購入に関する表示に関連して行政処分を行った事案です。

4あくびコミュニケーションズ株式会社及びファミリーエナジー合同会社に対する行政処分(2019年4月及び12月)

電気の小売供給を提供するあくびコミュニケーションズ株式会社に対し、特定商取引法に基づき、電話勧誘販売に関する業務の一部を6か月間停止するよう命じるなどの行政処分を行いました。また、同じく電気の小売供給を提供するファミリーエナジー合同会社に対し、特定商取引法に基づき、訪問販売及び電話勧誘販売に関する業務の一部をそれぞれ3か月間停止するよう命じるなどの行政処分を行いました。加えて、これらの業者の役員等に対して業務禁止命令を行いました。

5株式会社itecjapan、ファーストこと木村直人及び株式会社ライズに対する行政処分(2020年3月)

バイナリーオプション取引に関するUSBメモリの訪問販売業者である株式会社itecjapan及びファーストこと木村直人に対し、特定商取引法に基づき、訪問販売に関する業務の一部をそれぞれ6か月間停止するよう命じるなどの行政処分を行いました。また、同じくバイナリーオプション取引に関するUSBメモリの訪問販売業者及び連鎖販売業者である株式会社ライズに対し、特定商取引法に基づき、訪問販売に関する業務の一部及び連鎖販売取引に関する取引の一部等をそれぞれ3か月間停止するよう命じるなどの行政処分を行いました。加えて、これらの業者の役員等に対して業務禁止命令を行いました。これらは消費者庁と東京都が調査において連携を図り、それぞれ行政処分を行った事案です。

消費者契約法(実体法部分)の改正に向けた検討

1主な検討の経緯

2001年に施行された消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される契約を幅広く対象として、その適正化を図る民事ルールを規定しています。社会経済情勢の変化等を踏まえ、法の実効性を確保するため、2016年及び2018年に改正法が成立し(以下、それぞれ「2016年改正(注5)」、「2018年改正(注6)」という。)、取消しの対象となる不当な勧誘行為や無効となる不当な契約条項の拡充等が行われてきました(図表II-1-2-7)。具体的には、初めての民事ルール部分の改正となった2016年改正では、社会の高齢化の進展を背景に、いわゆる過量契約に関する取消権の創設等がなされました。また、2018年改正では、消費者の不安をあおる告知(いわゆる就職セミナー商法等)、好意の感情の不当な利用(いわゆるデート商法等)といった不当勧誘行為に対する取消権の創設等がなされ、2019年6月に施行されました。引き続き、改正内容の周知・啓発活動の一環として、リーフレットの関係機関への配布、各種説明会での説明等を行っているところです。

2更なる見直しの検討

2018年改正の国会審議の際の衆参両院の消費者問題に関する特別委員会における附帯決議の趣旨を踏まえ、2019年2月から「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」において、いわゆる「つけ込み型」勧誘、「平均的な損害の額」の立証責任の軽減、契約条項の事前開示及び消費者への情報提供の考慮要素について、法制的・法技術的な観点から民法、商法、民事手続法及び経済学の研究者による検討が行われ、2019年9月に研究会報告書が取りまとめられました(図表II-1-2-8)。同報告書については、同年10月上旬まで意見募集を実施し、同年12月に結果を公表しました。

さらに、同報告書を踏まえつつ、2019年12月から「消費者契約に関する検討会」において、実効性の確保や実務への影響の観点から、消費者・事業者の関係者を含めて検討が行われております。同検討会においては、情報通信技術の進展によりオンライン取引がより普及し、デジタル・プラットフォーム企業が関与するものも増加しているなどの消費者契約をめぐる環境の変化や消費者被害の多様化を踏まえて、オンライン取引における利用規約の透明性・公正性の確保その他の消費者保護に関する規律についても検討事項となっており、同時期に開催されている「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」とも十分に連携しながら検討を行うこととしています。

COLUMN11
「チケット不正転売禁止法」について

景品表示法の執行

2016年度から課徴金制度の運用が開始されるなど、景品表示法の重要性は一層高まっているところです。

2019年度は、食品の痩身効果に関する不当表示や、葬儀サービスの費用に関する不当表示等について、計40件の措置命令及び計17件の課徴金納付命令(合計4億6559万円)等を行いました。インターネット消費者取引に関する広告表示への対応を含め、引き続き同法の適切な執行に取り組みます。

携帯電話端末の広告表示に関する最近の動向等

携帯電話については、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)の改正(注7)等その事業環境を取り巻く法制度等が大きく変化してきていますが、どのような制度下にあっても、一般消費者に誤認を与えないように、適切な広告表示を行うべきことは不変であるといえます。

消費者庁では、2018年以降、継続的に表示の実態やそれに対する消費者の認識等を確認するとともに、携帯電話端末の広告表示に関する注意喚起等の取組を行ってきました。

1携帯電話に関する広告表示についての景品表示法上の考え方等の公表

携帯電話端末の販売においては、「想定外のオプション契約が必要であった」、「スマートフォンの回線契約のほかに光回線契約を締結させられた。」といった相談がみられます。

これらの相談事例は必ずしも広告表示に起因するものではありませんが、事業者による適切な表示が行われることにより、一般消費者の想定外の契約締結の防止に資することから、消費者庁は、携帯電話端末の店頭における広告表示について、景品表示法上の考え方等を整理し、2018年11月、「携帯電話等の移動系通信の端末の販売に関する店頭広告表示についての景品表示法上の考え方等の公表について」を公表しました。

2「携帯電話端末の店頭広告表示等の適正化について」の公表

2018年11月の考え方等の公表後に、2019年1月、3月及び5月から6月中旬にかけて、携帯電話端末の広告表示の状況や消費者意識についてフォローアップ調査を行ったところ、依然として課題があることが認められました。

また、期間拘束を伴う携帯電話サービス契約の解除時に発生する違約金(以下「違約金」という。)は、携帯電話会社の乗換えの妨げになっていると指摘されるほど高い水準となっていました。この違約金は携帯電話会社の乗換えを容易にする携帯電話番号ポータビリティ(以下「MNP」という。)を活用した乗換えに際しても発生し得るものですが、当該拘束期間が自動更新を伴う場合には、携帯電話サービス契約の解除時に違約金が発生しない期間においてMNPの手続を行おうとしたときにも、これが発生することがありました。

以上のことから、消費者庁は、関係事業者団体に対し改善要請を行い、2019年6月、「携帯電話端末の店頭広告表示等の適正化について~携帯電話端末の店頭広告表示とMNPにおける違約金の問題への対応~」を公表しました(図表II-1-2-9)。

3「携帯電話端末の広告表示に関する注意喚起等について」の公表

携帯電話端末の販売については、2019年10月から電気通信事業法の一部を改正する法律が施行されたところ、2019年10月以降の新制度に対応したプランにおける携帯電話端末の販売の広告表示について、安さを強調した販売価格の表示に比べ、その適用条件等の表示については、必ずしも一般消費者が十分に認識できるような方法とはなっていないものがみられていました。

例えば、携帯電話端末の販売の広告表示において、「最大50%オフ」のように記載し、携帯電話端末を、あたかも半額で購入できるかのように表示しているにもかかわらず、実際には半額以上の経済的負担をさせるものとなっているような場合があり得ます。

消費者が「50%オフ」のような表示に惹かれて(トータルでの経済的負担が半額で済むと信じて)契約してしまった場合、想定外の不利益を被ることになるおそれがあることから、消費者庁は、消費者保護の観点から、2019年9月、「携帯電話端末の広告表示に関する注意喚起等について--安さを強調した広告表示に惹かれて契約した場合における想定外の不利益に御注意ください--」を公表しました。

i.消費者における留意点

携帯電話端末の販売については、通常よりも安い価格で購入できるプランの内容が表示から受ける印象と相違することや、このようなプランの適用を受けるために様々な条件をクリアする必要があるにもかかわらず広告の中でこれらの適用条件等が必ずしも明瞭に記載されていないことがあります。

消費者がこれらのプランの内容や適用条件等に気付かないまま契約をしてしまった場合、想定外の不利益を被るおそれがあるため、消費者庁は、消費者保護の観点から、消費者に注意を呼び掛けました。

これらの現状等を踏まえ、消費者庁では、携帯電話端末の広告表示に関し、景品表示法に係る違反被疑情報を受け付ける専用のオンライン通報窓口(被疑情報提供フォーム(注8))を設け、関係行政機関と当該情報を共有し迅速かつ適切に対処していくこととしています。

ii.事業者における留意点

消費者庁は、景品表示法を踏まえた携帯電話の店頭広告表示等の適正化に関する様々な資料(注9)を取りまとめています。

各事業者においては、これらの資料等の内容を十分に確認し、消費者保護の観点から、消費者が適切な選択ができるよう、誤解を与えない、分かりやすい表示に向けて、更なる改善に速やかに取り組むこと、また、消費者に対する適切な情報提供等の対応策を速やかに講じることが望まれます。

新たな食品表示制度の完全施行

食品表示法に基づく食品表示制度は、2015年4月に施行されてから、2020年4月で5年が経過しました(図表II-1-2-10)。

食品表示法に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の制定に当たっては、食品関連事業者等が表示の変更に要する準備時間として経過措置期間を設けていました。経過措置期間中は、食品表示基準施行前のルールに従った表示をすることも認められていましたが、生鮮食品の表示についての経過措置期間は2016年9月末で終了し、加工食品の表示については、栄養成分表示の義務化を含め、2020年3月末で経過措置期間が終了し、新たな食品表示制度が完全施行されています。

食品リコール情報の届出制度

2018年12月に食品表示法の一部を改正する法律(平成30年法律第97号)が成立し、アレルゲン、消費期限等、食品の安全性に関係する表示の欠落や誤りのある食品について自主回収をした食品関連事業者等に対し、その情報を行政機関へ届け出ることを義務付けるとともに、当該届出された情報を公表することとしました。

なお、食品表示法の一部を改正する法律は、食品衛生法等の一部を改正する法律(平成30年法律第46号)と同じ、2021年6月1日から施行されます。

第3期消費者基本計画に示された課題と検討状況

第3期消費者基本計画(平成27年3月24日閣議決定)に基づく個別課題の中で、遺伝子組換え表示の在り方について、検討会の報告書を踏まえ、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(平成31年内閣府令第24号)を2019年4月に公布しました(注10)。なお、この制度は2023年4月1日から施行されます。

また、最後の検討課題であった食品添加物表示の在り方について、2019年4月から9回にわたり、検討会を開催し、消費者の意向や海外の制度も参考に、表示の実行可能性や国際基準との整合性等の観点から検討を行い、2019年度末に報告書を取りまとめ、公表しました。

ゲノム編集技術応用食品の表示の在り方

2019年9月にゲノム編集技術(注11)応用食品の表示の在り方についての整理方針を消費者庁ウェブサイトにおいて公表しました。

ゲノム編集技術応用食品の食品衛生上の取扱いについては、厚生労働省において整理されており、1自然界又は従来の品種改良技術でも起こり得る範囲の遺伝子変化のものは届出の対象とし、2それを超える遺伝子変化のものは、安全性審査の対象とするとされています。この整理を踏まえ、安全性審査の対象とされているものについては、遺伝子組換え食品に該当することから食品表示基準に基づく表示が義務付けられ、一方、厚生労働省に届出され、安全性審査の対象とならないものについては、表示の義務付けはしないものの、事業者に対し、積極的に表示等の情報提供を行うよう働き掛けることとしました。なお、国内外においてゲノム編集技術応用食品について取引記録等の書類による情報伝達の体制が不十分であることやゲノム編集技術を用いたものか科学的な判別が困難であることを踏まえ、現時点では食品表示基準に基づく表示義務の対象としないこととしました。今後、流通実態や諸外国の表示制度に関する情報収集も随時行った上で、新たな知見等が得られた場合には、必要に応じて取扱いの見直しを検討することとしています(図表II-1-2-11)。

食品に含まれるアレルゲンの表示

食品に含まれるアレルゲン表示の対象品目について(注12)、2018年度の調査結果では、木の実類による症例数が急増しており、特に表示対象品目となっていないアーモンドによる症例数の増加及び現在推奨表示対象品目であるくるみによる症例数(重篤な症例数を含む。)の増加を確認しています。

このため、アーモンドについては、2019年9月に推奨表示対象品目に追加しました。また、くるみについては、消費者委員会食品表示部会の意見も踏まえ、推奨表示から義務表示に向けた検討を行うこととし、検査法の開発に着手することとしました。

なお、今回のくるみの症例数の急増が一過性でないことを確認するため、次回の実態調査結果を踏まえ、表示の義務化について判断することとしました。

健康や栄養に関する食品表示制度

健康や栄養に関する表示の制度には、熱量や栄養成分の量の表示に関する制度(栄養成分表示)、健康の維持及び増進に資する成分等の機能の表示に関する制度(機能性表示食品(注13)、特定保健用食品(注14)等)、乳児や病者等に適する旨の表示に関する制度(特別用途食品(注15))があります(図表II-1-2-12)。

栄養成分表示については、食生活の参考に活用する消費者を増やしていくために、高齢者、中高年、若年女性向けといった消費者の特性に応じた消費者向けリーフレットを作成するなど消費者への活用を促す取組を進めています。

機能性表示食品については、「規制改革実施計画」(令和元年6月15日閣議決定)を受け、本制度の更なる運用改善として、販売後の関係法令上の問題点について事業者自らが把握できるよう事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針の策定等を行ったところです。

特別用途食品(特定保健用食品を除く。)については、災害時の備えや外出時等における授乳を簡便にするといった有用性から、2018年8月に新たに乳児用液体ミルクの許可区分を追加するとともに、2019年9月に事業者からの要望を踏まえ、「総合栄養食品」の規格基準の見直し、「糖尿病用組合せ食品」及び「腎臓病用組合せ食品」の区分の追加等を行ったところです。

公共料金改定への対応

日本は市場経済を基本としており、サービスの料金や商品の価格は、市場における自由な競争を通じて決められることが原則ですが、料金や価格の中には、国会や政府、地方公共団体といった公的機関が、その水準の決定や改定に直接関わっているものがあります。これらは総称して公共料金と呼ばれており、その決定方法で分類してみると、国会や政府が決定するもの、政府が認可するもの、政府に届け出るもの、地方公共団体が決定するものに大きく分けられます(図表II-1-2-13)。

政府の規制する公共料金の新規設定及び変更に関する認可等については、消費者基本法第16条第2項の規定の趣旨を踏まえ、消費者に与える影響を十分に考慮するものとしています。そのため、公共料金の新規設定及び変更について、所管省庁が認可等を行うに当たり、事前に消費者庁に協議を行うこととしており、そのうち重要なものについては、消費者委員会で審議した上で、物価問題に関する関係閣僚会議へ付議することとしています(図表II-1-2-14)。

図表2-1-2-6特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会の検討の方向性

図表2-1-2-7消費者契約法(実体法部分)に関する主な検討の経緯

図表2-1-2-8消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会報告書概要(抜粋)

図表2-1-2-9携帯電話端末の店頭広告のイメージ(2019年6月当時)

図表2-1-2-10食品表示法について

図表2-1-2-11ゲノム編集技術応用食品の表示について

図表2-1-2-12健康や栄養に関する食品表示制度とは

図表2-1-2-13公共料金:行政関与の方法による分類

図表2-1-2-14物価問題に関する関係閣僚会議に付議する公共料金改定の例(大手鉄道会社の場合)


  • 注4:特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号)第7条第2号等の未成年者、老人その他の者の判断力の不足に乗じ、契約を締結させることを禁止する規定(判断力不足便乗禁止規定)について、「未成年者その他の者」又は「老人その他の者」を「若年者、高齢者その他の者」に改正した。
  • 注5:消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律第61号)
  • 注6:消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)
  • 注7:電気通信事業法の一部を改正する法律(令和元年法律第5号)
  • 注8:消費者庁「携帯電話に関する景品表示法違反被疑情報提供フォーム」
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/contact/disobey_form_002/
  • 注9:消費者庁「携帯電話等の移動系通信の端末の販売に関する店頭広告表示についての景品表示法上の考え方等の公表について」(2018年11月13日公表)、「携帯電話端末の店頭広告表示等の適正化について~携帯電話端末の店頭広告表示とMNPにおける違約金の問題への対応~」(2019年6月25日公表)及び「携帯電話端末の広告表示に関する注意喚起等について」(2019年9月26日公表)。
  • 注10:遺伝子組換え表示については、消費者の誤認防止や消費者の選択の幅の拡大等の観点から、分別生産流通管理を実施し、遺伝子組換え農産物の混入を5%以下に抑えている大豆及びとうもろこしについては、適切に分別生産流通管理をしている旨、事実に即した表示ができることとし、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められるものについては、「遺伝子組換えでない」旨の表示ができることとした。
  • 注11:DNAを切断する酵素等を用いて、ゲノム(DNAの全ての遺伝情報のこと。)の特定の部位を意図的に改変することが可能な技術。
  • 注12:全国の約1,000名の医師の協力の下で行っている実態調査結果を踏まえ、症例数及び重篤度の観点から、義務表示品目と推奨表示品目を定めている。
  • 注13:販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報等を消費者庁長官に届出することで、事業者の責任により食品等の機能性を表示するものであり、2020年3月31日の時点で2,568件の届出情報を公表。
  • 注14:その摂取により特定の保健の目的が期待できる旨の表示をするものであり、2020年3月31日時点で1,074件の許可等を実施。
  • 注15:乳児の発育や、えん下困難者、病者等の健康の保持・回復等、特別の用途に適する旨の表示をするものであり、2020年3月31日時点で68件の許可を実施。

担当:参事官(調査研究・国際担当)