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第1部 第1章 第6節 (1)家計消費、物価の動向

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第6節 消費者を取り巻く環境変化の動向

(1)家計消費、物価の動向

社会経済活動の中で大きなウェイトを占める消費活動

社会経済活動の中で、消費活動は大きなウェイトを占めています。家計が支出する消費額の総額は、2019年に約297.7兆円で、経済全体(名目国内総生産(GDP)=約554兆円)の50%以上を占めています(図表I-1-6-1)。

諸外国をみると、先進国は概して消費者が支出する総額が経済全体の5割を超えています。また、米国のように消費支出が経済の7割近いウェイトを占めている国もあります(図表I-1-6-2)。

消費者の消費活動は、日本の経済社会全体に大きな影響を及ぼしています。経済社会の持続的な発展のためには、消費者が安心して消費活動を行える市場を構築することが重要です。

家計の支出の4割超がサービスへの支出

家計の支出構造について、総務省「家計調査」により、2019年における「二人以上の世帯(農林漁家世帯を含む。)」1世帯当たりの財・サービスへの支出の構成比をみると、教養娯楽や住居、外食等の「サービスへの支出」が占める割合は42.4%、食料や光熱・水道等の「財(商品)への支出」は57.6%です(図表I-1-6-3)。

2019年の消費者物価は、小幅な上昇にとどまった

消費者が購入する財・サービスの価格は、総務省「消費者物価指数」によると、2017年の後半以降、緩やかな上昇傾向にあるものの、2019年の後半以降、消費税率の引上げもありましたが、上昇テンポは鈍化しました(注45)(図表I-1-6-4)。

消費者が購入する財・サービス全体の価格の動きを示す「総合」指数は、エネルギー価格の変動により、2019年は前年比変化率のプラス幅が縮小傾向となりました(図表I-1-6-5)。

一方、「総合」から生鮮食品及びエネルギーを除いた価格の動きを示す指数は、2017年の前半以降、おおむね安定的な前年比のプラスを維持し、2019年も緩やかながらも上昇が続きました。

また、総合指数の前年比の動きについて項目別の寄与度(各要因が全体の動きにどれだけ影響しているかの度合い)をみると、原材料や輸送コストの上昇の転嫁もあって、食料品のプラス寄与が大きくなりました(図表I-1-6-6)。エネルギーの寄与度については、2019年は徐々にプラス幅が縮小し、2019年8月にマイナスに転じて以降は2019年12月までマイナス寄与が継続しました。

物価モニター調査対象品目でも価格変動は小幅にとどまる

「物価モニター調査」における調査対象品目の税抜価格の変化をみると、2019年以降、前月から価格が上昇した品目数が下落した品目数を上回る状況が続きましたが、おおむね上昇幅は1%程度の範囲内で推移しました(図表I-1-6-7)。消費税率引上げのあった2019年10月以降においても、この傾向に変化はなく、価格の上昇幅も、ほとんどの品目において、消費税率引上げ前と同程度の範囲内であったといえます(注46)

消費税率引上げ後、軽減税率対象品目では値上げを感じるモニターの割合が減少

2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられましたが、飲食料品(酒類・外食を除く。)及び新聞(定期購読契約が締結された週2回以上発行されるもの)については軽減税率が適用され、消費税率は8%に据え置かれました。

物価モニターに、値上げがあったと感じる商品・サービスの分野について聞いたところ(注47)、「交通関連(鉄道、バス、タクシー運賃等)」と回答した人の割合が8月8.3%、9月6.5%から、10月32.7%、11月24.7%と増加傾向で推移したほか、「外食」や「日用品(家庭用消耗品、雑貨等)」についても同様に消費税率引上げ後に値上げがあったと感じる人の割合が増加しました(図表I-1-6-8)。

一方で、軽減税率の対象となる「生鮮食品」と回答した人の割合は8月62.8%、9月58.6%でしたが、10月は47.6%、11月は42.9%と減少しました。同様に「飲食料品(生鮮食品を除く)」と回答した人の割合も消費税率引上げ後に減少しました。

物価モニターの1年後の物価上昇期待は緩やかに収束

消費者の生活関連物資全般の価格見通しについて、物価モニター調査からみていきます。物価モニターに、1年後の物価について聞いたところ、「上昇すると思う」と回答した人の割合は、2019年3月以降、おおむね80%台半ばの高水準で推移し、2019年9月には86.9%まで上昇しましたが、2019年10月の消費税率引上げ以降下落に転じ、2020年3月には74.5%まで減少しています(注48)(図表I-1-6-9)。

「上昇(下落)すると思う」と答えた人に1年後どれくらい上昇(下落)するか聞いた結果を加重平均したところ、2019年4月以降2.0%付近で推移していましたが、2019年10月以降下落し、2020年3月には1.6%と緩やかに収束傾向となっています(図表I-1-6-10)。

2019年の個人消費は、おおむね持ち直しの動き

一国全体の雇用者の所得を表す実質総雇用者所得の動きをみると、2019年は、増加が続きました。

次に、個人消費の動向を消費総合指数からみると、2019年の個人消費は、一時的な落ち込みを除けばおおむね持ち直しの動きが続きました(図表I-1-6-11)。この背景には、企業収益が非製造業を中心に堅調である中で、雇用者数の増加が続き、企業の賃上げにより賃金も緩やかに増加するなど、雇用・所得環境が改善したことがあります。

一方で、2019年10-12月期には、消費税率の引上げに伴う一定程度の駆け込み需要の反動減、台風や暖冬の影響による一時的な落ち込みがみられました。また、2020年初頭以降の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、個人消費は足下で急速に減少しています(注49)

【解説】 物価モニター調査の実施

「物価モニター調査」とは、原油価格や為替レート等の動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響、物価動向についての意識等を正確・迅速に把握し、消費者等へのタイムリーな情報提供を行うことを目的として消費者庁が行っている調査です。

広く一般から募集した全国2,000名の物価モニターにより調査は行われています。調査内容には、価格調査と意識調査があり、価格調査は、消費者庁が指定した調査対象25品目(図表I-1-6-12)の価格の見取調査で、毎回の調査において同一店舗で同一商品の店頭表示価格を継続して調査するものです。特売品も含め、消費者に身近な品目、日頃よく購入する品目の価格を把握します。また、意識調査は、物価モニターに対し、消費や物価動向についての意識の変化を調査するものです。

2013年10月から調査を行い、2013年度は3回、2014年度は6回調査を行い、2015年4月以降は調査回数を毎月の12回に増やし、調査結果をタイムリーに公表しています。

また、2019年8月から11月にかけては、2019年10月の消費税率引上げ前後の価格動向をより幅広く、よりきめ細かく把握するために物価モニター数を4,000名に、調査対象品目を40品目に拡充して調査を行いました。

COLUMN1
キャッシュレス決済に関する消費者の意識(物価モニター調査結果より)

COLUMN2
大学生のキャッシュレス決済に関する消費行動について


  • 注46:2019年10月調査において、価格の上昇幅が2%以上の品目としてハンバーガー、卵及びガソリンが挙げられる。
  • 注47:消費者庁「物価モニター調査」(2019年8月~11月調査)においては、このほか店頭価格の表示方法や店内飲食を利用した際の意識等について調査を実施した。
  • 注48:内閣府「消費動向調査」においても、消費者が予想する1年後の物価の見通しが「上昇する」と回答した割合が2019年10月以降、減少傾向にある。
  • 注49:個人消費の動向については、内閣府「月例経済報告」を参照。

担当:参事官(調査研究・国際担当)