福島県いわき市 新・小名浜魚市場
福島県いわき市の、新・小名浜魚市場を訪問しました。(平成27年2月20日)
福島県における試験操業の実施

平成24年6月に相馬・双葉地区で試験操業(魚種を限定し小規模な操業と販売を行うもの)が始まり、いわき地区でも翌年10月より開始されました。
対象魚種は、検査で基準値を安定的に下回ることが確認できたものから選定し、平成27年2月末時点で58魚種まで広がっています。
試験操業で獲れた魚介類は、漁業協同組合でスクリーニング検査を行い、放射性セシウムが福島県漁業協同組合連合会の自主基準(50Bq/kg)以下のものだけ出荷されています。
平成27年3月26日オープン!新・小名浜魚市場
東日本大震災による津波は、魚市場の前に漁船が乗り上げるほどの強さで小名浜港を襲いました。
魚市場は関係者の努力で最低限の機能を復旧しましたが、老朽化も重なって継続使用が困難な状況となり、新魚市場等の整備を進めていました。
新小名浜魚市場は、放射性物質の検査室を始め、衛生面や安全面を考慮した最新の設備を備えています。魚の競りの様子を見学できるデッキも新設され、消費者が魚を身近に感じられるようになっています。新魚市場の向かいには、「いわき・ら・ら・ミュウ」(いわき市観光物産センター)があり、新鮮な魚を購入することもできます。

東北未来がんばっぺ大使
東京電力福島第一原子力発電所の事故による食品の風評被害の防止等のため、生産者による安全性確保や復興を目指した取組等を消費者の皆さんに広く知っていただく活動を行っています。
秋吉 久美子さん
福島県いわき市で育った日本を代表する女優。東日本大震災の被災地の復興支援活動にも尽力されています。
対談概要

矢吹 正一さん
いわき市漁業協同組合代表理事組合長。

野﨑 哲さん
小名浜機船底曳網漁業協同組合代表理事組合長。

久保木 幸子さん
いわき市漁業協同組合女性部長。

志賀 勝子さん
小名浜魚市場女性部長。
専門家の意見も伺い、安全性を確認した上で、操業する海域や魚の種類を決めています。(野﨑さん)
- 野﨑さん
- 東日本大震災以降、福島県の沿岸海域の魚介類は水揚げできない状態でした。いわき地区では、平成25年10月から、試験操業として、小規模な操業と販売を行っています。専門家の意見も伺いながら、安全性が十分に確認された海域と魚種を対象に漁をしています。
- 秋吉さん
- 消費者の方々にも気を遣い、様々な意見に応えようと努力されているのですね。
- 矢吹さん
- 対象魚種も、いわき市漁協では16魚種から開始し、慎重に安全を確認しつつ、徐々に増やしてきました。現在、58魚種まで拡大しています。
震災直後から2万4千件に及ぶ検査を懸命に行ってきた事実は重いと思います。(秋吉さん)
- 秋吉さん
- いわき市の魚に選定されているメヒカリの唐揚げを頂きましたが、ふっくら、ホクホク、甘みもあって、これぞ本物という感じ。復興の大きな足掛かりになるといいですね。
- 野﨑さん
- いわき市の沖合は、寒流と暖流が交わる「潮目の海」で豊かな漁場です。獲れる魚介類は質が良く、「常磐もの」として高く評価されています。
- 久保木さん
- 各地のイベントで魚の美味しさと安全性を伝えてきました。どこに行っても温かく応援してもらえます。
- 志賀さん
- ただ、産地直売等で消費者の方々にお会いすると、無理に買ってとは...。
- 秋吉さん
- 大きく声を上げ、消費者に訴えることも大切だと思います。震災直後から2万4千件に及ぶ検査を自ら一生懸命行ってきた事実は重いと思います。
震災当初は全くの手探りでしたが、各種調査で多くのことが分かってきています。(矢吹さん)
- 矢吹さん
- 私たちも震災当初は全くの手探りでした。行政の緊急時モニタリング検査を始めとした各種調査を通じて、放射性物質が検出されやすい魚の部位や、海の生物はセシウムを体外へ排出する機能を持つことなど、多くのことが分かってきました。
- 秋吉さん
- 放射性物質の海中での動態も不思議ですね。私もお話を伺って、初めて知りました。
- 野﨑さん
- これまで漁業者は、魚を獲って市場に売るまでが生業でした。しかし、震災後は、漁業者も消費者と直接向き合い、安全確保の取組や検査結果等を繰り返し説明していかなければなりません。早道や妙手はないと考えています。
- 秋吉さん
- 海はつながっています。汚染水の報道で海の映像を見ると、消費者はすぐに魚に影響が出るとイメージします。今日私が伺った内容を、消費者の皆さんにも知ってほしいと思いました。消費者の皆さんへの説明は大事なことです。
私たちも、ここで暮らし、獲れる農水産物を食べています。皆さんと同じ消費者なのです。(野﨑さん)
- 秋吉さん
- かつて、私の父はいわき市にある福島県の水産試験場に勤務していました。皆さんの頑張っている姿を見て、昔の父の白衣姿を思い出しました。 これまでの膨大なデータを、福島県内の学生や学者に提供し、論文の題材としてもらうのはどうでしょう。世界中から学者を招いて、福島の今を世界に発信してもらえれば、もっと良いですね。
- 野﨑さん
- そうですね。放射性物質の問題がなければ、知らなくても済んだ知識だったかもしれませんが、私たちもここで暮らし、獲れる農水産物を食べている消費者であると理解してもらいたいです。
- 秋吉さん
- 今日お邪魔している真新しい魚市場は、皆さんのそうした思いが詰まったものなのですね。
- 野﨑さん
- 震災から4年が経過し、少しずつ将来への光明を見いだしつつあります。新しい魚市場のオープンを機に、更なる好転を期待しています。