コラムVol.4 冬に増加する高齢者の事故に注意! ー 入浴中の溺水事故

高齢者は加齢に伴う身体機能や認知機能の低下、病気や薬の影響などの要因によって思いがけない事故に遭う可能性があります。今回は、冬の寒い時期に特に注意が必要な入浴中の溺水事故について、事故の状況と注意ポイントをご紹介します。
- <事故の状況>
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厚生労働省「人口動態統計」によると、溺れて亡くなる65歳以上の高齢者の数は徐々に増加しており、令和4年の1年間には7,900人が亡くなっています。そのうち家や居住施設の浴槽では5,824人が亡くなっています。一方、交通事故による65歳以上の死亡者数は徐々に減少しており、令和4年は2,154人となっていることから、家や居住施設の浴槽では交通事故の2倍以上もの高齢者が亡くなっていることが分かります(図1)。また、東京消防庁の救急搬送データ(令和3年)によると、「おぼれる」事故により救急搬送される高齢者の約9割が生命の危険がある重症以上(うち約半数は死亡)と診断されており(※1)、月別の搬送人員を見ると、特に冬場にその人数が多くなっていることが分かります(図2)。


冬場に溺れる事故が増える原因として、温かい室内と寒い脱衣所や浴室との寒暖差などによる急激な血圧の変動や、熱い湯に長くつかることによる体温上昇での意識障害が挙げられます(図3参照)。

図3 入浴時の温度差による血圧変化のイメージ
- <注意ポイント>
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高齢者における冬場の入浴中の事故を防ぐため、以下のポイントを参考に、入浴の環境や行動を見直し、快適で安全な入浴を心掛けましょう。また、身近に高齢者がいる方も、自分事として事故防止に取り組みましょう。
- ◆入浴前のポイント
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- 温度差を減らすため、前もって脱衣所や浴室を暖めておきましょう
- 部屋間の温度差について温度計を活用し、温度の見える化をしましょう
- 脱水症状等を防ぐため、入浴前に水分補給しましょう(入浴中でも喉が渇いたらこまめに)
- 食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避けましょう
- 同居者がいる場合、入浴前に同居者に一声掛け、入浴中であることを認識してもらいましょう
- ◆入浴時のポイント
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- 湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう
- 湯温や入浴時間などについて温度計やタイマーを活用して見える化しましょう
- 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう
- 同居者はこまめに声掛けをして様子を確認しましょう
- 浴槽内で意識がもうろうとしたら、気を失う前に湯を抜きましょう
もし、浴槽でぐったりしている人や溺れている人を発見したら、浴槽の栓を抜き、可能な範囲で救出や応急手当の対応を行いましょう。対応方法については政府広報オンライン「交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」(※3)に掲載されているコラム「風呂場で倒れている人がいたら」をご参照ください。
- ※1: 東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(令和5年12月8日最終閲覧)
- ※2: 厚生労働省「人口動態統計」上巻5.31表「不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(特定階級)別死亡数」及び下巻第9表「交通事故以外の不慮の事故(W00-X59)による死亡数,年齢(特定階級)・外因(三桁基本分類)・発生場所別」を基に消費者庁で作成。
- ※3: 政府広報オンライン「交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」
担当:消費者安全課