コラムVol.1 最近のたばこ関連事故 - この機会に喫煙習慣について考えてみませんか

5月31日は「世界禁煙デー」です。喫煙が健康に与える影響は大きい上、受動喫煙の危険性やニコチンの依存性を踏まえると、喫煙習慣は個人の嗜好にとどまらない健康問題であり、生活習慣病を予防する上で、たばこ対策は重要な課題になっています。このことから厚生労働省では6月6日までの1週間を「禁煙週間」として、禁煙及び受動喫煙防止の普及啓発を積極的に行っています(※1)。
喫煙による健康問題以外にも、子どもの誤飲事故(※2)や住宅火災(※3)は、「たばこ」が原因の上位の事故として知られています。この機会にたばことの関わり方について改めて考えてみませんか。今回のコラムでは、若い世代を中心に受け入れられ、身近になってきた「加熱式たばこ」と「水たばこ」について取り上げます。
- <加熱式たばこ>
-
加熱式たばこ(※4)は、たばこ葉やそれを加工したものが入ったスティック等を専用の器具を使って電気的に加熱し、エアロゾル(霧状)化したニコチン等を吸入する製品です。燃焼させないことから、吸い殻はそのままごみ箱に捨てても火災の危険はないとされています(※5)。喫煙時のやけどや、本体充電中の火災の情報が寄せられている(※6)ことから、取扱説明書に従い、不具合があれば使用をやめるなど事故を防ぎましょう。また、リチウムイオン電池が使用されているため、不要な製品は正しくリサイクル・廃棄しましょう(※7)。
- 「友人の勧めで加熱式たばこの本体を購入し利用したが、口の中を蒸気で火傷した。」
- 「喫煙器具(充電式、たばこカートリッジ加熱式)を充電中、当該製品及び周辺を焼損する火災が発生した。」
- 加熱式たばこと健康 -
加熱式たばこは、厚生労働省の国民健康・栄養調査(令和元年)によると、喫煙者の2割以上が使用しています。中でも、若い喫煙者では加熱式たばこを使用する人が多く、20~30代では男性で約4割、女性で約5割に達しています(※8)。
たばこ葉などを燃焼させないことから、ご自身や周りの人への健康影響や臭いなどが紙巻たばこより少ないという期待から受け入れられやすいかもしれません。
しかし、加熱した時に出る煙霧には、発がん性物質を含む多くの種類の有害化学物質が含まれており、最新の研究では、主流煙中に含まれる発がん性物質のたばこ特異的ニトロソアミンやベンゾaピレンは紙巻きたばこよりも量が少ない一方、有害物質のアセトール、2-ノネナールは高濃度であったこと、歯周病のリスクは紙巻きたばこから加熱式たばこに変えても変わらず非喫煙者よりも高い、加熱式たばこも受動喫煙となる可能性がある等との報告があります(※9)。
加熱式たばこは、販売からの年月が浅く、長期使用に伴う健康影響が明らかではありませんし、たばこに関係する病気のリスクが紙巻きたばこよりも低減されるという確証もありません。
- <水たばこ>
-
水たばこは、水パイプという喫煙具を用いて、たばこ葉等を炭で燃やした煙を水にくぐらせてから吸い込む喫煙法で、古くから中東諸国などで親しまれてきました。近年、国内でも喫煙できるカフェなどの場が提供され、認知度が高まっています。水たばこ用のたばこはフレーバーが付いているものが多く、水に煙を通すことで煙が冷やされ、まろやかな味わいになるとされています。燃やしたたばこ葉等や炭から発生した一酸化炭素のほか、1回の燃焼時間が1時間前後と紙巻きたばこなどと比較すると長くなること(※10)にも注意が必要です。店舗を利用する際は、換気が十分にされていることを確認し、器具の扱い方をスタッフによく確認しましょう。
- 「飲食店において、水たばこを利用した客が、店舗を出たところで意識不明となり転倒し、救急搬送されたが、一酸化炭素中毒と診断された。」(20歳代)(※6)
加熱式たばこも水たばこも、いずれもたばこであることに変わりはありません。喫煙開始年齢が早いほど、健康被害が大きく、また、ニコチン依存も強くなることが知られています(※11)。また、女性の喫煙は、早産、低出生体重・胎児発育遅延などの妊娠出産への影響があり、ご自身が喫煙していない場合でも受動喫煙が乳幼児突然死症候群(SIDS: Sudden Infant Death Syndrome)の要因となることが確実視されています(※12)。ご自身の健康への影響を考えればもちろんですが、周囲の人の健康のため、誤飲など様々な事故を防ぐためにもこの機会に喫煙習慣について考えてみませんか。
- (※1)厚生労働省「2023年世界禁煙デーについて」(別ウィンドウで表示します)
- (※2)子ども安全メール Vol.628 たばこ誤飲 - 加熱式たばこも要注意!
- (※3)東京消防庁「STOP! たばこ火災」(PDF)(別ウィンドウで表示します)
- (※4)加熱式たばこは、国内では平成25年12月から販売が開始、平成28年頃から急速に普及してきたとされています。
加熱式たばこと混同されやすい「電子たばこ」は、専用カートリッジ内の香料などを含む液体を加熱して煙霧を発生させ、それを使用者が吸入するために使われる製品です。日本では医薬品医療機器等法(薬機法)により、ニコチンを含むものの販売には許可が必要で、現在、ニコチンが含まれたものは販売されていません。ただし、製品によっては発がん性物質などが発生するという報告もあるため、ニコチンの有無にかかわらず、健康への影響の懸念があるとされています。
- (※5)総務省消防庁「加熱式たばこ等の安全対策検討会報告書」(PDF)(別ウィンドウで表示します)
- (※6)事故情報データバンク:消費者庁が(独)国民生活センターと連携し、関係機関から「事故情報」「危険情報」を広く収集し、事故防止に役立てるためのデータ収集・提供システム(平成22年4月運用開始)。
- (※7)廃棄の際は、販売店に相談するか、お住いの自治体のルールに従ってください。
- (※8)国立研究開発法人国立がん研究センター「たばことがん 加熱式たばこ」(別ウィンドウで表示します)
- (※9)厚生労働科学研究「加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発」(平成30年度~)、「加熱式たばこの健康影響評価のためバイオマーカーを用いた評価手法の開発」(令和2年度~)、「加熱式たばこの急性影響を評価する疫学実証研究」(令和2年度~)
個別の研究成果については、厚生労働科学研究データベースより検索可能です。 - (※10)日本たばこ産業株式会社「水たばこ(シーシャ)」(別ウィンドウで表示します)
- (※11)厚生労働省「e-ヘルスネット 若者の健康と喫煙」(別ウィンドウで表示します)
- (※12)厚生労働省「e-ヘルスネット 女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響」(別ウィンドウで表示します)
担当:消費者安全課