棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意
ドライアイスは、食品の保冷輸送など様々な場面で利用されている消費者に身近な冷却剤です。氷よりも温度が低く、液体にならず食品等が濡れることがないため便利ではあるものの、取扱いによっては事故につながるおそれがあります。
消費者庁には、葬儀の際、ご遺体の保冷目的で棺(ひつぎ)内に置かれていたドライアイスによる二酸化炭素中毒が疑われる死亡事故の情報が寄せられていることから、今般、葬儀で棺に接する際に注意してほしいポイントを、棺内の二酸化炭素濃度等の測定結果を踏まえてご紹介します。

事故事例
- 葬儀場において、ドライアイスを敷き詰めた棺桶の小窓を開けたそばで、意識不明の状態で発見され、搬送先の病院で死亡した。
- 葬儀場において、ドライアイスを敷き詰めた棺桶内に顔を入れた状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。
- 自宅において、ドライアイスを敷き詰めた棺桶内に顔を入れた状態で発見され、死亡が確認された。
ドライアイスの特性と二酸化炭素中毒
ドライアイスは二酸化炭素の固体で、-78.5°Cで固体から直接気体に変化(昇華)し、1kgのドライアイス(約0.64L)は、約500Lの体積の気体に膨張します。二酸化炭素の気体は無色・無臭であり、空気の約1.5倍の重さがあるため、拡散はするものの、低い場所へ流れてたまるという特性があります。
吸入する空気中の二酸化炭素濃度が高い場合、呼気への二酸化炭素の排出が阻害されることにより人体に中毒症状が現れ、生命に危険が及びます。二酸化炭素中毒は、酸素濃度が十分にあっても生じるとされており、高濃度の二酸化炭素はそれ自体の有害性が過去の事故等から知られています。
棺内の二酸化炭素濃度
棺内にドライアイスを設置した際の二酸化炭素濃度の推移を国民生活センターが調べました。
- 棺の蓋を閉めた状態では、ドライアイス設置20分後には内部の二酸化炭素濃度が「ほとんど即時に意識消失」するとされる濃度(30%)を超え、4時間後には90%前後でほぼ一定となりました。
- 二酸化炭素濃度が約90%の状態で、静かに棺の蓋を全て開けた場合、開けた直後に約60%まで急激に低下しましたが、その後、低下は緩やかになり、約50分が経過しても「ほとんど即時に意識消失」するとされる30%以上を維持していました。
消費者へのアドバイス
葬儀の際、ご遺体を安置する環境においては、以下に注意しましょう。
- 棺の中に顔を入れないこと
- 室内の換気を十分に行うこと
- 線香番などで一人にならないこと
- 気分が悪くなったらすぐに棺から離れ、異常があれば直ちに119番通報を
- 不明なことがあれば葬儀業者に確認を
消費者庁・(独)国民生活センター公表資料
啓発動画
本動画は、消費者庁公式YouTubeチャンネルにも掲載しております。
担当:消費者安全課