第2部 第2章 第5節 3.地方における体制整備
第2部 消費者政策の実施の状況
第2章 消費者政策の実施の状況の詳細
第5節 消費者行政を推進するための体制整備
3.地方における体制整備
(1)地方消費者行政の充実・強化に向けた地方公共団体への支援等
消費者の安全・安心の確保のためには、現場である地方消費者行政の充実・強化が不可欠との認識から、消費者庁では現在、「地方消費者行政強化作戦2020」に基づく取組を進めており、地方公共団体との連携を強化しながら、地方消費者行政交付金等により地方公共団体における取組を支援しているところです。
これまで、消費者庁では、地方消費者行政推進交付金の当初予算化及び基金の活用期間の延長を措置したことを踏まえ、中長期的な検討を実施するため、2015年度に「地方消費者行政強化作戦」を定め、計画的・安定的な取組の中で、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられる地域体制の全国的な整備を進めるとともに、人員・予算の確保に向けた地方公共団体の自主的な取組を推進してきました。2018年度以降の「地方消費者行政の充実・強化に向けた今後の支援のあり方等に関する検討会」では、従来の地方消費者行政推進交付金の活用とともに、国として取り組むべき新たな消費者問題や重要課題に対する支援の必要性が指摘され、これらに意欲的に取り組む地方公共団体を中期的・計画的に支援する仕組みを構築することが提案されました。これに基づき、2018年度に「地方消費者行政強化交付金」が創設され、2022年度は、31.5億円を措置しています。加えて、令和4年度補正予算(第2号)において、いわゆる霊感商法等の悪質商法に対する地方の取組を重点的に支援するための事業メニュー(5億円、補助率10/10)を創設しました。
また、同検討会の報告書を契機として、地方公共団体の知事等に対して、地方消費者行政の重要性及びそれに必要な自主財源の確保を呼び掛けてきました。2019年1月からは、「地方消費者行政強化キャラバン」として、政務(大臣・副大臣・政務官)及び幹部職員が自ら全国の都道府県を訪問し、直接、知事等に自主財源に裏付けられた地方消費者行政の充実等を働き掛ける取組を47都道府県全てに行いました。こうした中で、第4期消費者基本計画の閣議決定を受けて、2020年4月に、今後の地方消費者行政の目指すべき姿を示す「地方消費者行政強化作戦2020」を策定しました。このほか、2020年度からは、民間事業者・団体等をプラットフォームとして、新たな行政手法を構築し、地方においてモデルとなる事業を創出することを目的とした「地方消費者行政に関する先進的モデル事業」や、消費生活相談員の担い手確保に向けた養成講座等も実施しています。
東日本大震災の被災地への支援としては、震災・原発事故を受けた緊急対応(食品等の放射性物質検査、食の安全性等に関する消費生活相談対応等)により、被災県(岩手・宮城・福島・茨城)では基金に不足が見込まれたため、交付金等を措置してきました。2022年度には地方消費者行政推進交付金として福島県に2.79億円を措置しています。
(2)地域の見守りネットワークの構築
消費者庁では、消費者トラブルの防止及び被害からの救済について、地方消費者行政強化交付金等により、被害に遭うリスクの高い消費者(障害者、高齢者、被害経験者等)を効果的・重点的に地域で見守る体制を構築し、消費者トラブルの防止及び早期発見を図る取組等を支援するとともに、地方消費者行政強化キャラバンによる地方公共団体の長への働き掛け等により消費者安全確保地域協議会の設置を促進しています。
2022年10月には、「第18回高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」が構成団体の見守り活動の更なる促進を図ることを目的に開催されました。高齢者や障害者の見守りに関して特に顕著な取組を行っている地方公共団体、消費者団体、専門職団体が発表を行い、情報共有を行いました。「高齢者、障がい者の消費者トラブル防止のため、積極的な情報発信を行う」こと、「多様な主体と緊密に連携して、高齢消費者・障がい消費者を見守り消費者トラブルの被害の回復と未然防止に取り組む」こと等について申合せの確認をしました。
また、2022年度には、地方消費者行政に関する先進的モデル事業として「高齢者、障害者等を見守るネットワークの構築及び地域活性化の実証」を実施し、消費者被害の未然防止や被害救済に資する見守りネットワークの構築・活性化を図るとともに、関係団体間の連携や必要な資材の開発等を行い、取組の検証を行いました。
(3)地方公共団体との政策・措置に関する情報等の共有
消費者庁では、2010年度から、国民生活センター及び経済産業局等を含めた国の機関と、都道府県・政令市の担当課長との意見交換や情報共有の場として、「消費者行政ブロック会議」を開催しています。
また、都道府県・政令市の消費生活センター所長が意見交換や情報共有を行うため、国民生活センターが地方公共団体とブロックごとに開催する「消費生活センター所長会議」に、消費者庁職員が出席し、意見交換を行っています。2022年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況に鑑み、11月にオンラインでの会議を開催しました。
加えて、毎年4月に都道府県及び政令市の消費者行政担当課長等向けの「都道府県等消費者行政担当課長会議」を開催し、最近の国の消費者行政の動向について情報の共有を図っています。
これらの各会議を通じて、各地方公共団体の消費者行政担当者と意見交換・情報提供を行っています。
(4)都道府県における法執行強化
国と地方が情報共有を進めて法を厳正に執行し、被害をもたらしている事業者の行為を是正することは、消費者被害の拡大防止や軽減、予防につながります。このため、消費者庁では、地方公共団体の法執行力を強化することを目的として、地方公共団体の執行担当者を対象とした研修を行っています。
2022年度には、執行実務に必要となる基礎知識の習得を目的とした「執行初任者研修」を、5月にオンラインで実施し(156名参加)、さらに、執行に必要な実務スキルの向上を目指した「執行専門研修」を、11月に対面形式で実施(71名参加)しました。
(5)消費者ホットラインの運用及び認知度の向上
消費者がトラブルに見舞われたとしても、相談窓口の存在に気付かなかったり、相談窓口は知っていたとしてもその連絡先が分からなかったりすることがあります。
このため、消費者庁では、全国どこからでも身近な消費生活相談窓口を案内する3桁の電話番号「188(いやや!)」(消費者ホットライン(注104))の運用を行っており、2022年度の入電件数は97万9843件となりました。
同ホットラインについて、消費者への更なる普及啓発を図るため、5月18日の「消費者ホットライン188の日」にSNSによる広告配信を行いました。また、イメージキャラクター「イヤヤン」を活用したポスター・チラシの掲示・配布、マスメディアを活用した広報活動を行ったほか、SNS動画広告を配信するなど、様々な手法による広報を実施しました。
(6)消費生活以外の相談窓口と消費生活相談窓口との連携促進
消費者庁は、2022年度、地方公共団体に対する消費生活センター等との連携に関する要請を行いました。
(7)消費生活相談情報の的確な収集と活用
PIO-NETは、全国の消費生活相談業務の円滑な実施を支援するために1984年に運用を開始したシステムであり、国民生活センターと地方公共団体の消費生活センター等がオンラインネットワークで結ばれ、全国に寄せられた消費生活相談情報が集約されています。
2000年代中盤において、消費者被害が多様化、複雑化する中で、消費生活相談業務の支援に加えて、法執行等を担当する行政機関等からの利活用の需要が高まり、2007年に中央省庁及び独立行政法人でのPIO-NET利用が可能となりました。また2017年2月から、消費生活相談件数が急増している事業者や商品・サービスについて適格消費者団体及び特定適格消費者団体へ情報提供を行っています。
2021年9月には、PIO-NETのシステム更改を行い、機能追加やセキュリティの強化等、機能面・運用面を改善し、PIO-NET2020として運用を開始しました。
また、消費者庁と国民生活センターでは、2022年6月に「消費生活相談デジタル・トランスフォーメーションアクションプラン2022」を公表し、消費生活相談のデジタル化やこれによる業務体制の整備等について、目指す将来像とそれに向けた作業の進め方の計画を示しました。また、地方公共団体との意見交換を実施するとともに、2021年度に引き続き「消費生活相談デジタル化アドバイザリーボード」を開催して、消費生活相談の現場や識者からの意見・知見を聴取し、消費生活相談のデジタル化の具体化に向けた検討を進めました。
(8)国民生活センターによる研修の実施
国民生活センターの相模原事務所研修施設では、2022年度は31回(注105)の研修を実施しました。
地方公共団体の職員や消費生活相談員等に対し、新型コロナウイルス感染症対策を講じた上で、事例検討や参加体験型研修を取り入れた研修を実施しました。また、同事務所内の商品テスト施設を活用した研修も実施しました。
担当:参事官(調査研究・国際担当)