第2部 第2章 第3節 3.消費生活のグローバル化の進展への対応
第2部 消費者政策の実施の状況
第2章 消費者政策の実施の状況の詳細
第3節 「新しい生活様式」の実践その他多様な課題への機動的・集中的な対応
3.消費生活のグローバル化の進展への対応
(1)越境消費者トラブルへの対応力の強化
情報化や国際化の進展に伴い、消費者がインターネットを通じて気軽に海外事業者と取引できるようになった反面、こうした国境を越えた取引(越境取引)に関連する消費者問題も増加しています。
このような問題に対応するため、消費者庁は、2011年に、越境取引に関する消費者相談窓口を開設し、2015年からCCJとして国民生活センターが事業を行っています。
CCJでは、2015年6月から越境消費者相談の受付を開始しました。2022年度は5,006件の相談を受け付け、消費者に対して内容に応じた助言や情報提供を行いました。これらについては、国民生活センターのウェブサイトで2022年度に2回公表を行いました。
また、海外の消費者相談機関との更なる連携強化・拡大を進め、CCJと連携する海外消費者相談機関は、2023年4月1日時点で計15機関、これらの機関が担当する国・地域は26となっています。
(2)訪日外国人・在留外国人からの相談に対する体制の強化
消費者庁では、地方消費者行政強化交付金を通じて、在留外国人の対応を含む消費生活相談体制の強化に向けた地方公共団体の取組を支援しています。2022年4月1日時点では31都道府県、460市区町村等において通訳の活用等の体制整備が図られています。
また、国民生活センターにおいて、訪日観光客が日本滞在中に消費者トラブルに遭った際の電話相談窓口「訪日観光客消費者ホットライン」を2018年12月に開設しました。また、同ホットラインでは、多言語による安定した情報提供を行うため、訪日観光客を対象とした多言語ウェブサイト及び多言語チャットボットを2021年7月に開設しました。
(3)二国間・地域間・多国間における政策対話・協力等の実施
消費者庁は、2022年4月及び11月にOECD消費者政策委員会(CCP)本会合及び下部作業部会の製品安全作業部会本会合に参加しました。新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年以降はオンライン形式での開催が続きましたが、11月に、3年ぶりにパリのOECD本部で実開催されました。これらの会合では、オンライン上のダーク・パターン、デジタル時代のぜい弱な消費者、製品安全誓約の政策ガイダンス等について議論が行われました。ダーク・パターンについては、2022年10月に報告書が公表され、その中でダーク・パターンの定義が示されました。デジタル時代のぜい弱な消費者については、高齢者、子供等の伝統的な「弱者」といった属性のみを切り口にするのではなく、ダーク・パターン、デジタル格差等「状況」によるぜい弱性を取り上げることが重要であるとする観点から、議論が展開されました。製品安全誓約は、オンライン市場事業者と消費者製品安全当局との間で、製品安全の強化のため自主的に交わされる取決めですが、この政策ガイダンスが2022年7月に公表され、事例や注意点が示されました。
日本は、CCP及び製品安全作業部会の副議長を長年務めており、勧告の見直しやガイドラインの作成等において議論を主導し、その方向性の決定に関与するなど、重要な役割を果たしています。
(4)海外消費者関係法執行機関との連携
消費者庁は、2022年5月、消費者月間に合わせて、ICPEN(注97)が推奨する「詐欺防止月間」を「金融消費者」をテーマに実施したほか、本会合にも参加しました。会合では、オンライン上の不正レビューや環境配慮に関する虚偽表示等への対応、連鎖販売取引、無限連鎖講等への執行等に関し情報共有及び意見交換を行いました。
(5)消費者庁新未来創造戦略本部の機能を活用した国際共同研究等の推進
2020年7月に徳島県に開設した新未来創造戦略本部では、海外の研究者等との国際共同研究や政策研究を基点とした国際交流を行っていくことに加えて、国際シンポジウム等の国際交流事業を実施しています。
国際シンポジウムでは、2022年6月には、フランス・英国・米国、10月にはマレーシア・タイと、それぞれ研究者等による講演や議論を行いました。こうした国際業務を通じて、海外諸国の消費者政策の情勢を把握するとともに、消費者庁の取組を世界に発信していくことを目指しています。
- (注97)International Consumer Protection and Enforcement Network(消費者保護及び執行のための国際ネットワーク)の略。
担当:参事官(調査研究・国際担当)