第2部 第2章 第3節 1.「新しい生活様式」の実践や災害時に係る消費者問題への対応
第2部 消費者政策の実施の状況
第2章 消費者政策の実施の状況の詳細
第3節 「新しい生活様式」の実践その他多様な課題への機動的・集中的な対応
1.「新しい生活様式」の実践や災害時に係る消費者問題への対応
(1)デジタルプラットフォームを介した取引等における消費者利益の確保
2022年5月に取引DPF消費者保護法が施行されました。同法の規定に基づき取引デジタルプラットフォーム提供者に対し危険商品の出品削除を要請したほか、関係行政機関、取引デジタルプラットフォーム提供者の事業者団体、消費者団体等を構成員とする取引デジタルプラットフォーム官民協議会を2回開催し、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する意見交換を行いました。
2022年6月に「アフィリエイト広告等に関する検討会」の報告書に基づき、景品表示法第26条の規定に基づく「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改正を行い、アフィリエイト広告が当該指針の対象に含まれることを明確化しました。また、広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を出稿するなどのステルスマーケティングについて、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為を規制する景品表示法の観点から、対応を検討するため、2022年9月から「ステルスマーケティングに関する検討会」を開催し、同年12月に報告書の公表を行いました。そして、当該報告書を踏まえ、2023年3月、景品表示法第5条第3号の規定に基づく告示において、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)を新たに不当表示として指定し、同年10月1日から施行予定です。
内閣官房では、デジタル市場競争会議及び同会議ワーキンググループにおいて、デジタル広告市場(関連する検索やSNS等を含む。)について、消費者の視点から、デジタル広告市場におけるパーソナルデータの取得・利用に関する懸念として、本人への説明やそれを前提とする本人同意が実効的に機能しているかという課題や、消費者の認知限界を踏まえれば事業者側に適切な配慮や取扱いを求めることが必要ではないかといった課題について、2021年4月に最終報告を取りまとめ、課題解決のアプローチ等の対応の方向性を整理し、公表しました。これを踏まえて、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(令和2年法律第38号)の適用対象にデジタル広告市場を追加するための政令改正やその他のルール整備について前記ワーキンググループで議論し、2022年7月に当該政令改正案が閣議決定されました。
(2)「新しい生活様式」におけるデジタル化に対応した消費者教育・普及啓発の推進
社会のデジタル化に伴い発生している新たな消費者問題に対応した消費者教育の推進のため、消費者庁では、2021年3月に作成、公表したデジタル教材「デジタル社会の消費生活」の活用に向け、高等学校教員を対象とした講習会を開催しました。また、令和3年度地方消費者行政に関する先進的モデル事業において作成した高齢者向け消費者教育教材の活用事例集を取りまとめました。
このほか、2021年度に消費者教育の担い手等に対する情報提供の強化の観点から改修した、消費者教育ポータルサイトの活用促進に努めています。
(3)新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の緊急時における対応の強化
2020年初頭の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、日常の消費生活に大きな影響が生じました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う相談体制の変更等を行った市町村に対し、消費者ホットライン188の接続先を都道府県の消費生活センター等に変更するなどの対応を行ったほか、国民生活センターでは、新型コロナウイルス感染症に関連した詐欺的トラブルの未然防止・拡大防止のため、2021年12月24日から2022年6月23日まで「新型コロナ関連詐欺 消費者ホットライン」を開設し、土日祝日(年末年始を除く。)も含め対応しました。
このほかに、新型コロナウイルス感染症に対する効果を標ぼうする健康食品、空間除菌商品等の販売事業者に対して、景品表示法の規定に基づき措置命令を行うなど、積極的に不当表示に関する執行業務に取り組みました。
また、新たな日常が模索される中で、第204回国会において、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、在宅する機会が多くなっている消費者を狙った一方的な商品の送り付けへの対策(令和3年7月6日施行)や利用者が増加している通信販売における詐欺的な定期購入商法対策(令和4年6月1日施行)等の制度整備に取り組みました。
(4)新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の緊急時における関係府省等の連携
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、マスクやアルコール消毒製品等が品薄となる中、インターネット上での高額転売が続いたことから、国民生活安定緊急措置法の規定に基づき、2020年3月にマスク、同年5月にアルコール消毒製品について、購入価格を超える価格での転売を禁止しました。いずれの物資も需給のひっ迫が改善したことから、同年8月に当該規制を解除しました。解除後も引き続き食料品、生活必需品等の需給の状況を注視して必要に応じて関係省庁と連携して対応しています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の緊急時において、これに便乗した悪質商法等に関する注意喚起について、関係省庁と連携して注意喚起を実施しました。
(5)特定商取引法及び預託法等の執行強化等【再掲】
第2部第2章第1節2.(2)ア 特定商取引法及び預託法等の執行強化等を参照。
(6)「オレオレ詐欺等対策プラン」の推進による特殊詐欺の取締り、被害防止の推進【再掲】
第2部第2章第1節2.(7)ア 「オレオレ詐欺等対策プラン」の推進による特殊詐欺の取締り、被害防止の推進を参照。
(7)被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の取締りの推進【再掲】
第2部第2章第1節2.(7)ウ 被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の取締りの推進を参照。
(8)ヤミ金融事犯の取締りの推進【再掲】
第2部第2章第1節2.(7)カ ヤミ金融事犯の取締りの推進を参照。
(9)特定商取引法の通信販売での不法行為への対応【再掲】
第2部第2章第1節2.(10)ア 特定商取引法の通信販売での不法行為への対応を参照。
(10)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進【再掲】
第2部第2章第1節3.(7)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進を参照。
(11)IT・AIを活用した民事紛争解決の利用拡充・機能強化【再掲】
第2部第2章第1節4.(8)IT・AIを活用した民事紛争解決の利用拡充・機能強化を参照。
(12)国民生活センターによる消費生活センター等への相談支援機能強化
国民生活センター(注93)では、全国の消費生活センター等からの商品やサービス等消費生活全般に関する相談や問合せ等に対応する「経由相談」を実施しており、各地の消費生活センター等への相談支援機能を強化するため、専門チーム制を導入し、専門家からのヒアリング、事業者団体等との意見交換会等を多数行い、専門性の強化を図っています。
また、土日祝日に窓口を開設していない消費生活センター等を支援するため、消費者ホットラインを通じて「休日相談」を行うとともに、平日には、地方の消費生活センター等に電話がつながらない場合に対応する「平日バックアップ相談」を運営しています。
さらに、地方の消費生活センター等が昼休みを設けることの多い平日の11時から13時までの時間帯に、消費者から電話で相談を受け付ける「お昼の消費生活相談」を行っています。
2022年度は「経由相談」は5,828件、「休日相談」は5,794件、「平日バックアップ相談」は3,245件、「お昼の消費生活相談」は1,969件を受け付けました。
また、新型コロナウイルス感染症に関連した詐欺的トラブルの未然防止・拡大防止のため、2021年12月24日から2022年6月23日まで「新型コロナ関連詐欺 消費者ホットライン」を開設し、土日祝日(年末年始を除く。)も含め対応しました(受付件数:985件、うちコロナ関連詐欺が疑われる件数:24件、うちコロナ関連詐欺以外のコロナ関連件数:90件)。
また、相談処理の専門性の強化を図るため、法律、自動車、土地・住宅、美容医療及び決済手段について高度専門相談を実施しています。さらに、商品に関する苦情相談の解決のため、各地の消費生活センター等からの依頼を受けて商品テストを実施しています。
このほか、CCJにおいて、越境取引に関する消費者相談に対応しています。
- (注93)国民生活センターは、消費者行政における中核的な実施機関であり、①消費者行政の司令塔機能の発揮、②地方消費者行政の推進、③消費者への注意喚起のいずれにとっても必要不可欠な存在である。
国民生活センターの在り方については、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)の下で開催された「消費者行政の体制整備のための意見交換会」(2013年)等において検討が進められていたが、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月閣議決定)を踏まえ、「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成26年法律第66号)と「独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第67号)において、独立行政法人の新たな類型の一つである「中期目標管理法人」とすることとされた(「中期目標管理法人」とは、一定の自主性及び自律性を発揮しつつ、中期的な視点での執行が求められる公共上の事務等について、国が定める中期的な目標を達成するための計画に基づき、国民の需要に的確に対応した多様で良質なサービスの提供を通じた公共の利益の増進を推進することを目的とする法人を指す。)。
担当:参事官(調査研究・国際担当)