第1部 第2章 第2節 (3)高齢者の性質と消費者トラブルとの関連
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第2章 【特集】高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組
第2節 高齢者の消費行動と消費者トラブル
(3)高齢者の性質と消費者トラブルとの関連
■高齢者の不安や孤独・孤立と消費者トラブル
第1部第2章第1節や本節でみてきた高齢者を取り巻く環境や高齢者の意識と、消費者トラブルとの関係性についてみていきます。
「健康に関する意識や不安」によって、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがある
日本人の健康寿命は延びており、高齢者では「健康を優先した生活をしたい」という意識が他の年齢層よりも高くなっています。また、現在や将来の不安や心配に関する調査では、高齢者は健康に関連する項目で不安を感じていました。
健康を重視したいという意識や健康への不安は、健康に良さそうな商品を選択するなどの消費行動へとつながっていると考えられますが、一方で、高齢者の消費トラブルの特徴として、健康食品に関するトラブルが多く発生していることがあります。高齢者は健康に関する意識や不安につけ込まれ、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがあると考えられます。
「将来への不安」につけ込むような勧誘に巻き込まれるおそれがある
高齢者の中には、健康、家計の状況、孤独感や孤立感に関する将来への不安や心配を感じている人が一定割合います。さらに、高齢者の中では、60歳代の方が70歳以上よりも将来への不安を感じている人の割合が高くなっていました。
日本人の平均寿命が延びている中で、そうした将来への不安や心配をあおったり、不安な気持ちにつけ込んだりするような勧誘によって、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがあると考えられます。60歳代と70歳以上で大きな差はないものの、60歳代の方が将来への不安を感じている割合が高いことから、そうした不安につけ込むような勧誘に特に注意が必要であると考えられます。
「孤独や孤立」は消費者被害の表面化を妨げるおそれがある
高齢者の約8割が地域との付き合いがあり、近所付き合いで相談をしたりされたりする人もいますが、一方で、高齢者の中には孤独感や孤立感への不安や心配を感じている人も一定割合います。また、一人暮らしの高齢者の増加に伴い、孤独や孤立の状態となる高齢者が増えることも懸念されます。
地域や近所との付き合いが高齢者の見守りや消費者被害の防止等につながることが期待されますが、周囲に相談できる相手がいない場合等は、消費者被害が表面化しにくく、周囲が被害に気付くことが遅れたり、被害救済が難しくなったりするおそれがあります。
購入前の調査を十分に行わない傾向がみられ、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがある
高齢者は年齢層が高くなるほど、消費行動において「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」と回答した人の割合が低くなっていました。
近年は高齢者でも、定期購入商法や偽サイトのトラブルが発生していますが、購入前に十分な調査をすることで、こうした被害を防止することができます。購入前の調査を十分に行わない場合、消費者トラブルに巻き込まれるおそれが高まると考えられます。
担当:参事官(調査研究・国際担当)