第1部 第2章 第1節 (2)高齢者を取り巻く社会環境の変化
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第2章 【特集】高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組
第1節 高齢者を取り巻く環境と意識
(2)高齢者を取り巻く社会環境の変化
■消費者市民社会とSDGsの設定
消費者が公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会:消費者市民社会
2004年の消費者基本法の成立により、消費者政策の基本理念は、従来の消費者の「保護」から「自立」支援に大きく転換されました。そして、消費者の自立を支援するためには消費者教育が重要であり、消費者教育の機会を提供されることが消費者の権利であることを踏まえ、2012年に消費者教育推進法が成立しました。同法において、法律上初めて消費者市民社会(注33)という言葉が位置付けられ、「消費者が公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会」と定義されています。消費者市民社会は、消費者の社会的役割や消費者教育推進の在り方を考える際の共通概念であり、消費者は社会的課題を自分事として捉え、消費行動により課題解決につなげることが求められています。また、その実現に向け、消費者、事業者及び行政の連携・協働も重要になります。
消費者市民社会と持続可能な開発目標:SDGs
現在、世界では地球温暖化や環境汚染、資源、エネルギーの不足に加え、途上国の貧困や児童労働の問題等、様々な社会的課題が発生しており、「持続可能性(サステナビリティ)」をキーワードとした問題解決が求められています。
2015年の国連サミットでは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals (SDGs))が採択され、2030年を達成年限として、持続可能でより良い社会の実現を目指すことが、世界共通の目標として定められました。SDGsは、貧困や不平等、気候変動、環境劣化といった世界が直面する課題に対する17のゴール(目標)と169のターゲット(達成基準)から構成されています。SDGsの達成に向けては、「誰一人取り残さない」ことを原則に、これら17の目標を統合的に解決することとされています。
消費者市民社会が目指す、「公正かつ持続可能な社会の形成」はSDGsが採択されたこともあり、全世界的に重要な課題となっています。消費者がSDGsについて理解し、主体的・能動的に行動に移すことは、消費者市民社会の実現につながります。消費者庁では、消費者教育の推進、エシカル消費の普及・啓発活動や食品ロスの削減、消費者志向経営の推進等、SDGsの達成にも貢献する施策を進めています。また、消費者庁では「消費者市民社会の実現」に向けた施策に関連するSDGsとして、九つを挙げています(図表Ⅰ-2-1-14)。
事業者あるいは行政単独での取組だけで、これらの目標を達成するのは困難です。このため、消費者、事業者、行政が目標を共有し、協働する必要があります。高齢者は社会の重要な主体であり、消費者市民社会の実現やSDGsの達成には、高齢者の力も欠かせません。公正かつ持続可能な社会の形成へ向けた取組に高齢者の参画を促すとともに、高齢者が参画しやすい環境作り等により高齢者自身の取組を後押ししていくことは、非常に重要です。
- (注33)消費者教育推進法第2条第2項では、消費者市民社会を「消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会」と定義している。
担当:参事官(調査研究・国際担当)