第1部 第1章 第1節 消費者庁に通知された消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等
第1節 消費者庁に通知された消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果
消費者安全法の規定に基づき消費者事故等に関する情報を集約
消費者安全法は、2008年6月に閣議決定された「消費者行政推進基本計画」を踏まえ、2009年5月に消費者庁関連三法(注2)の一つとして成立し、同年9月、消費者庁の設置とともに施行されました。これにより、消費者事故等の発生に関する情報が消費者庁に一元的に集約され、消費者被害の発生又は拡大防止のための各種措置が講じられるようになりました。
消費者安全法における消費者事故等とは、消費者と事業者の関係において生じた消費生活の安全を脅かす事故等をいい、生命・身体に関する事故のみならず、財産に関する事態(以下「財産事案」という。)も含みます(図表Ⅰ-1-1-1、図表Ⅰ-1-1-2)。また、重大事故等とは、生命・身体に関する事故のうち、被害が重大なものやそのおそれがあるものをいいます。同法第12条第1項の規定に基づき、行政機関の長、都道府県知事、市町村長及び国民生活センターの長は、重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、それを直ちに消費者庁(内閣総理大臣)に通知することとされています。また、重大事故等以外の消費者事故等が発生した旨の情報を得た場合であって、被害が拡大し、又は同種・類似の消費者事故等が発生するおそれがあると認めるときにも、同法第12条第2項の規定に基づき、消費者庁(内閣総理大臣)に通知することとされています。そして、消費者庁(内閣総理大臣)は、これらの通知により得た情報等が消費者安全の確保を図るために有効に活用されるよう、迅速かつ適確に情報等を集約、分析し、その結果を取りまとめ、関係行政機関、関係地方公共団体及び国民生活センターに提供します。また、消費者庁(内閣総理大臣)は、取りまとめた結果を消費者委員会に報告し、国民に対して公表するとともに、国会に報告を行います。なお、消費者庁に通知された重大事故等については、定期的に事故の概要等として公表しています。
2022年度に通知された消費者事故等は1万5308件
消費者安全法の規定に基づき2022年度に消費者庁に通知された消費者事故等は1万5308件で、2021年度の1万4941件から2.5%増加しました。内訳は、同法第12条第1項等の規定に基づいて通知された重大事故等が1,351件(2021年度1,500件、前年度比9.9%減)、同法第12条第2項等の規定に基づいて通知された消費者事故等が1万3957件(2021年度1万3441件、前年度比3.8%増)でした。
生命身体事故等は4,914件(2021年度3,992件、前年度比23.1%増)、重大事故等を除く生命身体事故等は3,563件(2021年度2,492件、前年度比43.0%増)、財産事案は1万394件(2021年度1万949件、前年度比5.1%減)でした(図表Ⅰ-1-1-3)。
重大事故等を事故内容別にみると、「火災」が1,141件(84.5%)で8割強を占めており、この傾向は前年までと同様です(図表Ⅰ-1-1-4)。事故内容が「火災」の事例としては、主に自動車、生活家電、住宅用蓄電池や給湯ボイラー等の住宅設備からの出火が火災につながった例がみられます。
消費者庁では、消費者に対しこのような重大事故等の通知を端緒とした注意喚起を実施しています。内閣官房こども家庭庁設立準備室及び消費者庁では、2022年9月に発生したイベント会場でのゴーカートによる事故を受け、子供自身がゴーカート等を運転できる施設等の安全確保のため、同年11月にスポーツ庁を通じて、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)に、カート施設等の安全点検及び安全対策の徹底等を要請しました。また、ゴーカート等子供自身が運転できる乗り物が遊戯施設や都市公園等にも設置されていることから、関係省庁を通じ関連施設等に対し、自主的な点検を要請しました。これを受け、JAFが原動機(エンジン、モーター等)を動力源とした乗り物向けに設置・設定される施設・会場を対象とした当面の安全対策(推奨事項)を策定・公示したことから、内閣官房こども家庭庁設立準備室及び消費者庁においても同年12月に消費者に注意を呼び掛けました。
重大事故等を除く生命身体事故等を事故内容別にみると、2022年度は「その他」が2,465件(69.2%)で最も多く、次いで「異物の混入・侵入」が536件(15.0%)でした。「その他」の内容は、そのほとんどが食品リコールであり、アレルゲン表示の欠落や消費期限の誤表示等の食品表示法違反によるものです。「異物の混入・侵入」の内容は、食品リコールであり、ビニール片や金属片等の異物混入の食品衛生法違反によるものです(図表Ⅰ-1-1-5)。
財産事案を商品・サービス別にみると、2022年度は「商品」が5,915件(56.9%)で、「サービス」は4,354件(41.9%)でした(図表Ⅰ-1-1-6)。
「商品」の内訳は、電気、ガス、水道等の設備・器具を含む「光熱水品」が30.4%と最も多く、次いで「保健衛生品」が4.8%でした。
「サービス」の内訳は、「金融・保険サービス」が13.3%と最も多く、次いで冠婚葬祭や結婚相談サービス等を含む「他の役務」が6.6%でした(図表Ⅰ-1-1-7)。
消費者庁では、通知された情報を基に消費者への注意喚起を実施しており、財産事案においては2022年度に注意喚起を26件実施しました(図表Ⅰ-1-1-8)。注意喚起の主な事案は、誰でも確実にお金を稼げるかのように告げて多額の金銭を支払わせるが、実際には稼げる仕組みにはなっていない事案、あたかも正規品であるかのように表示し、消費者を誤認させて購入を申し込ませていた事案、役務取引において、一方的かつ執ような勧誘の継続や、役務の対価につき不実のことを告げる事案等です。
図表Ⅰ-1-1-1-3 消費者安全法の規定に基づき消費者庁に通知された消費者事故等の件数の推移[CSV]
図表Ⅰ-1-1-1-4 生命身体事故等(重大事故等)の事故内容別の推移[CSV]
図表Ⅰ-1-1-1-5 生命身体事故等(重大事故等を除く。)の事故内容別の推移[CSV]
図表Ⅰ-1-1-1-6 消費者庁に通知された財産事案の件数の推移[CSV]
図表Ⅰ-1-1-1-7 通知された財産事案の内訳(2022年度)[CSV]
- (注2)消費者庁及び消費者委員会設置法、「消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」(平成21年法律第49号)、消費者安全法を指す。
担当:参事官(調査研究・国際担当)