序
日本では高齢化が急速に進展しており、2022年には、1947年から1949年生まれまでのいわゆる「団塊の世代」が75歳を迎え始め、75歳以上の総人口に占める割合が初めて15%を超えました。デジタル化の急速な進展等、消費者を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、高齢者もその影響を受けています。高齢者の中には、健康への不安や判断力の低下、デジタルリテラシーや孤独・孤立等の課題を抱えている人もおり、高齢者の状況は多様です。高齢化が更に進む中、高齢者の消費者被害が深刻化するおそれもあり、消費者行政では、高齢者向けの取組を強化していく必要性が高まっています。
また、2015年にSDGsが世界共通の目標として設定されるなど、公正で持続可能な社会の形成が求められています。こうした社会の形成に消費者が積極的に参画する「消費者市民社会の実現」には、行政のみならず、消費者と事業者も含めた三者の連携・協働による取組が不可欠です。超高齢社会の日本において、高齢者は社会の重要な主体であり、そうした取組への参画を促すとともに、主体的な取組の活発化は、非常に重要です。
このため、今回の消費者白書では、高齢者の消費と社会貢献の取組に着目し、「高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組」を特集テーマとして取り上げました。
同特集では、まず、高齢者を取り巻く社会環境の変化を踏まえつつ、近年の高齢者の特徴的な意識について分析します。そして、これらを高齢者に特徴的な消費者トラブルと関連付けて分析し、現在の行政の取組を踏まえて、高齢者の「消費者被害の防止」に向けた提案を行います。さらに、高齢者の社会貢献活動やSDGsに関連する取組であるエシカル消費等への関心と実際の取組の状況について分析するとともに、高齢者による多様な取組について紹介し、行政や民間による参画に向けた促進策の現状も踏まえて、「消費者市民社会の実現」に向けた消費者行政の在り方を展望します。
特集以外では、消費者安全法の規定に基づく「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等」の報告及び消費者基本法の規定に基づく「消費者政策の実施の状況」の報告を行っています。
第1部第1章では、年次報告として、消費者安全法の規定に基づいて消費者庁に通知された消費者事故等を始めとした事故情報等や、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談に基づく消費者被害・トラブルの状況、消費者被害・トラブル額の推計について示しています。
第2部では、近年の消費者庁の主な施策と、政府が実施してきた2022年度の消費者政策の実施状況の詳細について、消費者基本計画に規定された項目に沿って、消費者行政の各分野の取組をまとめています。このような政策の実施状況を取りまとめることにより、本報告は、消費者基本計画の実施状況のフォローアップとしての機能も兼ねています。
担当:参事官(調査研究・国際担当)