第2部 第2章 第5節 2.国等における体制整備
第2部 消費者政策の実施の状況
第2章 消費者政策の実施の状況の詳細
第5節 消費者行政を推進するための体制整備
2.国等における体制整備
(1)消費者行政体制の更なる整備等
消費者庁の2020年度の政策評価としては、「消費者庁における政策評価に関する基本計画」(2018年3月12日消費者庁長官決定。2021年6月28日一部改正。)及び「令和2年度消費者庁政策評価実施計画」(2021年3月30日消費者庁長官決定。2021年6月28日一部改正。)に基づき、2021年8月に評価書を公表しました。また、2021年度には、消費生活相談のデジタル改革、AI・IT技術を活用した法執行、生活関連物資等の監視体制の強化等、新型コロナウイルス感染症に関連する消費者トラブルへの対応を強化するとともに、経済社会のデジタル化・国際化に伴う新たな課題に適切に対応していくために必要となる予算及び組織上の措置を行いました。
また、実証に基づいた政策の分析・研究機能の拠点として徳島県に消費者行政新未来創造オフィスを試行的に設置していたところ、その成果を踏まえて、2020年7月に、「消費者庁新未来創造戦略本部」を開設しました。新未来創造戦略本部は、消費者庁の新たな恒常的拠点として、審議官級の本部次長を現地の統括者とし、デジタル化への対応やぜい弱な消費者の保護等、新たな消費者政策上の課題に関するモデルプロジェクトや政策研究、国際シンポジウムの開催等に取り組んでいます。
消費者委員会は独立した第三者機関として、消費者の声を踏まえつつ自ら調査審議を行い、消費者庁を含む関係府省の消費者行政全般に対して建議等を実施するとともに、内閣総理大臣、関係各大臣等の諮問に応じて調査審議を行います。消費者行政が直面する諸課題に適切に対処するためには、消費者委員会が様々な消費者問題について調査審議を行い、積極的に建議等を行うことが重要であることから、内閣府において、事務局体制の充実・強化を図るための予算・定員要求を着実に行うとともに、民間の多様な専門分野における人材を任期付職員、技術参与や政策調査員等として任用し、消費者委員会が行う活動を支えています。
消費者委員会は調査審議を進めるために、関係府省への資料要求やヒアリング等を頻繁に実施しています。この結果、2009年9月の発足以降、数多くの建議等の表明を行ってきており、これらの建議等は、消費者基本計画への反映、法令の改正・執行強化等を通じて、消費者行政の推進にいかされています。
2021年度においては、2021年8月の「事業者による消費者関連情報の積極的な活用を促すための対応策・環境整備に関する意見」、「自主規制の実効的な整備・運用の在り方に関する消費者委員会意見」、2021年12月の「成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止に向けた対応策に関する意見」を含め、8件の意見を発出しました。また、内閣総理大臣等の諮問に応じ、2021年度には、「公益通報者保護法の一部を改正する法律による改正後の公益通報者保護法第11条第4項の規定に基づく指針の策定について」を含め、13件の答申等を発出しました。
(2)消費者政策の企画立案のための調査の実施とその成果の活用
消費者庁では、消費者行政が消費者を取り巻く環境の変化に対応し消費者政策を企画立案していくために、消費生活や消費者政策に関する一般消費者の意識、行動等について包括的な調査項目を設定して、「消費者意識基本調査」を2021年11月に実施しました。
また、消費者行政の検証・評価の数値指標の一環として、「消費者意識基本調査」結果及びPIO-NET情報等を活用した、2021年の「消費者被害・トラブル額の推計」を実施しました。
新未来創造戦略本部では、「SNS(LINE)を活用した消費生活相談の実証実験」の対象地域を拡大するなど、徳島県等を実証フィールドとしたモデルプロジェクトを発展させて実施するとともに、「特殊詐欺等の消費者被害における心理・行動特性に関する研究」等の研究プロジェクトを立ち上げました。
(3)消費者庁新未来創造戦略本部の機能の発揮
消費者庁は、実証に基づいた政策の分析・研究機能をベースとした消費者行政の発展・創造の拠点として、2017年7月に設置した消費者行政新未来創造オフィスにおいて、徳島県等を実証フィールドとした分析・研究プロジェクト等を実施してきました。
2020年7月に開設した新未来創造戦略本部では、機能を充実させ、①全国展開を見据えたモデルプロジェクトの拠点、②消費者政策の研究拠点とするほか、③新たな国際業務の拠点としても位置付けて取組を進めています。また、首都圏における大規模災害発生時の消費者庁のバックアップ機能を担うとともに、引き続き、消費者庁の働き方改革の拠点としても位置付けられています。
(4)国民生活センターによる消費生活センター等への相談支援機能強化【再掲】
第2部第2章第3節1.(12)国民生活センターによる消費生活センター等への相談支援機能強化を参照。
(5)消費者・生活者を主役とする行政を担う国家公務員の意識改革
「昇任時相談窓口等体験研修」は、「生活安心プロジェクト『消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて』(2008年4月国民生活審議会意見)に対するアクションプラン(工程表)」(同年7月生活安心プロジェクトに関する関係省庁局長会議決定)に基づき、各府省庁の審議官級職員を対象に2009年度に人事院と内閣府の共催により、試行的に開始されました。その後、第2期消費者基本計画(平成22年3月閣議決定)において継続的に実施することとされ、以後、人事院と消費者庁の共催により実施しています。
具体的には、国民生活センターや消費生活センター、行政相談所、日本司法支援センター(法テラス)、公共職業安定所、福祉事務所、年金事務所の協力を得て、消費者・生活者の声に触れる相談窓口業務を体験する業務体験研修及び同研修で得られた経験や気付き、行政や公務員の在り方について考えたこと等を参加者間で討議するとともに、討議概要を発表する事後研修から構成されています。
2021年度は、2020年度に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響により、業務体験研修に代えて相談窓口業務に関する研修(消費生活相談員による講義)を実施し、計100名が研修に参加しました。研修終了後に実施したアンケートでは、参加者の91.0%から「有益」な成果が得られた旨回答があったなど、高い評価を得ました。
(6)消費者からの情報・相談の受付体制の充実
消費者庁及び関係府省等では、消費者からの多様な情報・相談に対応するために、相談窓口ごとに電話、メール等の受付手段を拡充するなど、体制の整備を進めています。
消費者庁では、消費者からの情報・相談の受付体制の拡充について、関係府省庁等の相談窓口の設置状況を取りまとめています(主な相談窓口は第2部第2章別表2参照。)。
担当:参事官(調査研究・国際担当)