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第2部 第2章 第4節 1.消費者教育の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第4節 消費者教育の推進及び消費者への情報提供の実施

1.消費者教育の推進

(1)「消費者教育の推進に関する基本的な方針(基本方針)」等に基づく消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進及び地域における消費者教育推進のための体制の整備

 2012年12月に消費者教育推進法が施行され、この法律に基づき、消費者教育推進会議(以下「推進会議」という。)が設置されました(同法第19条)。推進会議の任務は、①消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報の交換及び調整を行うこと、②「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(以下「基本方針」という。)に関し、意見を述べることです。

 推進会議や消費者委員会等の意見を踏まえ、基本方針は2013年6月に閣議決定されました。

 基本方針は、消費者教育の意義及び基本的な方向、内容等を記したものです。

 基本方針に「当面の重点事項」として掲げられた、「高度情報通信ネットワーク社会の発展に対応した消費者教育の推進」への対応として、2020年11月に「社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会」を立ち上げ、社会のデジタル化を踏まえた各ライフステージにおいて消費者が身に付けることが望まれる事項や、デジタル技術や「新しい生活様式」の普及、各世代の特徴等を踏まえた、消費者教育の場や情報発信の手法等について議論し、2021年5月に取りまとめを行いました。

 さらに、関係省庁が連携して地方公共団体・大学等、関係団体、メディア等も巻き込んだ重層的な取組を行う「成年年齢引下げに伴う消費者教育全力」キャンペーンを実施しました。

 2022年4月の成年年齢引下げ後については、「成年年齢引下げ後の若年者への消費者教育推進方針―消費者教育の実践・定着プラン―」に基づき、引き続き関係省庁と連携して必要な施策を実施することとしています。

 文部科学省では、2010年度、大学等における消費者教育の基本的な方向性をまとめた「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」について、2018年度に改訂を行いました。また、成年年齢の引下げを見据え、地域における消費者教育が一層推進されるよう、「消費者教育アドバイザー(注59)」の派遣を実施しました。さらに、消費者教育フェスタを主催し、多様な関係者との交流を図るとともに、学校や地域における消費者教育の実践事例について報告を行いました。

 また、毎年度、全国(2021年度は13機関)で社会教育主事講習(注60)を実施し、消費者教育の講義を行うなど、地域における消費者教育の促進に取り組んでいます。

 都道府県及び市町村は、基本方針を踏まえ、その区域における消費者教育の推進に関する施策についての計画(消費者教育推進計画)を定めるよう努めることとなっています。また、その区域における消費者教育を推進するため、消費者教育推進地域協議会を組織するよう努めることにもなっています。

 消費者教育推進計画及び消費者教育推進地域協議会は、地方消費者行政強化作戦に位置付けられており、消費者行政ブロック会議等において策定・設置を促しています。2021年4月1日時点で、消費者教育推進計画は47都道府県・18政令市で策定し、消費者教育推進地域協議会は47都道府県・19政令市で設置しています。また、2021年度は国民生活センターにおいて消費者教育推進のための研修を21回(受講者数498人)実施しました。

(2)学校における消費者教育の推進

 文部科学省では、2016年12月の中央教育審議会答申を踏まえ、小・中学校、特別支援学校小学部・中学部、高等学校、特別支援学校高等部の学習指導要領を改訂し、関連する教科等において消費者教育に関する学習内容の更なる充実を図りました。また、消費者教育フェスタを開催するとともに、2016年度及び2020年度に消費者教育推進委員会で作成した「消費者教育の指導者用啓発資料」を用いて、消費者教育を通じて育むべき力と指導者の役割、指導者が消費者教育を行う上でのヒントや関係者が相互に連携して取り組む手法等について普及・啓発を行っています。

 金融庁では、金融庁や関係団体から構成される金融経済教育推進会議において、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を項目別・年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ」を2014年6月に作成(2015年6月に改訂)しました。

 これらの関係団体と連携した取組として、大学生に対し、「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を2021年度に12大学において実施しました。

 消費者庁では、2022年4月からの成年年齢引下げを見据え、「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」に基づき、全国での実践的な消費者教育の実施に向けた働き掛け等を行い、2020年度の進捗状況を2021年6月に公表しました。また、2021年度は、「社会への扉」等の活用実績が比較的低い特別支援学校や私立学校等を対象に、出前講座事業を展開しました。

 2021年度には国民生活センターにおいて、教員の指導力向上の観点から、教員を対象とした研修を9回実施しました。

(3)地域における消費者教育の推進

 文部科学省では、成年年齢の引下げを見据え、地域における消費者教育が一層推進されるよう、「消費者教育アドバイザー」の派遣を実施しました。

 また、多様な主体が情報共有し、相互に連携するための場として消費者教育フェスタを開催しており、2021年度は、「成年年齢引下げに向けた地域における消費者教育」をテーマに、専門家による講演、取組報告やグループディスカッションを実施し、オンラインと現地開催の併用型で実施しました。

 消費者教育推進計画及び消費者教育推進地域協議会は、地方消費者行政強化作戦に位置付けられており、消費者行政ブロック会議等において策定・設置を促しています。2021年4月1日時点で、消費者教育推進計画は47都道府県・18政令市で策定、消費者教育推進地域協議会は47都道府県・19政令市で設置しています。

 第4期推進会議では、2020年11月に「社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会」を開催し、社会のデジタル化を踏まえた各ライフステージにおいて消費者が身に付けることが望まれる事項や、デジタル技術や「新しい生活様式」の普及、各世代の特徴等を踏まえた、消費者教育の場や情報発信の手法等について議論し、地方公共団体とともに推進すべき今後の課題等について、2021年5月に取りまとめを行いました。

 公正取引委員会では、2021年度には、「消費者セミナー(注61)」を53回、「独占禁止法教室(注62)」を173回開催しました。また、消費者の暮らしと独占禁止法の関わりについて説明した資料を、「消費者セミナー」や「独占禁止法教室」の出席者に配布しました。

(4)多様な主体(家庭、事業者・事業者団体)による消費者教育の推進

 消費者庁では、消費者教育ポータルサイトにおいて、家庭でできる消費者教育教材や地方における親子向けの講座の案内について消費者が積極的に情報収集できるようにするため、消費者行政ブロック会議等において同ポータルサイトに関する説明を行い、掲載を促しています。また、事業者・事業者団体等による教材や実践事例を積極的に収集し、消費者教育ポータルサイトに掲載するよう努めています。2022年3月末時点、ポータルサイトのアクセス数は、845,095件、家庭で活用できる自主学習用教材の活用件数は、88件、事業者による掲載数は、235件でした。

 また、消費者教育の担い手等に対する教材等の情報提供を一層強化するため、「消費者教育ポータルサイト見直しに向けた検討会取りまとめ」(2021年3月)に基づき、消費者教育ポータルサイトを2021年度に改修しました。

(5)法教育の推進

 法務省では、法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育(法教育)を推進しており、消費活動の前提となる私法の基本的な考え方についても取り上げるなど、様々な取組を行っています。

 法教育の普及・啓発に向けた取組としては、学習指導要領を踏まえた学校教育における法教育の実践の在り方及び教育関係者と法曹関係者による連携・協働の在り方等、法教育に関する取組について多角的な視点から検討するため、法教育推進協議会及び部会を開催(2021年度・8回)しています。

 また、法教育の具体的内容及びその実践方法をより分かりやすくするため、発達段階に応じた法教育教材を作成し、全国の小中学校、高等学校、教育委員会等に配布しているほか、これらの教材の利用促進を図るため、教材を活用したモデル授業例を法務省ウェブサイトで公開しています。

 このほか、法教育の担い手である教員が法教育の具体的な実践方法を習得することを通じて法教育の推進を図るため、教員向け法教育セミナーを実施しています。

 さらに、学校現場等に法教育情報を提供することによって、法教育の積極的な実践を後押しするため、法教育に関するリーフレットを作成し、全国の学校、教育委員会等に配布しているほか、学校や各種団体からの要請に応じて、法務省の職員を講師として派遣し、教員、児童・生徒や、一般の人々に対して法的なものの考え方等について説明する法教育授業を実施しています。

 加えて、2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられたことを踏まえ、契約や私法の基本的な考え方を学ぶことができる高校生向けのリーフレットを作成し、全国の高等学校、教育委員会等に配布しています。

(6)金融経済教育の推進

 金融庁では、デジタルコンテンツの提供を始めとするICTの活用により、幅広い層に対して金融経済教育の取組を推進しました。具体的には、金融経済教育や資産形成に関するシンポジウム等のオンライン開催、大学生等の若年層向けの金融経済に関する解説動画を作成しました。

 また、2022年4月から高等学校において年次進行で実施されている学習指導要領では、金融経済分野に関する記述がより充実したため、これに対応して、指導教材を作成しました。

 金融広報中央委員会等の関係団体と連携し、大学生に対し、「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を12大学で実施しました。また、金融庁及び財務局において、学校や地域で開催される講座等(オンライン開催を含む)への講師派遣を545回実施しました。

 また、金融サービス利用に伴うトラブルの発生の未然防止等に向けた事前相談の提供の充実を図るため、「事前相談(予防的なガイド)」を2014年から開設し、相談への対応を行っています。

(7)食育の推進【再掲】

 第2部第2章第2節1.(2)食育の推進を参照。

(8)エシカル消費の普及啓発【再掲】

 第2部第2章第2節3.(1)エシカル消費の普及啓発を参照。


  • (注59)文部科学省では2013年度から地域における消費者教育が、連携・協働により一層推進されるよう、全国の社会教育等における消費者教育の先駆的実践者を消費者教育アドバイザーに委嘱し、地方公共団体からの求めに応じて派遣している。
  • (注60)社会教育主事となり得る資格を付与することを目的として、大学その他の教育機関で実施される講習(約20日間)。社会教育主事は、都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に置かれる専門的職員で、社会教育を行う者に対する専門的技術的な助言・指導に当たる役割。
  • (注61)消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について、より一層の理解を深めてもらうため、公正取引委員会事務総局の職員を消費者団体等の勉強会に派遣するもの。
  • (注62)中・高・大学生に経済活動の基本ルールである独占禁止法の役割について学んでもらうため、公正取引委員会事務総局の職員を学校の授業に講師として派遣するもの。

担当:参事官(調査研究・国際担当)