第2部 第2章 第3節 1.「新しい生活様式」の実践や災害時に係る消費者問題への対応
第2部 消費者政策の実施の状況
第2章 消費者政策の実施の状況の詳細
第3節 「新しい生活様式」の実践その他多様な課題への機動的・集中的な対応
1.「新しい生活様式」の実践や災害時に係る消費者問題への対応
(1)デジタルプラットフォームを介した取引等における消費者利益の確保
2021年4月に取引DPF消費者保護法が成立し、同年5月に公布されました。消費者庁では、同年11月から、関係行政機関、取引デジタルプラットフォーム提供者の事業者団体、消費者団体等を構成員とする官民協議会の立ち上げに向けた準備会を開催し、内閣府令や取引デジタルプラットフォーム提供者が講ずべき措置等に係る指針等について意見交換を行いました。
また、「アフィリエイト広告の実態調査」の調査結果を公表するとともに、アフィリエイト広告において不当表示が生じない健全な広告の実施に向けた対応方策を検討するため、検討会を開催し、景品表示法の適用等に関する考え方等について、2022年2月に報告書の公表を行いました。当該報告書において、ステルスマーケティングへの対応について提言があったことを踏まえ、「景品表示法検討会」においてステルスマーケティングへの対応の検討等を行うこととしています。
内閣官房では、デジタル市場競争会議及び同会議ワーキンググループにおいて、デジタル広告市場(関連する検索やSNS等を含む。)について、消費者の視点から、デジタル広告市場におけるパーソナル・データの取得・利用に関する懸念として、本人への説明やそれを前提とする本人同意が実効的に機能しているかという課題や、消費者の認知限界を踏まえれば事業者側に適切な配慮や取扱いを求めることが必要ではないかといった課題について、2021年4月に最終報告を取りまとめ、課題解決のアプローチ等の対応の方向性を整理し、公表しました。
(2)「新しい生活様式」におけるデジタル化に対応した消費者教育・普及啓発の推進
社会のデジタル化に伴い発生している新たな消費者問題に対応した消費者教育の推進のため、消費者教育の推進に関し、2020年10月に、消費者教育推進会議の下に、「社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会」を設置し、同分科会を5回開催し、2021年5月に取りまとめを公表しました。
また、消費者庁では、2020年11月から「消費者保護のための啓発用デジタル教材開発に向けた有識者会議」を開催し、2021年3月、同会議での議論を基に、若者や社会人等の消費者が自ら知識を習得でき、さらに、消費者教育の現場でも活用可能なデジタル教材を作成、公表しました。
このほか、LINE公式アカウント「消費者庁 新型コロナ関連消費者向け情報」等を通じた情報発信等、デジタル技術を活用したプッシュ型情報発信を2021年度に行いました。
また、消費者教育の担い手等に対する教材等の情報提供を一層強化するため、「消費者教育ポータルサイト見直しに向けた検討会取りまとめ」(2021年3月)に基づき、消費者教育ポータルサイトを2021年度に改修しました。
(3)新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の緊急時における対応の強化
2020年初頭の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、日常の消費生活に大きな影響が生じました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う相談体制の変更等を行った市町村に対し、消費者ホットライン188の接続先を都道府県の消費生活センター等に変更するなどの対応を行ったほか、国民生活センターでは2021年2月15日から12月23日まで「新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン」を開設し、12月24日からは「新型コロナ関連詐欺 消費者ホットライン」に改称して、新型コロナウイルスに関連した詐欺的な消費者トラブル全般について相談を受け付け、緊急時における消費生活相談の機能の維持・強化に向けて対応を行いました。
新型コロナウイルス感染症に対する効果を標ぼうする健康食品、空間除菌商品等について、一般消費者向けに注意喚起を行うとともに、景品表示法及び健康増進法に基づき事業者向けに改善要請、措置命令を行うなど、積極的に不当表示に関する執行業務に取り組みました(具体的には第2部第1章第4節(2)参照。)。
加えて、消費者被害の状況を踏まえ、行政機関等のなりすまし、新型コロナワクチンに関する詐欺に関する注意喚起を実施しました。その他、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が国内外の食料品のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしつつあることを受け、2020年4月、農林水産省及び厚生労働省と連携し、食品表示規制を弾力的に運用する旨及び農林水産省と連携し、米トレーサビリティ法第8条の規定を弾力的に運用する旨を関係機関に通知し、2020年4月10日から2021年12月31日までの間その運用を行いました。
また、第204回国会(常会)において、新たな日常が模索される中で、利用が増加している通信販売における「詐欺的な定期購入商法」対策や在宅する機会が多くなっている消費者を狙った一方的な商品の送り付けへの対策等を盛り込んだ消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律が成立しました。
(4)新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の緊急時における関係府省等の連携
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、マスクやアルコール消毒製品等が品薄となる中、インターネット上での高額転売が続いたことから、国民生活安定緊急措置法に基づき、2020年3月にマスク、同年5月にアルコール消毒製品について、購入価格を超える価格での転売を禁止しました。いずれの物資も需給のひっ迫が改善したことから、同年8月に当該規制を解除しました。解除後も引き続き食料品、生活必需品等の需給の状況を注視して必要に応じて関係府省と連携して対応しています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の緊急時において、これに便乗した悪質商法等に係る注意喚起について、関係府省と連携して注意喚起を実施しており、2021年度には、ワクチン接種に便乗した悪質商法等に関する注意喚起を関係府省連携により実施しました。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について、消費者庁、農林水産省及び厚生労働省と連名で関係機関に通知し、2020年4月10日から2021年12月31日までの間その運用を行うなど、消費者の需要に即した食品の生産体制を確保するために必要な対策を講じました。このほか、農林水産省及び消費者庁と連名で、米トレーサビリティ法の一部の規定について、弾力的に運用する旨を関係機関に通知するなど、米穀等に関する適正かつ円滑な流通を図るために必要な対策を講じました。
(5)特定商取引法等の執行強化等【再掲】
第2部第2章第1節2.(1)ア 特定商取引法等の執行強化等を参照。
(6)「オレオレ詐欺等対策プラン」の推進による特殊詐欺の取締り、被害防止の推進【再掲】
第2部第2章第1節2.(6)ア 「オレオレ詐欺等対策プラン」の推進による特殊詐欺の取締り、被害防止の推進を参照。
(7)被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の取締りの推進【再掲】
第2部第2章第1節2.(6)ウ 被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の取締りの推進を参照。
(8)ヤミ金融事犯の取締りの推進【再掲】
第2部第2章第1節2.(6)カ ヤミ金融事犯の取締りの推進を参照。
(9)特定商取引法の通信販売での不法行為への対応【再掲】
第2部第2章第1節2.(9)ア 特定商取引法の通信販売での不法行為への対応を参照。
(10)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進【再掲】
第2部第2章第1節3.(7)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進を参照。
(11)IT・AIを活用した民事紛争解決の利用拡充・機能強化【再掲】
第2部第2章第1節4.(8)IT・AIを活用した民事紛争解決の利用拡充・機能強化を参照。
(12)国民生活センターによる消費生活センター等への相談支援機能強化
国民生活センターでは、全国の消費生活センター等からの商品やサービス等消費生活全般に関する相談や問合せ等に対応する「経由相談」を実施しており、各地の消費生活センター等への相談支援機能を強化するため、専門チーム制を導入し、専門家からのヒアリング、事業者団体等との意見交換会等を多数行い、専門性の強化を図っています。
また、土日祝日に窓口を開設していない消費生活センター等を支援するため、消費者ホットラインを通じて「休日相談」を行うとともに、平日には、地方の消費生活センター等に電話がつながらない場合に対応する「平日バックアップ相談」を運営しています。
さらに、地方の消費生活センター等が昼休みを設けることの多い平日の11時から13時までの時間帯に、消費者から電話で相談を受け付ける「お昼の消費生活相談」を行っています。
2021年度は緊急事態宣言を受け、一時的に人員体制を縮小しながらも、「経由相談」は5,699件、「休日相談」は5,219件、「平日バックアップ相談」は3,484件、「お昼の消費生活相談」は1,233件を受け付けました。
また、新型コロナワクチンに関連した消費者トラブルの未然防止・拡大防止のため、2021年2月15日から12月23日まで「新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン」を開設し、土日祝日(年末年始除く)も含め対応しました(受付件数:4,352件、うちワクチン関連件数:2,544件、うちワクチン詐欺が疑われる件数:141件)。
また、相談処理の専門性の強化を図るため、法律、自動車、土地・住宅、美容医療及び決済手段について高度専門相談を実施しています。さらに、商品に関する苦情相談の解決のため、各地の消費生活センター等からの依頼を受けて商品テストを実施しています。
このほか、CCJにおいて、2015年6月から越境消費者相談の受付を開始し、2022年3月末時点で3万4569件の相談を受け付け、消費者に対して内容に応じた助言や情報提供を行いました。これらについては、国民生活センターのウェブサイトで2021年度に2回公表を行いました。なお、海外提携機関は2022年4月1日時点で15機関となっています。
担当:参事官(調査研究・国際担当)