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第1部 第2章 結び

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組~18歳から大人の新しい時代へ~

結び

 情報通信技術の発達やスマートフォンの普及、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による人との接触の減少、教育課程を含むSDGsの浸透等の社会環境の変化を受けて、若者の意識やコミュニケーションは変わりつつあります。

 今の若者は、チャンスと感じたら逃したくない、今の自分を変えたいという意識が特徴的に高くなっています。また、SNSを長時間利用し、交友関係の拡大に利用している一方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、学校等で友人を作るのが難しいと感じています。

 若者の消費者トラブルは、副業や投資等のもうけ話のトラブルや、美容医療やサプリメント等の美に関する相談が上位を占めていますが、これらは、SNSを通じた交流や広告をきっかけとしたものであることが少なくありません。こうした消費者トラブルは、前述のチャンスと感じたら逃したくないという前向きな気持ちや、SNSで知らない人と交流するなどの行動、相談相手の減少、契約に関する知識や経験の不足、経済的な余裕のなさ、低い自己肯定感といった、若者特有の「ぜい弱性」が原因となっていることが示唆されています。

 消費者庁は、若者への消費者教育の推進や情報発信・啓発活動等、様々な取組を行っていますが、今後は、2022年4月に成年年齢が引き下げられたことも踏まえ、悪質な事業者の取締りや、SNS・イベントを通じた若者向けPR等を継続・強化するだけにとどまらず、一人一人の「ぜい弱性」に対応した注意喚起や啓発、消費者教育を展開するとともに、SNSやAI等を活用した、より簡易に相談できる体制の整備と自己解決の支援等に取り組むことが重要と考えられます。

 次に、持続可能な社会の実現に関する若者の意識や取組に目を向けると、若者は、困っている人・助けが必要な人への貢献意欲が高い一方で、SDGsやエシカル消費等に関しては、興味は強いものの取組に至っていない人が少なくありません。若者は、困っている人・助けを必要としている人の顔が見えない課題や、身近に感じられない課題に関心を持つのが難しく、また「参加方法が不明であること」が主たる取組の障害となっていることが明らかにされました。

 そうした大多数の若者と異なり、実際に取組を行っている若者にきっかけについて聞いてみると、学校教育や留学等の経験を通じて社会課題を理解し、自分事化したことにより取組を始めたとの意見が多く聞かれました。そして、取組を進めるに当たっては、周囲からの協力や情報提供が有用だったこと、社会貢献ができたという達成感が得られることが、取組の積極化につながっていることが示唆されました。

 消費者庁は、サステナブルファッションの普及啓発、食品ロスの削減等、様々な分野で促進に取り組んでいますが、ESDの考え方に基づいた学校教育によって、若者の社会貢献に対する興味が高まっており、自治体や事業者が若者の社会貢献に協力することで、取組が進んでいる例も少なくありません。

 今後は、ESDの考え方に基づいた学校教育の継続によって、若者を含めた消費者のSDGsやエシカル消費等に対する関心を高めるとともに、具体的な行動変容につなげるため、より身近に感じられるよう、消費者の共感が得られる方法(SNS等)での情報提供や国際交流等の機会の提供を通じて社会課題の理解促進と自分事化を促すことが重要と考えられます。さらに、エシカル消費への参画方法の周知啓発や商品選択における「成果の見える化」等を進めるとともに、官民共創による若者参加型の組織等、社会全体の積極的な取組を促す体制を構築することも重要と考えられます。

 消費者トラブルの防止と解決、持続可能な社会の実現のいずれも、若者を含む消費者、事業者、政府が目標を共有し、互いに協力して取組を進めていくことが不可欠です。若者は、自身の意識、行動、ぜい弱性等の特性を把握し、トラブルへ一層の注意を払うことが求められます。また、より広い視野を持って社会課題に関心を持ち、できるところから主体的に取り組んでいくことが期待されます。事業者は、消費者の適切な判断等に資するよう、正しく分かりやすい情報を迅速に発信していくこと等が求められるとともに、今後は社会課題の解決にも取り組むことが期待されます。消費者庁としても、引き続き関係府省庁と連携し、消費者の安全安心とトラブルの未然防止に向けて、消費者への情報発信・啓発や注意喚起、悪質事業者等の厳正な取締りを行うとともに、持続可能な社会の実現に向けた啓発や参画の促進等に積極的に取り組んでいく考えです。

担当:参事官(調査研究・国際担当)