第1部 第1章 第2節 (3)生命・身体に関する事故情報の事例
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等
第2節 消費者庁に集約された生命・身体に関する事故情報等
(3)生命・身体に関する事故情報の事例
消費者庁や国民生活センターでは、収集された事故情報を分析し消費者に注意喚起を実施しています。以降では、2021年に注意喚起を実施した事例について紹介します。
コンタクトレンズによる眼障害
コンタクトレンズの使用者は全国で1,500万から1,800万人ともいわれ、国民の約10人に1人がコンタクトレンズを装用していると見込まれます(注12)。コンタクトレンズの購入先は、2020年の緊急事態宣言前後で大きな変化はみられず、インターネット販売店での購入が全体の約4割を占めており最も多いです(注13)。
コンタクトレンズは視力補正を目的としないカラーコンタクトレンズも含めて高度管理医療機器(注14)であり、製造販売に当たっては品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けること、販売に当たっては都道府県知事等の許可を受けることが義務付けられています。
コンタクトレンズは適正に使用しなければ眼障害を引き起こす可能性があります。そのため、購入者に対し、小売販売業者が医療機関の受診状況を確認し、購入者が受診していない場合には、重篤な眼障害が発生する危険性等について、十分な説明を行い、医療機関を受診するように勧奨すること等を徹底するよう厚生労働省から通知が出されています(注15)。
事故情報データバンクにも2016年1月から2021年7月までに、コンタクトレンズに関する事故等が242件寄せられました。そのうちカラーコンタクトレンズに関する情報が75件寄せられました。カラーコンタクトレンズでは、20歳代の事故件数が最も多く、より若い世代での事故が多いことが分かります(図表Ⅰ-1-2-9)。
消費者庁は、2021年9月に事故を防ぐためにコンタクトレンズを使用する際の注意点等を取りまとめるとともに、海外からインターネット等を利用して購入するコンタクトレンズは、医薬品医療機器等法に基づく品質、有効性及び安全性の確認がされておらず、健康を害する危険性があることを注意喚起しました(注16)(図表Ⅰ-1-2-10)。
カットパンによる乳児の窒息事故
2020年10月、国民生活センターの「医師からの事故情報受付窓口」に、「10ヶ月頃から」と表示されたカットパンを10か月の男児が食べて窒息し、死亡したという事故情報が寄せられました。また、2021年6月には、同銘柄の、対象年齢表示のないカットパンを11か月の男児が食べ、喉に詰まらせて窒息したという事故情報が同窓口に寄せられました。これらの事故を受け、国民生活センターでは、1歳前後の乳幼児の食品による窒息事故の再発防止のために、2021年10月に注意喚起を実施しました(注17)。
当該事故に対し専門家からは、事故の被害児の月齢である10-11か月頃は、咀嚼(そしゃく)機能の発達が十分でないため、ほぼ咀嚼(そしゃく)せずに丸飲みする状態になること、1歳児の口の大きさは直径3㎝ほど、喉の大きさは直径1㎝以下のため、口は大きく開くことができても、喉はホースのように細く、口に入れたものを喉に詰まらせてしまうことがよく起こり得るというコメントが寄せられました。このため、国民生活センターは、消費者に対して、1歳前後の乳幼児に食事を与える際は、小さく切って与え、飲み込むまで目を離さないように注意を呼び掛けました。
さらに、国民生活センターは、事故の再発を防止するために事業者と行政に対し要望を行いました。事業者に対しては、商品の大きさや形状、物性等を速やかに改善するとともに、現在販売されている商品には適切な注意表示をすることを、行政に対しては、消費者に継続的な啓発を行うとともに、業界等に改善の働き掛けを行うことを要望しました。
消費者庁では、国民生活センターからの行政要望を受け、消費者に対して、パン等による子供の窒息や誤嚥(ごえん)に関して迅速に注意喚起を行うとともに、関連の業界団体に対し、カットパンを始め乳幼児を対象とした食品による窒息事故を防止する観点から、情報提供を行いました。
また、翌11月には、乳幼児向け食品に関する窒息や誤嚥(ごえん)の情報収集の強化という観点から、消費生活センターや医療機関に対し、食品の大きさや硬さ等、聞き取れた具体的な内容を通知するように依頼しました。併せて、昨今の消費者事故等の分析結果等を踏まえ、消防機関に対し、特に通知を求める消費者事故等の分野を改めて周知しました。
- (注12)公益財団法人日本眼科学会「コンタクトレンズ障害」(2022年4月19日最終閲覧)
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=19 - (注13)一般社団法人日本コンタクトレンズ協会「コロナ禍でのコンタクトレンズの消費者実態調査」(2020年8月実施)2020年9月10日プレスリリース http://www.jcla.gr.jp/news/pdf/press_release_kishahappyou20200910.pdf
- (注14)副作用又は機能の障害が生じた場合において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なもの(医薬品医療機器等法第2条第5項)
視力補正を目的としないカラーコンタクトレンズは、かつては雑貨として取り扱われていたが、レンズの安全性の問題等をきっかけに、2009年11月からカラーコンタクトレンズも高度管理医療機器に位置付けられている。 - (注15)コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(薬生発0926第5号平成29年9月26日付け厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)
- (注16)消費者庁「コンタクトレンズによる眼障害について―カラーでも必ず眼科を受診し、異常があればすぐに使用中止を―」(2021年9月10日公表)
- (注17)国民生活センター「カットパンによる乳児の窒息事故が発生―小さくちぎって与え、飲み込むまで目を離さないで―」(2021年10月19日公表)
担当:参事官(調査研究・国際担当)