第2部 第2章 第5節 2.国等における体制整備
第2部 消費者政策の実施の状況
第1章 消費者庁における主な消費者政策
第5節 消費者行政を推進するための体制整備
2.国等における体制整備
(1)消費者行政体制の更なる整備等
消費者庁の2019年度の政策評価としては、「消費者庁における政策評価に関する基本計画」(2018年3月12日消費者庁長官決定)及び「令和元年度消費者庁政策評価実施計画」(2020年3月30日消費者庁長官決定)に基づき、2020年8月に評価書を公表しました。これを踏まえ、2021年度には、消費生活相談のデジタル改革、AI・IT技術を活用した法執行、生活関連物資等の監視体制の強化等、新型コロナウイルス感染症に関連する消費者トラブルへの対応を強化するとともに、経済社会のデジタル化・国際化に伴う新たな課題に適切に対応していくために必要となる予算及び組織上の措置を行うこととしています。
また、実証に基づいた政策の分析・研究機能の拠点として徳島県に消費者行政新未来創造オフィスを試行的に設置していたところ、その成果を踏まえて、2020年7月に、「消費者庁新未来創造戦略本部」を開設しました。新未来創造戦略本部は、消費者庁の新たな恒常的拠点として、審議官級の本部次長を現地の統括者とし、デジタル化への対応やぜい弱な消費者の保護等、新たな消費者政策上の課題に関するモデルプロジェクトや政策研究、国際シンポジウムの開催等に取り組んでいます。
消費者委員会は独立した第三者機関として、消費者の声を踏まえつつ自ら調査審議を行い、消費者庁を含む関係府省の消費者行政全般に対して建議等を実施するとともに、内閣総理大臣、関係各大臣等の諮問に応じて調査審議を行います。消費者行政が直面する諸課題に適切に対処するためには、消費者委員会が様々な消費者問題について調査審議を行い、積極的に建議等を行うことが重要です。
このため、内閣府において、事務局体制の充実・強化を図るための予算・定員要求を着実に行うとともに、民間の多様な専門分野における人材を任期付職員、技術参与や政策調査員等として任用し、消費者委員会が行う活動をしっかりと支えることとしています。
消費者委員会が調査審議を進めるために、関係府省への資料要求やヒアリング等を頻繁に実施しています。この結果、消費者委員会は2009年9月の発足以降、数多くの建議等の表明を行ってきており、これらの建議等は、消費者基本計画への反映、法令の改正・執行強化等を通じて、消費者行政の推進にいかされています。
2020年度においては、2021年2月に「特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議」を発出しました。2020年3月には、「いわゆる「販売預託商法」に関する消費者問題についての建議」(2019年8月)に係るフォローアップを実施しました。
また、2020年6月には、「「悪質なお試し商法」に関する意見」、同年8月には、「2040年頃の消費者行政が目指すべき姿とその実現に向けた対応策等に関する意見」、同年12月には、「フィッシング問題への取組に関する意見」を含め、6本の意見を発出しました。また、内閣総理大臣等の諮問に応じ、2020年度には、「国民生活安定緊急措置法施行令の一部改正についての答申」を含め、12本の答申等を発出しました。
2021年1月、消費者庁等による徳島県での取組の検証・見直しに関する「消費者行政未来創造オフィスの取組についての消費者行政の進化等の観点からの提言」(2019年5月)のフォローアップも兼ねて、提言後の消費者庁の検証・見直しの内容や、消費者庁新未来創造戦略本部の立ち上げ趣旨、同本部における取組の概要及び今後の計画等について、消費者庁等からヒアリングを実施しました。
(2)消費者政策の企画立案のための調査の実施とその成果の活用
消費者庁では、消費者行政が消費者を取り巻く環境の変化に対応し消費者政策を企画立案していくために、消費生活や消費者政策に関する一般消費者の意識、行動等について包括的な調査項目を設定して、「消費者意識基本調査」を2019年11月に実施しました。
また、消費者行政の検証・評価の数値指標の一環として、「消費者意識基本調査」結果及びPIO-NET情報等を活用した、2019年の「消費者被害・トラブル額の推計」を実施しました。
新未来創造戦略本部では、「SNS(LINE)を活用した消費生活相談の実証実験」や「見守りネットワークの更なる活用」など徳島県等を実証フィールドとしたモデルプロジェクトを実施するとともに、「デジタル社会における消費者法制の比較法研究」などの研究プロジェクトを立ち上げました。
(3)消費者庁新未来創造戦略本部の機能発揮
消費者庁は、実証に基づいた政策の分析・研究機能をベースとした消費者行政の発展・創造の拠点として、2017年7月に設置した消費者行政新未来創造オフィスにおいて、徳島県等を実証フィールドとした分析・研究プロジェクト等を実施してきました。
2020年7月に開設した新未来創造戦略本部では、オフィスの成果を踏まえて機能を充実させ、 ①全国展開を見据えたモデルプロジェクトの拠点、②消費者政策の研究拠点とするほか、③2019年9月に徳島で開催したG20消費者政策国際会合を受け、新たな国際業務の拠点としても位置付けて取組を進めています。また、首都圏における大規模災害発生時の消費者庁のバックアップ機能を担うとともに、引き続き、消費者庁の働き方改革の拠点としても位置付けられています。
(4)国民生活センターによる消費生活センター等への相談支援機能強化【再掲】
国民生活センターでは、全国の消費生活センター等からの商品やサービス等消費生活全般に関する相談や問合せ等に対応する「経由相談」を実施し、相談解決の支援を行っています。
各地の消費生活センター等への相談支援機能を強化するため、2011年度に専門チーム制を本格導入し、専門家からのヒアリング、事業者団体等との意見交換会等を多数行い、専門性の強化を図っています。
また、消費生活センター等のバックアップとして、土日祝日に窓口を開設していない消費生活センター等を支援するため、消費者ホットラインを通じて、「休日相談」を行うとともに、平日には、各地の消費生活センター等が通話中のために電話がつながらない場合に対応する「平日バックアップ相談」を運営しています。
さらに、地方の消費生活センター等が昼休みを設けることの多い平日の11時から13時までの時間帯に、消費者から電話で相談を受け付ける「お昼の消費生活相談」を行っています。
2020年度は緊急事態宣言を受け、一時的に人員体制を縮小しながらも、「経由相談」は6,082件、「休日相談」は4,881件、「平日バックアップ相談」は3,998件、「お昼の消費生活相談」は1,239件を受け付けました。
また、新型コロナウイルス特別定額給付金に関連した消費者トラブルの未然防止・拡大防止のため、2020年5月から「新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン」(138日間、PIO-NET登録相談件数 731件、コールフロー含む全相談件数22,105件)を、同年7月からは、令和2年7月豪雨関連の相談を受け付けるため、同ホットラインの名称を「給付金・豪雨関連消費者ホットライン」(57日間、相談件数6件)と変更し、それぞれ同年9月まで対応しました。2021年2月15日からは「新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン」を開設し、対応しています。
また、相談処理の専門性の強化を図るため、法律、自動車、土地・住宅、美容医療及び決済手段について高度専門相談を実施しています。さらに、商品に関する苦情相談の解決のため、各地の消費生活センター等からの依頼を受けて商品テストを実施しています。
このほか、CCJにおいて、2015年6月から越境消費者相談の受付を開始し、2021年3月末時点で2万9,760件の相談を受け付け、消費者に対して内容に応じた助言や情報提供を行いました。これらについては、国民生活センターのウェブサイトで2020年度に3回公表を行いました。なお、海外提携機関は2021年4月1日時点で15機関となっています。
(5)消費者・生活者を主役とする行政を担う国家公務員の意識改革
「昇任時相談窓口等体験研修」は、「生活安心プロジェクト「消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて」(2008年4月国民生活審議会意見)に対するアクションプラン(工程表)」(同年7月生活安心プロジェクトに関する関係省庁局長会議決定)に基づき、各府省庁の審議官級職員を対象に2009年度に人事院と内閣府の共催により、試行的に開始されました。その後、第2期消費者基本計画(平成22年3月閣議決定)において継続的に実施することとされ、以後、人事院と消費者庁の共催により実施しています。
具体的には、国民生活センターや消費生活センター、行政相談所、日本司法支援センター(法テラス)、公共職業安定所、福祉事務所、年金事務所の協力を得て、消費者・生活者の声に触れる相談窓口業務を体験する業務体験研修及び同研修で得られた経験や気付き、行政や公務員の在り方について考えたこと等を参加者間で討議するとともに、討議概要を発表する事後研修から構成されています。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、業務体験研修に代えて相談窓口業務に関する研修(消費生活相談員による講義)を実施し、計91名が研修に参加しました。研修終了後に実施したアンケートでは、参加者の85.7%から有益との回答を得るなど、高い評価を得ました。
(6)消費者からの情報・相談の受付体制の充実
消費者庁及び関係府省等では、消費者からの多様な情報・相談に対応するために、相談窓口ごとに電話、メール等の受付手段を拡充するなど、体制の整備を進めています。
消費者庁では、消費者からの情報・相談の受付体制の拡充について、関係府省庁等の相談窓口の設置状況を取りまとめています(主な相談窓口は第2部第2章別表2参照。)。
担当:参事官(調査研究・国際担当)