第2部 第2章 第3節 3.消費生活のグローバル化の進展への対応
第2部 消費者政策の実施の状況
第1章 消費者庁における主な消費者政策
第3節 「新しい生活様式」の実践その他多様な課題への機動的・集中的な対応
3.消費生活のグローバル化の進展への対応
(1)越境消費者トラブルへの対応力の強化
情報化や国際化の進展に伴い、消費者がインターネットを通じて気軽に海外事業者と取引できるようになった反面、こうした国境を越えた取引(越境取引)に関連する消費者問題も増加し、更に多様化・複雑化しています。
こうした問題に対応するため、消費者庁は、2011年に、越境取引に関する消費者相談窓口を開設し、2015年からCCJとして国民生活センターが事業を行っています。
CCJでは、2015年6月から越境消費者相談の受付を開始しました。2020年度(2021年3月末時点)は4,625件の相談を受け付け、消費者に対して内容に応じた助言や情報提供を行っています。
また、海外の消費者相談機関との更なる連携強化・拡大を進め、2017年度には2機関(台湾(注82)、南米及びスペイン(注83))、2018年度は1機関(香港(注84))、2019年度は2機関(ラトビア(注85)及びエストニア(注86))と正式提携しました。この結果、CCJと連携する海外消費者相談機関は計15機関、これらの機関が担当する国・地域は26となっています。更なる連携強化・拡大のため、2019年11月にはデンマーク及びギリシャ、2020年1月にはインドネシアの消費者機関と連携の在り方等に関する意見交換を実施しました。
(2)訪日外国人・在留外国人からの相談に対する体制の強化
消費者庁では、在留外国人の対応を含む消費生活相談体制の強化に向けた地方公共団体の取組を支援するために「地方消費者行政強化交付金」を交付しました。2020年4月時点では26都道府県、349市区町村等において通訳の活用等の体制整備が図られました。
また、国民生活センターにおいて、訪日外国人が日本滞在中に消費者トラブルに遭った際の電話相談窓口を2018年12月に開設しました。また、多言語による安定した情報提供を行うため、訪日観光客を対象とした多言語ホームページ及び多言語チャットボットについて、2021年度中の開設を目指して準備を進めています。
(3)二国間・地域間・多国間における政策対話・協力等の実施
消費者庁及び外務省は、2020年4月にOECD消費者政策委員会(CCP(注87))第99回PartⅠ本会合、同年10月に第99回PartⅡ本会合に参加しました。また、同年3月にOECD製品安全作業部会第20回PartⅠ本会合、同年10月に第20回PartⅡ本会合に参加しました。
これらの会合では、越境執行協力に関する法的措置の執行ツールキットの作成、消費者政策の決定に資する消費者被害の計測対象や計測方法、オンライン上の情報開示の有効性等のテーマについて議論が行われました。
日本は、CCP及び製品安全作業部会のビューロー(幹事役)を長年担っています。CCPでは副議長を務め、製品安全作業部会では、2016年1月から2018年12月まで議長を、2019年1月からは副議長を務めており、勧告の見直しやガイドラインの作成等に当たって主導的に議論を進め、その方向付けを始めとした重要な局面における最終決定に関わっています。
新型コロナウイルス感染症の影響によるデジタル化の急速な進展を踏まえ、2021年2月、日本のOECDへの拠出金を財源として、「デジタル時代の消費者のぜい弱性」及び「オンライン上の悪質商法」について、国際研究プロジェクトを開始しました。諸外国においても、オンライン取引における新しい消費者被害や、消費者の個人情報を蓄積したオンライン事業者と消費者との情報格差等の問題が顕在化しつつあることを踏まえ、本プロジェクトの実施に当たっては日本も積極的に議論に関与し、主導的な役割を果たしています。
また、2020年10月には、UNCTAD第8回競争・消費者保護に関するレビュー会合に出席しました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う各国でのオンライン上の取組(消費者と事業者間の紛争解決の仕組み、消費者から当局への消費者問題の報告、製品表示のデジタル情報システム等)や、デジタル化に即した消費者法令・規定のアップデートの必要性及びその実効性確保などについて議論するとともに、電子商取引における消費者保護機関の国際的執行協力に向けた課題や好事例について情報共有及び意見交換を行いました。
(4)海外消費者関係法執行機関との連携
消費者庁は、2020年5月に、ICPEN(注88)が推奨する「詐欺防止月間」、及び加盟国消費者保護当局が同一テーマで一斉にインターネットを監視する「インターネット・スウィープ」を実施したほか、年2回開催されるICPEN本会合に参加しました。同月の春季会合にて、「消費者教育に関するアワード」の「持続可能な消費部門」にエントリーし、日本の「食品ロス削減の取組」を紹介して第2位を獲得するなど、積極的に情報発信に取り組みました。同年11月から12月にかけて開催された秋季会合においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた消費者の生活様式の急激な変化に伴う電子商取引の急増により、越境消費者トラブルが増加していることに鑑み、消費者保護当局と関係当局間の連携や海外当局との執行協力の在り方等に関し議論が行われました。また、環境配慮に関する虚偽表示等への対応や新型コロナウイルス感染症に関する各国の対応状況等についても、情報共有及び意見交換を行いました。
(5)消費者庁新未来創造戦略本部の機能を活用した国際共同研究等の推進
2020年7月に徳島に開設した新未来創造戦略本部では、2019年9月に徳島で、38か国・地域の参加を得て開催したG20消費者政策国際会合をレガシーとし、新たな国際業務として、海外の研究者等との国際共同研究や政策研究を基点とした国際交流を行っていくことに加えて、国際シンポジウム等の国際交流事業を実施しています。
2021年3月16日には、東南アジア4か国の政府機関関係者や研究者が参加した国際シンポジウム「アジア地域におけるウィズコロナ、ポストコロナでの消費生活相談と消費者教育について」を開催し、新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費生活相談の国際的状況や消費者教育の在り方等について議論を交わしました。こうした国際業務を通じて、海外諸国の消費者政策の情勢を把握するとともに、消費者庁の取組を世界に発信していくことを目指しています。
- 注82:台湾消費者文教基金会(Consumers’ Foundation, Chinese Taipei)
- 注83:ODRLA(ODR Latinoamerica)
- 注84:香港消費者委員会(The Consumer Council of Hong Kong)
- 注85:CRPC(Consumer Rights Protection Centre)
- 注86:CPTRA(Consumer Protection and Technical Regulatory Authority)
- 注87:Committee on Consumer Policy(消費者政策委員会)の略。
- 注88:International Consumer Protection and Enforcement Network(消費者保護及び執行のための国際ネットワーク)の略。
担当:参事官(調査研究・国際担当)