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第2部 第1章 第3節 (2)事業活動におけるコンプライアンス向上に向けての自主的な取組の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第3節 消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進

(2)事業活動におけるコンプライアンス向上に向けての自主的な取組の推進

公益通報者保護法の改正及びその施行に向けた取組

①公益通報者保護法の見直し

 食品偽装やリコール隠し等、消費者の安全・安心を損なう企業不祥事が、事業者の内部からの通報を契機として相次いで明らかになったことから、通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産の保護に関わる法令の遵守を図り、国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的として、公益通報者保護法が制定されました。

 同法制定後、大企業等を中心に内部通報制度の整備が進み、各事業者におけるコンプライアンス経営等の取組が強化されるなど、一定の成果が上がってきました。一方で、中小企業等における制度の整備状況や労働者等における同法の認知度はいまだ不十分であるほか、近年も、大企業における内部通報制度が機能せず、国民生活の安全・安心を損なう不祥事に発展した事例や、通報を受けた行政機関において不適切な対応が行われた事例が発生するなど、公益通報者保護制度の実効性の向上を図ることが重要な課題となっています。

 消費者庁では、2015年6月から2016年12月まで開催した「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」で取りまとめられた報告書の提言を踏まえて、制度の運用改善に関する部分について、民間事業者向け、国の行政機関向け及び地方公共団体向けの各ガイドラインを改正・策定しました。その後、公益通報者保護法について、規律の在り方や行政の果たすべき役割等に係る方策を検討するため、2018年1月に、内閣総理大臣から消費者委員会に対し諮問が行われました。2018年12月に、同諮問に対し消費者委員会から答申が出されたところ、消費者庁では、同答申の内容や意見募集の結果(注13)等を踏まえ、所要の改正を行う法案の検討を行いました。このような検討を経て、第201回国会において、事業者に対する内部通報対応体制整備の義務付け、公益通報対応業務従事者等に対する守秘義務及び同義務違反に対する罰則の新設、行政機関への通報に係る保護要件の緩和、保護対象となる通報者や通報対象事実の範囲の拡大等を内容とする公益通報者保護法の一部を改正する法律(注14)が成立しました(図表Ⅱ-1-3-9)。

 同改正法の施行に向けた準備として、同改正法の周知広報のほか、2020年10月から「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会」を開催し、内部通報対応体制整備に関する指針の内容の検討を行っています。

②その他公益通報者保護制度の実効性の向上のための取組

 公益通報者保護制度の実効性向上に向けて、2019年2月から、内部通報制度を適切に整備・運用している事業者に対する認証制度(自己適合宣言登録制度)(図表Ⅱ-1-3-10)の運用を消費者庁が指定した指定登録機関において開始し、2020年度末時点で、約100事業者が同制度に登録されています。

 また、消費者委員会から出された答申等を踏まえ、2021年3月に、従来の公益通報者保護制度相談ダイヤルを拡充し、公益通報に関する通報先(権限を有する行政機関の特定が難しい通報事案)に関する相談対応等も行う「公益通報者保護制度相談ダイヤル(一元的相談窓口)」の運用を開始しました。

 今後とも公益通報者保護制度の実効性確保に向けた取組を着実に行うこととしています。

③新未来創造戦略本部における取組

 消費者庁では、市区町村や中小企業の通報窓口の整備率が十分ではない状況を踏まえ、新未来創造戦略本部において、四国4県等と連携して市区町村や中小企業等における公益通報者保護制度の整備を促進するための先進的な取組を行ってきました。

 これまで徳島県内市町村、愛媛県内市町及び香川県内市町における内部職員等からの通報窓口及び外部の労働者等からの通報窓口(以下、併せて「通報窓口」という。)の整備率が100%となったほか、高知県内市町村における通報窓口の整備率も大幅に向上しました。

 今後は、これらの取組の効果や全国展開のための課題等を検証し、積極的に周知広報を行うとともに、全国の地方公共団体、事業者の通報窓口の整備等を促進し、制度の一層の実効性の向上に取り組んでいくこととしています。

図表2-1-3-9公益通報者保護法の一部を改正する法律

図表2-1-3-10内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)


担当:参事官(調査研究・国際担当)