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第2部 第1章 第3節 (1)持続可能な社会の形成に資する消費者と事業者の連携・協働

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第3節 消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進

(1)持続可能な社会の形成に資する消費者と事業者の連携・協働

食品ロス削減の推進

 「食品ロス」とは、本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品のことです。日本の食品ロスは、2018年度の推計で600万トン発生しています(農林水産省・環境省推計)。この内訳は、事業系食品ロスが324万トン、家庭系食品ロスが276万トンとなっています。これらを国民1人当たりの量で見ると年間約47kgと、年間1人当たりのコメの消費量(約54kg)に近い量の食品ロスが発生していることになります。また、食品ロスの半分は家庭から発生します。食品ロスの削減に向けて、消費者や事業者等、様々な主体が連携して取り組むことが求められています。

 2019年5月には、国民運動として食品ロスの削減を推進するため、食品ロス削減推進法が成立し、同年10月に施行されました。また、同法に基づき、2020年3月に「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」(以下「基本方針」という。)が閣議決定され、関係省庁等において、国民各層が食品ロス削減の問題を「他人事」ではなく「我が事」としてとらえ、「理解」するだけにとどまらず「行動」に移すための様々な取組を行っています。

食品ロス削減月間・食品ロス削減の日

 食品ロス削減推進法において、毎年10月は「食品ロス削減月間」、10月30日は「食品ロス削減の日」と定められています。2020年度の「食品ロス削減月間」には、消費者庁、農林水産省及び環境省が共同で普及啓発ポスターを作成し、地方公共団体等に配布するとともに、集中的な情報発信に取り組みました。(図表Ⅱ-1-3-1)。

食品ロス削減に関するコンテスト

 消費者庁では、食品ロス削減のための広報・啓発活動の一環として、2020年7月から同年9月にかけて、「賞味期限」と「消費期限」の違いについての正しい理解を促進する観点から「「賞味期限」の愛称・通称コンテスト」を実施しました。最優秀賞である内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)賞には、「おいしいめやす」が選ばれました。また、同時に「私の食品ロス削減スローガン&フォトコンテスト」も実施し、最優秀賞である内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)賞には、「でこぼこやさいに魔法をかけて」という作品が選ばれました。両コンテストについては「食品ロス削減の日」である10月30日に表彰式を行いました(図表Ⅱ-1-3-2)。

賞味期限は「おいしいめやす」の啓発

 消費者庁は、賞味期限の愛称・通称「おいしいめやす」を用いて、食品の期限表示の正しい理解を促進するための普及啓発事業として、2021年2月から、全国のスーパーマーケット等において、「おいしいめやす」の啓発ポスターの掲示及びレジ画面への表示を行いました(図表Ⅱ-1-3-3)。

食品ロス削減推進大賞

 2020年度には、食品ロス削減推進法及び基本方針に基づき、食品ロス削減の取組を広く国民運動として展開していくことを目的として、消費者等に対し広く普及し、波及効果が期待できる優れた取組を実施した者を表彰する「食品ロス削減推進大賞」を創設しました。最優秀賞である内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)賞には、「株式会社ハローズ」が選ばれました(図表Ⅱ-1-3-4)。

その他の食品ロス削減に向けた取組

 食品ロス削減に向けて、消費者・事業者・地方公共団体等の様々な関係者が一堂に会し、関係者の連携強化や食品ロス削減に対する意識向上を図ることを目的として、2017年から「食品ロス削減全国大会」が開催されています。2020年度は、富山県において、第4回食品ロス削減全国大会が開催されました(注10)

 2020年12月から2021年1月にかけては、消費者庁、農林水産省、環境省及び全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会が共同で、「『おいしい食べきり』全国共同キャンペーン」を実施しました。外食時の食べきり(「30(さんまる)・10(いちまる)運動(注11)」等)のほか、新型コロナウイルス感染症対策として、テイクアウト等により家庭での食事の機会が増加することも考慮し、家庭での食べきりについても啓発を行いました。

 また、9道府県において食品ロス削減に関するオンラインシンポジウムを開催したほか、政府広報ラジオ等における普及啓発を実施しました。また、特設サイト「めざせ!食品ロス・ゼロ」では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって様々な行動変容が求められる中でも取り組むことができる食品ロス削減として、ページ「『新しい生活様式』での食品ロス削減の工夫」を新設し、食品ロス削減に関する情報を発信しています。

 このほか、2021年3月には食品表示基準に違反する食品表示(アレルゲン等の消費者の安全性に係る表示事項以外)の修正方法について、適正な表示を記載したポップシール又はネックリンガーを容器包装の任意の場所に貼付又は配置することによる簡便な方法を認める運用を始めました。この運用により、食品表示基準違反の商品について、安易に廃棄されることがなくなり、食品ロスの削減につながることが期待されます。

 2021年3月には、入替え時期の到来により役割を終えた災害用備蓄食料を有効に活用するため、安全性等を確認した上でフードバンク活動団体である特定非営利活動法人FUKUSHIMAいのちの水へ提供を行いました(図表Ⅱ-1-3-5)。

エシカル消費の普及啓発

 地域の活性化や雇用等も含む、人や社会・環境に配慮して消費者が自ら考える賢い消費行動、いわゆるエシカル消費は、「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標12「つくる責任 つかう責任」にも深く関連しており、消費者一人一人が持続可能な社会の形成に参画するという視点からも、より一層重要になっています。

 消費者庁では、エシカル消費の普及・啓発に向けて、地方公共団体との共催による啓発イベント「エシカル・ラボ」や体験型ワークショップの実施などに取り組んできました。また、パンフレット、ポスターや動画、学校でも活用できる教材の作成・普及のほか、特設サイトを通じた先進的な事例の紹介等を通して、一人一人の消費行動が「世界の未来を変える」大きな可能性を持つということを発信しています(図表Ⅱ-1-3-6図表Ⅱ-1-3-7)。

消費者志向経営の推進

 持続可能な社会の実現に向けて、消費者、事業者、行政等の関係者が共に連携・協働していくことが重要です。

 消費者庁では、2016年に事業者団体、消費者団体、行政機関で構成する「消費者志向経営推進組織(注12)」(以下「推進組織」という。)を設置し、消費者志向経営(愛称:サステナブル経営)の推進に取り組んでいます。第4期消費者基本計画においては、消費者志向経営の取組が、事業者としての社会的責任を果たしていると多様な関係者から評価され、円滑な資金調達等につながるような環境整備に取り組むこととされました。活動開始5年を目途に推進の在り方を見直すこととされており、2020年度には「消費者志向経営の推進に関する有識者検討会」を開催しました。同有識者検討会では、消費者志向経営について、持続可能な社会への貢献を目標に位置付け、「消費者」と「共創・協働」して「社会価値」を向上させる経営であるとの概念整理を行いました。具体的な活動としては、事業者が、消費者の視点に立ち、「みんなの声を聴き、かついかすこと」、「未来・次世代のために取り組むこと」、「法令の遵守/コーポレートガバナンスの強化をすること」を打ち出しています(図表Ⅱ-1-3-8)。

 また、消費者志向経営の理念に基づく事業者の取組を社会に広く周知する活動として、「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」の推進等を行っています。これは、事業者が自主的に消費者志向経営を行うことを宣言・公表し、宣言内容に基づいて取組を実施するとともに、その結果をフォローアップして公表する活動です。2021年3月末時点で、191事業者が自主宣言を公表しています。

 また、2017年には、徳島県、事業者団体、消費者団体等で構成される「とくしま消費者志向経営推進組織」が発足しました。同推進組織や四国の地方公共団体と新未来創造戦略本部が連携した取組を進めた結果、2021年3月末時点で、78の四国内の事業者が自主宣言を公表しています。

 また、愛媛県では「えひめ消費者志向おもいやり自主宣言」事業者を公表するなど、地方における消費者志向経営への取組が進められています。

消費者志向経営優良事例表彰の実施

 消費者志向経営の優良事例を広く社会に発信していく観点から、2018年度以降、消費者志向経営の取組に関する優良事例の表彰を行っています。本表彰は、特に優れた取組を、「内閣府特命担当大臣表彰」及び「消費者庁長官表彰」として表彰するものです。2020年度の同表彰は、前述の有識者検討会において再定義された消費者志向経営の概念や具体的な活動内容に基づき客観的な評価軸を設定し、また、応募事業者の拡大のため、応募要件を緩和した上で行いました。2021年3月に表彰式を実施し、大臣表彰として1社、長官表彰として6社を表彰しました。

期待される効果と今後の取組

 今後は、消費者志向経営が基本認識となる社会の実現に向け、優良事例の表彰の見直しや消費者志向経営の概念整理を行うとともに、資金調達の円滑化につながるよう、例えばESG投融資等の概念を反映した金融とのひも付け等を検討することとしています。また、消費者志向経営の更なる広範な普及に向けた取組も進めていきます。

図表2-1-3-1令和2年度食品ロス削減月間ポスター

図表2-1-3-2「「賞味期限」の愛称・通称コンテスト」及び「私の食品ロス削減スローガン&フォトコンテスト」表彰式の様子

図表2-1-3-3「おいしいめやす」普及啓発ポスター

図表2-1-3-4食品ロス削減推進大賞 各賞受賞者(敬称略)

図表2-1-3-5災害用備蓄食料の提供について

図表2-1-3-6パンフレット「みんなの未来にエシカル消費」

図表2-1-3-7エシカル消費ポスター

図表2-1-3-8消費者志向経営(愛称:サステナブル経営)について


  • 注10:主催:富山県、全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会、共催:消費者庁、農林水産省、環境省
  • 注11:宴会時の食べ残しを減らすため、乾杯後の30分間とお開き前の10分間は席に着いて料理を楽しもうという運動。長野県松本市で始まり、各自治体で工夫し展開されている。
  • 注12:構成員は、事業者団体から、一般社団法人日本経済団体連合会、公益社団法人経済同友会、公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)、一般社団法人日本ヒーブ協議会、消費者団体から、一般社団法人全国消費者団体連絡会、公益社団法人全国消費生活相談員協会、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)、行政機関から消費者庁となっている。オブザーバーとして、国民生活センターが参加している。

担当:参事官(調査研究・国際担当)