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第1部 第1章 第6節 (2)経済社会の構造変化と消費者を取り巻く現状

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第6節 消費者を取り巻く環境の変化

(2)経済社会の構造変化と消費者を取り巻く現状

 次に、経済社会の構造変化と消費者を取り巻く現状について概観していきます。

高齢化の進行等

 現在の日本では出生率の低下により少子化が進行し、総人口は減少局面を迎えています。他方で、平均寿命の延伸に伴って高齢者人口は増加しており、超高齢社会(注46)を迎えています。今後、総人口は減少する中で高齢化率は更に上昇を続けていくという推計もあります(図表Ⅰ-1-6-12)。また、障害者の人口も近年上昇を続けています(注47)

世帯の単身化、高齢者世帯の増加

 晩婚化や未婚化の進行、核家族化等に伴い、世帯の少人数化が進み、平均世帯人員は縮小を続けています(図表Ⅰ-1-6-13)。また、世帯構造をみると、単独世帯、夫婦のみの世帯が増加している傾向にあります。一方、世帯類型でみると、65歳以上のみ又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった高齢者世帯はここ30年で大きく増加し、2019年には1,500万世帯に迫る状況となっています。さらに、夫婦共に雇用者の共働き世帯も年々増加(注48)しています。

訪日外国人と在留外国人による消費

 近年、観光等を目的とした近隣のアジア諸国を中心とした訪日外国人の大幅な増加に伴い、訪日外国人による旅行消費額も増加してきました(図表Ⅰ-1-6-14)。2020年の訪日外国人旅行者数は、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりにより大きく減少しましたが、国際的な人の往来が再開された後には、訪日外国人旅行者数や消費額の回復が想定されます。

 また、近年、増加傾向にあった日本に在留する外国人数も、2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、世界的に人的な移動が一時的に縮小する中で減少しています。しかしながら、労働市場における外国人に対する新たな在留資格(特定技能)の創設等(注49)を踏まえると、在留外国人による消費は中長期的には増加していくことが期待されます(図表Ⅰ-1-6-15)。

デジタル化の進展

 近年、情報通信技術(以下「ICT」という。)の高度化により、スマートフォンやタブレット型端末といったICT機器も急速に普及してきており、誰もが、どこでも、いつでも、手軽に、デジタル空間にアクセスし、商品やサービスを購入できるようになってきています。最近では、新たな無線通信システムである第5世代移動通信システム(5G)の本格展開や人工知能(AI)を実装した商品・サービスの普及、モノのインターネット化(IoT(注50)化)等が進んできており、更なるデジタル化の発展が見込まれています。

 このようなICTの普及・発展に伴い、取引の基盤環境を提供するデジタル・プラットフォームが発達し、オンラインサービスを介した商取引である電子商取引が近年急速に活発化しています。国内における事業者・消費者間(以下「BtoC」という。)の電子商取引をみると、この10年で大きく増加していることが分かります(図表Ⅰ-1-6-16)。さらに、越境的な電子商取引も増加しており、例えば、日本と米国との間でのBtoCの電子商取引の市場規模は、2019年において2,863億円と、2014年と比べて約1.5倍となっています(図表Ⅰ-1-6-17)。

 また、デジタル・プラットフォームでは、BtoCの商取引だけでなく、デジタル市場でのフリーマーケット等の個人間(CtoC)の取引についても活発化しています(図表Ⅰ-1-6-18)。特にフリーマーケットサービスについては、関連する消費生活相談件数も増加傾向にあります(図表Ⅰ-1-6-19)。

決済手段の多様化

 近年、消費者の決済手段の多様化・高度化も進んでいます。クレジットカードや電子マネーの利用も増加しており、現金以外での決済の利便性も消費者に認識されるようになりました(図表Ⅰ-1-6-20)。こうした「キャッシュレス決済」に関する消費生活相談の件数も、近年、増加傾向にあることが分かります(図表Ⅰ-1-6-21)。

 また近年は、通貨のような機能を持つ電子データである「暗号資産(仮想通貨)」も支払・資金決済ツールとして利用されてきているほか、最近ではデジタル通貨の利点やリスク、技術的課題等についても議論が行われています(注51)


  • 注46:一般に、65歳以上人口の割合が7%超で「高齢化社会」、65歳以上人口の割合が14%超で「高齢社会」、65歳以上人口の割合が21%超で「超高齢社会」と分類されている。
  • 注47:厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(2018年4月9日公表)によると、2016年時点の障害者手帳所持者等の人口は593万人となっている。
  • 注48:夫婦共に雇用者の共働き世帯は、1980年では614万世帯、2019年は1,245万世帯(令和2年版男女共同参画白書)。
  • 注49:法務省「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(在留資格「特定技能」の創設等)」(法務省ウェブサイト参照。)
  • 注50:IoTとは、Internet of Thingsの略。インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術(官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号))を指す。
  • 注51:日本銀行決済機構局「決済の未来フォーラム:中銀デジタル通貨と決済システムの将来像」(2020年2月)

担当:参事官(調査研究・国際担当)