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第1部 第1章 第6節 (1)家計消費、物価の動向

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第6節 消費者を取り巻く環境の変化

(1)家計消費、物価の動向

社会経済活動の中で大きなウェイトを占める消費活動

 社会経済活動の中で、消費活動は大きなウェイトを占めています。家計が支出する消費額の総額は、2020年に約280.5兆円で、経済全体(名目国内総生産(GDP)=約539.1兆円)の50%以上を占めています(図表Ⅰ-1-6-1)。

 諸外国をみると、先進国は概して消費者が支出する総額が経済全体の5割を超えています。また、米国のように消費支出が経済の7割近いウェイトを占めている国もあります(図表Ⅰ-1-6-2)。

 消費者の消費活動は、日本の経済社会全体に大きな影響を及ぼしています。経済社会の持続的な発展のためには、消費者が安心して消費活動を行える市場を構築することが重要です。

2020年の個人消費は、一時的に大きく減少するも持ち直しの動きがみられた

 一国全体の雇用者の所得を表す実質総雇用者所得の動きをみると、新型コロナウイルス感染症の影響により2020年4月から5月にかけて減少しましたが、その後はおおむね持ち直しの動きが続いています。

 次に、個人消費の動向を消費総合指数からみると、2020年の個人消費は、同年3月から5月にかけて新型コロナウイルス感染症の影響により大きく減少しましたが、その後は持ち直しの動きがみられました(図表Ⅰ-1-6-3)。この背景には、社会経済活動のレベルが段階的に引き上げられる中で、雇用者数及び賃金が底堅く推移するなど、雇用・所得環境の持ち直しがみられたことがあります。ただし、2021年以降、再び新型コロナウイルス感染症やこれに伴う外出自粛の影響等により、個人消費は足下で弱含んでいます。

家計の支出のうちサービスへの支出割合は4割弱と2019年より減少

 家計の支出構造について、総務省「家計調査」により、2020年における「二人以上の世帯」1世帯当たりの財・サービスへの支出の構成比をみると、住居や教養娯楽、通信等の「サービスへの支出」が占める割合は38.7%、食料や光熱・水道等の「財(商品)への支出」は61.3%です(図表Ⅰ-1-6-4)。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、サービスへの支出割合は2019年よりも減少しています(注44)

2020年の消費者物価は、横ばいとなっている

 消費者が購入する財・サービスの価格は、総務省「消費者物価指数」によると、2017年の後半以降、緩やかな上昇傾向にありましたが、2020年2月以降は、政策による特殊要因を除くと基調としては横ばいとなっています(図表Ⅰ-1-6-5)。

 消費者が購入する財・サービス全体の価格の動きを示す「総合」指数は、2020年は前年と同水準となりました。

 一方、「総合」から生鮮食品及びエネルギーを除いた価格の動きを示す指数は、2017年の前半以降、おおむね安定的な前年比のプラスを維持していましたが、2019年9月頃から上昇テンポが鈍化し、2020年2月以降は、政策による特殊要因を除くと基調としては横ばいとなっています(図表Ⅰ-1-6-6)。

 また、総合指数の前年比の動きについて項目別の寄与度(各要因が全体の動きにどれだけ影響しているかの度合い)をみると、天候不順等による生鮮食品価格の変動により、食料品のプラス寄与が続きましたが、2020年11月以降マイナス寄与に転じています(図表Ⅰ-1-6-7)。エネルギーの寄与度については、2019年から徐々にプラス幅が縮小し、2020年は2月以降マイナス寄与が継続しました。

物価モニター調査対象品目でも価格変動は小幅にとどまる

 「物価モニター調査」における調査対象品目の税抜価格の変化をみると、2019年以降、おおむね前月から価格が上昇した品目数が下落した品目数を上回る状況が続いています(図表Ⅰ-1-6-8)が、上昇幅はほぼ1%程度の範囲内で推移しました。

物価モニターの1年後の物価上昇期待は緩やかに収束

 消費者の生活関連物資全般の価格見通しについて、物価モニター調査からみていきます。物価モニターに、1年後の物価について聞いたところ、「上昇すると思う」と回答した人の割合は、2019年10月以降下落傾向が継続し、2020年4月には68.3%まで下落しました。その後やや持ち直し同年11月までおおむね70%程度で推移しましたが、足下では再び下落傾向がみられます(注45)(図表Ⅰ-1-6-9)。

 「上昇(下落)すると思う」と答えた人に1年後どれくらい上昇(下落)するか聞いた結果を加重平均したところ、2019年10月以降下落傾向が継続しましたが、足下では下げ止まり、2021年3月には1.5%となりました(図表Ⅰ-1-6-10)。

【解説】物価モニター調査の実施

 「物価モニター調査」とは、原油価格や為替レート等の動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響、物価動向についての意識等を正確・迅速に把握し、消費者等へのタイムリーな情報提供を行うことを目的として消費者庁が行っている調査です。

 広く一般から募集した全国2,000名の物価モニターにより調査は行われています。調査内容には、価格調査と意識調査があり、価格調査は、消費者庁が指定した調査対象25品目(図表Ⅰ-1-6-11)の価格の見取調査で、毎回の調査において同一店舗で同一商品の店頭表示価格を継続して調査するものです。特売品も含め、消費者に身近な品目、日頃よく購入する品目の価格を把握します。また、意識調査は、物価モニターに対し、消費や物価動向についての意識の変化を調査するものです。

 2013年10月から調査を行い、2013年度は3回、2014年度は6回調査を行い、2015年4月以降は調査回数を毎月の12回に増やし、調査結果をタイムリーに公表しています。


  • 注44:新型コロナウイルス感染症の感染拡大と消費の動向については、第1部第2章第1節参照。
  • 注45:内閣府「消費動向調査」において、消費者が予想する1年後の物価の見通しが「上昇する」と回答した割合をみると、2019年10月以降、おおむね同様の動きとなっている。

担当:参事官(調査研究・国際担当)