第1部 第1章 第3節 (2)越境取引に関わる消費生活相談
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等
第3節 消費生活相談の概況
(2)越境取引に関わる消費生活相談
越境消費者センター(CCJ)の活動
グローバル化が進む中、消費者がインターネット経由で気軽に海外事業者と取引できるようになったこと等に伴い、海外事業者とのトラブルが発生するようになりました。
国民生活センター越境消費者センター(CCJ)(注24)は、海外ネットショッピング等、海外の事業者との取引においてトラブルに遭った消費者の相談窓口です。CCJでは、海外の提携消費者相談機関と連携し、海外に所在する相手方事業者に相談内容を伝達するなどして事業者の対応を促し、日本の消費者と海外の事業者のトラブル解決を支援しています。
CCJに寄せられた相談の特徴
CCJが受け付けた相談の件数は、2018年から2019年にかけて6,000件近くまで増加しましたが、2020年は4,919件と、2019年(5,935件)から2割近く減少しました(図表Ⅰ-1-3-18)。相談件数の減少には、新型コロナウイルス感染症拡大防止措置のために、CCJが相談受付を休止していた期間があるため、他の年より受付期間が短かったことの影響が大きかったほか、2019年に相談が多くみられた海外のチケット転売仲介サイトに関する相談や、インターネットサイトでの渡航認証(ESTA(注25))の手数料に関する相談が減少していることが考えられます(注26)。
2020年の取引類型別では、「電子商取引」が4,887件(99.3%)と、インターネット取引によるものが引き続き大部分を占めています(注27)。
年齢層別にみると、最も高い割合を占めているのは「40歳代」で、「30歳代」、「20歳代」と続きます。一方で、「70歳以上」の割合は、全国の消費生活センターに寄せられた消費生活相談の2割以上であることに比べて、CCJでは4.9%と低くなっています。CCJに寄せられた20歳代〜40歳代の相談は、いずれも「役務・サービス」に関する相談が最多となっており、海外OTA(注28)での旅行予約のキャンセル等の相談がみられます。
最多の「役務・サービス」に続き、「衣類」や「航空券」の割合が増加
CCJが受け付けた相談を商品・サービス別にみると、2020年は「役務・サービス」が33.6%と、2019年の35.8%に引き続き、最も高い割合を占めています(図表Ⅰ-1-3-19)。「役務・サービス」では、デジタルコンテンツやオンラインゲームなどの通信サービスや、「マッチングアプリで知り合った外国人に誘われて、海外サイトで暗号資産を購入したが、お金を取り戻したい」など、投資商品に関する相談等が寄せられています。
また、2020年は「衣類」が14.1%と2番目に多く、「ネットサイトで上着を購入したが届かない」、「SNSに広告を出しているサイトでブランド品の服を注文したが、全く違うものが届いた」など、商品未着や模倣品に関するトラブルが多くみられました。
3番目は「航空券」(12.1%)で、「新型コロナウイルスの影響でフライト欠航になったため返金依頼をしたが、海外航空会社が十分な対応をしてくれない」、「海外の旅行会社で予約した航空券をキャンセルしたいが、対応してくれない」など、約9割が「解約」に関するトラブルです。
一方、「PCソフトウェア」の相談は2019年から大きく減少しました。
事業者所在国は多様化が進む
CCJが受け付けた相談について事業者所在国別にみると、2020年は「米国」が734件で最も多く、以下、「中国」(348件)、「英国」(257件)、「スペイン」(221件)、「シンガポール」(219件)と続きます。上位3か国である「米国」、「中国」、「英国」の占める割合は、2016年の43.6%から2020年は27.2%に低下する一方、「その他」は41.2%と割合が大きく、事業者所在国が多様化しています(図表Ⅰ-1-3-20)。
2020年の特徴は、事業者所在国が「スイス」の相談件数が2019年から減少し、「スペイン」の相談件数が英国に次ぐ4位となりました。「スイス」については、2019年に、スイスを所在地とする事業者が運営するチケット転売仲介サイトの相談が多く寄せられましたが、2020年はこれらの相談が減少しました。一方で、「スペイン」の相談増加の背景には、スペインを所在地とする事業者が運営する旅行予約サイト(海外OTA)で予約した航空券のキャンセルに関する相談が、2020年に数多く寄せられたことがあると考えられます。
また、「詐欺疑い(注29)」のトラブルは「所在国不明」であることが多くなっています(図表Ⅰ-1-3-21)。
決済手段は主に「クレジットカード」
CCJが受け付けた相談を決済手段別にみると、2020年は「クレジットカード」が3,213件(65.3%)と最も多くなっています。トラブル類型別の推移をみると、2016年では「詐欺疑い」のみ「金融機関振込」が主な決済手段となっていましたが、2020年では全ての類型において「クレジットカード」が主な決済手段になっています(図表Ⅰ-1-3-22)。
一方、「金融機関振込」は、2020年は428件と、2019年(326件)に比べて増えており、「その他」に含まれる現金決済や資金移動サービス、暗号資産(仮想通貨)なども、2020年は増加しています。
相談内容をみると、トラブル類型が「解約」の相談では、航空券の解約やデジタルコンテンツの解約に関する相談が多くなっています。
図表Ⅰ-1-3-18 CCJが受け付けた相談件数と年齢層別割合の推移[CSV]
図表Ⅰ-1-3-19 CCJが受け付けた相談の商品・サービス類型別割合の推移[CSV]
図表Ⅰ-1-3-20 CCJが受け付けた相談の事業者所在国別割合の推移[CSV]
- 注24:2011年11月に消費者庁において開設、2015年4月から国民生活センターに業務移管。2015年度は移管準備のため4〜5月は相談窓口を閉鎖し、6月から相談受付を開始。なお、2018年3月に相談項目等の見直しを行ったため、2017年以前の相談件数は過去発表の数値と異なる場合がある。
- 注25:電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization)。米国に短期商用・観光等の90日以内の滞在目的で旅行する場合に、米国行きの航空機や船に搭乗する前に受けなければならない、オンラインでの渡航認証。
- 注26:CCJは、2020年4月10日18時から6月1日9時30分まで、新型コロナウイルス感染症拡大防止措置のために相談受付を休止していたため、他の年より受付期間が短い。
- 注27:「電子商取引」以外は、「現地購入」24件(0.5%)、「その他」2件(0.0%)、「不明・無関係」6件(0.1%)。
- 注28:海外OTA(Online Travel Agent):海外のオンライン旅行取引事業者。
- 注29:注文及び決済の事実が確認できるにもかかわらず、何も届かないまま事業者とのコミュニケーションが途絶え(又は事業者が合理的な対応をしない)、なおかつ事業者の実態が正確に把握できない相談。
担当:参事官(調査研究・国際担当)