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第1部 第1章 第3節 (1)2020年の消費生活相談の概況

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第3節 消費生活相談の概況

(1)2020年の消費生活相談の概況

架空請求の消費生活相談が大きく減少

 全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数をみると、2020年は93.4万件となり、前年(94.0万件)とほぼ同じ水準となりました(図表Ⅰ-1-3-1)。架空請求に関する相談件数は、2020年は3.4万件となり、前年(13.1万件)から大きく減少した一方、2020年は新型コロナウイルス感染症に関連する消費生活相談がみられました(新型コロナウイルス関連の相談状況については、第1部第1章第4節及び第1部第2章第5節参照。)。

 消費生活相談件数の長期的な推移をみると、2004年度に192.0万件とピークに達しています。この時、架空請求に関する相談件数が67.6万件と急増し、全体の35.2%を占めていました。その後、架空請求に関する相談は減少し、消費生活相談の総件数も減少傾向となりましたが、2008年以降の10年間は年間90万件前後と、依然として高水準で推移し続けました。2018年には架空請求に関する相談が約26万件となり、消費生活相談件数は再び100万件を超えました。

 総務省、法務省、経済産業省、消費者庁、警察庁、金融庁及び国民生活センターは、消費者政策会議において2018年7月に決定した「架空請求対策パッケージ」の下、一体となって、架空請求による消費者被害の未然防止・拡大防止を図る対策を講じてきました。

 その後、架空請求に関する相談件数は2019年に減少に転じ、さらに2020年には、2011年以来の低水準となりました。

相談件数は「通信サービス」が突出

 2020年の消費生活相談状況について、商品・サービス別に相談件数と相談1件当たりの実際に支払った金額(平均既支払額)の関係をみると、まず、相談件数が最も多いのは、デジタルコンテンツやインターネット接続回線に関する相談等の「通信サービス」で15.4万件、次いで、架空請求に関する相談を含む「商品一般」、健康食品の定期購入に関する相談を含む「食料品」がいずれも8.9万件となっています(図表Ⅰ-1-3-2)。

 平均既支払額では、屋根工事やリフォーム工事の解約に関する相談等の「工事・建築・加工」が80.1万円と最も高額となっており、次いで、訪問販売で購入した給湯器や太陽光発電パネルに関する相談等の「土地・建物・設備」が75.8万円、フリーローン・サラ金の返済に関する相談等の「金融・保険サービス」が65.8万円と続きます。一方、相談件数の多い「通信サービス」の平均既支払額は5.2万円、「商品一般」は2.4万円、「食料品」は0.9万円と、他の商品・サービスよりも相対的に低くなっています。

 また、既支払総額では、相談件数が「工事・建築・加工」や「土地・建物・設備」より多い「金融・保険サービス」が、商品・サービス別で最も高くなっています。

相談1件当たりの平均金額は、前年に比べ減少

 2020年に寄せられた相談1件当たりの平均金額をみると、全体では、請求された又は契約した金額である「平均契約購入金額」が75.5万円、実際に支払った金額である「平均既支払額」が29.9万円となっています。2020年は、平均契約購入金額において、「全体」、「65歳以上」、「65歳未満」の全てで前年と比べて減少しました。特に「65歳以上」については前年に比べて31.7万円減の79.6万円と、大きく減少しています。平均既支払額でも、「全体」、「65歳以上」、「65歳未満」の全てで、前年に比べて減少しました(図表Ⅰ-1-3-3)。

 また、2020年に寄せられた相談全体の契約購入金額及び既支払額それぞれの総額をみると、契約購入金額総額は3,478億円、既支払額総額は1,158億円といずれも前年を大幅に下回りました(図表Ⅰ-1-3-4)。契約購入金額総額、既支払額総額それぞれの推移をみると、2018年に、磁気治療器等の「レンタルオーナー商法」や加工食品等の「オーナー制度」のトラブルが相次いだ(注18)影響で顕著な増加がみられたことを除いて、長期的なすう勢としては減少傾向にあります。

 65歳以上の高齢者に関する金額は、契約購入金額総額では916億円と全体の26.3%を占め、既支払額総額では449億円と全体の38.8%を占めています。

 65歳以上の高齢者については、相談1件当たりの平均契約購入金額及び平均既支払額は減少してきていますが、相談1件当たりの平均既支払額は65歳未満の約1.9倍となっていること、相談全体の既支払額総額の4割近くを高齢者が占めていることから、高齢者の消費者被害は依然として深刻であるといえます。

属性別にみた2020年の相談状況

 2020年の消費生活相談状況について、属性別にみると、年齢層別では65歳以上の高齢者が契約当事者全体の29.0%を占めています(図表Ⅰ-1-3-5)。10歳ごとの区分でみると、2020年は、50歳代が15.0%と最も多く、次いで70歳代(14.2%)、40歳代(14.1%)となっています。

 性別では、女性が51.3%、男性が43.8%と女性の割合が高くなっています。

 年齢3区分別に消費生活相談の割合について過去10年間の推移をみると、65歳以上の高齢者からの消費生活相談の割合は、2018年から2019年にかけて架空請求の相談が60歳代・70歳代を中心に多く寄せられた影響で3割を超えていましたが、2020年は架空請求に関する相談の減少に伴い3割を下回りました(図表Ⅰ-1-3-6)。

 さらに、性別、年齢層別に区分してみると、相談件数は、男性は70歳代、女性は50歳代が最も多くなっています(図表Ⅰ-1-3-7)。

 商品・サービス別でみると、男性では全ての年齢層で「通信サービス」が最も多くなっていますが、これは、ウェブサイトを利用したデジタルコンテンツや、インターネット接続回線等に関する相談が多いことによるものです。これらの事例としては、「電話で『料金が安くなる』と光回線を勧誘されたが安くならず、解約を伝えると解除料を請求された」、「無料アダルトサイトで動画を見ていたらシャッター音がして、高額な請求額が表示された」などがあります。

 一方、女性では「通信サービス」と並んで「食料品」が多くなっていますが、これは、健康食品の定期購入に関する相談が多いことによるものです。

 また、2020年は、男女共に幅広い年齢層で「その他商品」が多くなっていますが、これは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、マスクや消毒液など「保健衛生品」に関する相談が多いことによるものです(第1部第1章第4節(2)及び第1部第2章第5節参照。)。

 次に、商品・サービスを更に詳細に区分してみると、全体では、迷惑メールや架空請求を含む「商品一般」の相談件数が最も多くなっています(図表Ⅰ-1-3-8)。

 「商品一般」に次いで相談件数が多いのは、「デジタルコンテンツ」に関する相談です。相談事例は「動画配信サービスを無料期間内に退会したのに、料金を請求された」、「中学生の息子が、コロナ禍でオンライン授業を受けるためのモバイル端末で、オンラインゲームをしてしまい高額請求された」などといったものです。年齢層別にみると、20歳未満、20歳代、40歳代、50歳代の各年齢層で「デジタルコンテンツ」に関する相談が最も多くなっています。

 このほか、全年齢層で、「お試しのつもりで健康食品を購入したら定期購入だった」などの相談が含まれる「他の健康食品」が相談件数の上位に入っているほか、30歳代以上の各年齢層で、マスク等が含まれる「保健衛生品その他」に関する相談が、相談件数の上位に入っています。

若者の相談—15-19歳は美容関連、20歳代では一人暮らし関連

 29歳までの若者の消費生活相談をみると、各年齢層共にインターネット関連の相談や美容に関する相談が上位にみられます。15歳から19歳まででは、男女共に、「脱毛剤」や「他の健康食品」等、美容に関する商品の相談が目立ちますが、特に「脱毛剤」に関する相談件数は、男性(935件)が女性(235件)の約4倍となっています。美容に関する商品の相談には、「広告を見てダイエットサプリメントのお試し品を購入したら、2回目の商品が届いて驚いた」など、定期購入のトラブル等もみられます(定期購入のトラブルについては、第1部第1章第4節(2)参照。)。

 20歳から29歳までは、性別を問わず、「賃貸アパート」が上位に挙がりました。内容としては、更新時に敷金の追加を要求されたり、退去時に高額な違約金や合意していない修理費を請求されたりするなど、一人暮らしに伴うとみられるトラブルが見受けられます(図表Ⅰ-1-3-9)。

高齢者の消費生活相談件数は依然として高水準

 65歳以上の高齢者の消費生活相談件数について、過去10年間の推移をみると、2018年に約35.8万件とピークに達し、その後は減少に転じています。2020年は約27.1万件と、前年より約3.9万件減少しました(図表Ⅰ-1-3-10)。これには架空請求に関する相談が前年に比べて減少したことが影響していると考えられます。

 高齢者の消費生活相談について相談件数が上位の商品・サービスをみると、2020年は、前年に引き続き、「商品一般」が最も多く、迷惑メールや架空請求等の相談がみられました(図表Ⅰ-1-3-11)。「商品一般」以外では、「光ファイバー」や、コンテンツ利用料の請求などの「他のデジタルコンテンツ」等、インターネットに関連した相談がみられます。具体的な相談事例としては、「契約中の光回線業者を名乗る電話勧誘で、他社の光回線に契約変更させられた」などがあります。また、2020年は、定期購入商法を含む「他の健康食品」の相談や、新型コロナウイルス感染症の影響で、マスクを含む「保健衛生品その他」の相談が上位にみられます。

認知症等の高齢者や障害者等の見守りが重要

 認知症等の高齢者(注19)の相談をみると、高齢者全体とは異なる傾向を示しています。高齢者全体では、本人から相談が寄せられる割合は約8割ですが、認知症等の高齢者では2割に満たない状況です(図表Ⅰ-1-3-12)。販売購入形態別にみると、「インターネット通販」は2.5%、通信販売全体でも14.4%にとどまる一方で、「訪問販売」が3割を超え、「電話勧誘販売」も2割近くと大きな割合を占めています(図表Ⅰ-1-3-14参照。)。認知症等の高齢者は、本人が十分に判断できない状態にあるため、「訪問販売」や「電話勧誘販売」による被害に遭いやすく、事業者に勧められるままに契約したり、買物を重ねたりといったケースがみられます。具体的な相談事例としては、「認知症の母が、訪問販売で排水管清掃や床下ファン設置を契約してしまった」、「認知症気味の父が、電話でカニを勧められ承諾してしまった」といった相談が寄せられています。

 認知症等の高齢者本人はトラブルに遭っているという認識が低いため、問題が顕在化しにくい傾向があり、特に周囲の見守りが必要です。

 障害者等(注20)の相談についても、本人から相談が寄せられる割合は、障害者等の相談では約4割という状況であり、消費生活相談全体では約8割であるのに比べて割合が小さくなっています(図表Ⅰ-1-3-13)。相談内容をみると、「フリーローン・サラ金」に関する相談や、「出会い系サイト」等が含まれる「デジタルコンテンツ」に関する相談が多くなっています。具体的には、「障害者だが、生活費のためヤミ金業者から融資を受けた。お金がなくて返済できない」、「障害のある息子が副業サイトに登録し、情報商材を購入して60万円を支払った」など、判断力の不足や契約内容への理解不足でトラブルになっていると思われるケースが目立ちます。

 以上のことからも、認知症等の高齢者や障害者等の消費者トラブルの未然防止や被害の拡大防止には、家族のみならず、近隣住民や福祉事業者、行政機関等が協力して見守っていくことが必要なことが分かります。その際には、認知症等の高齢者や障害者を消費者、すなわち自己決定の主体として尊重し、生活や経験に寄り添って配慮しつつ自律的な意思決定のできる環境を作り出すことも重要です(注21)

販売購入形態別にみた相談状況

 販売購入形態別の消費生活相談割合の推移をみると、2020年の特徴は、「通信販売」の割合が増加する一方で、「店舗購入」や「電話勧誘販売」、「訪問販売」の割合が減少していることです(図表Ⅰ-1-3-14)。「通信販売」では、2017年と比較すると、「インターネット通販」の割合が全体で増加しています。65歳以上の高齢者についてみると、「インターネット通販」の割合は2017年から微減となったのに対し、「インターネット通販以外の通信販売」の割合は増加しています。また、65歳未満と比べて「訪問販売」、「電話勧誘販売」の割合が依然高いことも特徴です。

 年齢層別にみると、20歳代では「マルチ取引」、80歳以上では「訪問販売」、「電話勧誘販売」、「インターネット通販以外の通信販売」、「訪問購入」の割合が、他の年齢層に比べて高くなっています(図表Ⅰ-1-3-15)。

 「インターネット通販」について、商品・サービス別にみると、2020年は、2018年に相談の5割近くを占めていた「デジタルコンテンツ」の割合が減少する一方で、「商品」に関する相談の割合が増加しています。2020年は2019年に比べて、「商品」に関する相談の割合が10ポイント程度上昇し、全体の3分の2を占めました(図表Ⅰ-1-3-16)。これは、電子商取引の拡大や、新型コロナウイルス感染症の影響などを背景に、「商品」の購入手段としてインターネット通販を行う機会が増加したことに加え、商品未着や連絡不能等のトラブルが増加したこと等によるものと考えられます。

トラブルになりやすい商法や手口に関する相談

 トラブルになりやすい商法や手口には様々なタイプのものがありますが、主なものとその相談件数の推移をみると、2017年から2018年にかけて急増した「架空請求」、「身分詐称」は、2019年以降は減少に転じています(図表Ⅰ-1-3-17)。

 一方、「ネガティブ・オプション」(身に覚えのない商品の送り付け等)は、2020年に6,550件と、2016年の2,899件の倍以上に増加しています。内容としては、注文した覚えのないマスクや種子等が自宅に届いたといった相談等がみられます。消費者庁では、新型コロナウイルスに便乗した身に覚えのない商品の送り付け商法に関する注意喚起を実施しています(注22)

 また、「点検商法」は2017年以降、増加傾向にあります。内容としては、住宅の点検と称して訪問し、「火災保険を使えば自己負担なく工事ができる」などと住宅修理を勧誘する手口に関する相談がみられています。国民生活センターでは、保険金が使えるとうたう住宅修理サービスに関する注意喚起を実施しています(注23)


  • 注18:国民生活センター「消費者問題に関する2018年の10大項目」(2018年12月20日公表)
  • 注19:トラブルの当事者が65歳以上で、精神障害や知的障害、認知症等の加齢に伴う疾病等、何らかの理由によって十分な判断ができない状態であると消費生活センター等が判断したもの。
  • 注20:トラブルの当事者が心身障害がある又は判断能力の不十分な方々であると消費生活センター等が判断したもの。
  • 注21:消費者庁「障がい者の消費行動と消費者トラブル事例集」(2019年5月公表)
  • 注22:消費者庁「新型コロナウイルス感染症に便乗した身に覚えのない商品の送り付けにご注意ください」(2020年4月15日公表)
  • 注23:国民生活センター「『保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる』と勧誘されてもすぐに契約しないようにしましょう!—勧誘・契約が増える秋台風シーズンは特に注意してください—」(2020年10月1日公表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)