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COLUMN15 「健康と生活に関する社会実験」プロジェクト

新未来創造オフィスでは、消費者の行動と行政による情報発信の手法に関する調査・研究の一環として、行動経済学等の知見を活用した「健康と生活に関する社会実験」プロジェクトを実施しました。本社会実験は、行動経済学のナッジ(注1)と呼ばれる働き掛けを組み合わせた情報提供を行うことにより、行政による情報提供が消費者の行動に及ぼす影響と、効果的・効率的な情報提供の在り方を把握し、今後の周知・広報等に活用するための基礎資料を提供することを目的として実施したものです。

今回の社会実験では、「健康と生活」をテーマとして実験設計を行いました。まず、実験参加者に目標体重を設定してもらい、その上で、健康に資すると思われる情報提供と、参加者の目標達成をサポートするためのナッジを行いました。具体的には、参加者に対し、実験開始時の体重や目標体重、現在の目標達成度を知らせたり、目標達成度を他の参加者と比較した情報を提示したりする働き掛けを行いました(図表1)。これらの働き掛けにより目標達成への意識を喚起し、目標達成を「そっと後押しする」というものです。

結果は、減量を目標とした実験参加者の体重が実験前後で減少しましたが、ナッジによる目標達成をサポートする効果は、確認できませんでした(図表2)。一方で、参加者の1日当たりの歩数に関して、一部のナッジに歩数を増加させる効果があったことが分かりました(図表3)。この結果を踏まえると、健康に資する情報や今回の実験で用いたナッジを参加者が受け取ることで、参加者自身の行動が変わる可能性があるものの、歩数のように比較的気軽に始められる行動については、働き掛けの効果が認められる一方で、体重の変動のように、様々な行動(食事のコントロールや運動等)が絡むものについては、効果が出にくいと考えられます。

図表1 実験参加者のグループ分けについて

図表2 体重に関する介入効果、図表3 歩数に関する介入効果


  • 注1:「そっと後押しする」という意味。気付きのきっかけを与えることにより、人々に良い選択をするように促すこと(消費者庁「健康と生活の関する社会実験プロジェクト-とくしま生協購買データを用いたナッジの効果分析-」(2019年11月)参照。)。

担当:参事官(調査研究・国際担当)