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第2部 第2章 第3節 4.詐欺等の犯罪の未然防止、取締り

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第3節 適正な取引の実現

4.詐欺等の犯罪の未然防止、取締り

(1)特殊詐欺の取締り、被害防止の推進

2019年6月に開催された犯罪対策閣僚会議において、架空請求詐欺や金融商品等取引名目を含む特殊詐欺等から高齢者を守るための総合対策として「オレオレ詐欺等対策プラン」が決定されたことを踏まえ、警察庁では、全府省庁と連携して以下の取組を推進しています。

ア 被害防止対策の推進
幅広い世代に対し高い発信力を有する著名な方々により結成された「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(略称:SOS47)と連携し、各地方公共団体等のあらゆる公的機関はもとより、経済団体を始めとする社会のあらゆる分野に関する各種団体、民間事業者等の幅広い協力も得ながら、多種多様な媒体を活用するなどして、国民が力を合わせて特殊詐欺の被害防止に取り組むよう広報啓発活動を展開しています。また、留守番電話機能の活用等の促進、金融機関・コンビニエンスストア・宅配事業者等と連携した被害の未然防止等の取組を推進しています。

イ 犯行ツール対策の推進
携帯電話や預貯金口座を売買するなどの特殊詐欺を助長する行為について関係法令を駆使して取締りに当たるとともに、携帯音声通信事業者に対する、犯行に利用された携帯電話の契約者確認の求め、金融機関に対する振込先指定口座の凍結依頼等のほか、2019年9月からは、特殊詐欺の犯行に利用された固定電話番号を、警察の要請に基づき、主要な電気通信事業者が利用停止するなどの犯行ツール対策を推進しています。

ウ 効果的な取締り等の推進
だまされた振り作戦、犯行拠点の摘発、上位者への突き上げ捜査といったこれまでの取組に加えて、特殊詐欺事件の背後にいるとみられる暴力団、準暴力団等に対する多角的な取締りを推進しています。なお、2019年の特殊詐欺の取締り状況は、特殊詐欺全体の検挙件数が6,773件(前年比1,223件増)であり、このうち架空請求詐欺の検挙件数が1,386件(前年比115件増)、金融商品等取引名目の特殊詐欺の検挙件数が28件(前年比12件減)となっています(暫定値)。 金融庁では、預金口座の不正利用に関する情報について、情報入手先から同意を得ている場合には、明らかに信憑性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている金融機関及び警察当局への情報提供を速やかに実施することとしており、その情報提供件数等については、四半期ごとに金融庁ウェブサイトにおいて公表しています。

(2)被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の取締りの推進

警察庁では、悪質商法事犯(利殖勧誘事犯及び特定商取引等事犯)については、多大な被害をもたらすものであることから、関係行政機関との連携強化等による事犯の早期把握に努めるとともに、被害の拡大防止を意識した悪質商法事犯の早期事件化を推進しています。

また、迅速かつ機敏な口座凍結検討依頼や広域事犯に対応するための合同・共同捜査を推進しての早期事件化により、被害の拡大防止を図ることとしています。

なお、2019年中には、利殖勧誘事犯を41事件176人、特定商取引等事犯を132事件230人検挙しています。

(3)生活経済事犯に係る被害拡大防止に向けた犯行ツール対策等の推進

生活経済事犯の多くで、預貯金口座のほか、携帯電話等に関するサービスが悪用されていることから、警察庁では、犯罪の予防及び被害拡大防止を図るため、生活経済事犯に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯電話契約者確認の求め及び役務提供拒否に関する情報提供、契約条項に基づくレンタル携帯電話契約の解約要請等の犯行ツール対策を推進しています。

また、生活経済事犯に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供を行っており、2019年中は11,881件の情報提供を行いました。

(4)偽造キャッシュカード等による被害の防止等への対応

金融庁では、スキミング等により不正に入手した情報から偽造キャッシュカードを制作し、他人の預貯金を引き出す事件等が跡を絶たない状況であることを踏まえ、偽造キャッシュカード等による被害発生状況や金融機関による補償状況を、四半期ごとに金融庁ウェブサイトにおいて公表しています。また、預金取扱金融機関を対象として、「偽造キャッシュカード問題等に対する対応状況」に関するアンケート調査を実施し、金融庁ウェブサイトにおいて2019年8月に公表しました。

(5)ヤミ金融事犯の取締りの推進

ヤミ金融事犯(注66)については、健全な経済生活を脅かす悪質な事犯であり、また、暴力団の資金源となる場合もあることから、警察庁では、都道府県に対して、当該事犯の徹底した取締りのほか、ヤミ金融に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め及び役務提供拒否に関する情報提供、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等による、被害予防の推進を指示しています。

なお、2019年中は、ヤミ金融事犯を639事件724人検挙しています。

(6)フィッシングに係る不正アクセス事犯への対策の推進

金融機関(銀行やクレジットカード会社)等を装った電子メールを送り、住所、氏名、銀行口座番号、クレジットカード番号等の個人情報を詐取するいわゆるフィッシング行為や、それによる被害を防止するため、関係省庁において、不正アクセス事犯への対策を推進しています。

警察庁では、フィッシングに関し、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号。以下「不正アクセス禁止法」という。)違反等の取締りを推進しています。また、広報啓発活動や関係事業者等への情報提供等を通じ、フィッシング被害防止対策を推進しています。

また、2019年中の不正アクセス禁止法を適用した「フィッシング」行為の検挙件数は2件でした。

経済産業省では、一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター(注67)やフィッシング対策協議会を通じて、フィッシングの疑いのある電子メール及びウェブサイト等に関する情報収集・分析を行い、ウェブサイトやメーリングリスト等で、サイバーセキュリティ関連団体や一般消費者等へのフィッシングに関する情報発信や注意喚起等の情報提供を実施しています。

総務省では、フィッシング対策にも有効な技術的対策の一つとして、受信者が受け取った電子メールについて、当該電子メールの送信者の情報が詐称されている(送信者になりすましている)か否かを確認可能とする「送信ドメイン認証技術」の普及促進に取り組んでおり、迷惑メール対策に関わる関係者が幅広く参画し、関係者による効果的な迷惑メール対策の推進に資することを目的として設立された「迷惑メール対策推進協議会」と連携し、「送信ドメイン認証技術導入マニュアル」を策定・公表(2011年8月に第2版を公表)しています。

(7)ウイルス対策ソフト等を活用した被害拡大防止対策

警察庁では、各都道府県警察等から集約した、海外の偽サイト等に関するURL情報等を、ウイルス対策ソフト事業者等に提供し、関係事業者において、当該サイトを閲覧しようとする利用者のコンピュータ画面に警告表示を行うなどの対策を推進しています。

また、2016年7月から、海外の偽サイト等に関するURL情報等を、ウェブブラウザ事業者等が加盟する国際的な団体であるAPWG(フィッシング対策ワーキンググループ)に対して提供しており、ウェブブラウザによる警告表示が可能となっています。

(8)インターネットオークション詐欺の取締り

インターネットオークションを利用し、商品を落札した後、代金を相手の指定口座に振り込んだが、品物が届かず連絡も取れなくなったなど、インターネットオークションを利用した詐欺事案等が発生しています。

警察庁及び都道府県警察のウェブサイト等においては、インターネット利用者に対する注意喚起を推進しています。

また、インターネットオークションに関する犯罪の取締りを推進しており、2019年中のインターネットオークション詐欺に関する検挙件数は157件となっています。

(9)模倣品被害の防止

模倣品・海賊版による被害は、近年、複雑化・広範化しており、これらの被害は日本企業にとって潜在的市場の喪失、消費者に対するブランド・イメージの低下、製造物責任をめぐるトラブルの増加等の悪影響を及ぼすため、その対策に積極的に取り組む必要があります。

経済産業省では、「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」に寄せられる消費者等からの情報について、関係府省及び主要なECサイト運営者等に定期的に共有しています。

警察庁では、都道府県警察に対して、インターネット利用の偽ブランド事犯等の取締りの推進を指示しています。また、例年、関係する機関・団体が構成する不正商品対策協議会が主催するキャンペーンを後援しており、同協議会主催の「ほんと?ホント!フェア」(2019年:全国6県で開催)を支援するなど、関係者と連携した広報啓発活動を行いました。

なお、2019年中は、商標権侵害事犯を316事件378人、著作権侵害事犯を141事件161人検挙しています。

特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権、育成者権を侵害する物品及び不正競争防止法(平成5年法律第47号)の規定に違反する物品(知的財産侵害物品)は、関税法(昭和29年法律第61号)第69条の2及び第69条の11の規定において輸出又は輸入してはならない貨物と定められており、税関で取締りを行っています。

2019年の全国の税関における知的財産侵害物品の差止状況は、輸入差止件数が、2万3934件、輸入差止点数が、101万8880点となっています。

農林水産省では、官民連携の農林水産知的財産保護コンソーシアムを通じて、アジアの主要国における日本の農林水産物・食品の産地偽装・模倣品に関する現地調査等を実施しているほか、2019年2月から、広告等における地理的表示(GI)の使用やGI産品と誤認させるおそれのある表示等を規制対象とするとともに、日EU・EPAに基づく日本、EUのGI産品の相互保護を行っています。

消費者庁では、インターネット通販事業者の特定商取引法違反に関する調査の一環として、模倣品被害についての対策を行っています。2019年度は、模倣品を扱っている可能性のあるインターネット通販サイト154件について、特定商取引法の遵守状況を調査し、うち99件に改善指導を実施しました。

また、海外著名ファッションブランドの権利者等からの情報提供を受け、模倣品販売が確認されたサイト等の悪質な海外ウェブサイトに関する情報について、消費者庁ウェブサイトにおいて公表しています。

(10)「架空請求対策パッケージ」の推進による被害の防止

2017年度に全国の消費生活センター等に寄せられた架空請求に関する消費生活相談の件数が増加したことを踏まえ、2018年7月に策定された「架空請求対策パッケージ」(2018年7月22日消費者政策会議決定)に基づき、以下の取組を推進しています。

・架空請求事業者から消費者への接触防止のための取組
・消費者から架空請求事業者への連絡防止のための取組
・消費者による架空請求事業者への支払の防止のための取組

「架空請求対策パッケージ」において、2018年秋を目途に、架空請求に関する相談状況及び関係府省等の架空請求対策の実施状況についてフォローアップを行うこととされていたことを受け、2018年12月、関係府省の協力を得て、「架空請求対策パッケージ」に掲げられた施策の進捗状況等について取りまとめの上公表し、いずれについても着実に進められていることが確認されました。

消費者庁では、2018年8月、啓発資料を作成し、注意喚起を実施したほか、同年11月、封書を送付したり、裁判所をかたったりするといった手口の変化を踏まえた、新たな啓発資料を公表し、周知を図っています。また、同年11月、インターネット上の文字列を分析し、消費者被害・トラブル情報の把握を行う取組における文字列情報の抽出プロセスにおいて、事業者による消費者向けの注意喚起情報が把握できた際に、より一層の情報の拡散を図り、被害の抑止を図るため、消費者庁ウェブサイトに、周知を図るためのページ(注68)を設けました。

また、2019年3月以降、高齢者の方々に留意点がいきわたるよう、高齢者の住まいの管理に関する業界団体の関係者に対して情報の周知についての協力を求めたほか、2019年度には、令和元年台風第19号等の被災地の生活再建期における被害発生防止等の観点から、台風19号の被害発生後に「災害後の消費者トラブル防止のために」を公表しました。


  • 注66:貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利等)に係る事犯及び貸金業に関連した犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯罪収益移転防止法」という。)違反、詐欺、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号。以下「携帯電話不正利用防止法」という。)違反等に係る事犯。
  • 注67:インターネットを介して発生する情報流出、Web改ざん、フィッシングサイト等のコンピュータセキュリティインシデントに関する報告の受付、対応の支援、発生状況の把握、手口の分析、再発防止対策の検討や助言、早期警戒情報の配信やソフトウエア等のぜい弱性対応等を技術的な立場から行い、特定の組織からは独立した中立の組織として、また、国際連携が必要なオペレーション等の窓口となるCSIRTとして、日本における情報セキュリティ対策の向上に取り組んでいる組織。
  • 注68:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/other/other_002/

担当:参事官(調査研究・国際担当)